H30年 電気電子部門、情報通信の答案について添削致しました。(1)
音声ガイドによるコーチング指導内容(23分44秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-1 LPWA(LowPowerWideArea)技術について、その主な特徴を3つ挙げ、この技術の用途について説明せよ。
解答
1.LPWA技術の特徴:図1に各種無線通信方式のマップを示す。
横に速度、省電力の軸、縦には通信距離の軸を示す。これからもわかるようにLPWAの特徴は、
①低速無線通信であること、②低速により省電力を図っていること、③広域な遠距離通信が可能なことである。

2.LPWA技術の用途
図2にLPWAを使ったシステム構成例を示す。

このように、次の用途がある。
①センシングデバイスへの搭載:LPWA通信モジュールをセンシングデバイスに載せてこれまで人の立ち入れなかった場所のデータをセンシングする、②データの収集:読み取ったデータをGWや基地局経由でデータセンタに集める。
集められたデータは分析され、経営課題、社会課題への対応を取るように使われていく。
Ⅱ-1-4
ネットワーク・スライシング技術について、技術の背景、機能、想定される適用例(ユースケース)の3項目を説明せよ。
解答
1.ネットワークススライシング技術の背景
5Gの無線通信では、①高速・大容量化、②同時多地点接続、③低遅延・高信頼化、④省電力化、といったことが求められている。これらを従来のベストエフォート型からギャランティ型サービスで提供する。そのためには、機能単独のネットワークではなく、有線、無線、そしてコンピュータリソースを仮想化して有機的につないでいく必要がある。
2.ネットワークススライシング技術の機能
図1にネットワークスライシングを使ったシステム構成を示す。

①ネットワーク仮想化機能:SDNスイッチ、仮想化サーバを用いてネットワークを仮想化する。②スライシング制御機能:ネットワーク機能を切り出してスライシングし、有機的な接続を制御する。
3.ネットワークススライシング技術の適用例
遠隔医療では低遅延な画像の転送と遠隔操作が必要となる。自動車の遠隔制御でも低遅延が求められる。これらにはネットワークスライシング技術を使っての利用シーンが適用される。
Ⅱ-2-2
約10年前に大型野外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、新しい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたがこの無線設備更新の担当責任者として業務を進めるにあたり、下記内容について記述せよ。
(1) 計画策定にあたって調査・検討すべき事項
(2) 業務をすすめる手順
(3) 業務を進めるにあたって留意すべき事項
解答
1.無線設備更新計画策定のための調査・検討事項
図1に新しく設置する無線LANシステムの構成を示す。各フロアに無線LANのAPを置きそれをL2スッチで集約し基幹のL3スイッチとつなぐ構成である。以下を調査・検討していく。

①トラヒック量:現行無線LANのトラヒック量を測り、今後増えていく入場者数から新無線LANへのトラヒック量を検討していく。
②伝送速度:現行無線LANの速度で十分か、お客様からの不満はないかなど調査していく。不足ならば速度を上げていく必要がある。
③通信エリア:建屋の室内からだけのアクセスで良いか、外からの通信の要求はないのかなどを調査し通信エリアを検討していく。現行システムで無線がつながりにくい箇所の確認も含めて行っていく。
④通信方式:上記に加えて無線区間のセキュリティを強化していく必要はないのか、現行の無線強度を検討し無線通信方式を検討していく。
2.業務を進める手順
(1)通信要件の策定:上記の調査・検討事項を整理しエンドツーエンドの通信を確保するための要件とする。
(2)設計:通信要件を基にネットワーク設計を行なう。ここで重要なことは、信頼性設計、性能設計、移行設計、運用保守設計といった非機能要件の設計も行うことである。更には、設計仕様に合う機器の調達を行ない、構築を進めていく。
(3)評価:設計仕様通りに機器が動作するかを評価していく。初期不良を抑え込むためのエージングや十分なテスト項目消化を行う。全ての機器をつないでの評価だけでなく、相手装置をシミュレートして想定外のデータの発生を行いその対処ができているかの確認も必要となる。
3.留意事項
(1)新サービス対策:顧客向け新サービスとしてコンテンツサーバからの情報配信を想定している。このサービスのフィージビリティについてはオーナーや現行無線LANシステム担当者と事前に確認しPDCAを回していくことに留意する。
(2)冗長化対応:信頼性設計の中で信頼度の高い部品を利用することはもちろん、障害は起きるものと考えてL2,L3スイッチについては冗長化しておく。故障によりサービスが停止しないためである。可用性の高いシステムにしていくことに留意する。
Ⅲー1
IoTや5Gの進展も相まって様々なシーンで多様な事象がデータ化され、収集されたデータを利活用することで、企業活動の効率化や新たな付加価値の創造、社会課題の解決に向かおうとする潮流がある。このため、今後ますます安心、安全に、膨大な量のデータを収集し、多様なネットワークインフラにまたがって流通させる仕組みが求められている。このような状況を踏まえて、情報通信ネットワーク分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1) 安心、安全なデータ収集・流通の仕組みを実現するための課題を、多面的な観点から抽出し分析せよ。
(2) (1)で抽出した課題の中で、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。
(3) (2)で提案した解決策に関連して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
解答
1安心、安全なデータ収集・流通の仕組み実現の課題題

図1には収集するデータの特徴とそれを流通させるための課題との対応を示す。以下に説明する。
①大量のデータ:世界中で日々ペタバイト級のデータが発生している。この大量のデータを安心安全に流通させるためには高速・大容量ネットワークを構築してデータ伝送させていく必要がある。(課題(A))
②多様なデータ:収集するデータはこれまで人の立ち入らなかった所のデータや従来の構造化データではなく非構造なデータも存在している。これらを流通させるには多地点で同時に発生するデータを収集し伝送していく必要がある。(課題(A)(B))
③変化の速さ:収集するデータは従来にない速さで変化している。遠隔医療や遠隔での車の自動運転では画像を遠隔で見ながら操作をすることになるが遅延は許されない。安心、安全なこれらのデータの流通には低遅延高信頼なデータ伝送が求められる。(課題(C))④信用度の範囲の広さ:匿名化されているデータはその信用度が下がるが、逆に匿名化されていないデータは信用度が上がる。この様に信用度の範囲が広い。しかし匿名化されていないデータには個人情報を含んでおり安心、安全な流通が阻害される。匿名化技術を更に高度化してデータを流通させていく。(課題(D))
2.最も重要な課題と解決策
私の考える最も重要な課題は、(B)多地点・同時接続への対応である。2020年にはIoTデバイスが300億個も普及しそこから発生するデータは膨大なものになるからである。そのための解決策を以下3点示す。
(1) LPWA技術
図2に多地点同時接続への対応を示す構成図を示す。

LPWAモジュールをIoTデバイスへ搭載し、遠距離多地点地点から同時に収集したデータを基地局、コアネットワーク経由でデータセンタへと送る。これまで人の立ち入れなかった所のデータも安心、安全に収集できるしLPWAモジュールは省電力化も図れており数年に一度の電池交換で済む。
(2) ネットワークスライシング技術
コアネットワークは、有線、無線、仮想化サーバ等で構成されるが、多地点同時接続のための要求だけではなく、高速・大容量通信や、低遅延・高信頼といった多様な要求への対応が求められる。そのためには、ネットワークのリソースを有機的につないで対応するネットワークスライシング技術が対応する。
(3) オープンスタック技術
安心、安全なデータの流通にはデータセンタ上のIaasにも影響を与える。その対応にはオープンスタック技術にて対応する。仮想化サーバ、仮想化ストレージ、仮想化ネットワークを構成するオープンソースを使って、変化の速いデータの分析のためにも迅速にIaas基盤を立ち上げていく
3.課題解決のリスクとその対策
(1)信頼性:新しい技術を使うには経験不足からくるシステムの信頼性の低下がリスクとなる。その対策は、信頼性の高い部品の採用や、標準化された部品やインタフェースを使う。また部品の再利用を行ない、そして、障害は発生するものと考えてのシステムの冗長化構成、十分な評価を行って初期不良を防ぐことである。
(2)セキュリティ:技術的セキュリティ対策は設計に折り込んでいくとして、物理的セキュリティ、人的セキュリティ対策の不足がリスクとなる。システムの運用経験不足だからである。その対策は、運用経験者とのレビューや試行運転によるノウハウの蓄積や吸収を行い設計に反映していくことである。