H30年 建設部門、施工・積算の答案について添削致しました。(3)
この答案についての講評
見識問題は正確にお答えになっています。また、対策内容など定型的文章でまとまって書き込める内容は良くできています。一方、変則的な応用力を試す問いでは解答姿勢が崩れているように見受けられますので、応用練習が必要です。
コンピテンシーを測る試験では今回のように問題を解いたうえで、採点してもらわないと正解はわからないものです。かつ、本質を見抜けていない場合は、その誤りを言葉で説明してもらわないと、理解できません。そしてたとえ解答の誤りがわかったとしても、ではどう書けば正解かは、ケースバイケースでチェックしないと正解が判断できません。これらを解決するのが添削とコーチングです。
この練習さえしていけば必然的にわかるようになり、必ず合格できます。
音声ガイドによるコーチング指導内容(19分6秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-4 マスコングリートの施工に当たって,特に留意すべき事項を述べよ。また,その留意事項について,製造・運搬,打設・養生等の各段階において講じなければならない対策について概説せよ。
解答
1.マスコンクリートの施工で特に留意すべき事項
マスコンクリートの施工に当たって特に留意すべき事項は、温度ひび割れの抑制と拘束の緩和である。製造から養生までの各段階における具体的対策について、以下に示す。
①製造
低発熱型セメントの使用や粗骨材の最大寸法の大型化等によるセメント量の低減、比熱の高い練混水や使用量の多い骨材の練混ぜ前の温度低減による効率的な練上り温度の低減により水和熱を低減し、温度ひび割れを抑制する。
②運搬
運搬車の覆いやコンクリート輸送管の保温等により運搬中のコンクリートの温度上昇を抑制し、温度ひび割れを低減する。
③打設
ブロック割・リフト高の低減による温度上昇量の抑制や夜間打設による打込温度の低減、打込時間間隔の短縮による外部拘束の緩和により温度ひび割れを抑制する。
④養生
保温養生や保温性型枠の使用による温度差・温度降下速度の調整やパイプクーリングによるコンクリートの内部温度上昇量の低減により温度ひび割れを抑制する。
Ⅱ-2-2
道路山側斜面が崩壊(幅30m,高さ20m)した災害の現場において,1車線の通行を確保しつつ,大型ブロック積擁壁及び切土・のり面保護工(植生基材吹付工)等からなる復旧工事(下図参照)を施工するに当たり,以下の問いに答えよ。
(1)本工事の施工計画を立案する上で検討すべき項目を2つ挙げ,その内容について述べよ
(2)本工事の施工中に安全管理上留意すべき項目を2つ挙げ,それが必要な理由と対応方法を述べよ。
解答
1.施工計画を立案する上で検討すべき事項
①作業足場・重機足場の検討
復旧工事に当たっては法面上部より下部に向かって順次施工していく必要がある。法面上部の残置土砂を撤去するためには重機足場が必要となるが現状の崩土高さは約10m程度であり、崩壊高さ20mを考慮すると少なくても重機足場の高さは15m程度必要となる。重機足足場としての盛土材について、一部は法面上部の残置土砂を転用し、不足分は別途搬入する検討が必要となる。
②土留材及び落石防止対策の検討
崩土上部には撤去した法面上部の残置土砂による土圧の増加や重機(0.7m3級を想定)の上載荷重により大型土嚢が崩壊することが懸念される。よって崩土の改良により地盤強度を増強し大型土嚢に作用する土圧の軽減を検討する必要がある。
また重機足場としての盛土と地山の境界部は水道となりやすく盛土内部の地下水位の上昇に伴う土圧の増加が考えられるため、盛土内部の地下水排水排水対策の検討も必要となる。
さらに車道への落石対策として、大型土嚢の嵩上とこの上部に落石防護柵の設置を検討する必要がある。
検討ばかりが多いので、もう少し具体的に提案するようにしてください。
2.安全管理上留意すべき事項
①法面上部の残置土砂の崩落対策
法面上部の残置土砂はオーバーハング状態となっており、降雨等により残置土砂に水が浸透すると崩落し二次災害の発生が懸念される。この対策として法面上部の表面排水の施工や残置土砂をシートで覆い、水の浸透を防止する。また傾斜計等の設置により残置土砂の動態観測を実施し、挙動の監視を行う。
また万が一崩落した場合の対策として、大型土嚢の嵩上とこの上部に落石防護柵を設置することで第三者災害。
②土留めに作用する土圧の低減
大型土嚢には重機足場としての盛土の土圧および使用する重機等の上載荷重が作用することから、大型土嚢の崩壊に伴う第三者災害の発生が考えられる。この対策として前述したとおり、崩土の改良による地盤強度の増進や盛土内部の地下水排水対策により大型土嚢に作用する土圧を低減し大型土嚢崩落を防止する
答えがダブリになることは好ましくありません。
Ⅲー2
社会資本整備の担い手である建設業は中長期的に厳しい人手不足に陥ることが予想されており,これを克服するためには,生産性の飛躍的な向上に積極的に取組む必要がある。 このような認識を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)生産性の向上が建設分野に及ぼす効果を3つ以上挙げ,その概要を述べよ。
(2)建設工事の各段階(①調査・測量・設計,②施工・検査,③維持管理・更新)において, 1CT等の活用により生産性が向上すると考えられる内容を,従来の方法と比較しつつ具体的に述べよ。
(3)今後,建設分野において, ICT等の活用を広く普及させ,さらに高度化させる上での課題を挙げ,その解決方策について,あなたの考えを述べよ。
解答
1.生産性向上が建設分野に及ぼす効果
①長時間労働の是正
ドローンによる三次元測量やICT建機の活用等の
ICT活用工事の推進や工事書類の削減・簡素化、プレキャスト製品等の効率的・汎用性の高い工法の導入等、建設生産システム全体の生産性向上と多能工化や建設キャリアアップシステムの活用等、工事現場における生産性向上により長時間労働の縮減につながる。
②担い手確保
申請手続きの電子化や基準類の改訂、IoT・新技術の導入による仕事の効率化や、技術者配置要件の緩和や施工時期の平準化等による限られた人材・資機材の効率的な活用により、担い手を十分に確保できない場合の補填策とする。
③作業環境の改善
ICT技術を活用することで高所作業や潜水作業の削減等、危険作業を低減し作業環境を改善するとともに若年層の入職率の増加や離職率の減少につながる。
2.建設工事の各段階における生産性向上の内容
①調査・測量・設計
従来は測量業者によりトランシットやレベルを用いて実施した測量をドローンによる三次元測量を実施することで広範囲の測量を短時間で実施することが可能になった。
また従来は二次元の設計図面にて施工管理していたのをCIMによる三次元データを活用することで鉄筋の干渉等、設計段階において事前に課題や問題点を抽出し検討することが可能となった。
②施工・検査
従来は測線毎に設置した丁張を基準とし、バックホウ法等により法面整形をしていたが、マシンガイダンス等のICT建機の活用により丁張の設置が不要になるとともに測線以外の全範囲において高精度の施工が可能となった。
また検査では以前はコア抜き等により確認していたコンクリート強度を非破壊試験の活用により構造物を損傷することなく確認できるようになった。
③維持管理・更新
従来は潜水士等によりダム等の点検を行っていたが、水中点検ロボットの活用により災害リスクを低減するとともに短時間での点検が可能になった。
対策の記述は素晴らしいです。
3.ICTの普及・高度化に向けた課題と解決策
①人を主役としたICT技術の活用(課題1)
1)ICTを全ての技術政策に活用し新たな価値を創出する。
2)新しい技術を導入する際はプロセス全体の最適化を目指した全体最適の考えを導入し、基準・制度等を見直す。
3)産学官が連携し短期間で集中し科学的に技術者を育成し、ICTの進展に対応できる技術者を育成する。
②好循環を生み出す環境の整備(課題2)
1)技術開発目標の提示や公募等、社会と現場のニーズを把握・提供やコンソーシアムの積極展開による人知財の結集によりオープンイノベーションを推進する。
2)研究開発の初期段階から社会実装までの道筋を示すプログラム評価の推進や社会貢献や基準化等、研究評価の拡大など新たな研究評価の仕組みを構築する。
残念ながら、想定外の問いに対してあまり練習されていないように感じます。建設の専門家としてのICTについての見解が求められています。しかし、答えは漠然と技術一般を開発する程度にしか述べられていません。焦点が定まらない議論では、コンピテンシーは訴えられません。例えばとして考えられる正解を音声でご説明いたしますのでお聞き願います。