R2年 建設部門、道路の答案について添削致しました。20210408

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この答案についての講評

 この答案Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの評価はそれぞれB,A,Cでした。答案の内容についてはそれぞれ改善するべきところは見受けられますが、やはり評価の悪かった答案では本質的な事項が答えられていないように拝見いたします。こうした出題者が要求する答えの中心について的確に答えることが正解に近づく方法かと考えます。本講座では無駄な記述を無くすことにより、簡潔な文章で正解の本質を鋭く突く論述をお勧めしています。これをすることによって答えが発散することなく、間違いなく正解にたどり着けるということです。このHPの添削の中では残念ながらすべての正解をお示しすることはできませんが、受講された方に対してはマンツーマン方式で丁寧にご説明しておりますのでご安心ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(30分46秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的なメンテナンス推進の課題

(1)地方自治体の管理体制の強化

我が国では、橋梁70万橋、トンネル1万本存在しているが、そのうち橋梁の9割、トンネルの7割を地方自治体が管理している。

しかし、公共事業費の削減、職員数の削減の進行するなか、人材不足、予算不足、技術力不足で相対的に管理体制が不十分で負担が大きく対応が困難である。

したがって、戦略的なメンテナンスサイクル推進を行う地方自治体の管理体制の強化が課題である。

■↑たくさんの問題に対して「管理体制強化」だけではなく、技術的解決へつなげるようにしましょう。

(2)個別施設計画の策定

多数の社会資本の老朽化が加速度的に上昇する中、すべての施設の劣化状況や管理方針や維持費の概要を把握して戦略的な維持管理する必要がある。

しかし、個別施設計画の策定率は橋梁で8割、トンネルで5割と進んでおらず、全体を俯瞰して優先順位を考慮した戦略的な維持管理ができない。

したがって、戦略的なメンテナンスを行うために必要な個別施設計画の策定が課題である。

■↑戦略的な維持管理だとどうして個別計画なのかではなく、今一度論理的につながるように考えましょう。

(3)担い手の確保育成

維持工事は、建設時の品質や立地条件、建設後の利用履歴や管理状況などをもとに適切な補修設計・工事が必要であるため高い専門技術力が必要である

しかし、維持工事を担う多くの熟練技術者が、高齢化により、今後10年間で退職が見込まれており技術力不足により対応が困難となる。

したがって、戦略的なメンテナンスサイクル推進に必要な担い手不足が課題である。

■↑良く書けています〇

(4)劣化予測技術の高度化

戦略的なメンテナンスサイクル推進のためには、点検データを元に健全な評価を行い修繕、更新を行うために劣化予測技術の高度化が必要である。

しかし、施設管理者間でメンテナンスサイクルや新技術活用による計測、点検、補修などのデータを共有する仕組みがないため予測技術の高度化が図れない。

したがって、施設管理者間でデータ共有することによる劣化予測技術の高度化が課題である。

■↑劣化予測は手段に留まっているためメンテにはならないので、これをどう補修につなげるかという視点が必要です。

2.地方自治体の管理体制の強化の解決策

大多数の施設に影響することから「地方自治体の管理体制の強化」を最重要と考え、以下に解決策を述る。

(1)民間活用

解決策は、民間を活用した維持管理を行うことである。

理由は、活用することで地方自治体が行っている発注、施工管理、受入検査などのマネジメント業務の全部または一部を肩代わりすることで、地方自治体の管理体制を補うことができるからである。

具体的には、CM方式を導入する。導入により、民間の創意工夫や技術力によりメンテナンスの高度化が図られる。

■↑PFIやPPPは民間のノウハウを利用するわけであって、肩代わりではないことを理解しましょう。

(2)修繕計画の立案、設計、工事の一括発注

解決策は、包括発注方式の導入である。

理由は、地方自治体の事務処理の手間が削減でき、発注規模の大型化により不調不落の防止が図れることで発注の安定化が図れるからである。

具体的には、各管理者が一体となった契約方式の導入や修繕計画から修繕工事までを一括で発注することでさらに効率化が図ることができる。

■↑一括ですべてが効率化は無理があります。自治体の事務処理の手間よりもっと本質的な事項を挙げるようにしましょう。

3.新たに生じうるリスクと対策

新たに生じうるリスクは、責任の所在が不明瞭になることと安全面への配慮を欠くおそれがあることである。

方策は、契約後に速やかに責任の所在を書面に記録しておくことと、過度に利益至上主義にならないよう安全面の注視が必要である

■↑事務的な措置で解決することは、あまり提案価値がないため、建設・道路の技術応用を前提とする提案をするようにしましょう。

4.必要となる要件

技術者としての倫理の観点から、行っている業務が社会に与える影響を正しく理解し公衆の安全、健康、福利など公益の最優先が必要である。

社会の持続可能性の観点から、環境負荷の小さい施設を積極的に活用することや、コスト削減や省人化を図り経営面での考慮が必要である。

以上

■↑心構え、一般論ではなく、求めているのは2の業務、すなわち民間活力と一括発注を行う上での要件です。技術士として技術者倫理を高めるにはどうするかと、社会持続可能性を高めるにはどうするかという答えを提案しましょう。

Ⅱ−1−2

令和 2 年 5 月の道路法改正により創設された歩行者利便増進道路の概要を述ベよ。また,それにより期待される効果を説明せよ。

1.歩行者利便増進道路の概要

歩行者利用増進道路の背景は、高齢化社会の進行により運転能力の低下した高齢者が運転免許証を返納していることや、若者の車離れなどにより道路の需要が変化していことである。

■↑交通量が減っていることを端的に言うと良いでしょう。

さらに、低炭素社会を目指したコンパクトシティの推進による環境負荷の小さい公共交通や歩行者など歩いて暮らせるまちづくりも後押ししている。

歩行者利便増進道路の内容は、占用条件の緩和により、歩行者利便増進道路に指定することで専用期間を最長20年とするものである

■↑ここは無くてもよいです。

2.歩行者利便増進道路の効果

歩行者利便増進道路の効果は以下のとおりである。

・地域活性化(観光)

・事故の減少(安全効果)

・利便性向上

・低炭素社会の実現

・高齢化社会への適応

・経済効果 

以上

■↑内容的に間違いではありませんが、この書き方は減点になる可能性があります。一応普通の文章で書くのが基本です。コミュニケーション能力を問われる恐れがあるためです。

Ⅱ−2−2

道路の地下空間には様々な占用物件が埋設されているが,近年,占用物件の老朽化に起因する路面陥没や上水道の断水といった事象が発生し,問題となっている。これらの事象を踏まえ,市街地での舗装修繕工事の計画を立案し実施する担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順と,その際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための,関係者との調整方策について述べよ。

1.調査、検討すべき事項

(1)占用物件

占用物件の種類と事業者、平面的な位置と埋設深を可能な限り詳細に調査する。さらに、経過年数と補修歴を調査する。

占用物件台帳が存在しない場合は、試掘を検討する。

(2)道路の利用状況

埋設管の強度設計を検討するために道路利用状況、特に大型車両について調査する。

(3)道路の構造

舗装修繕工事設計に必要な舗装構成や幅員構成について調査する。道路施設台帳が存在しない場合は試掘を検討する。

2.業務を進める手順

(1)調査

占用物件、道路の利用状況、道路の構造についてできるだけ詳細に調査する。

■↑↓同じことのダブリになっています。

留意すべき点は、可能な限り詳細に調査することである。工夫を要する点は、電子データを活用することである。

(2)分析、検討

調査した項目をもとに分析、検討を行う。

留意すべき点は、できるだけ定量的に分析することである。 

■↑ほとんど「道路」「占有物」と関係のない内容になっています。

(3)計画、設計

分析、検討した結果をもとに設計を行う。

留意すべき点は、過剰スペックとならないようにコスト削減に留意する。工夫を要する点は、CIMを積極的に活用し3次元モデルによる設計の効率化を図ることである。

■↑ほとんど「道路」「占有物」と関係のない一般論です。

(4)施工

設計図をもとに現場条件に合わせた施工を行う。

留意すべき点は、市街地のため騒音、振動に注意する。工夫を要する点は、設計の3次元モデルを活用したICT施工で行うことである。

■↑「道路」「占有物」と関係のない一般論です。

(5)管理

■↓ごく一般的な事項になっています。技術士としての手順や留意点を提案しましょう。

舗装修繕工事に関する道路施設台帳および完成図を納品する。

留意すべき点は、道路管理に重要であることを理解し照査の確実な実施である。工夫を要する点は、完成図に誘導できるよう

補修歴に工事名を記入することである。

■こちら↑の意味は?

3.関係者との調整方策

道路用者、地域住民、民間企業、警察、教育機関など多くの利害関係者が関わっており、円滑な業務の推進に向けて、事業の構想段階から関係調整会などで共有し、合意形成を図る必要がある

以上

■↑調整会では何をどうするのか。「私」の役割は?具体的に書きましょう。

Ⅲ−2

甚大な被害をもたらした東日本大震災から9年が経過したが,その後も,大きな地震や集中的な豪雨,豪雪による甚大な災害が発生しており,また今後も首都直下地震や南海トラフ巨大地震が高い確率で発生することが予想されてい。るこのような状況を踏まえ,道路の防災対策に携わる技術者として,以下の問に答えよ。

(1)激甚化・頻発化する災害に備え,道路が発災時に救命救急・復旧活動や広域的な物資の輸送等に貢献し続けるため,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.道路の交通機能確保における課題

(1)無電柱化の推進

2019年に発生した台風15号により千葉県内で2000本の電柱が倒壊し、救命活動などに支障をきたし無電柱化の必要性を再認識させた。

地震、台風発生時の交通機能の観点から無電柱化は必要であるが、コストが電柱と比較して3から5倍と高額であるため進んでいない。

したがって、地震、台風時の交通機能確保の観点から無電柱化の推進が課題である。

■↑無電柱化は別な要因で推進されています。コストがかかりすぎるので防災目的だけでは困難でしょう。現実的ではありません。

(2)雨量事前通行止め基準の見直し

大雨による災害から道路利用者の安全を確保するために災害リスクの高い区間において事前通行止め基準が定められ雨量超過時に通行止めを実施している。

しかし、大雨時の通行機能の確保から、事前通行止め基準に達して通行止めとなったにもかかわらず通行止めに至る割合がほぼ皆無である

したがって、大雨時の通行機能の確保から雨量事前通行止め基準の見直しが課題である。

■↑何を問題視しているのか分かりにくいです。事前通行止めの予測をしても、現実には通行止めしないのは訳があってしていることです。

(3)予防的通行止めの実施

大雪時に除雪作業を効率的に行えるようにするために災害対策基本法を適用して事前に区間を定めて自動車を排除することが可能となった。

しかし、大雪時の通行機能の確保の観点から、大雪時にスタック車両の発生により大規模な交通停留が発生している。

したがって、大雪時の通行機能の確保の観点から予防的通行止めが課題である。

■↑提案は間違いではないですが、このような制限を設けること自体はたやすいことであり、技術士の提案とは言いにくいです。いつどう判断するか、それはどうするかを提案しましょう。

(4)交通ネットワークの機能強化

激甚化する災害時において、救命活動や復旧活動が行えるためには、道路の交通機能を継続的に発揮させることが必要である。

しかし、高速道路は現行2車線区間が4割を占めており、過去の経験上、通行止めに至る割合が高く交通ネットワークの信頼性が低い。

したがって、広域的な交通機能の確保の観点から交通ネットワークの機能強化が課題である。

■↑高速道路が2車線だから交通ネットワークを機能強化するといっても具体的にどうするのか答えを提案しましょう。

2.無電柱化推進の解決策

無電柱化推進は国民のニーズが高く、国際的にみて日本の整備水準が低いことから最重要課題と考え、以下解決策を述べる。

(1)技術基準の緩和

解決策は、技術基準の緩和である。

理由は、技術基準の緩和により安価な材料の採用や施工期間の短縮が可能となることでコストを3割削減できるからである。

具体的には、埋設管路の強度基準をつるはしによって壊れない基準からスコップで壊れない水準に緩和する。

■↑防災の話ではなくなっています

(2)新技術活用

解決策は、新技術活用である。

理由は、新工法、新材料を採用することで材料費が安価になることや施工期間が短縮することで間接費が削減できるからである。

具体的には、例えば、FEP管を採用することでコスト削減が図れると同時に施工性が優れていることで工期短縮による間接費削減による低コストも実現できる。

■↑道路の技術応用の話ではなくなっています

(3)一括発注

解決策は、一括発注である。

理由は、一括発注することで事務負担が軽減でき、発注規模が大型化することで不調不落を回避することができ発注が安定するからである。

具体的には、県や地域規模で一括で発注したり、設計、施工を一括で発注することで発注規模を大型化でき、さらにコスト削減ができる。

■↑(1)(2)は解決策の記述ではなかった?

「一括発注によるコスト削減」という手法に頼るのは危険です。建設・道路の本質的な技術応用を考えましょう。

3.波及効果と懸念事項と対策

波及効果は、無電柱化の推進による防災効果だけではなく、電柱、電線がなくなることによる景観向上や電柱回避による事故の減少がある。■↑景観は、第一の目的です。

懸念事項は、責任の所在が不明瞭になることと安全面への配慮が欠落することである。

対策は、契約後早めに書面により責任の所在を明確にしておくことと、極端に利益至上主義とならないよう安全面を注視することである

以上

■↑懸念事項の意味が分かりにくいです。

「書面で管理」は事務的手法のため、答えになりません。試験官は技術者コンピテンシーを測っています。建設・道路の本質的な技術応用を考えましょう。

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