R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114
この試験答案ⅠⅡⅢの評価はABCで、Ⅱ+ⅢはBと惜しい評価でした。その理由としてⅢで「受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等」という品確法の基本について具体的な提案ができていなかったことがあげられます。これがC評価の原因と思われます。ご経験から判断しますと、本来Ⅲ-1を選択すべきところをⅢ-2選択されて、問題の選択を誤った可能性もあります。
敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。この問題のテーマ品確法は建設の法務にかかわる難解な問題でした。技術士としての「技術応用」するには経験業務から選ぶ必要があります。おそらくこの方もⅢ-2ではなくⅢ-1(担い手確保)を選択されたら具体的に提案が可能だったかと思います。このような対応力は練習を重ねていけば、身につけられます。実際、講座の受講生様でそのように問題を変えられて正解されている方もいらっしゃいます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。
音声ガイドによるコーチング指導内容(12分54秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題 Ⅰ-2
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1) 社会・経済情勢が変化する中で、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
■この分野は見識が十分なご様子であり、申し分ありません。◎
(1)予防保全による長寿命化
高度経済成長期に整備した社会インフラは、一斉に更新の時期を向かえている。一方、財政状況の厳しい地方自治体は、全てに事後保全を実施する余裕も時間がない。よって、適切なメンテナンスサイクルの構築によってライフサイクルコスト(LCC)を低減し、予防保全によって長寿命化を図ることが課題である。
(2)維持管理の担い手確保と育成
建設産業の就業者数は、55歳以下が35.3%であり、10年後には大半が引退する。29歳以下は11.6%であって、厳しい雇用・労働環境の影響で、新規入職者は増加しておらず、離職者の数も多い。建設産業は、地方の守り手であって、維持管理の担い手を確保し育成するかが課題である。
■担い手問題はメンテナンスと直接の関係がないので要注意です。
企業化や民間活力利用ならOKです。
(3)ICT化の推進
補修工事は、高所作業も多く、足場が必要であり、また、図面が無い場合や、過去の補修記録がない場合もある。ドローンによる点検結果を、データベース化し、これらがビックデータ化する事で、AIによる診断が可能になり、技術者の判断のサポート資料として利用できる。よって、維持管理のICT技術の推進が課題である。
2.最も重要な課題とその解決策
最適なインフラメンテナンスを構築することで、維持管理の平準化もでき、予防保全による長寿命化を図ることが最も重要な課題である。以下に解決を記載。
(1)アセットマネジメントの適用
以下のマネジメントを実施することで、社会インフラの資産化を図る。
①日常マネジメント:ボランティアによる道路清掃や簡易な道路補修を実施。
②管理マネジメント:予防保全の計画を立案。
③経営的マネジメント:社会インフラのストック効果を数値化して評価し、効果の高いものを選択し、予算を集中させる。(選択と集中)
(2)インフラメンテナンス2.0の活用
点検、診断、補修補強、記録の各データを、国土データプラットフォームに登録し、ビックデータ化させ、AIによる診断を可能にする環境を整備する。そして、AIが判定したデータを、技術者の判断のサポート資料として利用する。
(3)維持管理技術の促進
①CIMの活用:調査、設計、施工、維持管理の各段階で、3Dデータを発展させ、関係者が連携する。
②設計時の配慮:設計時に維持管理時のメンテナンス性を考慮した部材や、耐久性のある部材を仕様化することで、長寿命化を図る。
3.新たなリスクとそれへの対策
(1)新たなリスク
厳しい財政状況の地方自治体や民間企業では、これら事項を実施する初期導入費が不十分である。また、事業の開始から維持管理までの全体最適を図れる地方自治体職員の数も限られている。
■リスクとして正しくありません。初期費用、職員数も分かり易い懸念事項に留まっています。(そのようなことを技術士に聞いても試験にならないので、技術士としての提案を考えてみましょう)
(2)それへの対策
維持管理に関わる初期導入費に関しては、一定の条件化で、補助金を支給する支援体制を整備する。また、地方自治体職員をサポートする体制で、CM契約を締結し、CMRが全体最適化を立案し、各工事関係者との調整を図る。
4.必要な要件
(1)技術者としての倫理
維持管理の業務に際し、公共性を留意し、安全安心を最優先とする。また、業務上知り得た秘密に対しては、正当な理由がない限り、非公開とする。更に、新技術に対して、自己研鑽に励み、多分野の時術省と協業する場合は、互いを尊敬しあう。
■ここはこのような 一般的な心構えとしての 技術者倫理を述べる 場所ではなく、 問2 で挙げた解決策に対して、自らが他者に比べていかに技術者倫理を高めて行うか のための要件です。 具体的にアセットマネジメントや インフラメンテナンス、維持管理技術の促進に対してどのように取り組んでいくか、 その要件を述べるようにしましょう。
(2)社会の持続性
維持管理による長寿命化は、SDG’sの持続可能な開発目標である。また、維持管理業務開始に際しては、自然環境と生活環境への影響を予測評価し、必要に応じて環境保全を実施しなければならない。更に、富の再配分化、地域間格差の是正を考慮して、事業を計画しなければならない。以上
■ここは一見 良さそうに見えますが しかしSDG’sについての理解が足りないようです。SDG’sとは自らの活動の保全を目指したものではなく、他者に対する貢献を意味しています。
Ⅱ−1−4
鉄筋コンクリート構造物の劣化機構について次のうちから2つ選び、それぞれについて、劣化現象を概説せよ。また、選んだ劣化機構について、劣化を生じさせないように事前に取るべき対策を各2つ以上述べよ。
① 中性化、②塩害、③凍害、④化学的浸食、⑤アルカリシリカ反応
1.1塩害の概説
■見識としては十分です。
しかし概説が冗長です。
対策はもう少し内容がわかる説明が良いでしょう。
コンクリート中の塩化物イオンが0.3kg/m3を超えるとコンクリート中の鉄筋の不働態被膜が破損し、錆が発生する。また、発生した錆が膨張することで、コンクリートにひび割れが発生し、そのひび割れに雨水等が侵入し、さらに発錆が進行し、鉄筋の断面欠損やかぶりの剥離が発生する。
1.2事前に取るべき対策
以下に事前に取るべき対策を記載する。①川砂利を使用、塩分の含まれた骨材は洗浄を徹底、②鉄筋にエポキシを塗布、③エコセメントを使用する場合は塩化物イオン濃度を考慮した配合、④高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を使用、⑤表面含浸。
2.1アルカリシリカ反応の概説
コンクリート中の水酸化アルカリと、シリカ性分を含んだ骨材とが反応し、シリカゲルが骨材の周辺に形成される。また、このシリカゲルがコンクリート中の水分を吸収することで膨張し、コンクリートにひび割れが発生する。発生したひび割れには、雨水等が侵入し、上述と同様に発錆する。
2.2事前に取るべき対策
以下に事前に取るべき対策を記載する。①シリカ反応が無の骨材を使用、④高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を使用、⑤水分侵入の防止を図る表面被覆を実施。
Ⅱ−2−2
図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、提内地は耕作利用されており、現場へのアクセス可能な道路は無いものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。
(1) 検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2) 業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3)業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係との調整方策について述べよ。
1.検討すべき重要な2項目
(1)基礎下の地盤状況
基礎を施工するに際に、河川区域内であって、堤内地は耕作利用されていたことを考慮し、地下水位の高い、粘土地盤での工事と想定し、以下ついて検討する。①地盤のデータから直接基礎とはいえ、支持層までの深さを考慮して、シートパイルを打設し、シートパイルのヒービング、盤膨れ防止対策として、薬液注入を実施して掘削を実施する。②掘削後の底盤は、盤膨れ対策として地盤改良を検討する。③電源、排水、吸水先について、調査する。
■河川区域内で行う場合に優先して検討すべきことがあるはずです。
例 河川の増水対策、仮設道路など
基礎下の地盤状況は土質基礎の設計そのものであって、施工とは別です。
(2)マスコンクリートの温度対策
2車線道路の橋脚工事なので、マスコンクリート工事の温度対策について以下を検討する。①配合:低発熱型のセメントを採用し、高性能AE減水剤を利用することで、単位水量の低減を図(図添付)る。②製造:骨材、セメント、水を冷やし、製造後のコンクリート温度上昇の低減を図る。③運搬:直射日光がアジテータ車に直接あたらないように停車する。なお、コンクリートの打設は冬季以外を想定しているので、寒中コンクリート対策については考慮しない。④打設:打込み高さ、打設温度、打設間隔を考慮する。④養生:温度ひび割れ対策として、パイプクーリングを検討する。また、ブルーシートをかぶせることで、表面の乾燥による乾燥収縮ひび割れ防止、打設後の沈下による沈降ひび割れに対してはタンピングを検討する。
■マスコンの温度対策も、建設・鋼コンの設計の領域であって、施工とは別です。施工として優先して検討すべきことが他にあるはずです。
コンクリートの打設ならわかります。
2.業務の手順(留意、工夫)
施工は前述の業務手順に沿って実施する。
(1)施工計画
打設時の作業員のシフトや残業時間を調整する。また、工事用のアクセス道路のトラフィカビリティ、地下水及びポンプアップによる流水の排水先を確認する。
(2)施工
①シートパイル/薬液注入/掘削/底盤の地盤改良を実施し、シートパイル・地下水・地盤沈下の状況について、動態観測を実施する。
②フーチングの鉄筋/型枠/コンクリート打設においては、コールドジョイン及びジャンカ防止策として、打設間隔及び締固め方法を調整する。また、フーチンコンクリート打設後の埋め戻し土は、掘削土を使用。
③柱、ウエブの鉄筋/型枠/コンクリート打設
3.関係者との調整
工事業者との安全対策について以下を調整する。
①高所対策:2m以上の作業時には足場を設置し、作業板の設置、開口部の安全網の設置し、安全確認が確認されたカラーTAGが付与された足場のみを使用する。
②公衆災害:埋設物の保護対策、段丘崖に工事用のアクセスや歩道を設置しない事を調整する。
■作業上の注意点であって、プロマネが課題遂行するための取りまとめになっていません。
Ⅲ−2
「公共工事の品質確保の促進に関する法律」には、品質確保のために、発注者の責務として公共工事の品質確保の担い手が育成・確保されるための適正な利潤を確保することができるように予定価格を適正に定めることが、また、受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等が明記されている。また、一般社団法人日本建設業連合会からは、下請取引の適正化を図るため受注者である元請企業(元請負人)自らが発注者と適菜請負契約を締結することが不可欠であるとの方針が示されている。このような状況を踏まえて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1) 担い手の育成・確保のため、元請負人(受注者)が下請負人(協力会社)と契約を締結する場合、適正な利潤を確保することができる下請契約を締結する上での改題(留意点)を、多面的な観点から抽出し、その他に内容を観点ともに示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対応について、専門技術を踏まえて考えを示せ。
1.課題の抽出と内容の観点
(1)働き方改革による処遇改善
建設産業の生産性は、労働集約型で屋外での単品受注生産であるため、製造業の生産性と比べて著しく低い。よって、建設技能者の労務費は増加する。一方で、案件を受注するためには、技能者の給与の削減が実施されるので、下請け契約時に、いかに働き方改革による処遇改善を評価するかが課題である。
■いずれも「受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等」とは関係が薄いです。これがC費用化の原因と思われます。
(2)外国人の採用
少子高齢化による人口減少と厳しい雇用・労働環境の影響で建設産業の就業者は高齢化が進んでいる。一方、出入国管理法が改正され、「技能労働」による単純作業が可能になった。一方、十分な受け入れ体制が整っていない協力会社で、外国人を採用した場合に、労働災害も発生する場合もあるので、外個人の採用状況について、いかに評価するかが課題である。
■担い手不足を解消する方法は、ここでは問題外です。外国人を採用したとしても下請け契約は必要です。
(3)中小の協力会社のICT導入
持続可能な建設産業を維持するためにも、ICT導入による生産性向上は必要である。一方、中小の協力会社は資本金が少なく、ICTの導入が遅れており、技術力が低い。よって、下請け契約時に、いかにICT建機の導入状況を評価するかが課題である。
■ICTは経営改善には寄与しますが、ここでの主題ではありません
2.最も重要な課題とその解決策
建設産業は、地方の守り手であり、持続可能な建設産業を維持するためにも、いかに働き方改革による処遇改善を評価するかが最も重要な課題である。以下に解決策を記載する。
(1)長期労働時間の是正
①最適な工事期間の設定:人員の導入計画で、週休2日、天候、作業の準備等を含まれているかを評価する。
②施工時期の平準化:年度末に工事が集中している場合は、適正な人材が確保されているか確認する。
■主題とは無関係なテーマに発散しています。これがCの理由です。
(2)建設キャリアアップシステムの導入
建設キャリアップシステムを導入することで、以下の事項が明確になる。①社会保険の加入状況、②保有資格、③業務経歴、④給与、⑤入退管理状況、⑥各種書類の手配状況。
(3)女性活躍の機会
以下を整備することで、出産後の復職状況を整備されているか評価する。
①女性用トイレ、更衣室、託児所手配状況。
②事務所勤務での、フレックスタイム、テレワーク、時短勤務の採用状況を評価する。
(4)ICT導入状況
ICT建機としてマシンガイダンスやマンコントロール付きバックホウの導入状況や、3D測量による出来形管理の実施状況を評価する。
(5)
内容を忘れました。
3.新たなリスクとそれへの対策
(1)新たなリスク
厳しい財政状況の中小の協力会社では、これらを実施する初期導入費用を捻出する余裕がない。また、これら全体最適化を図れる人材が不足している。
■リスクとして正しくありません。初期費用、職員数も分かり易い懸念事項に留まっています。(そのようなことを技術士に聞いても試験にならないことを理解し、技術士としての提案をしましょう。)
(2)それへの対策
働き方改革に関わる初期導入費用については、一定の条件で補助金を支援する支援体制を紹介する。協力会社の社員を一定期間元請へ出向させることも、人材育成に有効である。
また、監理技術者となりうる一級土木施工技師、一級建築士、一級管理施工技術者等の資格取得を通じて時術確保も有効である。また、資格習得後は、昇給昇格をさせ、資格取得によるインセンティブを設定することも有効である。