R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210226
この答案についての講評
この試験答案Ⅲの評価はAとのことで、合格点をクリアしているレベル感があります。ただし、一方で減点されているところもあり惜しい感じがいたします。添削で具体的にご指摘致します。その理由として、テーマに対して対策、方法論的な説明に終始ししていたことがあげられます。改善に向けた具体的な提案ができればよかったと思います。課題の分析でやや難しい方向に入り込んでしまったことが残念です。このほか、解決策でやや周辺事項に発散した可能性があります。試験では技術士としての「技術応用」が採点されますが、ここで基軸を失わないことが肝要かと思います。この記述ではテーマの「担い手」から離れた可能性があります。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。
本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(11分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
我が国は人口減少局面にあることに加え,総人口に占める高齢者の割合は増加しており,他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか,全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では,今後の地域社会の維持・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ,施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として,以下の問いに答えよ。
(1) 過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当たって,多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
1.過疎化地域でのインフラ維持管理・更新の課題
(1)担い手不足の観点
■この着目点は〇です。良く書けています。
規模の小さい市町村では、約30%の割合でインフラ維持管理・更新を専任で行う技術者が不在である。また、建設業は他産業に比べ高齢化が進んでおり、地方ではよりその傾向が強い。今後は大量の退職者が見込まれており、従事者は増々減少していく。これらの要因から、過疎地域では発注者・施工業者ともに担い手の確保が課題である。
(2)維持管理・更新に必要なデータ不足
■漠然とデータ不足という手段的事項ではなく、点検(目的)のことを言うべきです。
インフラの維持管理・更新を効率的に実施するためには、正しく現状を把握する必要がある。国の管理する施設は定期点検や日常点検が行き届いているが、過疎地域では人手、技術力、財政の不足により十分でないのが現状である。施設の維持管理・更新を効率的に継続するため、点検実施とデータ収集の推進が課題である。
(3)非効率なインフラ配置
■これは結果であって、仕方ないことです。しいて言うと計画時の予測が甘かったということかと思います。
過疎地域では、人口流出と高齢化に伴い市街地では空家が増加し、周辺集落は限界集落に近づいている。
このため使われないインフラが多数点在しており、維持管理・更新業務が非効率で、機能・安全性に支障が生じる施設も増加している。これらの要因から、施設の廃止や集約、用途変更を推進し適正なインフラ配置への転換が課題である。
2.最も重要と考える課題
最も重要と考える課題は「担い手の不足」である。あらゆる支援策を講じ、体制・人材・財政面で脆弱な過疎地域を支援することが重要と考える。以下に解決策を述べる。
1)解決策
(1)技術力の確保
■この自前の人材育成は〇です。良く書けています。
専任の担当が不在でも業務が実施できるよう、自治体職員の技術力確保と、ノウハウ取得のため、研修・講習の充実と、参加しやすい環境整備を推進する。また技術的な課題の相談窓口を設置し、職員のサポートを行う。さらに専門技術者を派遣し直接指導を行う。
民間資格を有効活用するため、国が公的資格として認定することを促進し、維持管理・更新業務を責任を
を持って従事できる人材の増加を図る。
(2)新技術の活用
■新技術は「担い手」と直接の関係ありません。PPP/PFIも同じです。
メンテナンスNETISへの登録を推進し、広く発注者・設計コンサルタントに新技術を周知させ、導入促進を図る。また国民メンテナンス会議の自然発生的な技術のマッチングではなく、過疎地域を新技術の社会実装の場として活用し、新技術導入をコーディネートすることにより、維持管理・更新業務の生産性向上を図る。
(3)PPP/PFIの推進
過疎地域での案件形成を促進するため、自治体職員向けにスキル習得のための研修・講習を充実させる。
また、自治体首長同士での意見交換会を開催し、案件形成に関する課題解決を図る。さらにモデル事業を形成し、広く横展開するこで、維持管理・更新業務の効率化とトータルコスト削減を図る。
3.生じるリスクと対策
(1)生じうるリスク
■離職するのは過疎地の事情です。提案内容に由来するものを挙げましょう。
自治体、地元企業における離職者の発生と、後継者不足による廃業により、新たに蓄積されたノウハウや知見が継承されず失われてしまう。これにより、維持管理・更新業務の継続が困難となる。
(2)リスクへの対策
1)地域一括発注の活用
■市町村の事業に都道府県が地域一括発注することが可能ならこのような問題は発生しないのでは?と考えられます。
自治体同士の横断的つながりを活発にし、ノウハウ・知見の共有と技術継承を行うため、市町村の事業を都道府県が地域一括発注する制度の活用を推進する。
自治体の量的・質的補完が図れ、新たな知見の発見があり、継続的な業務の発展が可能となる。
2)地域維持型契約方式の活用
■地域維持型建設企業体の事例を挙げましょう。
中小建設会社が結集したとしても、そして交流したとしても、それだけでは技術の継承や、若手技術者の技術力向上は難しいと思われます。
企業同士での交流を活発にし、ノウハウ・知見の共有と技術の継承、若手技術者の技術力向上を図るため、複数の中小建設会社による地域維持型建設企業体を形成する。工事の大型化により企業の収益確保、人材・機材の有効活用が図れ、安定して継続した企業経営が可能となる。