R2年 衛生工学部門、建築物環境衛生管理の答案について添削致しました。 20201017
この答案についての講評
この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBBBとの残念な結果でした。その理由としてⅠは新しい問いかけ問語である「街区スケールでの」対応について、衛生工学としての全体形を目指した提案ができていなかったことがあげられます。またⅡ、Ⅲでは主題が見えないため答えが発散してしまったように拝見いたします。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(41分51秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
音声ガイドの添削時期が合格発表前であったため、判定については明確にはできておりません。この時点ではもっぱら口頭試験対策としてお伝えしております。
問題 Ⅰ-1
2019年12月以降,世界中で「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大が問題となっている。感染拡大防止を目的とした法律として「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「検疫法」などがあり,「新型コロナウイルス感染症」も同法の指定感染症に定められている。その一方で,感染拡大防止のためには法令等による社会制度で取り組む対策から,民間組織,個人が取り組む対策まで多様な取組が考えられ,我が国においても感染拡大防止の観点から,多くの社会活動が制限・自粛されるなど,経済活動にも大きな支障が出ている。
このことを踏まえて,以下の問いに答えよ。
( 1 )新型コロナウイルス感染症も含め,今後にこのような新種の感染症が発生した場合, 街区スケールでの感染拡大防止に関して,衛生工学の技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
( 2 )抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
( 4 )前問( 1 ) ( 3 )の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
I−1 2019年12月以降,世界中で「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大が問題となっている。感染拡大防止を目的とした法律として「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「検疫法」などがあり,「新型コロナウイルス感染症」も同法の指定感染症に定められている。その一方で,感染拡大防止のためには法令等による社会制度で取り組む対策から,民間組織,個人が取り組む対策まで多様な取組が考えられ,我が国においても感染拡大防止の観点から,多くの社会活動が制限・自粛されるなど,経済活動にも大きな支障が出ている。
このことを踏まえて,以下の問いに答えよ。
( 1 )新型コロナウイルス感染症も含め,今後にこのような新種の感染症が発生した場合, 街区スケールでの感染拡大防止に関して,衛生工学の技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
( 2 )抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
( 4 )前問( 1 ) ( 3 )の業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
1.感染拡大防止の課題の抽出及びその内容
はじめに
世界中にウイルス感染症が拡大し、パンデミックの状況となった。それに対する対応は今までと同じような方法ではうまく行かなくなってきており、建築物も設備も新たな対応策が必要となってきている。
以下に課題の抽出とその内容を示す。
■前置きは、今は不要になっております。
課題①:空調システムの見直し
感染症拡大防止のため、我が国では3密(密閉空間
密集場所、密接場所)の回避が第一の対策となっているが、その内の密閉空間を回避するために換気設備の見直しが必要となる。
■①②③とも「街区スケールでの感染拡大防止」の視点を広げて考えましょう。
課題②:衛生設備の見直し
ウイルス感染の原因の一つとして接触感染が挙げられる。衛生設備の洗面器や流し台の水栓は不特定多数の人が触れるものであり、自動水栓への見直しが必要である。
課題③:部屋の大きさの見直し
感染症拡大防止の一つとしてソーシャルディスタンスの確保が挙げられる。人員を減らすことのできない学校等においては、部屋の大きさの見直しが必要とされ、それに伴い空調負荷の見直し、換気風量の見直しが必要となる。
2.最も重要と考える課題と解決策
最も重要と考える課題は「①空調システムの見直しとする。理由は、スペースインパクトが最も大きいためである。
■こちらも「街区スケールでの感染拡大防止」の視点を広げて考えましょう。
解決策①:換気風量の増大化、換気口配置の適正化
換気風量は建築基準法やビル管法で必要風量が決められているが、可能な範囲で換気風量を大きくする。
また、ショートサーキット防止のため、給気口と排気口の位置を極力離すようにする。
解決策②:室圧の陰圧化、HEPAフィルターの設置
病院で感染者が入院する病室や疑感染者を検査治療する治療室は、ウイルスが他の部屋に拡散しないように部屋を陰圧に保つ必要がある。また、部屋の排気に含まれるウイルスを大気に拡散させないよう、排気ダクトの途中に高性能HEPAフィルターを設置する。
3.波及効果と懸念事項への対応策
1)波及効果
換気設備の見直しを行ったことにより感染症拡大防止対策は進むことにはなるが、実際にその換気設備を適正に運用し続けることが重要である。
■「波及効果」について、波及とは波がうつっていくように、だんだんと影響の及ぶ範囲が広がっていくことですので、問2解決策として提案した換気や陰圧化が影響を及ぼす結果を推論するようにしましょう。
2)懸念事項と対応策
懸念事項①:操作ミス
保守員の操作ミスにより換気設備が停止するといった懸念事項が生じる。
対応策として、操作や状態を見える化し、・・・
解決策でご自身が提案した事項をもとに考えましょう。
■
複数の目でチェックして操作ミスや判断ミスを防止する。また職場全員参加によるKY活動を通じてヒヤリハットの情報を収集・分析し、ヒューマンエラーの防止につなげる。
懸念事項②:経年劣化
換気設備の経年劣化により換気風量が低下し、室圧の陰圧を保持できなくなるといった懸念事項が生じる。
対策として、保守員による定期的な点検を実施したり、複数の目でチェックしたりするなど工夫する。また、HEPAフィルターの目詰まりが生じないよう定期的に交換する。HEPAフィルターの差圧を計測し、警報を出力するようなシステムとする。
4.業務遂行に当たり必要となる要件・留意点
1)必要となる要件
①常に高い倫理観を持ち続け、多くの人と意見交換をし、多様な観点での物事を評価・分析する。
②公益の確保、公共の安全・健康・福祉を確保する。
2)留意点
①技術の日進月歩、最新の技術知見を常に注視し、感染症拡大防止に反映し改良する。技能向上、資質向上、継続研鑽(CPD) に努める。
②将来世代にわたって人々が健康で暮らせる社会となるよう努める。
③SDGsの目標の一つである「住み続けられる街づくりを」を常に意識して日々の業務を遂行する。
一般的な技術者の心構えの表現に留まっています。
物件の改善が求められているため、新たな提案ではなく、ご自身が問1,2,3で提案したことに対して、さらなる品質改善や自己評価、公益性を高める貢献を求めています。
本講座ではこのような細かい意味、対処法について具体的に添削指導しています。
Ⅱ−1−4
排気中の煤や粉塵などの粒子を気体から分離する集じん装置の方式を3っ挙げ,それぞれの原理と留意点を述べよ。
集じん装置の方式について 下線は不要
1.フィルターによるろ過方式
1)原理
フィルターによるろ過の原理は、衝突・さえぎり・静電気・ブラウン運動による吸着の4つである。
2)留意点
フィルターの清掃を怠ると目詰まりを起こし風量の低下が生じ、場合によってはフィルターの破損、ダクトの破損生じることもある。従って、定期的な清掃が必要である。
■間違えではありませんが、もっと衛生工学の知見や 原理に基づく工夫、提案などが見られるようにしましょう。
2.電気集じんによる吸着方式
1)原理
放電された空間に排気中の粒子を通過させ、粒子を帯電させた後、電気式電極板に吸着させる。
2)留意点
粒子と一緒にほこりが電極板に吸着し、ほこりが剥離する際に粒子も一緒に取れてしまう。電極板の定期的な清掃が必要である。
■電極版の清掃という日常管理の話ではなく、ここは電気集塵の原理に基づいて電気的な引力を高めて粒子を補足する工夫を述べたほうが良いでしょう。
3.帯電粒子による分解方式
1)原理
帯電された水粒子を排気中に放出し、化学反応により粒子を分解する。
■煤や粉塵を分離する方法とは違うようです。帯電された粒子をどのような技術で集塵するのかまで述べるようにしましょう
2)留意点
帯電粒子は人体に悪影響を及ぼすため、臭いが強くなった場合は、その使用を中止する。
■留意点は改善方法を提案しましょう。そのためには無臭化の方法を提案しましょう。
Ⅱ−2−1
15階以上の高層建物が密集した都心部にて,延床面積30 , 000m2,地上18 階,地下2階,オフィス基準階面積1 , 400m2でそのうちオフィス専有面積1 , 000m のグローバル企業の本社オフィスビルの建設プロジェクトに空気調和設備設計業務の担当責任者として参画することになった。優れた省エネルギー性能を有し,かっ地震や洪水等によりそれぞれの公共インフラ(電力,上水道,下水道,都市ガス)機能が停止した時に事業継続が可能となる中央供給式の空調熱源システムを計画するに当たり,下記の内容について記述せよ。なお, ここで言う事業継続が可能となる空調条件とは,企業の基幹部門が入居する6フロアのオフィス階にて,最低3日間は通常と同じ事業活動が可能であることを指す。
( 1 )調査,検討すべき事項を3つ以上挙げ,その具体的な内容について説明せよ。
( 2 )業務を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。
( 3 )業務を効率的,効果的に進めるに当たり,計画を決定するための関係者との調整方策について述べよ。
調査、検討すべき事項■調査と検討を対にして、「〇〇を調査して、〇〇を検討する」という文にしましょう。
1)調査すべき事項
①周囲環境の調査
周囲建築物の高さ、騒音対策、工場や地下鉄の有
無を調査する。
■ねらいが見え辛いので、プロジェクトの 最終目的に直結する 品質項目を 優先的に取り上げて、 それらを 改善する方法を 検討するようにしましょう。
②インフラ状況の調査
電力・都市ガス・上水の敷設状況を調査する。
もし、建物周囲まで敷設されていなかれば、各インフラ担当者と協議する。
■基本的事項にならないように注意しましょう。
2)検討すべき事項
①未利用エネルギーの活用
工場排熱や地下鉄排熱の活用を検討する。
■いきなり、これだけでは△。 何のために 未利用エネルギーを活用するのか、 それがどのような効果があるのか、 提案の価値を推し量れるようにしましょう。
2.業務を進める手順、留意すべき点、工夫を要する点
1)与条件の整理 施主に空調範囲温湿度条件をヒアリングする。自治体の法規制、省エネ法の確認。省エネと快適性の高い空調方式とする。
■ここ↑に書かれていることは、 残念ながら前置きの作業 のように読み取れます。1)に挙げるべきでしょう
エネルギーの二重化、電力とガスのベストミックスを検討する。BCP対応の範囲について施主と打合せする。地冷の有無の確認。
2)方針決定 与条件を元に方針を決める。BCP、再エネ利用、未利用エネルギー、地域冷暖房の採用方針を決める。電気設計者と電気容量の打合せを行う。
3)計画 方針を元に設備計画決める。熱源機器の仕様を決定する。BCP対応とする機器の電気容量を電気設計者に伝達する。
■構築の手順が見えるようにしましょう。ここで提案すべき業務とは、「省エネルギー性能を有し,かっ地震や洪水に事業継続が可能となる中央供給式の空調熱源」です。
具体的な方針がなく「BCPをする」では 技術士の答えにならないので気をつけましょう。
4)建築調整 構造計画及び搬入ルート、メンテナンスルートを調整する。設備機器の配置を計画し、建築設計者・構造設計者に対して要望事項を出して調整する。特に地下階のマシンハッチや屋上機器の将来揚重計画に留意する。(上記は表形式としてまとめました)
3.関係者との調整方策
1)施主との調整方策
①熱源機器の構成
熱源機器の構成について、電力をガスのベストミックス、イニシャルコストとランニングコスト、エネルギーの二重化等について比較表を作って分かりやすく説明する。また、BIMを使って系統図の説明を行う。
■設計した結果をプレゼンするための方策のように 読み取れてしまいます。
ここで求められている考察とは、まずはご自身が解決策として推進しようとしていたことは何か、それを明確にして、それらを効率的に進める上で、関連する協力者たちに対する調整を考えるということになります。
プロジェクトマネージャーは自らの業務部署で行う作業効率化するため、ほかの部署の協力を仰ぐ、または他の部署とのバッティングする事項を解消して行くなどの対外的な交渉が必要です。
こうしたproマネの業務を行うことによって、プロジェクトは障害を乗り越えて進捗が効率化されることを考えて答えるようにしましょう。
②建物の使われ方
空調時間帯や時間外空調の要否を確認する。また本社オフィスビルの建設になっているが、テナントの有無、個別空調の要否についても確認する。
③施設管理部門へのヒアリング
施設管理部門の意見を聞き、熱源システム計画の参考とする。
■やはり調整とは「打合せして、取り決める」という程度の意味で書かれているように読み取れてしまいます。
単に担当者の仕事の域を出るためにはどうしたら良いか。
ここはプロマネの仕事の仕方をアピールするため指導力とか、とりまとめを提案すると良いでしょう。
2)地方自治体との調整方策
地方自治体独自の法規制(騒音・振動等)に対して
自治体担当者と早期に打合せを行う。
3)設計部門での調整方策
建築設計担当者と屋上及び地下機械室の機器設置スペース及びマシンハッチについて調整する。また、構造設計担当者に重量機器の運転重量情報を伝達し、調整を行う。電気設計担当者に熱源機器の電気容量と、BCP対応となる設備機器の電気容量などの情報を連絡し、調整を行う。
Ⅲ−1
2009年11月から始まった住宅用余剰電力買取制度の適用を受けた太陽光発電については,買取期間( 10年)が満了になりつつある。また, 2012年7月から導入された固定価格買取制度(Feed-In Tariff : FIT)において太陽光発電による電力の買取価格が住宅用・事業用ともに引き下げられている。これを踏まえて,今後の太陽光発電の普及策について,次の設問に答えよ。
( 1 )政策を提案する技術者としての立場で多面的な観点から,太陽光発電の固定価格買取制度からの自立及び以上の状況下における太陽光発電の普及について,課題を抽出し分析せよ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち,最も重要と考えられる課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )前問( 2 )で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれの対策について述べよ。
1.太陽光発電の普及の課題の抽出及び分析
1)はじめに
2015年にパリ協定が採択され、地球の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回るよう抑制し、1.5 ℃に抑えることを努力目標としている。我が国はGHG削減目標を2013年比で2030年で▲26%、2050年で
▲80%としている。このような状況下において、電力の脱炭素化として太陽光発電の早期普及が望まれている。
■問題文の内容にも近く、求められていない不要な前置きなので、一応触れてる程度にしておいて、衛生工学・建築物環境衛生管理の視点から課題を分析するようにしましょう。
2)課題の抽出及び分析
課題①:電力の平準化
■アンダーラインはなくても構いません。
太陽光発電は夜間は発電されず、またその日の天候により発電量が左右され、その出力は不安定である。一方、電力供給量と電力需要量は同じ量でバランスが保たれていることが望まれ、もしこのバランスが崩れてしまうと停電が生じる可能性がある。従って、電力の平準化が課題である。
■現状の問題点を挙げだけではなく、求められている問いに答えましょう。
買取制度からの自立、太陽光発電の普及についての課題を提案しましょう。
課題②:太陽光発電の高効率化
太陽光発電のエネルギー密度は小さい。我が国の都市部の建物は高層ビルが多く、屋上や壁面に太陽光パネルを設置したとしてもその面積は不足する。従って太陽光発電の高効率化が課題である。
■太陽光発電をどうやって普及させるかの課題を述べましょう。
課題③:初期コストの増大化
太陽光発電の導入にあたり、初期コストの増大という問題が生じるが、補助金制度や低金利融資を活用しESCO事業、ESG投資を活用し、初期コストに充てる。
■問題趣旨を読み誤らないようにしましょう。買取制度FITからの自立を求めているのに、補助金目当てでは本末転倒になってしまいます。答えの方向性は技術による自助努力です。
2.最も重要と考えられる課題と解決策
最も重要と考えられる課題は「①電力の平準化」とする。理由は、電力の平準化が最もハードルが高く、しかも停電という人為災害の可能性があるからである。
解決策①:蓄電池設備の開発
■蓄電池も電力、H2もいずれも衛生工学の領域外になっております。
Ⅲにふさわしい専門技術での課題遂行能力を示すようにしましょう。
太陽光発電からの不安定な電力を一旦蓄電池設備に貯め、必要な時に安定した電力として供給する。今後蓄電池設備のさらなる高効率化、高密度化、低コスト化を目指した技術開発を行う。
解決策②:電力の融通
太陽光発電から生じる余剰電力を他の電力ネットワークと自由に融通し合える仕組みを作ることにより、電力の平準化を図る。また、スマートシティのように各建物間や事業者間で余剰電力を自由に融通し合えことができる仕組みを構築する。
解決策③:H2と蓄熱材の活用
■リスクとはどんなことか。正確に示す。
何のためにリスクが求められるのか。
何に対するリスクなのか。
この3つを考えてみましょう。
太陽光発電からの不安定な電力を他のエネルギーに姿を変えて、必要な時に再度電力に戻す。例えば、太陽光発電の電力を用いて水を電気分解しH2を得る。H2の状態でエネルギーを貯めておき、必要な時にH2とO2の化学反応により安定した電力を供給する。また、太陽光発電の電力を熱エネルギーに変更し蓄熱効率の高い蓄熱材に熱エネルギーとして蓄エネする。必要な時に蓄熱材から熱エネルギーを取り出し安定した電力に変換する。
■「H2とO2の化学反応」は仮想的にはOKですが、どのくらい実現性があるか今一度考えてみましょう。衛生工学としてすぐに提案できないものは△になります。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
リスク①:危機意識の欠如、取組意識の低下
太陽光発電を導入するにあたり、コストがかかるということが障壁となり、事業者の取組意識の低下につながる。光熱費削減だけがメリットであれば、その動機付けとしては不明確であり、危機意識の欠如というリスクが生じうる。
■「危機意識の欠如」に対して「取組意識の向上」では対応しません。
対策として、太陽光発電の導入によりBCP性能の向上、社会的評価の向上になることを事業者に分かりやすく説明し、取組意識の向上に努める。
■「分かりやすく説明」とはどのようにするのか。具体的内容を示すことです。意識の向上だけでは△。
リスク②:技術者不足、技術力低下
太陽光発電を数多く設置すると、その維持管理に技術者が数多く必要とされ、技術者が不足する。また、若手技術者の技術力が低下するといったリスクが生じうる。
対策として、AI・IoTを導入し省人化・省力化を図り、若手技術者に対しては教育資格制度を充実させる
■多数設置すると維持管理に忙殺されるのは当然ですので、目に見えていることは「リスク」とは言えないことを理解しましょう。AI・IOTもあいまいにならないように述べてください。
リスク③:経年劣化
太陽光発電を運用する上で、経年劣化が発生し、予定された発電量を得ることができなくなるといってリスクが生じうる。
■経年劣化も常識です。太陽光の弱点はそれしかないので、常識的に考えてすでに対策されています。
対策として、定期的な点検・設備劣化診断を行う。またBEMSを導入して太陽光発電量を見える化し、発電量の低下により経年劣化を早期発見する。