R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210130
この答案についての講評
この過去問答案の評価はⅠⅡⅢで、ABA、Ⅱ+ⅢではAというラッキーな評価でした。一応、合格点だから何も言うことはないのですが、次の口頭試験で楽勝でパスされるには、弱点を押さえておく必要があります。口頭試験で筆記関連連問題が聞かれるからです。それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのままさらに高得点にするにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(19分56秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当り、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) (2)で示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4) (1)〜(3)を業務として遂行するに当り必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
(1)課題
①財源不足
我が国は人口減少・高齢化、莫大な財政赤字(国と地方を合わせて1000兆円の借金)を抱える中、税収は期待できない。また毎年の様に多発する水害、土砂災害の頻発、激甚化による複合災害、新型コロナウィルス対策費などに政府の予算を割り当てることになり、維持管理に当てあてられる予算は限られている。費税の増税などの取り組みも行われているが、税収は減少している。今後50年で190兆円もの財源が必要となるため、今後も財源が不足していくと思われる。
②技術者不足
■出来れば問題点ばかりでなく、技術者の視点で解決方針も示した方がよいでしょう
社会インフラの適切な維持・更新は定期的な点検結果を正確に診断できる技術が必要である。しかし、建設業全体と同時に技術者が減少する傾向にある。高度成長期に貢献した熟練技術者の退職、若手技術者の入職者数の減少は技術力の伝承が困難となっているため、定期的な点検結果の正確な診断が困難となり、適切な維持管理・更新を阻害する要因となっている。
③非効率な手法による維持・更新
これまでの維持管理・更新工事においては、スクラップアンドビルトと言われてきたように、社会インフラの老朽化が顕著になってから、建替や補修、補強工事を行う事後保全型が主体であった。そのためコストがかかり長期的な視点ではなく、プライオリティーが不明確で、これまでの非効率的な維持管理手法が課題であった。
(2)最も重要と考える課題と解決策
①アセットマネジメント
事後保全型から予防保全型への移行が有効と考える。
具体的には、アセットマネジメントを適用し社会インフラを資産としてとらえ、長寿命化を図るために更新時期をコントロールしコストの標準化を図る。
ライフサイクルコストの低減のため、点検診断、劣化予測、保全履歴をデータベース化し共有化を図り、必要な時期に誰でも検査利用できる仕組みを構築することにより的確かつ効率的維持管理更新工事に取り組むことができると考える。
②ICTの推進
休息に技術革新が続いているICT技術を高度に利用することで、社会インフラ施設の維持管理の効率化を図る。これにより最小の人員で最適な維持管理を行う。
具体策として、光ファイバー網を活用したCCTVによる遠隔管理、構造物に埋め込んだICチップによる施工情報・補修履歴管理及びこれらの情報のデータベース化による一元管理、住民等から道路管理施設の異常情報等を受け取る双方向型の情報提供システムの構築が挙げられる。
(3)リスクと対策
■リスクは〇です
地方自治体の維持管理の業務は、小規模で複雑な案件が多く、効率的に業務を進めることが困難である。業務の個別性が高いことから、発注者の仕様書作成が難しく、技術者の能力を評価することが困難である。
維持管理更新の高度な技術的判断が必要な場合でも、
適切な評価が行われないことがある。
そのためには、上位機関の情報を地方地域でも共有できる情報システムの構築、技術者派遣、地方講習会の開催等、技術支援を推進し技術力の向上を図る。
中小企業にも適切な利益が確保されるような発注方式を提案し、例えばPPP/PFIを活用した包括的な維持管理プロジェクトの契約方式ガイドラインの作成を行う。
(4)業務として遂行するに当り必要となる要件
①コンプライアンス
技術者としては、コンプライアンスを重視した行動に留意する。社会持続性の観点では、将来的な担い手確保が課題となっているため、長時間労働の是正、適切な賃金水準の確保、キャリアアップシステムの構築等、働き方改革の推進が重要である。
■①コンプライアンスはOKです。
②は目的方策が逆
②適切な更新
インフラ施設は日々劣化していく。計画的に適切な時期に適切な更新を行うことで、維持管理費を最小限に抑えることが可能であり、技術者として日々研鑽する。
本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。
Ⅱ−1−3
市街地における橋梁下部工の施工計画に当たり、施工の安全性に必要な検討事項を3つ挙げ、それぞれについて技術上の留意点及び施工上必要な措置等を具体的に述べよ。
(1)検討事項と技術上の留意点
①施工ヤード
市街地に施工する下部工施工は、施工ヤードが限られる。また近接構造物への影響、近接道路との離隔、工事用車両の進入出路計画、仮設足場計画、必要機材の配置、資材置場の確保、施工ステップ等を検討した上で、安全に施工できるヤードを選定する。
②仮設工法の選定
仮設工法は、掘削深さ、土質状況、地下水位、周辺施設、近接構造物との離隔等を検討し選定する。
施工前に地質状況、施工基面以下の土質を確認し、ボイリング、ヒビーング、盤ぶくれ等の可能性を検討し掘削時における締切内の安全性、近接施工による周辺地盤の影響を検討し、地盤改良工法などの対策を講じる準備をする。
③周辺状態
下部工工事の周辺に、小・中学校、病院、精密機械工場等に、工事の振動、騒音の影響がないか検討し、必要に応じて防音壁、施工機械の選定に留意する。
工事用車両進入口と地元車両の重なる箇所は、工事用車両出口と入口を分けるなど、地元車両との安全性を優先する。
■一応の課題は網羅されていますが、もう一歩踏み込んだ工夫を述べるようにしてみましょう。下のリンクに答えがありますので是非ご参照ください。
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat000001t52c-att/splaat000001t571.pdf
https://www.ejcm.or.jp/jcm/ronbun/16/pdf/16r-023.pdf
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-shiryo/kenkyu/program/04/04_07.pdf
http://sizu-dobokugisi.or.jp/report/thesis/report20082001_91.pdf
Ⅱ−2−1
図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、堤内地には耕作利用されており、現場へのアクセス可能な道路は無いものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。
(1)検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2)業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3)業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
(1)検討すべき事項
①工事用道路、施工ヤードの確保
橋脚を施工するために、農道からの工事用車両の進入路の確保が必要である。耕作地に作業用車両、資材置き場等を確保すること、施工箇所までは耕作地を横断することになるので、工事用車両の荷重に対し敷鉄板で養生する。
②仮設工法
橋脚は直接基礎であるため、支持地盤が固く、鋼矢板等による締切は仮設材の根入れ確保に苦慮することが予想される。地盤の状況、施工時期、流水部の状況、周辺状況等を検討し、開削工法を視野も入れ仮設工法を選定する。
(2)業務の手順
①施工時期
河床掘削は、梅雨時、台風時にあたる出水期を避け、渇水期に行う。天候には常に気を配り、近年見られる時期外れの大雨など、特異な状況が想定される場合は、工事をストップすることも視野に入れ、安全に配慮した無理のない計画とする。
②流水部の確保
河床部掘削時に、流水部を大型土のうで背替えを行い、掘削影響範囲からずらし、施工ヤードを確保する。
当該地区の渇水期の過去の河川流量より、流下能力を算定し、施工時における流下断面を確保する。
③仮設計画
河川内の施工となるため、仮設工法によって工程が大きく左右される。地盤の状況、施工規模、施工ステップを検討し、工程を設定する。
④ブロック積の影響
施工ヤード(耕作地)から橋脚までのアプローチは
途中にあるブロック積護岸への影響を考慮し、荷重をかけない方が良い点、異常は出水にも対応するため、橋脚位置までは、工事用桟橋の設置検討を行う。
⑤工事用道路
元々耕作地であった箇所は、工事用道路および工事用ヤードの撤去後を考慮し、耕作土上部をシートで被覆養生後、上部に土のう、敷鉄板を設置しておくことで復旧がしやすくなる。
(4)調整事項
施工前に3者協議(発注者、施工者、設計者)を行うこと、施工中も工程調整を行い、工事を効率的に進めることが必要である。
■この調整は一般的な工事上の注意点と読み取られてしまいます。経験の中から、プロマネとして複数工/業者を調整して、問題解決した例を挙げてみましょう。是非このリンクを参照ください。
調整力とは?人を動かす仕事の調整力を身につけよう
https://big-mac.jp/column/adjustment-power-of-work/
【現場監督】必要とされる能力や求められていることとは?
https://www.oreyume.com/column/p-cat-03/714/
「調整力を発揮して、『理想の形』に整えよう!」
https://jbmhrd.co.jp/blog/tama/tama21.html
建設プロジェクトマネジャ―の資質と能力に関する基礎的研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/procm1993/12/0/12_0_207/_pdf
Ⅲ−1
我が国は人口減少局面にあることに加え、総人口に占める割合は増加しており、他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか、全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では、今後の地域社会の維持・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ、施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当って、多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。
(1)インフラの維持管理・更新を実施するに当って、多面的な観点から課題
①地方財源の不足
■一般論になっているので、技術士の視点から社会問題の解決方針を示しましょう。
我が国は人口減少・高齢化、莫大な財政赤字(国・地方合わせて1000兆円の借金)を抱える中、税収の増加は期待できない。また、毎年の様に多発する水害・土砂災害の頻発・激甚化による複合災害、新型コロナウィルス対策費などに政府の予算を割り当てることになり、維持管理に充てられる予算は限られている。特に地方自治体では、逼迫する財政状況の中、維持管理を賄うことに課題がある。
②専門技術者の不足
インフラの適切な維持管理・更新は、定期的な点検と点検結果を正確に診断できる技術者が必要である。都市部に比べ地方地域には仕事量も少なく、そのような技術者が不足しているが課題である。
③若年層の不足
■「担い手不足」は問題文のテーマと重複しています。解決方針を示すと良いでしょう。
過疎地域では、大学生から都市部に住み、大学を卒業しても地元に仕事がないため、帰ってこない。また、建設関係は、IT産業、製造業にくらべ、残業の多さ、休暇取得の難しさ、室外の作業が多いなど若年層に不人気である。
④中小企業の技術
ICT等の活用などは、都市部の工事で活用されている実態があり、地方部までは浸透していないため、中小企業の技術が追い付いていない。技術力の向上には、中小企業への普及のための指導や説明会を増やすことが課題である。
⑤ICTの購入費
ICT等で使用する建機は、一般的な機械よりも高額である。地方の企業では、地方が生産性向上のためにはICT普及は必要不可欠であるため、導入のためのコストが課題となっている。
⑥技術力不足
地方部では、都市部に比べ仕事量も少なく、技術力を付けるような仕事も少なく、現状の技術力で仕事務を進められてしまう状況にある。高度技術力を必要とする仕事は、国等から、大手企業が受注してしまうため、技術力が不足しがちとなることが課題である。
(2)重要な課題と複数の解決策
■解決策は◎です。
重要な課題として財源不足を挙げ、解決策を述べる。
①PFI
限られた維持管理費の捻出のために、民間の資金調達や事業運営のノウハウを取り入れ、維持・更新事業を進める。
②アセットマネジメント
これまでの事後保全型管理から予防保全型管理への移行が有効と考える。具体的にはアセットマネジメントを適用し、社会インフラを資産ととらえ長寿命化を目指す為、更新時期をコントロールしコストの平準化を図る。また、ライフサイクルコストの低減のため、点検・診断・劣化予測、保全履歴をデータベース化し共有を図り、必要な時に誰でも検索、利用できる仕組みを構築することにより、的確かつ効率的に維持管理・更新工事に取り組むことができる。
③住民参加
地方の人材は限られているので、地元の人が、自分たちの地域を自分たちで診る。常日頃みているインフラの劣化状況を情報として共有し、集約することで無駄のない整備が可能である。
(3)リスクと対策
■リスクはよく考えています
新規整備事業に比較して維持管理の工事は、小規模、複雑な案件が多く、受注企業が効率的に業務を実施することが困難で、また、業務の個別性が高いことから、発注者の仕様書が難しく技術者の能力を評価することも困難である。これにより維持管理・更新の高度な技術的判断が必要とされる場合でも適切な評価が行われない場合がある。
その為には、現場に適した適切な工期設定による労働環境改善、適切な単価で発注するようにし、
■↓どういう形態か具体的に述べるようにしましょう。
適切な利益が確保できる発注形態を進める必要があると考える。