H29年 建設部門、鋼コンの答案について添削致しました。
この答案についての講評
見識問題のⅡ−1は比較的点が取れているように感じます。一方、応用問題となるⅡ-2では設問で要求されてることが答えられていません。問と答えが一致しない、まるで別な問いに答えているような感じがいたしますので、これでは減点されても仕方ないという気がいたします。正式な解答法を学ぶ練習法として、問いの文章に対してどのような回答文で答えたらよいかをきっちり練習されることをお勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(18分41秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-5
プレストレストコンクリート構造物特有の初期欠陥を1つ挙げ、その発生原因と構造物に与える影響及び設計・施工両面からの防止策を述べよ。
(1)初期欠陥
初期欠陥としてグラウト充填不足を挙げる。
(2)発生原因と構造物に与える影響
グラウト充填不足は、充填後に空隙ができやすいケーブルの曲げ上げ頂部に発生する。
充填不足からPC鋼より線が錆びて破断し、所定のプレストレスを確保することが難しく、構造物の性能を著しく低下させる。
■問では、発生原因が求められているのにもかかわらず、グラウト充填不足の成り行きの説明に終始して原因が書かれていません
(3)設計・施工両面からの防止策
①設計面からの防止策
ケーブルの曲げ上げを急に行うと、曲げ上げ頂部でグラウト充填後に空隙ができやすい。
ケーブルの曲げ半径をR=10m以上と緩やかにすることにより空隙を小さくすれば、グラウト充填不足は解消される。
②施工面からの防止策
グラウトの充填確認は、コンクリート内部のことなので、目で確認することは難しい。
空隙ができやすい曲げ上げ頂部にグラウト充填を確認できるセンサーを設置することにより、確実なグラウト充填を行うことが有効である。
■ここの内容はOKです。
Ⅱ-1-6
コンクリート構造物又はコンクリート部材に短繊維を使用することによって得られる効果を2つ説明せよ。また、どちらか1つの効果について、その効果を得るために使用される短繊維の種類と特徴、並びにその短繊維を用いた繊維補強コンクリートの製造上の留意点を述べよ。
(1)短繊維を使用することによって得られる効果
①はく離・はく落防止
②曲げ耐力の向上
(2)短繊維の種類と特徴
(1)①のはく離・はく落防止を目的に、短繊維の種類として、ビニロン繊維を挙げる。ビニロン繊維の特徴としては、長さは2〜3cmであり、コンクリートの外に飛び出ても錆びることはない。
(3)製造上の留意点
ビニロン繊維は、コンクリートミキサーの中に投入して練混ぜを行うが、一度に投入するとビニロン繊維がダマになって生コンクリートに均一に混ざらないことがある。
均一に生コンクリートに混ぜるためには、単位時間当たり一定の量のビニロン繊維を放出できる送風式の設備が有効である。
■ここの内容はOKです。やや文字数が少ないようです。「短繊維を使用することによって得られる効果を2つ説明せよ。」とありましたので、効果についての説明がされていればなおよかったです。
Ⅱ-2-4
今後の大地震の発生に備えて、コンクリート構造物の耐震補強が進められている。今回あなたは、1969年に竣工された設計図と設計計算が無いコンクリート構造物の耐震補強対策業務を行うことになった。基礎構造は対象外とし、下記の内容について記述せよ。
(1)想定したコンクリート構造物、注意すべき部材の破壊形態、目標とする耐震性能と照査方法
(2)構造物の復元方法、復元設計に必要な調査項目
(3)業務を進める手順、業務で提案する補強工法について設計・施工上留意すべき事項
(1)想定したコンクリート構造物
①プレストレストコンクリートT桁道路橋(橋長36.0m、幅員12.0m、主桁本数6本配置)を想定する。
②注意すべき部材の破壊形態
地震時に、支承部や変位制限装置(アンカーバー)が損傷し、縁端不足から橋桁が落橋する。
③目標とする耐震性能と照査方法
地震時には緊急輸送道路として利用することを想定し、レベル2地震動に対して落橋しないことを目標とする。
照査方法は、1.5×Rd(Rdは死荷重反力)を作用させて、橋桁部材の応力度が超過しないものとする。
(2)構造物の復元方法、復元設計に必要な調査項目
■ここでは、①構造物の復元方法、②復元設計に必要な調査項目と2つのことが求められていますので、この2つを見出しとしてそれぞれ表すように。
橋桁の部材寸法や橋面寸法(地覆、高欄、アスファルトの寸法)、落橋防止構造(桁かかり長等)の現地調査を行う。
また、建設当時の橋の標準図集から、コンクリートの内在のPCケーブル種類、本数、配筋図を想定する。
さらに、橋歴板から建設当時の活荷重の種類を確認する。同じ河川に架かっている橋の設計図書があれば、それも参考になるはずである。
そして、復元設計に必要な条件が整ってから復元設計を行い、その条件の妥当性の確認を行う。
(3)業務を進める手順と補強工法について設計・施工上留意すべき事項
■ここは2つのことが求められています。
業務を進める手順は何か。業務で提案する補強工法について留意点(設計・施工上)この順序で2つについてまとめるようにしてください。
回答の構成が異なると、この答案の答えではない、と判断されて大きく減点されます。
①手順と設計上留意すべき事項
現在の耐震設計を行った場合、縁端不足から落橋の可能性がある。縁端拡幅の設計を行う際、コンクリートで拡幅する場合や鋼製ブラケットを設置する場合がある。
どちらが施工可能であるか、橋台前面の施工スペースなどを把握して施工可能である方法で設計することが重要である。
また、現行の活荷重(T−25)では、主桁の応力度を超過する。特に、外桁の応力度を超過する場合が多く、外ケーブル工法で外桁を補強する場合が多い。
しかし、他桁に偏応力が作用し応力度を超過する場合には、外桁に小容量の外ケーブル工法を用いて他桁に影響を少なくすることが重要である。
②手順と施工上留意すべき事項
縁端拡幅工事では、橋台前面を削孔してアンカーボルトを設置する。
しかし、削孔中に橋台の鉄筋に干渉して所定の削孔長を確保できないとアンカーボルトの埋込み長不足になり品質不良となる場合がある。
これを防ぐには、設計段階から非破壊検査で橋台の鉄筋に干渉しない箇所にアンカーボルト設置位置を決定しておくことが重要である。
Ⅲー3
近年、建設業界においては、就労者の高齢化や若手入職者の減少等が課題となっている。また、社会資本の大規模更新や震災復興事業が増加しており、生産性向上が求められている。一方で、生産性向上と同時に品質確保が重要となる。このような観点から、以下の各設問に答えよ。
(1)コンクリート構造物の建設において、建設現場の生産性を向上させるための検討すべき項目を多様な観点から記述せよ。
(2)(1)の検討すべき項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示し、それぞれの具体的効果を記述せよ。
(3)(2)で提示した2つの解決策について、構造物の品質確保・向上の観点からメリットとデメリットを記述せよ。
1.はじめに
社会資本の大規模更新や震災復興事業が増加する中、就労者の高齢化や若手入職者の減少を上回る生産性の向上が求められている。
■このような前置きは不要です。
2.生産性を向上させるための検討すべき事項
(1)工事発注量の平準化
工事発注量は、下半期から年度末にかけて多く、上半期には少ない。
建設会社は、工事が少ない上半期に売上げ不足による経営難から人材を放出し、工事が多くなる下半期になると人手不足となり、生産性および品質を低下させている。生産性を高めるには、工事発注量の平準化が検討項目である。
(2)施工プロセスにおけるICT技術の導入
現場では、過密配筋による鉄筋干渉で、施工効率の低下や手戻りを生じていることがある。
これを防止し生産性を高めるためには、3次元データによる確認変更を設計段階から導入し施工に反映させる、施工プロセスにおけるICT技術の導入が検討項目である。
(3)部材規格の標準化
現場で施工するコンクリート構造物は、異なる土地、顧客の注文に基づく一品受注製品であり、設計・施工は複雑になりやすく非効率である。生産性を高めるためには、部材規格の標準化が検討項目である。
3.技術的課題と実現できる解決策と効果
(1)技術的課題
部材規格の標準化の代表でもある「部材のプレキャスト化」は、工場で施工に先立って生産され、また、現場作業や管理を省略化できるため生産性を高めることが可能である。
しかし、プレキャスト化は、プレキャスト部材の運搬費や重機損料がかかり、現場打ちコンクリートに比べ、初期建設費がアップすることから十分には普及していない。これをどのように普及・促進させるかが課題である。
■文章表現が回りくどいです。しかも問題点に触れるだけで、どう解決すべきかという課題が示されていません。
(2)実現可能な解決策と効果
①初期建設費を低減させた設計
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを利用し、部材の軽量化、長スパン化及びプレキャスト間の接合目地削減を、設計段階から取り組む。
その結果、運搬費や重機損料を低減させ、初期建設費を削減することは可能である。
②ライフサイクルコストを考慮した設計
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを用いれば部材の耐久性向上、長寿命化が可能となり、維持管理費の低減につながる。これをライフサイクルコスト算定に考慮して設計する。
その結果、現場打ちコンクリートに比べ、トータルでコストを削減でき、プレキャストの普及につながる。
4.品質確保・向上の観点からメリットとデメリット
(1)初期建設費を低減させた設計
①メリット
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを用いることにより、各種の劣化因子に対する抵抗性、品質向上を望める。
②デメリット
部材の軽量化により、新形式の接合方法検討など、性能指標の確率が急務である。
(2)ライフサイクルコストを考慮した設計
①メリット
ライフサイクルコストを考慮することから、どの時期に補修・補強するのか目安を付けることが可能である。さらに現場打ちコンクリートより確固たる高品質な製品を製造可能なので、品質面から劣化を予測しやすい。結果的に長期的に品質を確保することができる。
②デメリット
複合劣化に対する劣化予測については、劣化進行状況が複雑で予測しづらく、適切なライフサイクル算定を行うことが困難となり、適切な維持管理ができなくなる可能性がある。
複合劣化に対する劣化状況の継続的なデータを取得し、複合劣化予測の精度向上を進めるべきである。
私は、工場製品の生産技術者として、効率的に高品質な製品をこれからもつくっていきたい。
■このような決意は不要です。個人的な意見は求めていません。