№6 R3年 建設部門、道路の答案について添削致しました。 2021/08/05

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この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。これなら合格の期待が持てます。ただし、道路技術士としての専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。内容的には、大きなテーマを包括的に捉えるのではなく、問題点を断片的に列挙する傾向があるように拝見いたします。できたら「・・新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で・・」に応えるたる技術応用による解決方針を示してください。

 また、長い見出し、箇条書きは印象悪いので不利かもしれません。見出しに2行、課題の選定理由を6行もかけるとはやや冗長です。逆に技術面からの提案を増やすようにしてください。そして比較的困難なく思いつく提案も見受けられますので、できたらもう少し先読みした分析が欲しいです。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分33秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

Ⅰ−2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取り組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害による被害を軽減又は防止するための課題

【課題①】いかに被害対象を減少させるか(防災ソフト対策の観点)

・災害時には避難情報や避難指示が発令されているが、逃げ遅れによる人的被害に加え、建物の倒壊等の被害が発生している。

・気候変動の影響で、災害発生条件が変化している可能性がある。

・防ぎきれない災害は発生すると認識し、被害最小化のために被害対象範囲を減少させる必要がある。

■問題点を断片的に列挙するだけでなく「・・新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で・・」に応えるたる技術応用による解決方針を示してください。

長い見出し、箇条書きは印象悪いので不利かもしれません。

【課題②】いかに関係者全体で災害抑制対策を実施するか(防災ハード対策の観点)

・近年、堤防の破堤や、強風による建物の倒壊、住宅屋根の破損など、想定外の規模の災害による甚大な被害が発生している。

・堤防の破堤を例にすると、河川管理者のみの対策では防ぎきれないため、行政・民間・自治体などの関係者が協力して災害抑制対策を実施する必要がある。

■協力・・確かに要りますが、しかし技術士としてはどう導いていきますか。

【課題③】いかに被害を最小化し早期復旧するか(災害復旧の観点)

・風水害により、防災拠点や医療福祉施設、道路や空港などの重要インフラが広域で被災している。

・人命救助や被災地の復旧支援のためには、社会経済が復旧不可能なダメージを受けないように、被害を最小化し、早期復旧のための事前対策を実施していく必要がある。

2.抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題とその課題に対する解決策

・最も重要と考えられる課題は、課題①いかに被害対象を減少させるか、である。

・対策必要箇所が減少するため、効果的な早期の対策が可能になる。また、被災範囲も減少するため災害発生時の早期復旧が可能になるなど、他の課題解決にも寄与するためである。解決策を以下に示す。

■見出しが2行、課題の選定理由も6行と冗長です。これは答案なので簡潔にいきましょう。

【解決策①】防災情報の充実

・土砂災害警戒区域や浸水想定区域等の危険箇所の認知度向上のため、行政による危険箇所の説明会や地域での防災教育を継続していく。

・土砂災害や強風、高潮、波浪などの災害リスクのある箇所は、危険箇所の看板を設置するなど、日常的に危険を認識できる環境を整備する。

■技術面からの提案を増やすようにしてください。

【解決策②】低リスク箇所への誘導

・土砂災害防止法による建築規制を進めるとともに、土砂災害警戒区域内などの危険箇所内の建物は、所有者による移転や補強を継続的に促していく。

・浸水被害軽減区域では、固定資産税の減免や住宅ローンの優遇など、インセンティブを付与し危険箇所に住まない工夫を行う。

【解決策③】避難体制の強化

・レーダー雨量計Xレインや河川ライブカメラ、危機管理型水位計を用いて高精度の洪水予測を行う。

・それぞれの状況に応じた適切な避難のため、マイ防災マップやマイタイムラインの作成を支援する。

3.解決策を実行しでも新たに生じるリスクとそれへの対策

【新たなリスク】正常性バイアス

・被害対象範囲が減少することで「自分だけは災害に合わないだろう」という正常性バイアスが働き、逃げ遅れによる人的被害が発生する可能性がある。

■わりと普通に思いつくこと。もう少し先読みした分析はありませんか

【対策】逃げなきゃコール

・遠くに住んでいる親族や地域防災リーダーなど、親しい人から災害の緊急性や危険性を伝えることで、正常性バイアスの防止と避難の実行性を向上させる。

4.倫理と社会の持続可能性の観点からの業務遂行要件

技術者倫理の観点

・住民の安心安全を第一に考え、災害危険箇所や災害リスクを説明するときは、メリットやデメリットを客観的事実として、住民目線で分かり易く伝えることが重要である。

社会の持続可能性の観点

・防風林やため池、山地の水源かん養機能の確保など、自然と防災の共存を常に念頭に置いて、将来世代に続く防災まちづくりを検討していくことが重要である。                   以上

Ⅱ−1−4 土工工事において施工プロセスの各段階でICTを全面的に活用する工事をICT施工というが、ICT土工の効果を2つ説明せよ。またICT土工における出来形管理の手法を具体的に2つ挙げ、それぞれ概要を説明せよ。

1.ICT土工の効果  アンダーラインは不要です

【効果①】作業の効率化

・一般的な土工では丁張を設置し重機による掘削を行う。ICT土工の場合は、重機の操作画面に計画勾配等が表示されるため、丁張設置が不要となる。

■丁張は結果であって、それが省力化ではありません。形にとらわれずに本質的違いを述べるように。

・また、大容量通信を用いた場合は、オペレーターの技量次第では複数台の重機を同時に操作可能となり、効率性が格段に向上する。

【効果②】作業員の危険作業の減少

・遠隔地から操作可能となるため、災害現場での二次被害や火山ガス、熱中症などの作業員の危険作業やリスクを減少させることができる。

・作業員が現場に立ち入ることが減るため、重機と作業員の接触による事故発生も抑制できる。

2.ICT土工の出来形管理手法

【手法①】UAVによる出来形測量

・UAVによる3次元測量の実施により、これまで人力で計測していた施工延長や土量が、点群データとして取得され、土工数量等が短時間かつ高精度で算出可能となる。

■UAVは飛行手段であって、測量原理の説明までするように

【手法②】VRデバイスでの竣工検査

・VRデバイスで設計データを表示させることで、視覚的に分かり易い形状確認、検査が可能となる。

・遠隔臨場とした場合は、現地に行くことなく竣工検査実施が可能となり、移動時間が無くなる。

■VRデバイスの検査はともかく、ここはICT土工における出来形管理の手法ですから、それにつなげる結論とするように。

↓末尾の「以上」は不要です。

 以上

Ⅱ−2−1 近年、未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路等の安全確保に関心が高まっており、ある市街地においても生活道路を含めた緊急的交通安全対策が検討されている。この対策の担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査、検討すべき事項とその内容

①道路構造の把握

・子供の移動経路上の道路構造を把握する。具体的には、道路規格、幅員、設計速度、歩道の有無、歩道の幅員などの基本事項に加え、安全対策としての道路標識やガードレールの有無などを把握し、県と運基礎資料とする。

■子供の移動とはどこからどこなのか。学校、塾など焦点を絞る。ゼロベースで調査するのではなく、この分野の経験が問われています。

②交通量の把握

・移動経路の道路の交通量を把握する。特に、事故が発生した場合に被害が大きくなりやすいバスやトラックなどの大型車両は、通園通学時間帯の詳細な交通量データを把握する。

③周辺道路における過去の事故発生データ

・周辺の道路で発生した事故について、発生時間帯や事故内容、発生箇所、事故発生箇所の地形的な特徴等を整理して、今回の検討箇所と比較する。ここであと一文何か記載したが忘れた。

■過去データからフィードバックは〇ですが、しかしねらいまで示すことです。考え方が問われています。

④交通安全が損なわれる原因の把握

・対策を検討するため、交通の安全が損なわれる原因について検討を行う。

■ここは↑書かれていることの意味が不明です。

2.留意すべき点、工夫すべき点を含めた業務実施手順

【手順①】資料収集整理

・道路台帳や道路計画時の設計資料データ、事故資料を収集整理する。

・収集資料を基に、机上で交通危険箇所や現地詳細確認箇所を抽出しておくことに留意する。

・また歩道橋などがある場合は、道路附属物点検結果を収集し健全度を把握するなどの工夫が必要である。

■形式的な見出しではなく、真に必要な対策は何か絞って具体的に挙げるように。「とりあえず、最初は基礎調査・・」とか言うのは△です。

【手順②】現地確認

・対象箇所の現地確認を行い、植生により見通しが悪い箇所や事故後の補修が実施されている箇所など、図面で把握できない情報を取得することに留意する。

・周辺の幼稚園や学校、バス会社や警察など実際の利道路利用者にヒアリングを行う工夫が必要である。

【手順③】対策の検討

・緊急対策としては、速効性の高いライジングボラードやシケイン、ハンブなどの設置を検討することに留意する。

・抜本的な対策も併せて検討し、状況に応じて選択もしくは追加対策できるような工夫を行う。

3.業務を効果的、効率的に進めるための調整方策

周辺住民への説明:周辺準民や保護者の方に対策内容の説明会を実施し、対策実施について了解を得る。

警察:対策実施にあたっての道路使用許可を得る。また状況に応じて通行規制の申請を行う。

3次元データの作成及び説明:上記の説明時には、対策の3次元データを作成し、ステークホルダーに対して分かり易い説明を行うとともに、理解度の向上を図る。

■3次元データを使うほど立体的で複雑な説明とは思えません。住民には3Dより、本質的な安全や技術配慮が有効です。

Ⅲ−2 高速道路ネットワークの進展に伴い、社会経済活動における高速道路の役割の重要性は増しており、持続的な経済成長や国際競争力の強化を図るため、高速道路をより効率的、効果的に活用していくことが重要である。しかし、我が国では、限られた財源の中でネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線区間となっており、諸外国にも例を見ない状況にある。

(1)暫定2車線について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.高速道路の暫定2車線についての課題

【課題①】いかに災害時に交通を確保するか(人流・物流の観点)

・近年、気候変動による豪雨の激甚化、広域化により、土砂災害や水災害が頻発している。また、南海トラフ地震など首都直下型の地震発生も懸念されており、災害発生リスクが増大している。

・暫定2車線区間で災害が発生した場合は、ほぼ確実に通行止めとなり、避難や救援の人員や物資の輸送に大きな影響を与える。

・そのため、災害発生時に道路交通を確保する必要がある。

■2車線だからどうするのか。う回路やネットワークなど解決の方針を具体的に提案してください。

【課題②】いかに安全な道路にするか(安全の観点)

・暫定2車線区間はそのほとんどが対面通行となっており、ワイヤーロープ等での対策が実施されているが、事故が発生した場合は正面衝突になり易い。

・後続車両も事故をよけることが困難であり、巻き込まれることが多く、人命被害が甚大になり易い。

・そのため、事故が発生しにくい、発生しても被害を最小化できるような安全な道路にする必要がある。

■具体的に方針まで示す。

【課題③】いかに道路インフラを長寿命化するか(維持管理の観点)

・高度経済成長期に建設された高速道路インフラは、建設後50年を超える老朽化インフラが急増していく。

・暫定2車線では、道路の再構築や道路施設更新時には大規模な通行止めとなり、高速道路ネットワークへの影響が懸念される。

・そのため道路インフラを長寿命化する必要がある。

■この提案は2車線とは直に関係ありません。

2.抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題とその課題に対する解決策

・最も重要と考えられる課題は、課題①いかに災害時に交通を確保するか、である。

・災害時に高速道路を通行可能にできる対策が実施出来れば、同様の方法で事故発生時やインフラ修繕時の交通確保ができ、他の課題解決にも寄与できるためである。解決策を以下に示す。

■前置きが長いです。簡潔に。理由はなくても構いません。

【解決策①】災害に強い国土幹線ネットワークの構築

・高速道路の暫定2車線区間を4車線化する。災害や事故等が発生しやすいリスク箇所は、優先的に整備し、効果の早期発現を図る。

・リダンダンシー確保のため、国道や一般道とのダブルネットワークを確保する。

・防災危険箇所の対策実施で災害リスクを低下させる。

【解決策②】効果的な情報提供

・ETC2.0の通行実績データから、災害時でも通行可能な道路を示す通れるマップを早期に作成公表する。

・通行止めの基準を降雨量から土壌雨量指数に移行し、制度の高い効果的な通行止め情報とする。

【解決策③】局所的な防災減災対策

・高速道路や橋梁の被災や流出防止のため、護岸整備や根固め工の設置、支承補強などを実施する。

・高精度のLP地形図で検討した大規模土砂災害リスク箇所は、事前の被害減災対策を実施する。

・高速道路上で一般道がこ道部となっている箇所は、徒歩移動、避難用の坂路を構築し、異常時の緊急避難路して活用する。

3.解決策を実行しでも生じる新たなリスクとそれへの対策

【新たなリスク】技術革新による高速道路の需要変化

・高速道路の4車線化に費用も時間も要する。

・その間、自動運転社会やコンパクトシティが実現した場合には、例えば移動時間の概念が無くなるなど、交通の考え方が大きく変化する。高速道路に求められる役割や需要が変化し、期待した整備効果が発揮されない可能性がある。

■四車線化が完了した時点でのリスクです。コンパクトシティは別要因であり、ここでは関連付けない方がよいでしょう。

【対策①】デジタルツインとAIによる将来需要予測

・デジタルツイン上で現実世界と連動する交通シミュレーションを実施し、AIで今後の道路ネットワークの需要予測を行い、需要構造の将来予測を行う。

■AIは情報工学。道路技術での対応はありませんか。

【解決策②】PDCAサイクルによる計画の定期点検

随時PDCAサイクルで整備効果を分析し、需要に適合する整備計画に見直すことで、時代に即した効果的な対策を実施していくことが重要である。

■PDCAは技術者の心構えとしてはOK。しかし道路技術の応用はありませんか。

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