№21 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/06

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、オールBと残念な結果でした。指摘事項は今後の参考としてください。

 技術士試験では、答案を暗記してアレンジして書くだけでは合格出来ません。技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害を防止軽減するための課題

1)ハード対策とソフト対策の併用

 地球温暖化による気候変動の影響で、想定外の外力が発生している。災害対策はハード対策が中心であるが限界がある。ハードだけでは被害を防ぐことができない。

 そのためハードとソフト対策の併用による防災・減災の推進が課題である。ハード対策で被害軽減、住民が主体的な避難行動を起こせるように住民目線のソフト対策を実施する。

■風水害だとどうして「ハードとソフト」となるのですか。一般論ではなく風水害の要因を考えるように。風水害の考察、課題がありません。

2)予防保全型維持管理への転換

 インフラの老朽化が急速に進行している。損傷が深刻化して補修する事後保全型維持管理となっており、防災機能が低下するとともに過剰にコストがかかっている。

 機能が軽微なうちに補修を行う予防保全型維持管理へと点検し、防災機能を維持して被害軽減を図る。

■ここでは特に予防保全は求められていません。やはり水害の考察、課題がないようですので、そちらを書くように。

3)防災・減災のためのまちづくり

 適切な災害リスク評価に基づいた都市計画になっておらず、全人口の7割が災害リスクのあるエリアに居住している。近年の災害では都市部においても浸水被害が発生した。

 そのため土地利用規制などにより、防災減災のためのすまい方や土地利用の推進が課題

■減災は基本、前提にすぎません。風水害だとどうすべきなのか。規制しかないというのではやや提案不足と感じます。

2.最重要課題と解決策

 最重要課題は、ハード対策とソフト対策の併用

 人命を守るための緊急の課題

1)流域治水対策

 これまでは管理者が個々に対策を実施してきた。今後は、流域の治水対策を実施

 例えば、上流域の治水ダムの活用、中流域の堤防整備、下流域の雨水浸透施設、海岸堤防整備である。

2)粘り強い構造の施設整備

 施設能力を上回る外力の発生により、施設は直ちに破損する。 

■ここまでほぼ〇です

 堤防天端の保護や裏法尻の補強など粘り強い構造とすることで、破損までの時間を確保し、住民が避難する時間を確保する。■↑これは3の内容ではありませんか?

3)わかりやすいハザードマップ

 ハザードマップが整備され、配布されているが、活用されていない。ほぼ〇です

 避難場所、避難経路などの住民のとるべき行動をわかりやすく示したハザードマップに改良する。

4)ブッシュ型の情報配信

 災害時には、住民が自ら周囲の災害情報を探す時間がない。 プッシュでは?

 ブッシュ型情報発信により、住民にスマホなどに避難情報、水位情報をリアルタイムで提供することで、避難行動にうつせる。 あり得ますが、どうして風水害でプッシュ型か?

3.リスクと対策

1)防災意識の向上

 過去の災害の経験から、水害が発生しても避難しない正常性バイアスが働き、被災する事例があった。

 防災教育、避難訓練などを実施することで、住民の防災意識を向上し、災害時に住民が主体的な避難行動がとれる

■これは過去の施策のリスクであり、この問いの要求とは意味が違います。問2の解決策に由来するリスクを考えるようにしてください。

2)地域防災力の向上

 大規模災害時には、公助の限界がある。

 地域防災組織などの設置、地域での防災教育、避難訓練などを通じて、災害時の住民同士の共助による避難行動を促す。

3)マイタイムラインの作成

 災害発生時に住民がどのように行動をとるべきか不明瞭な部分がある。災害発生時の住民のとるべき行動を想定したマイタイムライン(防災行動計画)を事前に作成し、災害時の避難行動を促す。

4.要件

1)技術者倫理

 災害復旧において、費用と工期を優先させる場合があるが、公共の安全確保を第一として、品質を最優先させることとする。

2)社会持続性

 災害復旧工事において、グリーンインフラを採用する。例えば、河川では多自然川づくりとする。

問題文 

Ⅱ-1-2

ダムの治水機能を増強するダム再生の技術的な方策を2つ挙げ、それぞれについて説明せよ。また、各方策を実施するうえでの技術的な留意点を説明せよ。

■ ここはOKです。

1.ダム嵩上げ

 既存ダムの堤体を嵩上げし、ダム湖水面を上昇させ、湛水面積を増す。その結果ダムの貯水容量が増加する。

留意点:新堤体を既設ダムに、安定に一体化させるため、温度応力対策を実施する必要がある。マスコン対策やクラック防止のためFEM温度解析により、新旧堤体接合面の箇所に補強鉄筋やアンカー工対策を実施する。

2.事前放流による治水機能強化

 降雨予測などにより、洪水の発生前に利水容量の一部を事前放流し、洪水調整容量を常に最大限に確保しておく。

留意点:治水機能を上げるため、事前放流によって、ダムの貯留容量を確保し、洪水時の調整容量を最大限に確保する必要がある。また事前放流でも十分な利水容量を確保するため、貯水位を維持することが必要である。

 解決法は、貯留関数法や分布型流出モデル等によって流出計算をし、ダムへの流入量を予測して、利水ダムの場合は確保容量を算出する。

Ⅱ-2-2 

近年発生している大規模な水害・土砂災害を踏まえると、そのリスクを関係機関や住民と共有し、生命・財産を守る取組につなげることが重要である。このため、洪水、高潮、土砂災害の被害を受ける区域をあらかじめ想定しておくことが不可欠である。あなたが、気象を要因とする洪水、高潮、土砂災害の被害想定区域の設定に関する調査・検討の業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。

(1)業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容を説明せよ。

(2)業務を進める手順について述べよ。併せて、それらに関し、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。

(3)業務の成果が効率的・効果的に活用されるための関係者との調整内容について述べよ。

河川における想定被害区域の設定

1.書類資料

1)過去の被災履歴

目的:過去の災害履歴から被害状況を把握するため

内容:過去の災害による被害状況

■何を調査してどう検討するかを明確に書くようにしてください。このようなあいまいではわかりません

2)ハザードマップ

目的:既往のHMからの危険度を把握すること

内容:高潮、土砂災害、洪水のリスク

■形式にとらわれず、調査・検討の本質を述べるように

3)防災インフラの諸元、河川整備計画

目的:既往の防災インフラの状況から破堤点などを想定するため

内容:既往の防災インフラの諸元、今後の河川整備の計画

■解決のシナリオを考えて、方向性を示すと良いでしょう。経験力がみられています。

2.手順

1)基本条件の設定

降雨量などの条件設定

留意点、想定最大外力で設定

2)被害想定区域の設定

①洪水

留意点:洪水流により家屋倒壊箇所など人命に係る区域の設定を漏らさず記載

■区域の設定の判定根拠はどうしますか

②高潮

留意点、防波堤など古い施設は、データに誤りがある怖れがあるため、必ず現地確認

■これは問題外でしょう。行政批判ともなります。

③土砂災害

留意点は、土砂洪水氾濫など複合災害における被害層的区域も

3.関係者調整

1)河川管理者

 ハード対策は設置まで時間かかる。効果がでるまではソフト対策との併用が必要であることを共通認識とする。

2)地域住民

説明会を実施して、リスクの周知をさせる。

■項目は1つで構いません。「調整」の意味はバランスとるとか取りまとめの意味です。

ソフトとハード、説明会、避難訓練、防災教育・・いずれも従来の施策の域を出ないものですから、これでは提案となりにくいです。 

Ⅲ-1 

 コロナ化の影響もあって急速に進む社会変容により、社会の様々な分野で解決策としてSociety5.0の取り組みが進んでいる。水防災分野でも、危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性を有する施設が多数あることから、施設の調査・計画から設計、施工、供用、点検、維持管理に至る建設生産プロセス全体にわたり、作業の遠隔化の取り組みを推進することが求められている。

※「危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性」とは何か。その解釈が正解のカギとなりました。

(1)水防災分野での遠隔化の取り組みを推進していくうえでの課題を、水防災対策施設の有する特性を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ上げ、その課題の解決策を3津示せ。

(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.作業の遠隔化の取組推進の課題 

1)ICTの全面的な活用

 ダム砂防施設山間地アクセス困難

 河川堤防延長長く点検大変

 ICTを活用した画像処理、AIによる診断を行い、

 遠隔地で取り組む

■問題の要求を読み解いていないみたいです。いきなり解決策では△です。まずは危険性、狭溢性、立地辺すうアクセス困難特性、のそれぞれに対応可能な、作業の遠隔化を考えてみればいかがでしょう。

2)データ化

 防災施設は設置年度が古いものもあり、その書類が紙でしかないものもある。体系的な管理がされていない。

 データ化を進め、そのデータをインフラデータプラットフォームで連携させ、体系的な管理を行うことで、

 遠隔地も管理を行う。

3)技術継承

 建設業は就労環境が良くないため、若手就労者が他産業と比較して少ない。29歳以下の若手就労者の割合は他産業と比較して低い。今後高齢者が退職することで、技術継承の必要があるが、教育方法がOJT主体であることから、継承が進んでいない。

 建設団体が研修体制を構築し、OJTとOFFJTによる教育体制を確立させる。

テーマと無関係では?

2.最重要課題と解決策 

1)全天候型ドローンによる被害状況の確認

 土砂災害発生し、被害状況の確認を行う必要があるが、人の確認では二次災害発生の怖れがある。

 全天候型ドローンにより被害状況の確認を行う。

ドローンで取得した画像データを遠隔地で確認し、今後の対応をとる。

■ご提案はそれぞれ役に立つかもしれませんが、課題に沿ったものでは無いようです。水防災対策施設の有する特性のとらえ方が甘いです。

2)危機管理型水位計による水位

 中小河川の浸水被害が各地で発生している。中小河川は水位周知河川に指定されていないことが多いため、水位の状況がわからず、避難指示が遅れ、被害が発生する。

 安価で設置も簡単な危機管理型水位計により、水位データをクラウドに保存し、ネット回線で、リアルタイムで把握ができる。遠隔地で避難情報の発出が可能。

3)ICT土工

 土工時は丁張が必要、整形に熟練オペレーターが必要など非効率であった。

 ドローンで得た3次元データを、3DCADで設計座標を入力し、AI搭載したICT重機にデータ入力することで、自動制御で土工時を行う。

 災害復旧現場などで対応可能である。 

3.波及効果と懸念事項 

3.1 波及効果

 安全確保

 機械化により省力化、省人化が図れ、担い手不足の解消となる。

3.2 懸念事項

1)ICTの基準未整備

ドローンなどの安全、品質の基準が不十分である。

産学官で連携して、基準整備を行う。

■まことに申し訳ありませんが、これでは分析が甘いです。何が、どこが「不十分」なのか明確にしましょう。

2)ICT技術者不足

 ICT技術者が不足している。

 建設業界で研修体制を構築し、ICT技術斜の育成を図る。 

■厳しいことを申し上げますが、人出不足は当然のことです。これでは常識的すぎて技術士の考察らしくありません。

3)ICT普及

 ICT機器は高額で、中小建設業が購入することは経営状況から難しい。 

■これも前提事項にすぎません。考えなくても分かることです。技術士に対する問いとして、このような常識的なことを期待しているわけではありません。

 経費計上、レンタル品を活用し普及を図る。

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