H26年 建設部門、道路の答案について合格判定を致しました。
音声ガイドによるコーチング指導(30分6秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
1. スマートインターチェンジの特徴
スマートインターチェンジは、高速道路のS.AやP.Aに設置されるものである。高速道路へのアクセス制を向上させ、利用者の利便性を高め、既存の高速道路を有効利用する。インターチェンジを建設することなく
設置が可能であるため、予算上の制約を受けにくい。
また、アクセス性に優れるため災害時の避難路としても有効である。
2. 導入の際の留意点
1)アクセス道路の整備
スマートインターチェンジの設置に当たってはアクセス性を向上するために、S.AやP.Aへのアクセス道路の整備が必要である。一般道路を改良し拡幅や新設、交差点改良等が必要である。整備に当たっては、既存交通量、大型車の流入等を検討し、道路構造を決定する必要がある。
2)スマートインターチェンジついての案内表示
導入に当たっては、案内表示板を設置する必要があるが、各道路管理者からなる標識委員会等に図り、有効な案内表示ができるように検討することが必要となる。
■「有効な案内表示ができるように検討」とはどういうことか。具体的にどうすべきか、提案内容がわかりません。
問題 Ⅱ-1-4
植物によるのり面保護工と構造物によるのり面保護工について,各々の概要を述べよ。また,のり面保護工の選定に当たって考慮すべき事項を述べよ。
1.植物にのり面保護工の概要
切土部において安定勾配を確保したのり面において、
降雨による浸食や風化を防ぐため植生によるのり面保護をおこなう。植物の種類は、外来植物や在来植物がある。
2.構造物によるのり面保護
斜面において、表層の極浅い部分の崩壊が懸念される場合に構造物によるのり面保護を行う。のり枠工が代表的な工法であり、プレキャスト、現場打ち等がある。景観や環境等を考慮し枠内の緑化等をおこなう。
3.選定にあたり考慮すべき点
1)植生によるのり面保護
植物の選定にあたっては周囲の環境、土壌の硬度・PHや景観、植生の期間や周辺植物の侵入等を考慮する。
のり面の土壌硬度、PH等に応じて、厚層基材吹付け工法やシート張り工法等の工法選定をおこなう。
2)構造物によるのり面保護
のり枠の選定にあたっては表層の崩落を考慮し安定計算を行い、プレキャストや現場打ちといった工法を採用する。斜面の土質状況や周辺の環境を考慮し、枠内での植生を行うか否かの検討を図る。
■Ⅱ - 1 - 4は内容として問題ありません。十分、合格点を取れています。
問題 Ⅱ- 2 - 1
我が国の道路構造物は,今後,補修や更新を行う必要性が急激に高まってくることが見込まれており,維持管理の業務サイクル(メンテナンスサイクル)の構築が 極めて重要である。維持管理の担当責任者として,下記について述べよ。
(1)道路橋における代表的な損傷原因である疲労,塩害,アルカリ骨材反応のうち2つについて,各々の概要
(2)メンテナンスサイクルの構築に必要な基本的事項が法令上位置づけられたことを踏まえ,点検,診断,措置,記録のうち点検,診断の段階で,各々実施すべき対応
(3)メンテナンスサイクルを持続的に回すために,体制,技術各々の観点から見て必要と考えられる仕組み
1.道路橋の損傷要因
1)アルカリ骨材反応の概要
アルカリ骨材反応は、ひび割れ等により侵入した水が骨材に含まれるアルカリシリカと反応しアルカリシリカゲルとなり、骨材が膨らむことによりひび割れを促進させる。水の侵入が要因となっている。
昭和40年代から50年代前半に建設された構造物に多く見られる。
2)塩害の概要
ひび割れ等により侵入した塩水に含まれる塩化物イオンが鉄筋を腐食させ鉄筋コンクリートを劣化させる。
海岸部にある橋梁のみならず、山間部において降雪があるため凍結散布剤を使用する橋梁にも見受けられる。
2.メンテナンスリサイクルの各段階での対処
1)点検
点検においては、遠方目視での点検ではなく、近接目視による点検を行い、さらに必要であれば、ひび割れ幅の確認や点検ハンマー等による触診点検も行い詳細な状況を把握する。実施期間は法令に定められた期間も遵守するとともに、日常点検において異常が認められれば、緊急点検を行っていくことも必要である。
また、水の影響により構造物に多大な損傷を与えることから、漏水等の水の侵入個所についても十分に調査を行う。
2)診断
診断にあたっては、点検結果をもとに、ひび割れや疲労により損傷している構造物の部位を、構造物の特性から原因を究明するとともに、長寿命化のための措置につながるように診断をおこなう。
■「長寿命化のための措置につながるように診断」とはつまりどういうことか。具体的にどうすべきか、提案内容がわかりません。
3.メンテナンスリサイクルの仕組み
1)体制
構造物の長寿命化を図るためには、十分な予算を確保するとともに、施工歩掛りの見直し等を行い、修繕工事が円滑に進むように配慮する必要がある。
■「体制」とはこのような方針ではなく、組織をどうするかです。
また、点検にあたっては、診断のできる技術者を養成していく必要があり、研修や資格等の充実が求められる。日常に点検できる技術者、専門性を持った技術者、さらに高度な専門性をもった技術者と3段階に分け対応するシステムの構築を検討する必要がある。
■なぜ「3段階に分け対応する」のがよいのか。3段階に分ける意義は何か。その様な趣旨を説明してください。
2)技術
より正確な点検ができるように、点検困難個所にも進入できるロボットによる点検技術やより精度の高い非破壊検査ができる技術開をを推進していく必要がある。
■具体的に「非破壊検査ができる技術」とは何のことを指しているのか。物資探査等の具体的技術名を挙げる。
問題 Ⅲ−2
近い将来に,首都直下地震,東海・東南海・南海地震の発生が予想されているが,こうした大規模地震災害に備える上で,道路に関わる技術者の立場から,以下の問いに答えよ。
(1)大規模地震災害が発生した場合における道路の役割について,東日本大震災の経験を踏まえ,多面的に述べよ。
(2)(1)で述べた役割のうち,1つを取り上げて,それを果たすための課題及びその解決策について述べよ。
(3)(2)で述べた解決策について,実効性をより高める上での留意事項を述べよ。
1. 大規模震災時の道路の役割
1) ネットワークとしての道路
東日本大震災においては、東北自動車道によるネットワークとして、くしの刃作戦と呼ばれる太平洋沿岸被災地へのアクセスにより迅速な道路の啓開や、救援・救護や救援物資の迅速な対応が可能であった。あらためて、ネットワークとしての道路の重要性が明らかになり、災害時において、道路は十分な役割をはたした。
2)津波を防護する機能
高速道路の盛土部においては、陸部を遡上する津波に対して、防護する役割を担う。
又、避難する人に対して高台への移動を可能として人命を救った。
道路の盛土部は、津波の遡上を防ぎ、高台への非難を可能とする防災機能がある。
3)防災空間としての機能
道路はネットワークとして確保されることにより避難路としての役割を担う。また、市街地においては地震時に起きる、建築物の延焼を防ぎ安全な地区への非難を可能とする。
防災空間としての機能を発揮することにより救援・救護や救援物資などの人や物を迅速に確実に移動させることにより、道路の早期啓開や人名救助に向けて道路は大きな役割を果たす。
2.ネットワークとしての道路の役割における課題と解決策
①高速道路においては、ネットワークを寸断するミッシングリンクの解消を図らなければならない。
そのためには、国民に対してネットワークにつながっていないことによる損失についての説明を十分に行い予算を確保することにより、ミッシングリンク区間の早期の整備を進めることが必要である。
■「ミッシングリンクの解消」とはすなわち、新規の道路を作ることであって、それは国土交通政策によって行われます。また政策は、国民の支持によって決まります。ですから技術者が簡単に提案できる事項ではありません。たとえ官僚であったとしてもです。
また「国民に対して説明を行い予算を確保する・・」とはすなわちロビー活動みたいなことで、技術士が提案すべきことではありません。
②道路防災にあたっては、ネットワーク路線の弱部において、斜面や盛土の崩壊により寸断される危険性がある。
そのため、防災点検や調査により弱部個所を定め、斜面対策や軟弱地盤対策を進めて聞く必要がある。
③災害時ネットワークの整備にあたっては、ネットワークとしての経路を定めなければならない。
そのためには住民への説明責任をはたして行く必要がある。ネットワーク経路の決定にあたっては、道路管理者のみならず関係行政機関や沿線関係住民を含めた協議会を設けて広範な合意を図っていく必要がある。
特にネットワーク路線から外れた地区等については、災害時に孤立化を避けられよう対応策を検討しておかなければならない。
■何をどうするかが示されていません。ただ話し合いのみ・・では技術士の提案になりません。
④震災時に橋梁が落橋しないように、耐震補強を推進することが必要である。
⑤防災空間としての機能を高める必要がある。
そのため市街地においては、無電柱化や都市整備計画とも連携し道路の拡幅を図っていく必要がある。
3.実行性を高める上での留意点
道路ネットワークについては、信頼性や円滑性を高めると言った観点から、ミッシングリンクの解消、道路における弱部への対処、構造物の補強等を進めていかなければならないが、やみくもに対応していけば、効果が出にくいこととなる。対策については優先順位を決め、関係住民への説明を十分に行いながら進めていくことが重要である。
■困難で難しいことです。闇雲にやってはいけないに決まっています。結局、提案は「説明」しかないようです。
また、都市部における災害時のネットワークの確保については、防災空間としての役割も十分に果たすために、都市計画事業とも連携し対応を進めていく必要がある。
■「都市計画事業とも連携」とはつまりどうするのか。
解説
提案内容に書かれていることの中身は、当たり前にやるべき事項、制約事項が多いようです。これでは提案の意味がありません。
技術士の提案ですから、効果や性能、経済性が高まるような、かつ建設・道路の技術応用で成果が表れるように提案すべきです。自由形式の解答から、試験官はそのようなコンピテンシーの視点が受験者に備わっているかどうかを測っているのです。