H29年 建設部門、施工・積算の答案について合格判定しました。
問題
Ⅲ−2 建設産業には,安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの,今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており,建設現場の生産性向上は避けることのできない課題である。そのため,国土交通省においては,産学官が連携して,生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるよう,i-Constructionに取り組んでいるところである。
他方,政府においては,一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するため,働き方改革にチャレンジしている。建設業は他産業と比べて厳しい労働環境にあり,小規模な企業の技能労働者を始めとして,働き方の改善が喫緊の課題となっている。
これらを踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で,建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ,その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題の解決に向け,あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ取り上げ,適用できる場面と具体的な利用方法,及びそれによって得られる改善効果を,事例を挙げながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるため,雇用や契約制度等に関して改善すべき事項を取り上げ,あなたの考えを述べよ。
音声ガイドによるコーチング指導内容(17分9秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
1. 働き方改革を考える上で、建設業が抱える慢性的
な課題を3つ挙げ、その背景も含めて説明する。
(1) 課題:技能労働者不足
近年の建設投資の減少により、建設企業が倒産するなど、技能労働者の離職が進んでいる社会的背景により、技能労働者の不足が慢性的な課題となっている。
(2)課題:建設産業の将来を担う若い担い手不足
技能労働者の減少が進む中、高齢化が進んでおり、今後大量の離職が見込まれる。又、建設産業の処遇が進んでいないことなどから、若者が入職を避けるようになっていること。これらの背景により、建設産業の将来を担う若い担い手の確保が喫緊の課題である。
(3)課題:急増する老朽化施設の維持管理・更新
今後、高度成長期に多く作られた施設・インフラ等が急速に老朽化する中、現在の事後保全型の維持管理方法では、対策が大掛かりで多大な費用を要するため、建設投資が縮小し、建設産業の労働人口が減少する中、限られた人材・財源で効率よく社会資本の品質確保と維持管理をしなければならない。これらの背景より、今後、我が国の経済発展に資する社会資本の効果的な整備を図るため、建設生産システムにおける生産性の向上を推進することが喫緊の課題である。
2. 問題(1)で挙げた課題解決に向け、施工計画・
施工管理を専門とする技術士として有効と考えるĪ−Constructionの方策を1つ取り上げ、適用できる場面と具体的な利用方法、及びそれによって得られる改善効果を、事例を挙げながら説明する。
(1) Ī−Construction方策:自動化施工技術
(2) 適用場面:
急傾斜地での土工事施工や橋梁の点検、維持管理等の人力では施工の難しい場所に適用する。
(3) 具体的な利用方法:
① 急傾斜地での土工事:3次元データ等によって
ICT建設機械を自動制御して無人化施工を行う。
② 橋梁の点検、維持管理:ドローンなどによる3次
元測量や写真撮影、自動制御による点検、補修を行う。
(4) 得られる改善効果:
補助的な労務量の減少や、仮設業務の減少により生産性が向上し、1日当たりの作業量が向上する。又、自動化施工により労働災害の削減にも寄与すると考える。
3. 建設部門の働き方改革を効果的に進めるため、
施工計画・施工管理を専門とする技術士として雇用や契約制度等に関して改善すべき事項を取り上げ、考えを述べる。
(1) 改善事項:技能労働者の処遇改善
① 若者にとって魅力ある建設業を目指し、処遇改
善を徹底する。そのために、現場の労働者に適切な賃金水準が確保されるよう、労務単価の上昇分が確実に技能労働者に支払われるように取り組む。又、社会保険加入促進に取り組む必要がある。
② 建設業における休日の拡大を図る。若者が働き
やすい職場づくりのため、適正工期の確保等を通じて週休2日をはじめ休日の拡大実現に取り組む必要がある。
(2) 改善事項:契約条件の改善
① 契約工期についても、労務の集中しないよう平準
化させ、週休二日を前提とした工期設定に、発注者への理解を含めて取り組む必要がある。