R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20200927
この試験答案Ⅲの評価はAとのことで、合格点をクリアしているレベル感があります。ⅠやⅢの問2の解決策で高い評価点を獲得されているように拝見いたします。一方で減点されているところもあり惜しい感じがいたします。添削で具体的にご指摘致します。その理由として、テーマに対して個別の議論ではなく一般論的な説明に終始ししていたことがあげられます。前提条件に沿って具体的な提案ができればよかったと思います。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。
本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(24分52秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題 Ⅰ-2
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1) 社会・経済情勢が変化する中で、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
(1) 課題抽出
1)効率的な維持管理
高度経済成長期に建設された我が国のインフラ資本は、同時期に膨大な量の更新期を向かえる。これらの維持補修業務を全ての対象構造物に同じレベルで施すことは、現実的に不可能である。よって、維持管理業務をいかに効率的に行うかが課題となる。
■展開が遅い感じがします。「効率的な維持管理」とは基本姿勢のようなものです。それを具体的にどう実現するかを問われています。
2)技術者および技能労働者不足
少子高齢化が進んでいること、また建設業への入職者が少なっていることや、離職者の割合が大きいことなどにより、社会インフラメンテナンスの実務を行う技術者や技能労働者の数は不足している。少ない人的リソースでいかにメンテナンスを推進していくかが課題となる。
■問題点の再確認に留まっています。真の課題は他にあることを理解しましょう。
「・・でいかに〇〇していくかが課題である」という文では肝心の内容が表現できません。つまりそこから先が技術士の答えです。
3)廃棄資産の処理
老朽化した社会インフラの多くはコンクリート構造物である。その更新作業により大量のコンクリート殻が発生する。これらの再利用技術は進歩し、リサイクル率は高まっているものの、建設副産物が全く発生しないことは有り得ない。そこで、いかに環境に負荷をかけずに社会資本メンテナンスを行うかが課題となる。
■「いかに・・」文の真意を具体的に表すようにしましょう。
4)地方自治体の財政難
公共機関や地方自治体の財政難が叫ばれている中、メンテナンス事業に関する予算が減少しているのが現実である。少ない財源でいかに維持管理を行っていくかが課題である。
(2) 最重要課題と解決策
前項で挙げられた課題の内、「効率的な維持管理」を最重要課題とし、解決策を挙げる。
1)選択と集中
■方針、政策のみにならないように、技術内容を述べましょう。
社会インフラのストック効果として、エンドユーザーの、①安全・安心の確保、②生活の質の向上、③生産性の向上がある。これらの効果を数値化・見える化し、メンテナンス効果の高い物から優先的に整備を行う。一方で、ストック効果が低い資産については、そのまま放置するか、廃棄するなどの対応がとられる。この様に、めりはりを付けて管理することで、効率的な維持管理が可能となる。
2)新しい技術の活用
超音波や電磁波を利用して点検作業を行うことにより、効率的に作業を行うことができる。さらに、この作業自体をロボットなどで無人化すれば、安全面での課題もクリアすることができる。
■技術応用はOKです。しかし、新しければよいというものではないことを理解しましょう。
また、画像解析技術の向上により、微細なクラックを発見することが可能になったことや、ドローンからの映像を利用して、対象インフラを含む地域全体の継時的変化を把握することができる。
さらに、施工時の情報や補修履歴をデータ化して蓄積し、そのビッグデータをAIが活用し、保守点検などのスケジュールを効率的に管理させれば、今までの技術者による管理の負担が大幅に軽減される。
3)民間企業の参画
■漠然とした方針にならないよう、PFIなどの提案をしましょう。
社会資本整備事業は永らく、計画・実施または費用面でも公共機関が主導で行われてきた。しかしながら、
民間企業が社会資本整備事業をビジネスチャンスと捉えるならば、利益を追求し、どこに資金や人材を投入するか、極めて効率的に行われることが期待される。
(3) 新たなリスクとその対応
ストック効果が小さい社会資本については廃棄される可能性が高く、そのインフラの使用者に対し、代替のプロポーザルも含めて丁寧に説明する必要がある。
■趣旨を読み取りましょう。
求めているのは2の提案内容に対するリスクです。一般論にならないように気を付けましょう。
(4) 必要とする要件
■問4の問題趣旨から推論して、出題者の趣旨を読み取る練習が必要です。
建設事業は公共性が高く、常にエンドユーザーの安全・安心を第一に考えなければならない。さらに、インフラを整備して終わりではなく、それらを安全に長期間、維持管理し続けられるように取り組む必要がある。これらの倫理思想を持ち合わせていることが必要であるとすると、技術者倫理を保証する「技術士」資格を保有していることを要件とすることが望ましい。
また、インフラの補修技術は日進月歩で進歩を遂げており、常に知識のアップデートが必要である。担当技術者が常に継続研鑽(CPD)することが、社会の持続可能性で必要となってきており、この点においても「技術者」の資格を保有していることを要件とすべきである。
■書かれているのは漠然とした技術者の責務に留まっています。
この業務において、技術者倫理・社会持続性を高める要件を述べましょう。
Ⅱ−1−4
鉄筋コンクリート構造物の劣化機構について次のうちから2つを選び、それぞれについて、劣化現象を概説せよ。また、選んだ劣化機構について、劣化を生じさせないよう事前に取るべき対策を各2つ以上述べよ。
① 中性化 ② 塩害 ③ 凍害 ④ 科学的浸食 ⑤ アルカリシリカ反応
① 中性化
通常コンクリート内部はアルカリに保たたれているが、時間の経過と共に、コンクリート表面やひび割れなどの不具合箇所から二酸化炭素が侵入し、内部を中性化する。これにより、アルカリで被覆されていた鉄筋が腐食して膨張し、結果としてクラックを発生させることで、コンクリートの耐久性を著しく低下させる。
対策としては、(a)コンクリート配合の水セメント比を小さくし密実なコンクリートにすること、(b)施工時に、鉄筋のかぶりを十分に取ること、(c)コンクリート表面を塗装し、二酸化炭素の侵入を防ぐこと、などが挙げられる。
■良く書けています。
⑤アルカリシリカ反応
コンクリート中のアルカリ成分と、骨材に含まれているシリカ化合物が反応してゲルを生成する。このゲルが水分を吸収し膨張することで、コンクリート内部にクラックを発生させたり、はく離を生じさせたりする。この反応により、コンクリートの耐久性は著しく劣化する。
対策としては、(a)コンクリート内のアルカリ総量を3.0kg/m
3
以下に抑えること、(b)使用予定の骨材をサンプリングして試料を採取し、シリカ化合物の含有量を測定する。その結果、規定の上限値を上回る量を含むという結果が出た場合、骨材の産地を変更し、アルカリシリカ反応の被害を未然に防ぐことを対策とする。
■良く書けています。
見出しの下のアンダーラインは効果がないので無くした方が良いでしょう。
Ⅱ−2−1
図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域無内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、堤内地は耕作利用されており、現場へのアクセス可能な道路は無いものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。
(1) 検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2) 業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3) 業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。
(1) 検討事項
1)現場へのアクセス道路
■いきなり対策が書かれています。しかし、要求は調査、検討すべき事項です。性急に対策を考えるのではなく、落ち着いて分析しましょう。
見出しの下のアンダーラインは効果がないので無くした方が良いでしょう。
河川両岸からはアクセスできないため、現場へのアクセス道路を河川内に川に沿って造成することとする。検討事項は、仮設道路天端高さを工期内の最高河川水位以上に設定することである。また、盛土法面浸食防護のために、土のうを設置するものとする。
2)橋脚フーチング施工時の仮締切り工
橋脚フーチングの設計高さが河川水位より低いため、土留めを兼ねた仮締切りが必要となる。完成時には撤去しなくてはならないので、引抜き可能なものとして鋼矢板の使用を検討する。掘削深さ、土質性状、河川水位を考慮し、切梁の段数などを計算する。継手からの湧水は内部に釜場を設けポンプ排水することとする。また、礫などが存在し矢板の打設が困難な場合を想定し、ジェット併用工法を準備する。
(2) 業務手順および留意点、工夫点
1)施工計画の策定
■事務的な流れではなく、現場の取り組みになるようにしましょう。
ここは具体的な施工の手順が求められています。
① 仮設道路建設、②河川水対策,③橋脚施工といった流れで述べるようにしましょう。
仮設計画は、前述のアクセス道路造成や仮締切り工などを計画する。また、橋脚躯体施工時に足場を設置するので、その計画も行う。仮設設計結果は必ず第三者機関に照査してもらう。また、本設工の計画では、橋脚の鉄筋・型枠・コンクリート工の他、構造物の埋戻し方法も計画する。
2)施工管理
品質管理、出来形管理、工程管理、安全管理、原価管理を行う。施工中、仮締切り工の動態観測や、河川水位のモニタリングは継続して行う。
3)検査・引渡し
■特に本題に関係ないことで解答には不要です。
工事完成時には引渡し検査を行い、竣工図書を作成し、発注者への申し送り事項も含め提出する。
4)工程管理上の留意点・工夫点
施工時期が、河川水位が低下する乾季中になるように発注者と協議を行う。また、工程が遅延した際の挽回策としては、橋脚のコンクリート工のサイクルタイムを短縮するために、型枠のセット数を増やすことを検討する。
(3) 調整事項
■(2)に書かれていたことをどう推し進めるかという趣旨です。
いきなりCIMでは話が通じなくなり、一貫性を無視すると専門家らしさまで失うなってしまいます。
内容的に難しいものではありませんので、プロマネの貢献が求められていることを理解しましょう。
着工前および施工中に近隣農家への説明が必要となる。説明時にはCIMによる3次元画像を用いることによって、その効果を視覚的に判り易く説明することが可能となる。また、施工中における協議ではドローンからの映像を用い、現場周辺を含めた地域全体の継時変化を視覚的に把握することが可能となる。
重要な点は、協議はこちらからの一方的な説明に終始するのではなく、先方の意見や要望事項を聞き入れ、双方向の情報発信や意見のやり取りが生まれるように留意することである。これが、業務を効率的、効果的に進めるための調整方策となる。
Ⅲ−1
我が国は人口減少局面にあることに加え、総人口に占める高齢者の割合は増加しており、他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか、全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では、今後の地域社会の維持管理・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ、施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当たって,多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(1) 課題抽出と分析
1)人員の不足
■「・・でいかに〇〇していくかが課題である」という言い回しでは肝心の内容が表現できないことを理解しましょう。つまりそこから先が技術士の答えになります。
こうした問いかけや、問題点の記述に終始していると、回りくどいという印象を与えかねません。ここは積極的に「〇〇を〇〇する」と提案するようにしましょう。
過疎地域では高齢化が進んでいる一方、新たに建設産業に入職する技術者も少子化・理科離れの影響で減少している。それに伴い、インフラの維持管理・更新の実務を行う技能労働者も不足している。少ない人員でいかに整備事業を行うかが課題となっている。
2)フロー効果が小さい
過疎地域に残存する社会資本インフラは、その利用者数が少ないため、フロー効果が小さくなる。よって整備・更新の優先順位がフロー効果値で決まる場合、優先度は低くなり、維持・更新はしないという判断が下される場合もある。
3)施工機械の不足
過疎地域においては新規工事の出件もほぼ無く、地元の中小建設会社が保有していた機械は殆ど売却されているため施工機械が残っておらず、実作業を行うには困難になっている。実施に際し、いかに必要機械を調達するかが課題となる。
4)地方自治体の財政難
公共機関や地方自治体の財政難が叫ばれている中、メンテナンス事業に関する予算が減少しているのが実情である。歳入が少ない地方自治体でいかに維持管理を行っていくかが課題である。
(2) 最重要課題とその解決策
前項で挙げた課題の中から最重要課題として、「人員の不足」を取り上げる。
1) 省力化
超音波や電磁波を利用して点検作業を行うことにより、効率的に作業を行うことができる。さらに、この作業自体をロボットなどで無人化すれば、省力化は基より安全面での課題もクリアすることができる。
また、画像解析技術の向上により、微細なクラックを発見することが可能になったことで、今まで専門の技術を持つ人員に依存していた業務計画の自由度が大幅に向上する。
次に、ドローンからの映像を利用して、対象インフラを含む地域全体の測量を行うことは、今まで膨大な労力と時間を費やしてきた地形測量からの解放を意味する。
さらに、施工時の情報や補修履歴をデータ化して蓄積し、そのビッグデータをAIが活用し、保守点検などのスケジュールを効率的に管理させれば、今までの技術者による管理の負担が大幅に軽減される。
■良く書けています◎
2)外国人労働者の活用
積極的に外国人労働者を活用することは、労働力不足解決のひとつの解決策となる。以前は「技能実習生」というカテゴリーであったが、2019年4月、新たに「特定技能」制度が設けられ、建設労働者も加わった。
外国人による、インフラの維持管理・更新の専門グループを作り、全国に派遣できるシステムが構築されれば、それは解決策のひとつに成り得る。
■良く書けています◎
3)民間企業の参画
社会資本整備事業は永らく、計画・実施または費用面でも公共機関が主導で行われてきた。しかしながら、
民間企業がインフラ整備事業をビジネスチャンスと捉え、PPP/PFIなどを利用して、事業資金のみならず保有する技術や労働力を提供する場面が増えれば、人材不足の解決策となる。
■良く書けています◎
(3) 新たなリスクとその対応
省力化施工、外国人労働者の登用、民間企業の参画は、若手技術者の技術力の低下をもたらす懸念がある。土木工学は「経験工学」とも呼ばれるように、実地での経験が重視されるフィールドである。ものごとが簡素化され、その現場経験値を得る機会が損なわれることは大きな損失となる。
よって、若手技術者や外国人労働者の現場OJT教育を充実させることが重要となる。その際の教育内容は、経験者がノウハウ・施工経験をフィードバックする、技術伝承的要素が必要となる。機器やシステムの単純な操作ミスに起因する、深刻な品質事故・災害事故は絶対に避けなければならない。
また、技術士に必要な要件として、ある一定期間の現場OJT経歴を加えれば、技術者ライセンスとしては、より信頼できるものになると思う。
■良く書けています◎