2018年4月2日 船舶海洋部門、海洋空間科目の方の電話によるコーチング指導
この日のコーチングによる指導時間は19時00分から、1時間20分間行なわれ,その受講者様は船舶海洋部門、海洋空間科目を目指す方で、居住地、東京から電話を用いて相談されました。サブシー防噴装置の長期保全用防錆処置工事についてです。この装置は何を目的として製作されたのか。今回その成果は得られているのかといったことが焦点となりました。
業務内容の詳細にを検討するための講座のフォーマット「技術的体験チェックシート」は次のように書かれていました。
2. 立場 (指導監督的立場がわかるように)
品質管理の責任者として、施工の計画立案と管理を行った。
3. 業務概要(物件・対策の概要、自分の成果・貢献を宣言する。)
① 物件の規模、仕様、難易度等
漁業盛業期間中の港湾内に停泊中の作業船上
② 応用技術(技術名)
大水深油圧制御技術、防錆技術 ここでは海洋関連がメインとなるようにしてください
■講師コメント ↑これはどこに応用しているのか。応用とは判断、実行、成果を得ることを指します。
③ 自分の貢献(〜を〜したこと)
海上〇〇装置維持管理の低コスト化と長寿命化
④ 成果 (コストダウン、品質向上、リサイクル、環境負荷低減、安全性向上など)
油圧回路を用いた薬液循環による工事費用総額50%削減、薬液排出による汚染防止
4. 技術的問題点と解決方法
4-1 技術的問題点(目標と現実の差、被害、望ましくない状況。業務課題ではない)
① 海水や潮風の影響により、電飾防食は効果が早くなくなる。また、回路内部の防錆処理も含まれるため、塗料を使用できない。
■講師コメント このような制約があるなら、普通はどう対処しているのか。従来法は?
② 緊急事態に仕様する危機であり作動時間が最小限になるよう設計されているため使用後の作動液は全て船外へ排出される設計になっている。
■講師コメント このことの何が問題なのか意味不明です。成り行き的にそうなっているなら従えばよいだけです。
③ 解放回路から循環回路への恒久的な改造は国際規格により禁止されている。
■講師コメント では普通はどう対しているのか。従来法で問題なく処理できるのでは?
4-2 解決策(技術的提案、4-1を改善に導いた方策)
① グリコールを防錆剤として使用する。
です
■講師コメント この薬剤の使用に際して難しい点は何か。提案の技術応用はどこにありますか?
② 薬液の海洋への排出抑制と船上での保管量制限を解消するため、開放系を循環系に変更し薬液を回収、再利用する。
■講師コメント 保管量制限を解消するとはどういう趣旨か?
③ 復旧可能な範囲で解放回路を35MPaの耐圧構造を持つ循環回路へ改造し、施工後に開放系へ復旧する。
■講師コメント 開放→耐圧→開放 この意味がわかりません。②③は同じことのダブりです。
4-3 苦心して工夫したこと(解決策を検討、遂行する上で工夫した事、アイデア、考察)
① 耐圧の向上と柔軟性のトレードオフを、据付の固定配管と高圧用ホースを組み合わせた回路を考案することによって両立し、復旧作業時間と工事費を節約した。
■講師コメント トレードオフ? つまり耐圧ホースさえあればできることではありませんか?この両立はそんなに難しいことですか。
② 流量調整機構と減圧機構を組み合わせた回路により、性状判定用の薬液の採集と基準外の薬液の分離を安全に行えるようにした。
■講師コメント やったことの目的と手段、結果だけがかかれています。これは工夫の説明なのか、記述されている意味がわかりません
5. 解決策の妥当性(業務に対する評価、改善効果、目標到達度も書く)
5-1 独創性、先駆性はあるか(独自性がある。ただ単に「他事例がない」ではだめ)
海中で使用する機器の防錆を電極、脱気、塗装以外の手段で行なった。
5-2 応用性、汎用性はあるか(同技術のマーケットの大きさ、市場貢献可能性)
〇〇作業船に必ず設置されている〇〇装置で適応できる。海洋開発用の施工機械の増加に伴い需要が見込まれる。
5-3 経済的評価(事業主、クライアントの利益(省エネ量、もうけ、節約金額)
業界全体で薬液の需要が上がり入手困難になる可能性があるので、回収効率の改善が重要。
工場への輸送費用、薬液の運搬費用、保管倉庫の賃料、廃棄費用も抑制できる。
5-4 環境保全効果
使用した薬液は適切な処置を施してから廃棄するため環境への影響を最小限に抑えることができた。
6. 現時点での評価(技術や社会情勢の変化、自分のレベル向上を考慮した上での反省点)
下の1〜4の文に当てはめて書いてください。
1 失敗したことは、注入後の薬液の汚染であった。
2 この原因は、薬剤と作動液のグリコールの濃度である。 濃度がどうしてか?
3 この事態に至ったのは、グリコールとラバー製品の反応性に対する判断を誤っていたことが原因である。 化学的知識の欠如では?
4 これにより得られた知見は、グリコールによる金属の腐食防止とパッキンの劣化速度の変化である。
■講師コメント 部品、材料のレベルにとどまっていて、海洋工学の技術を高める知見にはなっていません
7. 現時点での改善策(最新の解決方法、法規制、コスト安、海外輸入品など)
水とグリコールの混合物とパッキンが反応し、油圧よりもパッキンの劣化が早い報告が最近になった報告され始めている。対策案としては耐水性の高いパッキンへ交換と反応性の低い薬液の開発がある。薬液の反応性が低いことは生体への影響も抑制される効果が期待される。
8. 技術的課題、将来展望(まだ残っている改善すべき点、今後の動向予測)
海洋・深海底開発技術の進歩が要求されておりそれに、伴って海底に降下する機器の保全に関してさらなる経済性と簡略化が必要である。
業績の問題点、解決策、今後の課題など一通り書いていただきましたが、結論として得られた知見は業績の本質的な物とはなっていませんでした。これでは技術マネージャー物の一貫性を疑われかねません。当初計画したことと、実際に取り組んだこと、それから完成後に検証したこと、これらは一直線上に並ぶことによって専門家らしい一貫性が打ち出せるのです。もしこれがその時々の成り行きで、技術の視点はバラバラとなったしたら、一貫性を持たないただの下請的な作業者と受け取られてしまいます。
本研究所では技術的体験チェックシートによってエンジニアの業績を隅々までチェックし、貢献や成果を明らかにするとともに、最終的に打ち出された受講者様の業績が技術士にふさわしいものであるかを確認し、もし不十分と考えられた場合は改善を指導しています。その時、なぜ答案の記述が技術士にふさわしいものと言えないのか、といったコンピテンシーの尺度についてもケースバイケースでわかりやすくご説明しています。このためご自身では業績の中の何処が技術士にふさわしいといえるかわからない方でも、コーチング指導によって、試験官から見た場合の評価は明確にわかるようになり、自信を持って口頭試験に臨めるようになります。