R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210427

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この答案についての講評

 試験の敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは不可能です。技術士合格の方法としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(27分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)社会インフラのメンテナンスする上での課題

■↓分析(力)が不十分です。何をどうしたら良いのか、明確に突き止められていません。ダブリも多いようです。

「戦略的なメンテナンス」の真意がとらえられていません。

 老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進する上での課題を次に挙げ

  ①どのようにして予算を確保し、どの施設より優的にメンテナンスを行っていくか。

  ②優先順位の低い小規模施設のメンテナンス

  ③どのように長寿命化するか。

 ①我が国の社会インフラの多くは高度経済成長期に整備されているため、それらの社会インフラは今後一斉にメンテナンス時期を迎えるが、どのようにして予算を確保し、また限られた予算の中で、どのような施設より優先的にメンテナンスを行っていくかが課題である。

■↑漠然としてこれだと「どうしたら良いかわからない」という印象を与えかねません。

②優先順位的に低くなることが想定される小規模施設のメンテナンスをいつ実施できるかが課題である。

■↑優先順位?なのですか。不要施設を廃棄するなど具体的な焦点を明確に言うと良いでしょう。

③インフラ整備はメンテナンスし、今後も継続して維持管理を行っていく必要があるが、今後さらに50年以上活用していくためには、どのように長寿命化を行っていくかが課題である。

■↑今後50年維持することを課題として言うように。50年維持するには何すればよいのか提案するようにしてください。

(2)最も重要な課題とその解決策

 課題のうち、最も重要な課題は「③どのように長寿命化するか」である。その解決策としては次の内容が考えられる。

  ①定期点検および健全評価の実施

  ②長期間の補修サイクルの設定

  ③新技術の開発・導入

■↑この①②③の方向性は悪くはありません

①長寿命化を行っていくには、定期点検を実施し、健全度評価を行うことが有効である。定期点検や災害後の点検により、劣化状況を確認し、その点検結果を

基に健全度評価を実施する。健全度評価により予防保全段階で補修・補強を実施していくことで、インフラ整備の長寿命化を図ることが可能である。②各施設の部位・部品ごとに補修サイクルを設定し、部位ごとに補修していくことで長寿命化を図る。③新技術の開発・導入により、護岸背面の吸い出し防止材の修復など、現状補修困難な箇所などの補修を行うことで、長寿命化を図る。

■↑①②③ごとに段落を分けて、方法論、根拠を明確に示す。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策

 解決策により新たに生じうるリスクを次に挙げる。

■↓これは問1の前提事項となりますので、△です

  ①維持管理費用の増大

  ③将来の維持管理を担う人材の確保・教育

 ①点検、補修、補強を行う費用の増幅がリスクとなる。特に今後ほとんど施設でメンテナンスが必要となり、単年度に集中することが懸念される。対策としては、点検結果による健全度評価にて補修の必要性を検討することや、施設自体の必要性を検討し、近接している施設との統合を行うことが有効である。また、予算確保を行うために、各機関の管理区域内で施設全体の維持管理計画や予算計画を策定し、予算の平準化を実施し、長寿命化計画を見直す。③少子高齢化の影響もあり、建設業に携わる技術者も減少している。そのため、維持管理を行っていく上での人材を確保、育成することがリスクと考えられる。対策としては、人材教育の観点より、資格制度を充実や、教育機関の設置が考えられる。

(4)業務を遂行するに当たり、必要となる要件

 が国の少子高齢化に伴う技術者の減少、インフラ整備の老朽化によって、インフラを計画的に維持管理することにより、国民の安全・安心の確保やトータルコストの縮減・平準化を図る必要があるため、新たな技術開発は重要であると考えられる。

■↑残念ながら、ここは題意に応えた解答とは言えません。

「業務として遂行するに当たり必要となる要件」・・業務とは何か

「技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。」この意味は?

この真意は難解です。これがわからないと、意味ある答えになりません。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。例えば、

問2の(1)〜(3)をただ業務遂行するのでなく、(技術士にふさわしく)技術者倫理も高めてするには、〇〇を〇〇をする。これは技術士倫理綱領の〇〇に相当する。

問2の(1)〜(3)をただ業務遂行するのでなく、(技術士にふさわしく)社会持続可能性を高めてするには、〇〇を〇〇をする。これはSDGsの№〇の「〇〇」に相当する。

この文に合うように作成するだけで、ほぼ正解に近くなります。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理についてその手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.河道流下断面の維持管理手順

■↓前置きは不要です。大事なことを優先的に書くように。

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理は次の手順行う

②       横断測量などによる定期的な河道断面の確認

②維持掘削や河道内樹木の伐採■わかりにくい

  定期的な横断測量や航空測量を行い、改修後の土砂の堆積状況や河道内樹木の繁茂状況を確認し、土砂の堆積や樹木の繁茂が顕著に確認された箇所においては維持掘削や樹木伐採を実施し、流下断面を維持する。

■手順とは時系列の作業項目、4、5程度が妥当でしょう

2.流下能力回復を検討する際の技術的留意点

■留意点を求めているのは、決まった答えではなく、技術者が任意に判断して、上手に品質管理するコンピテンシーを測るためです。ここを得点のチャンスと考えて、テクニックを披露してください。

 低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点としては以下の内容が挙げられる。■不要

②  確実に施工でき、かつ安価な対策を検討する。

  ②対策後の流下能力低下を防止する。

■共に一般的事項にすぎません。普通の技術者ならそうする前提条件のようです。さらにコンピテンシーを高めた提案をしましょう。

 ①について、流下能力の回復としては一般的に掘削工事が考えられるが、工事用進入路や仮締切が伴う。

従って、確実に施工できるか、他工法と比べて安価な工法かを検討し、施工方法も踏まえて最適な工法の検討が必要である。 ■施工法が見えていない?

 ②について、対策実施後にも土砂の堆積や樹木の繁茂等による流下能力低下の再発が懸念される。従って、

 対策検討時は、対策後の経年的な再発を防止できる工法を検討しておく必要がある。

■つまりどうするのですか。具体的に行動を指定するようにした方が良いでしょう。

Ⅱ−2−2

近年、激甚な災害が各所で発生しているが、被災地の復旧に当たっては再度災害防止の取り組みが重要となる。あなたが水害・災害の被災地における再度災害防止対策に関するプロジェクトの規格・立案を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せつ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方針について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

 河川分野における被災地の災害防止対策について、調査、検討すべき事項を次に挙げる。

②  被災箇所の調査、被災原因の検討

  ②設計対象流量の見直し ■①〜③を見出しとし段落で示す

  ③再発防止を踏まえた復旧工法の検討

 ①復旧対策検討に先立ち、被災が発生した場所を調査し、被災箇所数や被災状況を確認し、被災原因を究明する。②調査結果、原因究明により確認した被災箇所および被災原因を基に、対象流量、水位の見直しを行う。③見直した対象流量に対し満足する堤防形状や、堤防構造などの検討を行う。

■空き行は不要

(2)業務を進める手順についての留意点、工夫点

 業務を進める手順の留意点、工夫点を次に挙げる。

  ①被災状況を考慮した対策工法の提案

  ②比較的安価な対策工法の提案 ■①〜③を見出しにする

  ③地域住民が賛成する対策工法の提案

■↓問題点(黄色)が長すぎます。課題(緑)の説明に文字数を割くように

または問題点は目的に書き換える。③のように

 ①調査結果より確認した被災状況を基に対策工法を検討する。例えば堤防に関しては、越流により、川裏の法尻より洗堀し堤防決壊となる原因が多いが、その場合は堤防高の確保に加え、今後発生する想定以上の洪水流量で堤防越水が懸念されるため、法尻補強を実施する。

■↓問題点ではなく、③のように目的に書き換える。

河川の被災は堤防決壊によるものが多くみられるが、その場合被災延長が長く工事費が高価となることが懸念される。そのため、比較的安価な対策工法が必要であり、例えば築堤材料の土砂流用や、被災が懸念される河川狭小部のみ高規模堤防とするなどの対策が考えられる。③業務を円滑に進めるためには地域住民の理解が必要不可欠であり、そのためには、対策後の景観面や利用面に留意した対策工法を検討とする必要がある。例えば、防天端幅を拡幅する場合では、堤防天端を公園などに活用するなどの対策が考えられる。

■↑例示は答えの汎用性を損なうので、一般例として表すようにしてください。

(3)効率的、効果的に進める関係者との調整方針

 業務を効率的、効果的に進めるためには自治体、漁協組合、地域住民などとの調整を行いながら検討を進めていく必要がある。ただし、各機関ごとに調整を進めることは非効率であり、さらに各機関で意見が異なり、検討方針の決定に長期間必要となるケースが考えられる。従って、委員会などを設立し、各機関が合同で意見交換を行える場を設けることで、検討状況や対策方針を共有でき、効率的、効果的に業務を進めることが可能であると考えられる。

■↑調整の中身の具体的な話がありません。あるのは合理化、委員会の手法だけ。

これだと、本当に調整力があるかどうか伝わりません。

「委員会を設ける」は、一見よさそうですが、しかし他者に依存するので、プロマネとしては好ましくありません。

Ⅲ−1

 社会資本分野における情報通信技術(ICT)の全面的な導入により、活用される3次元デジタルデータは、より細かく、より多くなってきた。そのため、平常時、災害時に関わらず、これらのデータの共有を図るためのデータプラットフォームづくりが進められている。このような状況を踏まえて、河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)データプラットフォームの実現を前提として、ICTを調査・観測に活用していく上での課題を、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

■ICT活用の一般論に終始していて、「河川、砂防及び海岸・海洋の調査・観測」の課題が見えません。

「河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として」問いに答えられていません。これがないくて、ICTだけでは正解は成立しません。

(1) ICTを活用していく上での課題とその内容

 データプラットフォームを前提としてICTを調査・観測に活用していく上での課題を次に挙げる。

  ①ICT導入の環境整備

  ②ICT技術の伝達

  ③データ管理方法

 ①ICTを活用するにあたり課題となるのが環境整備である。現状活用していないICTを導入するためにはコスト面が懸念される。特に中小企業では、この課題が顕著となることが想定される。②もう一つの課題はICT活用に向けた技術の伝達である。ICT技術を活用するに当たり、技術を有する必要があるため、その技術をどう会得して、将来的にどのように伝達していくかが課題である。③ICTにより取得したデータをプラットフォームにて一元管理することとなるが、そのデータの管理や活用方法について、どのように行っていくかが課題である

(2)最も重要な課題に対する解決策

■残念ながら本質的なことが書かれていないので、これの状態では修正は難しいです。以下のコメントは省略いたします

 最も重要な課題は「①ICT導入の環境整備」である。

課題解決方法としては、次の方法が考えられる。

①調査業者や施工業者にインセンティブを与える

 ②講習会の実施

 ③ICT活用に対する評価

 調査業者や施工業者などの受注者側については、ICT機器等の高価かつ高度な技術を導入するといった負担が発生するため、ICTを普及させるためには導入に対するインセンティブを与える必要があると考えられる。②ICT導入する際に、発注者および受注者においてはICTへの理解を深めることが重要であるため、講習会等を実施し、ICT 工事の特徴を正しく理解し、発注、工事の実施を行う必要がある。③業務成果としてICT活用により一定の成果を上げた場合は正しく評価される制度を設けることで、受注者へのICT導入を促進することになると考えられる

■↑河川、砂防及び海岸・海洋の分野の視点がないので建設・河川の選択科目としては、採点無理。

(3)解決策で生じる波及効果と対応策

■ICTで技術が低下するとは考えにくいです。現実と逆行していませんか。

 ICT導入の環境整備を行う上での波及効果としては、施工精度や施工品質の低下、技術者の技術力の低下が考えられる。ICT技術の導入により技術者の作業や確認行為が少なくなり、完成したインフラ設備の品質が低下する。また、ICTに頼ることで、生産性は向上するが、技術者の作業内容が減少することで技術力が低下することがICT導入による波及効果として考えられる。これらより、将来的にICT全面活用となった場合は、検討不足や確認不足が発生し、技術力や品質低下が考えられ、その対応策としては、次の内容が考えられる。

①従来技術の伝達

②研修施設や資格の充実

③ICT活用時の照査基準の設定

①今後、熟練技術者による従来技術の伝達により技術を継承していくことで、若手技術者の育成を図ることが有効であると考えられる。また②建設業の研修設備や資格を充実させ、教育環境を整備することが重要であると考えられる。施工精度や品質を確保していくために③ICT活用時の照査基準を設定し、品質を確保する。施工後の確認、照査内容をすべて基準化することで、徹底した照査を行え、照査結果を明確にすることが可能であると考えられる。ただし、各施設で照査内容が異なることが想定されるため、幅広い内容での照査基準を設定するとともに、技術者は設定された照査基準以外にも、各施設で必要に応じて個別で照査内容を追加設定することが望ましいと考えられる。

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