R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210330

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この答案についての講評

 この過去問答案の評価はBBAだったということですが、それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的メンテナンス推進の課題

a) 機能向上対策

■やや視点が違います。

 豪雨災害の頻発化により、近年激甚な災害が増している。構造物の補修などによる維持管理対策のみでは、外力の増大に追随できない。

 維持管理・更新対策を通じて、機能向上を図ることが課題である。

b) 点検・診断の効率化

■ここは良く書けています。〇です

 高度経済成長期に築造された建設生産物は、今後10年程度でその60%以上が更新期を迎える。経済的な制約がある中で、戦略的なメンテナンス計画が実施されないと社会経済活動に必要な重要インフラまでが機能喪失してしまう。

 戦略的維持管理を実施するため、点検・診断の効率化が課題である。

c) 作業の効率化

■これは更新のことですか?Bとダブリのようです。

業務量の低下や過度な競争の発生により、建設産業の疲弊が続いている。今後、災害対策や維持管理など大型の需要を予測する中で、人手不足により業務不履行となることを懸念する。大量の需要に対応するため、作業の効率化が課題である。

(2) 点検・診断の効率化

a) ドローン技術の活用

現状の点検・診断は技術員による目視点検や測量により実施されているが、多くの時間と労力を必要としている。業務の省力化を図るには、ドローン技術を活用し、効率的かつ精度の高いデータを取得する。

 解決策として、①概括的な判読資料を得るために短写真画像からAIによる自動判読技術を用い、広域的な状況を判定する。②3次元データ点群データから、地形の精細な変化を読み取り設計データとして役立てる となる。

b) 非破壊検査技術の活用

 現地でのコア破壊は、少なからず構造物にダメージを与え、効率性が低い。構造面に損傷を与えず、正確な機能劣化度を判定できる、非破壊検査技術の活用を促進すべきである。

 解決策として、①地中部の探査に、衝撃弾性非破壊検査により、地中構造物の劣化度を調査する ②地上部の診断に、赤外レーザ探査により、構造内部の状態を把握する となる。

c) 診断結果の活用

 LCCの低減には、次回の対策を考慮し、データベース化する必要がある。IoT・ICT技術を活用しシステム化することで、次回の利便性が高まる。

 解決策として、①REMaDISなの維持管理ソフトを活用し、利便性を高める ②検査の省人化・効率化を図るため、AIによる検索技術を構築しておくことで作業の省人化を図る となる。

(3)新たなリスク

■(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクです。やや違うように感じます。

a) ドローン技術の活用

 管理地域の樹林化極度に進行した場合、計測できないリスクが発生する。このリスクに対して、地上型レーザスキャナにより補測することで、解消できる。

b) 非破壊検査技術の活用

 人口減少が更に進行し、入職者不足により、非破壊検査技師が不足するリスクがある。このリスクに対しては、検査作業を無人化するため、検査ロボットの開発によって、解消できる。

c)診断結果の活用

 大量のデータ量を処理しきれず、システムが機能しないリスクがある。このリスクに対して、ICT技術を更に活用する。ビッグデータ+AIのディープラーニング機能にて解決できる。

(4)技術者としての倫理

a) 機能向上対策を実施する際は、強靭な国土づくりの観点から、高い予測技術を提供する。これは、「公正かつ誠実な履行」に相当する■やや論理性に欠けています。国づくりと高い予測とは必ずしも直結しないからです。

b) 点検・診断の効率化を計画する際は、質の高い社会資本整備を念頭に、科学的技術を平易に説明し信頼感をうる。これは、「相互の協力」に相当する

■これも△かも

c) 診断結果の活用は、「防災レジリエント」を念頭に危機的状況に対応できるシステムを提供する。これは、「持続可能性の確保」に相当する。 

■良く書けています。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理についてその手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.維持管理の手順 ■河川改修後の流下断面の維持管理です

(1)点検・巡視 ■曖昧過ぎ。もっと単刀直入に

整備した河川がその機能を発揮しているか、点検・巡視により調査する。目視などにより行う。

(2)診断

■流下断面の維持管理とは何かを考えましょう。

河川構造物の機能低下度を判定するため、構造物毎の機能判定を行う。打音調査・音響調査などから得られたデータを指標により判定する。

(3)維持管理対策  ■こちら↓をもっと詳述するようにしましょう。

機能低下が著しい区間について、流下能力の向上を目指し、対策を実施する。河道掘削などを実施する。

2. 流下能力回復対策検討の技術的留意点

(1)河床低下による樹林化

樹林化による攪乱頻度の低下により、河川粗度の上昇が発生する。適切な粗度を維持するため、伐採・浚渫を実施する■対策そのものではないです

(2)堤防天端高の維持

経年の基礎地盤の変状によって堤防高の低下により河積断面の不足が発生する。計画高水位に沿った堤高を維持するため、嵩上げや浸透水排除工を実施する。

(3)堤体の機能低下 ■技術的原理や要点を書くようにしましょう。

洪水の影響などによる亀裂の発生により崩壊リスクが上昇する。浸透破壊の弱点部分を維持補修することで耐浸透性を保つ。

Ⅱ−2−1

近年、毎年のように発生する大規模な水害・土砂災害において、逃げ遅れによる犠牲者が数多く発生している状況を踏まえると、住民の適切な行動を促し避難の実効性を高めることが極めて重要となる。あなたが台風襲来時の水害・土砂災害に対する市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せよ。

(1)   調査、検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)   業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)   業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)河川分野の調査、検討すべき事項

a)地域の水害危険性 ■Ⅱ-2は惜しいです。

水害リスクの想定が不足すると的確な避難計画が構築できないため、市町村管理の河川での浸水想定の情報を調査し、水害の危険性を検討する。

b)水害リスク情報の作成

中小河川の水害リスク情報は膨大となるため、洪水に対する安全性を調査することで、簡易的な水害リスク情報の作成を検討する。

c)水位観測体制の整備

近隣の水位情報が迅速な避難の判断材料となるため、水位観測体制の整備方法を調査することで、水位情報の取得体制を検討する。

(2)業務を進める手順

a)情報の収集

氾濫解析の基礎資料となる情報を取得する。データ取得の効率化を図るため、D技術を活用する。LPデータの取得によって実測作業を低減する

b)流出量の把握

氾濫流解析によって、流出量を把握する。洪水調節施設の無い河川の流出量解析は線形モデルで行う。合理式を用いアメダス確率雨量計算で精度を上げる。

c)氾濫解析

流量に対し、不等流計算で水位を求める。概略的に水位を把握するため、一律の粗度係数を用いる。

過去の被災歴と参照することで予測精度を高める。

d)想定区域図の作成

浸解析データから水想定範囲図等を作成する。想定範囲の精度を高めるため、滑らかな形状の浸水想定範囲を抽出する。SHPデータの作成によって、GISなどへの汎用性を高める。

■避難解析とか訓練とかはないのですか。

e)水位観測体制の整備 ■2はやや書きすぎでしょう

適確な避難行動につなげるため、出水時の水位情報の取得体制を整備する。避難に要する時間を把握するため、水位上昇速度を取得する。経済性に配慮し、メンテナンスフリーのインフラを整備する。

(3)関係者との調整

a)発注者

合理式のみの流出量予測では精度が低いことを懸念され、理解が得られない。しかし、流域規模が小さい中小河川では判断材料となる降雨量データが不足している。そこで、アメダス確率降雨量計算プログラムを用い降雨強度を設定する手法を用い、流出量予測の精度を上げることで理解を促す■留意点のようです

b)地域住民

洪水時の観測水位から避難情報を提供する方策を住民側に提案する。その際、避難までのリードタイムが短い懸念から理解が進まない場合、雨量情報から氾濫予測する手法を組み合わせることで同意を得る。

■同意が得られないので、下記のように考えてみましょう。

問4に書くべきことは、問2に書いた業務を効率的に進める、そのための関係者との調整方策です。

次の3要件を同時に満たすようにしてください。

①「調整」の言葉の意味は、過剰と不足を移して均して最適化することです

  例:スピード調整、年末調整、与党の党内調整など

  既にあるものを移すだけで、新たに資金投入などははしません。

②受験者は河川砂防のプロマネなのですから、関係者を指導して対して納得しやすい理想的プランを申し入れる。すなわち、指導力によって、関係者の行動変容を促し、結果として全体プロジェクト取りまとめる。(お願いや自身の頑張りではありません)

③建設・河川砂防の技術応用による技術士らしい解決策を提案してください。
 (連絡係やスケジュール管理など、事務担当者でもできることは×です)

Ⅲ−1

 社会資本分野における情報通信技術(ICT)の全面的な導入により、活用される3次元デジタルデータは、より細かく、より多くなってきた。そのため、平常時、災害時に関わらず、これらのデータの共有を図るためのデータプラットフォームづくりが進められている。このような状況を踏まえて、河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)データプラットフォームの実現を前提として、ICTを調査・観測に活用していく上での課題を、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.調査・観測に活用する上での課題

a)計測段階の自動化・効率化 

■ほとんど前提では

これまでの調査・観測は技術員による現地作業が主体であった。こうした作業は危険性を常に有し、多数の作業員を必要とした。現地作業の試験性の除去と効率化のため、調査観測の自動化が課題である。

b)設計手法の二極化 

■キーワードを述べるだけでなく、方針を伝えるようにしましょう。

設計段階は、これまでの経験上2次元データでの運用が続いている。3次元設計への切り替えは多くの技術習得が必要でありデメリットが多数発生する。

2次元での技術や経験を生かすため、①2.5次元 ②3次元 と二極化した設計法を許容すべきである。

c)維持管理運用システム

これまでの維持管理データは、現場ごとに記録されたカルテ型式が主体である。紙データでは検索等に時間がかかり、有効に活用できないデメリットがある。維持管理業務の効率化を図るため、RiMaDISなどの運用システムの活用が課題である。

(2)課題「計測段階の自動化・効率化」の解決策

a)点検・巡視の自動化

経済的・人員的に制約が続くことが懸念される中、点検・巡視作業を省力化するために、ドローンを使用した計測技術を普及させることが有効である。

解決策として、①広範囲なデータ収集に「単写真画像からのAIによる自動抽出」にて、概括的な河川要素や植生の状態等を把握する。 ②地形などの正確なデータを得るために、「3次元点群データからの差分抽出解析」によって、河床変動を把握する ③構造物の劣化状態を把握するため、「温度別データ」を取得することで、亀裂・陥没などを確認する となる。

b)流量観測の無人化

現在は浮子式が主体であり、危険性が高く多人員が必要である。危険性除去と省人化を図るため、定点設置型の観測機器を導入する。

解決策として、①流量観測の効率化を図るため、「電波型流速計・画像処理型流速計」の常設を進めることで、操作ミスの少ないデータを入手する ②観測状況を監視するため、「簡易型監視カメラ」を設置し、状態観測を行う となる。

c)水位予測の高精化

緊急活動に使用する予測データは、観測地点毎の計測データである。現地計測データと予測情報を一体監視することで予測技術の向上を図る。

 より精度の高い予測情報を開発することで、防災行動の確実性を高めるべきである。

 解決策として、①河川データが充実している河川では、「土研分布モデル+一次元不定流解析」によって河川全体の水位情報を提供する ②中小河川では、「RRIモデル+降雨歴からのH−Q式」によって、2時間以内の洪水予測を可能にする となる。

(3)懸念事項への対応策

■(2)で示した「すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、専門技術を踏まえた懸念事項」への対応策が見当たらないので、書くようしましょう。

a)点検・巡視の自動化

 植生・樹林の繁茂が進行した区間では計測不能となる。この懸念に対しては、地上からの捕捉作業が有効な解決策となる。例えば、繁茂が激しくレーザー光が地上に届かない場所を、VRF測で標定を設け、地上型レーザスキャナで捕捉することで、3Dデータを取得できる。

■↑↓これは、2の解決策を実行していなかったのでは・・と考えてしまいます。

b)流量観測の自動化

台風時等の計測であるため、通信設備に障害が発生した場合は、通信の空白が起きる。この懸念に対しては、強風時でも飛行可能な、「全天候型ドローン」の導入によって解決できる

c)水位予測の高精化

 広域での洪水が発生した場合は、データ処理速度が追い付かず、正確な水位が計算できない懸念がある。

この懸念に対しては、観測地点毎に分割する「カスケード手法」の開発が有効手段となる。

地点毎に区切ったデータを連動計算することで、広範囲な地域でも水位計算が可能となる。

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