R1年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。 20210117
この過去問答案の答案ⅠⅡⅢの評価はBBBという残念な結果でした。他のⅡ、Ⅲ答案は時間切れでCとなっています。一番の理由は、課題が他領域に発散しているということと、解決策が機械や機構ダイナミクスの技術領域ではなく、改善の一般論になってしまっているということです。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。
また、波及効果、懸念事項、調整事項など、プロの技術士としての対応も本講座ではテキスト、テンプレートを用意して指導しております。このため誰でも短時間で正解できます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。
■この答案に対していただいたご質問、ご意見にコメントいたします。
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復元論文は、自己評価でもS社の講評でも、ⅠとⅢがA判定で、ⅡがB判定でしたので、合格ラインのギリギリかなと思っていました。
しかし、合否通知はオールBだったので、次回に向けてどのように改善したら良いのか方向性が見えなくなり、困っています。
復元論文を第三者に講評してほしいと思って、検索していたら御社のホームページにたどり着きました。ぜひご指導をよろしくお願いします。
■復元論文の採点制度はどこの機関で行ってもそれほど良い精度は得られません。そのぐらい文部科学省の採点基準はよくわからないものなのです。一方、筆記試験後は答案の採点結果によって口頭試験の準備をするか、翌年の筆記試験に備えるか判断しなければなりません。その意味から、多少評価が甘くなることは仕方ないことかと思います。合格の可能性があるならそれを信じて口頭試験に備えた方が筆記が合格していた場合に有利だからです。
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知識のインプットより論文のアウトプットを訓練した方が合格に繋がりやすいとは、よく言われることですが、有能なコーチに見てもらって軌道修正し続けなければ効率的ではないと思っていました。御社のプログラムは、添削個別指導に特化されているので、それがかなうのではないかと思い始めています。
■「知識のインプットより論文のアウトプットの方が合格に繋がりやすい」には同感いたします。
試験に関する知識は無数にあって、覚えきれるものではありません。実際、合格答案はたくさん拝見しておりますが、それほど高度な知識が書かれているわけではありません。
一方、答案の解答の方向性や提案内容は、その場で考えて提案できることですが、こちらの内容は合格答案と不合格答案ではかなり異なります。合格と相関が高いのは、出題者が問題で述べている要求(主題)に対して、本質的に応えられているかどうかです。この本質的内容の判断は、広い見識が必要なため経験豊富な講師でなければできません。
さらに、その添削結果の受講者への指導は、有能なコーチでなければ、考え方の軌道修正ができません。かつ、指導を効果的に行うには、「腹に落ちる」説明法やクイックレスポンス、添削回数が十分ある、質問がしやすい環境、予想問題練習まで行うなどの具体的な指導プログラムが必要です。当社の指導は、単なる添削・個別指導だけでなく、合格につながるあらゆる視点から受講者様のためになるようにと長年にわたって作り上げてきたものです。こうした多面的な講座の工夫があるため合格に寄与しているのです。
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なぜ、御社は、合格につながる指導ができるのでしょうか。合否判定の詳細がブラックボックスである限り、多くの合格論文、または不合格論文に接し、それらを分析して、合格論文につながる要素を見出すしかないように思いますが、そういう理由なのでしょうか。そうした次の指導につなげるための情報収集の一環で行われているのでしょうか。
■こちらもご推察の通りです 。当社では 無料添削や 受講生様の 再現答案添削を行うことによって 多くの 論文の評価点と実際の合否判定の評価結果との相関を取るようにしています。無料合格判定サービスとは、一般の方への奉仕活動であると共に、当社の合格につながる指導の情報収集の一環として行っております。これによって、採点の際の評点の精度を校正して合否判定の信頼性を高めています。
それと共に、答案の添削をするためには独自の模範解答のプロトタイプが必要であり、添削ごとに「有能な技術士ならこのような答案を書くはず」、という定性的な基準を用意しています。これは技術士分科会の方針や試験要綱、試験の出題傾向をもとに独自に推論してイメージを作り上げています。その内容は大まかには次のようなものです。
・問題の前置き文が意味する真の要求に答えている
・提案内容は部門科目の技術応用が見られる。
・課題、解決策は社会ニーズから推論して実効性が感じられる。
・モレダブリがなく、説明文が論理的に整然としている。
・課題遂行のための独創的な提案がされている。
・技術管理者としての組織の取りまとめ、調整力が感じられる。
こうした、模範解答基準をもとにして、添削、採点を行っておりますので、一貫して完成形に向かうスピーディーな添削が可能なのです。
問題 Ⅰ-2
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され,建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり,急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また,高度経済成長期と比べて,わが国の社会・経済情勢も大きく変化している。
こうした状況下で,社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには,戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点と共に示せ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。
(1) 社会インフラの戦略的メンテナンスを推進する上での課題
公共施設マネジメントの技術者としての立場で、地方自治体の社会インフラ・メンテナンスの観点で以下に述べる。
1)財政の観点
地方財政を分析すると、人口減少・高齢化に伴い、税収減・扶助費増となり、社会インフラに係る財政制約は厳しい。一方で、老朽化するインフラの安全確保と機能改善に多額の費用が必要である。全てのインフラを維持管理・更新することができないことが問題である。よって、既存施設の総量削減が課題である。
2)インフラ機能と社会的ニーズの観点
インフラの提供する機能と社会的ニーズを分析すると、両者にかい離があることが問題である。例えば、築40年の学校施設は、現在のICT教育や少人数学習に対して、スペースや設備が不十分である。よって、変化に応じた機能の見直しが課題である。
3)メンテナンスの実施体制の観点
メンテナンスの実施体制を分析すると、地方自治体の3割で建築・土木の技術者が居ない。特に、小規模自治体で深刻な問題である。事務職向けのメンテナンスマニュアルの整備や、民間の人材活用などによる、実施体制の強化が課題である。
(2) 最も重要と考える課題とその解決策
1)変化に応じた機能の見直し(最重要課題)
なぜなら、社会インフラを長期に使用することが、ストック効果を最大化するが、社会的ニーズに応じた変化に対応できなければ、長期に使用することができない。本課題は、公共施設長寿命化・再編計画と立地適正化計画を合わせて推進することで遂行可能であり、かつ、高い相乗効果を期待できる。
2)まちづくりと連携した機能の見直し(解決策1)
拠点エリアへの都市機能の誘導とインフラ機能の見直しを合わせて実施する。例えば、老朽化した学校施設の更新に合わせて、拠点エリア外の図書館や子育て施設を移転、複合化する。まちの魅力創出、住民の利便性向上のほか、公共施設の総量削減の効果も期待できる。
3)継続的なモニタリング(解決策2)
利用状況等を継続的にモニタリングし、施設評価を行い見直しにつなげる。例えば、利用1件あたりフルコスト等の評価指標を設定し、改善の余地のある施設を抽出する。また、実態データの見える化を工夫することで、民間からのスペース有効活用策の提案を誘発する効果を期待できる。
(3) 新たに生じうるリスクとそれへの対策
1)住民不満が高まるリスク
国土交通白書2020によると、施設の廃止や利用料金増に、住民の半数が反対している。上述の解決策は、社会インフラの戦略的なメンテナンスに効果がある反面、住民理解がないまま遂行すると、住民不満が高まるリスクを生じうる。
2)住民との合意形成・協働(対策)
これには、住民説明会やワークショップを開催し、住民と合意形成・協働する対策を講じる。特に、施設評価では、早期の段階より実態・課題を共有し、一緒に解決策を検討する。地域コミュニティの強化と、住民主体のまちづくりを誘発する効果がある。
(4) 業務として遂行するに当たり必要となる要件
(1)(3)を業務として遂行するに当たっては、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、次世代にわたる社会の持続性を確保しなければならない。
1)安全確保
施設の長期使用が事故の原因となってはならない。長寿命化の判断・根拠を明確化し、メンテナンス・サイクルを着実に実行することが最優先の要件である。
2)質の向上と財政の持続性の確保
財政の持続性を確保しなければ、諸課題を解決できない。インフラの維持管理・更新費を削減し、新規整備や機能改善の財源を確保する必要がある。このため、民間投資や官民連携を進め、コスト削減とサービスレベル向上をめざす。
3)継続的研さん
現在、新型コロナで、人々の働き方・暮らし方が変わりつつある。私は、新しい変化へ対応した多様な活動を支える基盤としての都市づくりに貢献するため、今後も技術の研さんに励む所存である。
Ⅱ−1−1
第二次国土形成計画(全国計画)が国土の基本構想として示す「対流促進型国土の形成」について,「対流」の概念にふれて説明せよ。また,国土の基本構想の実現に,リニア中央新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成が,どのように資することが期待されるかを述べよ。
(1)「対流促進型国土の形成」の概要
1)「対流」の概念
対流は、水や空気等の流体が、温度差によって動き熱が拡散し流れることである。
2)国土の基本構想
我が国は、高度成長期及びその後の安定的な成長によって、人口増加に伴い社会インフラを整備してきた。成熟した都市とインフラを活用し、人々の働き方・暮らし方が多様化している。対流促進型国土の形成は、多様な価値観での働き方・暮らし方に対応し、多様な人々が交流することで、新たな価値の創出をめざすものである。
(2) リニア中央新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成
1)リニア中央新幹線の効果
リニア中央新幹線は、東京・名古屋・大阪を高速に結び、短時間での移動を実現する。さらに、地方と地方をつなげ、日帰りでの移動可能な範囲が拡大する効果がある。
2)国土形成への役割
スーパー・メガリージョンの形成は、大都市・郊外・地方都市・田園を結び、人々の交流を促進する。さらに、Society5.0によって、リアルとバーチュアルの交流を合わせることでより高い相乗効果が期待できる。
Ⅱ−2−1
豪雨により大規模な浸水や土砂災害の被害を受けた地方公共団体において,防災の強化のために,過去に策定した立地適正化計画における居住誘導区域を見直すこととなった。本業務の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。
(1)居住誘導区域の見直し案(都市計画審議会から意見聴取する段階の案をいう)を作成するために,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点,工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
(1) 調査、検討すべき事項とその内容
立地適正化計画は、都市の将来像を示し、防災はもとより、持続可能な都市づくりを行うため、マクロ・ミクロの多面的な観点で調査、検討すべきである。
1)マクロ(全市)的な観点
マクロ(全市)的な観点からの調査事項を示す。
・人口、財政、産業、土地利用等
・災害の種類ごとの範囲、被害想定
・公共交通ネットワーク
・公共施設、避難場所の配置等
これらの調査に基づき、防災指針を検討する。
2)ミクロ(各地域)的な観点
ミクロ(各地域)的な観点として、人口、被害想定、避難場所の能力(収容人員、防災設備等)を調査する。また、財政負担と改善効果を検討するため、被害額、公共施設の改修費、又は災害危険エリアの住民の移転補助金を算定する。
(2) 業務を進める手順、留意点、工夫点
1)上位・関連計画との整合
まず、居住誘導区域の見直しは、まちづくりに大きな影響を及ぼすため、総合計画等の上位・関連計画との整合に留意すべきである。上位・関連計画と整合が取れなければ、それらの見直しも検討すべきである。
2)実態・課題・見直しの方向性の明確化
上述した調査、検討内容をGIS地図に重ね合わせ、見える化の工夫を施す。例えば、スプロール化し人口が増加するエリアと、土砂災害の危険エリアが重複している課題を明らかにする。関係者との認識の共有と、改善効果の見える化に有効である。
3)継続的なモニタリング
計画を見直す効果を計測するため、評価指標の設定に留意する。例えば、災害エリアの人口減少等の指標を設定する。計画を運用し、効果がなければ見直すといった改善につなげることができる。
(3) 関係者との調整方策
1)行政庁内の横断的実施体制の構築
居住誘導区域の見直しは大きな影響を及ぼすため、都市計画部門が主体となり、道路、公園、財政等、行政庁内横断の実施体制を構築する。特に、公共施設再編と合わせて実施することに留意する。財政負担の軽減効果が期待できる。
2)住民との合意形成・協働
住民説明会やワークショップを開催し、住民との合意形成・協働を推進する。特に、居住誘導区域外の住民の理解が不可欠である。災害リスク情報とともに、経済的インセンティブを見える化する。
私は、業務の担当責任者として、関係者との調整にリーダーシップを発揮し、業務をマネジメントする。さらに、地域コミュニティの強化と地域経済への波及効果をめざす。
Ⅲ−2
近年、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組である「グリーンインフラ」が求められている。
グリーンインフラは、様々な状況に応じた統合的解決にアプローチする手法として有効であり、まちづくりの様々な場面で活用することが想定される。
(1)上記のグリーンインフラを活用しうる場面を挙げて、まちづくりを行う際の課題を技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対するグリーンインフラによる解決策を複数示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への解決策を示せ。
(1) グリーンインフラを活用したまちづくりの課題
都市計画の技術者としての立場で、グリーンインフラとしての公園・緑地等を活用する観点で以下に述べる。
1)自然的環境保全の観点
公園・緑地等を自然的環境の観点で分析すると、生物の生息・生育地としての役割がある。緑と水面は、その蒸発散作用によりヒートアイランド現象を緩和し、都市環境の改善に活用できる。都市化の進展により、緑の減少、孤立化が問題である。省エネ、低炭素化、及び生物多様性確保のために緑の充実が必要である。よって、エコロジカル・ネットワークの形成が課題である。
2)防災機能の観点
公園・緑地等を防災機能の観点で分析すると、都市の大規模火災の延焼防止、防災備蓄、避難場所、及び復旧の拠点として活用できる。ひん発・激甚化する自然災害へ対応した防災機能の強化が問題である。よって、緑の防災機能の充実が課題である。
3)市民活動の場の観点
公園・緑地等を市民活動の場の観点で分析すると、憩い、レクリエーション等の多様な活動の場として活用できる。しかし、既存の緑地等の機能と社会的ニーズがかい離している問題がある。よって、ニーズの変化に対応した機能の見直しが課題である。
(2) 最も重要と考える課題とその解決策
1)エコロジカル・ネットワークの形成(最重要課題)
なぜなら、エコロジカル・ネットワークは、グリーンインフラの多様な機能を最大化できるため高い効果が期待できる。コンパクト・プラス・ネットワークの推進と合わせて遂行可能である。
2)都市のコンパクト化による郊外の緑地等の充実(解決策1)
人口減少に伴い、生活に必要な都市機能を維持する目的で都市のコンパクト化を推進している。これにより、居住誘導区域外で、緑地等が確保できる余地が生まれている。例えば、田園住居地域を導入し、都市化を抑制し営農環境を確保しつつ、自然的環境を創出・保全する。
里山等の周囲に農地等の緑地を緩しょう帯として設け、エコロジカル・ネットワークの核とする。
3)道路・鉄道・河川等によるネットワーク化(解決策2)
都市の内部では、空閑地や空き家が発生している。まちの魅力創出と都市環境の改善のため、公園・緑地等の整備を進める。これらを、道路・鉄道・河川等によるネットワークで結び、緑の回廊とする。例えば、LRTの鉄軌道を芝生化する。
緑の回廊は、風の通り道ともなり都市気象の改善効果も期待できる。
(3) 波及効果と懸念事項への対応策
1)良好な都市景観の形成(波及効果)
上述の解決策を実行することで、良好な都市景観の形成への波及効果が期待できる。景観は、都市及びその周辺環境と、そこで営まれる人々の活動によって形成される。良好な景観は、定住促進、産業振興、観光客の増加をもたらし、住民の景観意識のさらなる向上、まちの魅力向上という好循環を生む。SDGsの11番、「持続可能な都市づくり」につながる。
2)区域内外の行政サービス格差(懸念事項1)
都市のコンパクト化によって、居住誘導区域の内外で行政サービスの格差が生じ、住民不満が高まる懸念がある。これには、区域外の住民へのきめ細かな対策を講じる。例えば、公共交通空白エリアにデマンド交通を導入し、ニーズに応じて運行する。
3)自然災害の発生リスク(懸念事項2)
ひとたび大規模な自然災害が発生すると、都市特有の被害が拡大するリスクが懸念される。これには、市街地再整備により対策を講じる。建築物の不燃化・耐震化、道路の拡幅等を行い、防災・減災性を高める。省エネ、バリアフリーの面でも有効である。
私は、都市計画の技術者として、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考え、地球環境保全等、社会の持続性の確保に貢献するため、今後も技術の研さんに励む所存である。