№24 R3年 上下水道部門、上水道の答案について添削致しました。 2021/11/23

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この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がB、選択科目がB,A(総合A)で残念なことに不合格と評価されました。答案の表現力は十分で、見識問題では正しく解答ができていましたので、合格の期待が持てました。しかし、上下水道部門技術士としてのプロの提案が足りなかったようです。これらを表現すれば合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像されるところが見受けられます。

これまで1回目受験されて、これまで有料の講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しかと思います。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくしていけば次第に正解に近づきます。

 答案の必須Ⅰでは、専門家らしいコメントが述べられていなかったようです。Ⅱは、Ⅱ-2で的確な解答が提案できていなかったことが敗因のようです。比較的話題となっていることですので、普段から問題意識を持つことで解けたかと思います。Ⅲは予良い内容で評価もAで良かったです。無駄な記述に発散するのをなくして簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けて、合格しやすかったのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば必ず合格できます。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分55秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1  日本の将来人口は、減少していくと予測されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図りながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1 上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げその課題に対する複数の解決策を示せ。

(3) 解決策に共通して生じる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)  業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続性の観点から述べよ。

1.      上下水道共通の課題

 近年、上水道事業を取り巻く環境は大きく変化しており、様々な問題を抱えている。特に事業を運営する基盤が脆弱である。このため、基盤の強化を図ることが急務となっており、以下の課題に取り組む必要がある

■ここは不要↑

(1)          職員不足への対応(ヒトの観点)

 団塊世代の大量退職、人員適正化により職員数が減少している。職員不足は、日常業務の繁忙化を招き、老朽化対策事業等の停滞、更新計画の未策定、対症療法的な事務処理に繋がる。このため、職員不足への対応が課題となっている。

■「職員数の減少」は題意なの、職員不足対応ではダブリです。

(2)          財源不足への対応(カネの観点)

 人口減少、節水機器の普及により、水需要が低下しており、料金収入が低下している。方、老朽化対策、自然災害対策、地球温暖化対策等の事業は増加しており、必要な財源が確保できていない。このため、財源不足への対応が課題となっている。

■すべて前提事項でダブリです。課題を考えたことになりません。その先を提案するように。

(3)          老朽化対策の推進(ものの観点)

 高度経済成長期に一斉に整備された多くの施設の老朽化が進行しており、更新需要のピークを迎えている。老朽化した施設は、突発事故の発生、災害時の被害の深刻化を招く。このため、老朽化対策の推進が課題となっている。

■これは問題文と同じことです。解決方策を提案するように。

2.      最重要と考える課題と解決策

 前述のうち、職員不足への対応ができないと上下水道事業の継続に支障をきたし、安全、安心なライフラインを国民に提供することができなくなるため、最重要課題と位置付けた。また、職員の大幅な増員は人口減少の中、見込めないため、ICT/IoTを活用した業務の省力化に着目した解決策を以下に述べる。

■この前置きはなくても同じです。

(1)          上下水道台帳web閲覧システムの導入

 他占用者工事、新築計画の事前調査のため、上下水道台帳の取得に需要者が来庁し、職員が窓口で対応している。このことに多くの時間と手間を要している。この解決策として、上下水道台帳web閲覧システムの導入を提案する。このことにより、需要者はネットワーク環境があれば、どこでも台帳を取得できるようになり、職員の窓口業務を削減することができる。

■対策としてはOKです。リストラ策ではありません。

(2)          リモート方式の導入

 会議参加、工事立ち合い等の移動に多くの時間を要している。この解決策として、リモート方式の導入を提案する。ネットワークカメラ、ウェアラブルカメラを用いて、会議の参加、工事の材料検査、臨場確認を机上で行うことが可能となり、移動及び待機時間の削減を行うことができる。

(3)          スマートメーターの導入

 料金を算定する検針業務は、委託化が普及しているが、小規模の事業体では職員が行っている場合がある。

検針業務は多くの人と時間を要している。この解決策として、スマートメーターの導入を提案する。このことにより、検針業務が不要となり、人員の削減と委託費の削減を行うことができる。

■2、3共にOKです。

3、新たなリスクと解決策

(1)新たなリスク

 解決策は通信手段を活用うる技術のため、サイバーテロ、ウィルスにより、情報の流出、消失、システムダウンが生じる可能性がある。

■今日↑常識的なので、水道に由来するものお考え下さい。

(2)対策

 セキュリティ対策を強固にするとともに、定期的なバックアップを確保する。また、システムダウンが生じた場合、職員による業務継続、復旧手順のマニュアルを整備する。

3.      技術者倫理

 技術者は、業務を遂行する全段階において、国民の安全、健康及び福利を最優先する必要がある

 また、職員不足への対応を図ることで、上下水道事業の継続をはかることができ、将来にわたって安全、安心なライフラインを確保できるよう努める必要がある。

■要件とは、問2の仕事を遂行する上で、私は何に留意して行うか、というものです。

問題文 Ⅱ−1−1

活性炭処理の種類とそれぞれの特徴と処理上の留意点について述べよ。

1.      活性炭の種類

 活性炭は2MIBやジェオスミン等の異臭味物質を吸着作用により除去できる処理方法であり、粉末活性炭と粒状活性炭に分類できる。 

■前置きは不要です

2.      特徴と留意点

(1)粉末活性炭

粉末活性炭処理は原水中に直接注入する方法であり、施設整備が容易なことから、季節的な異臭味物資の発生や油事故等に用いられる。恒常的な異臭味には大量の活性炭が必要なことから費用対効果を検討した上で使用する。また、冬季で気温が低下すると、粉末活性炭が漏洩することに留意する。

■末尾文はどういうことか意味不明です。そしてどう、何に留意したら改善するのですか。

(2)粒状活性炭

 粒状活性炭は、活性炭を敷き詰めて、原水を通過させる方法であり、施設整備が大規模になる。このため、空きスペースの確保が必要になる。また、時間の経過とともに、吸着作用が低下するため、活性炭の再生や交換が必要になる。

■粒状活性炭の特徴は何なのか述べられていません。

Ⅱ-2-2   河川表流水を原水とし、急速ろ過方式を採用している浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨により、年に数回の頻度で原水が極めて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)   調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)   業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)   業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

私は高濁度原水が発生した場合における対策検討業務担当者として以下に記述する。

1.      調査・検討すべき事項

(1)          水道施設の諸元調査

 沈殿池、ろ過池、排水処理施設、配水池容量、薬品貯蔵量、濁度計の測定可能範囲、浄水場が複数ある場合のバックアップ水量等を調査して、改善が必要な項目を検討する。

■漠然と広く調査ではなく、必要とするねらい、目的を示して、そのために必要なことを調査します。

(2)          類似事例の調査

 類似浄水場を所有する事業体での対策事例や文献、及び過去事例を調査して、高濁度原水対策の知見を収集する。

■これだと、原因が見えていない、経験不足とみられます

(3)          ピークカット可能時間の検討

 ピークカットを行うことを想定して、配水池容量等を考慮して取水制限、取水停止可能時間を検討する。

■ピークカットは1のバックアップとダブリ。

(4)          常時人員体制の検討 

 参集可能な職員、対応に要する人員数の検討を行う。また、取水停止による広域の断水が生じることを想定し、応急給水活動を行うため、隣接事業体や民間企業等の応援協定の締結・強化を検討する。

■人員のことは、特に必要事項ではないでしょう。

2.      業務手順

 業務は以下の(1)〜(3)の順で実施する。

(1)          対策検討チームの編

 高濁度原水への対策には様々な部門(水質、維持管理、運転管理等)が関わるため、各部門から担当者を選出してチームを編成することに留意し、ソフト面及びハード面での検討を分けて実施するよう工夫する。

■組織論を求めているわけではないので、そのチームが何をすべきかを言う

(2)          各段階での対策検討

 各段階(下記①〜③)での対策検討を行うことに留意する。検討の結果、施設の改築等が必要な場合、実施スケジュールを明確にして、確実に実施する計画を立案するよう工夫する。

①    濁度が上昇までの対策検討

②    濁度が上昇を始めてから

③    濁度が浄水処理能力を超過したときの対応

(3)          対策についての評価

 検討によって得られた改善点等の有効性・実現性を評価することに留意する。また、必要に応じて専門家へ依頼し、対策の妥当性について助言を貰うよう工夫する。

■問題の焦点が読み取れていないようです。これを見てください。

高濁度原水への対応の手引き

http://www.jwrc-net.or.jp/chousa-kenkyuu/keinenka/koudakudo/0_all.pdf

3.      関係者との調整方策

 対策を検討する際、様々な関係者との調整が必要になるため、書面・メール・ICTを活用して明確な意思疎通を図る。また、定期的な会議を開催してコミュニケーションを密にとり、議事録を作成して情報共有を行うことが重要である。

 さらに、高濁度原水発生時の甚大な被害についての事例を関係者に周知し、リスクの共有を図ることで、対策検討業務の円滑化が図れると考える。

■残念ながら問題の焦点が見えていないようです。

Ⅲ-2   我が国の水道事業を取り巻く事業環境は、人口減少に伴う給水収益の減少、施設・管路の老朽化に伴い、急速に厳しさを増している。このため、市町村の区域を超えた広域的な水道事業者間の多様な連携(広域連携)などによって今後の事業基盤を確立することも効果的である。一方で、料金格差の問題があるため、短期的には経営統合の実現が困難な地域も多くみられる。このような地域における広域連携方策を検討する技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)       技術者としての立場で多面的な観点から広域連携により解決できる課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2)       抽出した課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       提案した解決策を実行したとしても新たに生じうるリスクとそれへの対応について中長期的な視点も含めて考えを示せ。

1.      上水道の課題

 近年、水道事業を取り巻く環境は大きく変化しており、様々な問題を抱えている。特に事業運営を行う基盤が脆弱になっている、このため、基盤強化を図ることが急務となっており、広域化が提唱されている。広域かを図ることで解決できる課題を以下に述べる。

■この記述は↑はなくても構いません。

(1)          人材不足への対応(ヒトの観点)

 人口減少、人員適正化により、職員が減少している。

職員数の不足は、維持管理の放置、技術力の低下、災害時の応急体制の未確保に繋がる。このため、人材不足への対応が課題となっている。

(2)          財源不足への対応(カネの観点)

■1,2,3ともいずれも正解です。◎

 人口減少、水需要の低下により料金収入が低下し、財政状況が悪化している。一方、地球温暖化対策、自然災害対策、老朽化対策等、実施すべき事業は増加しており、必要な財源が確保できていない。このため、財源不足への対応が課題となっている。

(3)          施設予備能力の確保(モノの観点)

 小規模の事業体では、施設数に限りがあるため、施設の予備力を有していない場合がある。このため、災害時のバックアップが確保されず、被害の長期化を招く。このため、施設予備能力の確保が課題となっている。

2.      最重要と考える課題

 前述のうち、人材の不足への対応ができないと、上水道事業の継続が困難になること、また、小規模な事業体では、維持管理にすでに支障をきたしていることから、最重要課題と位置付けた。以下に解決策を述べる。

■ここも正解です。ただし、もっと力を入れて、文字数を割いて書いてもよかったのではないかと思います。

(1)          遠隔制御による人員集中

 小規模な浄水場の遠隔制御を行い、集中監視所で制御することで人員の集中化を図ることができ、人員の削減を行える。

(2)          施設の統廃合

 広域化を図ることで、施設数の余剰を適正化する施設の統廃合を行うことで、維持管理に伴う人員の削減を行うことができる。

(3)          官民連携

 民間の経営ノウハウや技術力を活用した官民連携を行う。具体的には設計、施工、維持管理まで一括して行うDBO方式等を導入して、人員の削減を行う。

3、新たなリスクと解決策

(1)新たなリスク

 解決策を実施するためには、職員の一定以上の専門能力を必要とする。地方自治体では、短期での異動が定例で行われるため、水道未経験の職員が新規に事業に従事すると、事業が停滞する恐れがある。

(2)対策

 水道専門職員の育成制度の導入を行う。地方自治体の水道職員は一般採用土木の採用であるため、様々な部署異動が生じる。このため採用職種「土木」での総合的な採用ではなく、より専門性を高めた採用職種「水道」を導入することにより、採用から退職までを一貫して水道に携わる職員を確保することができる。また、現職の職員に対しても、異動を水道部門内のみで固定するキャリアプラン制度を導入することで専門能力の高い職員の育成と安定した確保を行うことができる。

 さらに、研修制度の充実、OBによるOJT、先進事業体への派遣制度を導入して、専門性を高められる組織体制を構築することが必要である。

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