H30年 建設部門、施工・積算の答案について添削致しました。(2)
この答案についての講評
合格される可能性は十分ありますが、余白が大きいように感じます。予想問題をされないと、単刀直入な答えができません。このため、前置きが冗長となり、答えの中心が薄くなっています。提案の一部の例示に集中したり全体像をつかんでいないようです。答えの内容としては、要求事項すなわち問いに対して、具体的でかつ、汎用性があり、漏れがないようにすると良いでしょう。
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問題
Ⅱ-1-1 軟弱地盤上において,橋台の背面に盛土を計画する場合に留意すべき点を2つ挙げ,それぞれの対策工について概説せよ。
橋台の背面の盛土ではこのような問題が指摘されています。詳しくは公益財団法人鉄道総合技術研究所のページをごらんください 。
解答
軟弱地盤とは、主として砂またはシルトのような微細な粒子に富んだ柔らかい土で、間隙の大きい有機質土または泥炭、ゆるい砂などからなる土層によって構成され地下水位が高く、盛土や構造物の沈下に影響を与える地盤である。次に橋台の背面に盛土を計画する場合の留意すべき点と対策工について述べる。
1. 沈下
留意点:盛土部分の残留沈下により、橋台部分と盛土との間に段差が生じる。このため、将来の交通に支障をきたす。
対策工:深層混合処理工により現地盤を改良して、地盤強度の改善を図る。この工法は、セメント系改良剤の粉体またはスラリーを軟弱土と攪拌翼で混合を行い地盤を固結させ地盤を改良することにより、すべり抵抗の増加、変形の抑止、沈下の低減、および液状化防止を図る。
2. 軟弱地盤の側方変形
留意点:軟弱地盤が、盛土により側方変形を起こし、橋台に過剰な圧力をかけ橋台の横方向移動を生じる。
対策工:橋台の横に鋼矢板を打設し軟弱地盤の縁を切る。これにより橋台への土圧を低減させる。
縁を切るだけでは難しいかもしれません。沈下と側方変形とは同じ現象です。別な原理での対処が要ります。
Ⅱ-1-4
マスコングリートの施工に当たって,特に留意すべき事項を述べよ。また,その留意事項について,製造・運搬,打設・養生等の各段階において講じなければならない対策について概説せよ。
解答
1. マスコンクリートの施工にあたって、特に留意すべき事項。
マスコンクリ―の施工において特に留意しなければいけないことは、セメントの水和熱に起因する温度ひび割れである。
あまりわかりやすい話はなくてもよいのでは。もっと技術的な分析を。
2. 留意事項について、製造・運搬、打設・養生等の各段階に講ずる対策。
(1) 製造・運搬段階
・低発熱型のセメントを使用する。低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、混合セメントB種等。
・製造時に、水、骨材を冷却して練り混ぜる。
・運搬時は、直射日光等により温度上昇を避けるためミキサー車に保温用カバーを施す。
(2) 打設・養生段階
・コンクリートの打ち込み区画の大きさ、リフト高さ等を温度ひび割れによる照査に基づき決定する。
・外気温度が高く、直射日光が当たる場合、日除け等を行う。
・ポンプ圧送を行う場合、配管内の温度上昇を防ぐために、湿った布等で覆う。
・養生の際は、保温性の高いマット等で覆い、散水等を行う。養生終了時期は、内部と表面の温度差が大きくならないよう温度応力解析等に基づき決定する。
Ⅱ-2-2
約10年前に大型屋外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、上がらしい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 計画策定に当たって調査・検討すべき事項
(2) 業務を進める手順
(3) 業務を進めるに当たって留意すべき事項
解答
1. 周辺の環境に影響を与えると考えられる事象
(1) 周辺の地盤沈下
着目した理由:ソイルセメント地下連続壁工法は、遮水性に富んだ工法であるため、土留め内の掘削時に壁体からの漏水は無いと思われるが、壁体先端が堅固な不透水層である支持地盤に達していないため、先端からの掘削面へ地下水の回り込みにより周辺の地下水が下がり、圧密により地盤沈下が生じる。
事前に調査すべき項目:土質柱状図、N値、地下水位
(2) 周辺の井戸枯れ
着目した理由:周辺は住宅街であり、工事により地下水位が低下した場合、井戸枯れの影響が考えられる。
事前に調査すべき項目:周辺住宅街の井戸の位置、個数
(3) 周辺の水質
着目した理由:ソイルセメントの漏出により地下水のPH、SS濃度の変化が考えられる。また、ソイルセメントから六価クロムの溶出が考えられる。
事前に調査すべき項目:周辺井戸水の水質、PH・SS濃度。セメントの化学成分。
2. 環境への影響の低減に有効と考えられる具体的対策と施工管理上の留意点
(1)水質汚染(上記1.(3))
対策:六価クロムを基準値以上溶出しないセメントを使用する。
施工上の留意点:ソイルセメント配合設計時に、試験練りを行い、これを供試体として六価クロムの溶出試験を行い、基準値以上の溶出がないことを確認する。また、火山灰性の土質はセメントの水和を阻害し、六価クロムが溶出する可能性があるので、施工中も適宜試験を行い溶出がないことを確かめる。
(2)地盤沈下(上記1.(1))
対策:重機作業時は敷鉄板を行い作業する。
述べる順番が逆の方がよかったでしょう。
Ⅲー2
社会資本整備の担い手である建設業は中長期的に厳しい人手不足に陥ることが予想されており,これを克服するためには,生産性の飛躍的な向上に積極的に取組む必要がある。 このような認識を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)生産性の向上が建設分野に及ぼす効果を3つ以上挙げ,その概要を述べよ。
(2)建設工事の各段階(①調査・測量・設計,②施工・検査,③維持管理・更新)において, 1CT等の活用により生産性が向上すると考えられる内容を,従来の方法と比較しつつ具体的に述べよ。
(3)今後,建設分野において, ICT等の活用を広く普及させ,さらに高度化させる上での課題を挙げ,その解決方策について,あなたの考えを述べよ。
解答
1. 生産性向上が建設分野に及ぼす効果
建設投資額はピークの平成4年度、84兆円から平成22年度には約41兆円まで落ち込んだ。その後、増加に転じ、平成28年度は約52兆円でピーク時の約38%減である。建設業者数は平成28年度末約47万業者で、ピーク時平成11年度末から約22%減である。就業者数は平成28年平均500万人で、ピーク時平成9年平均から約27%減である。このような厳しい現状の中、生産性を向上していかねばならない。次に、生産性向上が建設分野に及ぼす効果を3つ挙げる。
前置き文が冗長すぎました。答案ですので、前向きに書かれた方がよいでしょう。
(1) 建設業の魅力が向上し建設業からの離職者数に歯止めがかかる。
・建設労働者の資格、経験等を登録し適切に評価し、処遇の改善を図り生産性向上に繋げるキャリアアップシステムの導入。また労働賃金のアップ、休日の確保により若手労働者の入職を促す。
(2) 技術力の向上
・建設投資・建設就業者数の減少の中で、より効率的に生産性向上を目指すため、技術開発進み技術力も向上する。
(3) 財政の縮減ができる
・効率的な生産性の向上により、工期等も短縮され余分な原価・経費が削減されることにより財政の縮減を図ることができる。
2. ICT等の活用による生産向上
① 調査・測量・設計段階
・ドローン、GPSを活用した測量
以前は、多くの人数で行っていた測量が短期間でできる。また危険が伴った急傾斜の斜面の測量等も安全作業となる。
・さらに上記データを設計に反映させ易い。
② 施工・検査段階
・マシーンコントロール(MC)、マシーンガイダンス(MG)による施工。以前は、熟練技能労働者でしか実施できなかった、バックホウの法面整形等が熟練を要することなく可能となる。
・土工におけるブルドーザー等による締固め作業の自動記録システムにより施工プロセス検査が容易となる。
③ 維持管理・更新段階
・高所作業におけるコンクリートの劣化診断
以前は、人力により目視、打音等で行っていた作業を
ロボットによる作業や、レーザーによる非破壊検査でコンクリートの劣化診断を行うことにより、省人かされ安全作業となる。またデータ記録も容易に実施できる。
3. ICT等の活用を広く普及させ、さらに高度化させる上での課題。
(1) 広報、普及活動
中小の建設業者においてはICTへの認識が低いと思われる。
解決方策:
・ネット等を活用し官・民協力し広報活動に努める。
・ICTを導入・普及するにあたり、中小建設業者においては初期設備投資資金が必要になってくるが、財政面で厳しいことが考えられる中小建設業者に対しての資金援助が必要である。
(2) 技術者・技能労働者の技術継承
団塊の世代の大量退職が進む中で、若手技術者・技能労働者への技術継承は重要である。
解決方策:
・OJT、OFF-JT教育により技術の継承を図るとともに、技術研修会等も開催し、ナレッジマネジメントを活用し技術継承に努める。
これらの技術手法は、いつでも当てはまることであって、ここでのICTについて特化した提案ではありません。
(3)技術力向上・技術開発
ICTを高度化させるためには、技術者の技術力向上さらには新技術開発が必要である。
解決方策:
・異業種を含め産・学・官が連携し新技術開発に努める。
・技術者の継続的教育を図る。
残念ながら、割と思いつきやすい概念的提案です。もっと実務に即した技術士にふさわしい提案が必要かと思います。昔の答案の書き方は今は通用しません。合格の基準は、ビジネスで成立するプロエンジニアとしての能力であり、コーチングで学べます。