№25 R3年 情報工学部門 コンピュータ工学の答案について添削致しました。 2021/12/06
試験結果は、ABBでした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。。
内容的には、Ⅰ-1ではマルウエア問題に対してしっかり技術を訴えられていました。問1,2は正解ですが、問3,4は弱点も見られます。Ⅱ-2ではロボットに対して何をすべきかという本質が見えていなかったようです。実はこうした本質を見抜く力が求められるのです。当たり前の一般論で解答されていましたが、情報工学での対策法が提案できなかったようです。このようなケースワーク問題では、経験がないと普通は解答が書けません。本講座ではより良い対応をお教えしておりますのでコーチングで学べは合格点が取れるようになります。
Ⅲでは、課題の着目点がいけなかったようです。小学生のプログラミング教育が必修化されることにつながるような実務的な答え集中すべきであったかと思います。問2以降に有効なつながりを示すことができず、とても残念です。
これまで2回目受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。
音声ガイドによるコーチング指導内容(23分25秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題 Ⅰ-1
これまでインターネット等のネットワークに接続していなかった機器が通信機能を持ち、ネットワークに接続して動作するIoT(Internet of Things)が急速に普及している。ネットワークに接続されたIoT機器がマルウェアに感染したり、乗っ取られることにより、社会の安全に影響を及ぼしたり、重要な情報が漏えいした事例が報告されている。このような状況を踏まえて、下記の問いに答えよ。
(1)IoT機器特有の性質を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1. IoT機器のセキュリティ対策
(1)IoT機器特有の性質を踏まえた課題
( 課題1)乗っ取られるイメージを持つ:IoT機器はPCのような形ではなく、環境に溶け込む筐体で覆われていることが多い。これより、乗っ取られるイメージがわかない。この観点より、IoT機器も乗っ取りの対象であることを周囲へ説明し、対応を促すことが課題である。
(課題2)コスト低減:IoT機器は数が多いため、個々にセキュリティ対策をするとコストがかかる。この観点から、コストを低減することが課題である。
(課題3)セキュリティ対策するIoT機器の絞り込み:IoT機器は数が多いため、対策漏れが発生する恐れがある。この観点より、セキュリティ対策するIoT機器を絞り込み、その機器に対して重点的にセキュリティ対策することが課題である。
2.最重要課題と複数の解決策
2.1最重要課題
(課題3) を最重要課題とする。理由は、すべてのIoT機器にセキュリティ対策をすることはお金や時間の観点から難しい一方で、セキュリティ対策漏れがあるとIoT機器が乗っ取られ社会の安全に影響を及ぼすという、トレードオフが発生するからである。
■このような理由は特段求められていません。なぜかというと、あまりコンピテンシーの判定に役立たないからです。(重要か否かは内容を見れば、理由のいかんにかかわらず、試験官にはすぐ判別できるからです。)
2.2 複数の解決策
(解決策1)インターネットに接続するIoT機器の絞り込み:IoTゲートウェイとIoTセンサを接続し、これらとの通信はインターネット(WAN)を使用しない通信、例えばBluetoothなどを適用する。インターネットに接続するのはIoTゲートウェイのみになるため、IoTゲートウェイのみにセキュリティ対策を集中できる。IoTゲートウェイにウィルス対策ソフトをインストールする。
(解決策2)IoTサーバへ送信する情報の取捨選択:抜き取られる対象の情報を減らすため、緊急性の高くないセンサ情報 をIoTゲートウェイが区間で平均を取って送信する。さらに、データ解析に不要な情報はIoTサーバへ送信しない。
(解決策3)オンプレミスサーバの採用:セキュリティ対策の自由度が共有クラウドサーバより増すオンプレミスサーバをIoTサーバに採用する。さらに、IoTゲートウェイとIoTとでVPN通信し、セキュリティレベルを高める。
3.波及効果と懸念事項への対応策
3.1すべての解決策を実行して生ずる波及効果
セキュリティ対策すべきIoT機器を絞ることができるため、セキュリティ対策の手間が減る。また、通信量が減るので、通信量に上限があるIoTシステムにも本解決策を適用できる。
■波及効果とはもっと因果関係の先にある広い範囲での間接影響まで含めて推論してください。
例 コロナ感染 → クッキング、ジュエリー
3.2 懸念事項への対応策
ウィルス対策ソフトが未対応のウィルスに感染する懸念がある。対応策として、ウィルスに感染したIoT機器を外部割込み信号で強制OFFする策がある。さらに、IoTシステムが万が一停止した場合の損害賠償に備え、損害保険に加入しておく。
運用中に追加されたIoT機器にセキュリティ対策がなされない懸念がある。対応策として、定期保全時に新しいIoT機器が追加されたかチェックし、セキュリティ対策を実施する。
4.業務遂行における技術者倫理、社会の持続可能性
4.1 技術者倫理
公共の利益を第一に考える。単に価格が安かったり、以前使用したハードやソフトを安易に使用しない。また、実装しやすいという自分の都合を優先しない。
■「安易」や「自己都合」がいけないとのことですが、それは技術者倫理と意味が違います。技術者倫理綱領に照らして考えるようにしてください。IoT機器のマルウェア対策、情報漏えい対策が主題であることを忘れないように。
公共が求めるIoTシステムを開発するために、予算や時間の許せる範囲で、自分の都合を抜きにしてユーザのニーズを満たす解決策を考える。
4.2 社会の持続可能性
SDGs「つくる責任、つかう責任」を意識する。具体的には、IoTシステム廃棄の際に排出する有害物質の量を抑えることを意識する。これより、設計時に、J-Mossが規定する量以下またはゼロの有害物質を含むIoT機器を採用する。
■IoTシステムがどれだけ有害物質を廃棄するというのでしょう。化学工業や金属鋳造など他の産業と比較して、環境負荷の大きいふさわしいものを挙げるようにしてください。主題の情報漏えい問題と関係ない方向に発散していますので好ましくありません。
問題文 Ⅱ−1−3 深層学習(Deep Learning)で使われる多層ニューラルネットワークの仕組みを簡潔に述べよ。
深層学習で使われる多層ネットワークの仕組み
図に多層ネットワークの構造を示す。図では画像からりんごかバナナを識別する例を示す。
多層ネットワークは、入力層、隠れ層、出力層からなる。入力層は画像情報を入力する層で、例ではR(赤)、G(緑)、B(青)情報を入力する。
隠れ層は画像の特徴量を抽出する層である。隠れ層の層数が多い(深い)ほど、多様な特徴量を表現できる。特徴量とは、例ではりんごやバナナを特徴づける情報の量で、図では、人工ニューロン間の重みwijを指す 。
出力層は推論結果を出力する層で、この例ではりんごの確率とバナナの確率を出力する。確率が高い方を識別結果とする。
学習とは、wijを学習することである。画像を入力し、確率を出力する。出力された確率と正解(教師データ)との差(ロス)を取り、ロスが小さくなるようにwijを調整 する。
■リンゴ、バナナは例えであって、答えではありません。言葉の説明では汎用性を失わないように。ここでは「深層学習」「多層ニューラルネットワーク」ですから、
- 深層
- 多層
- ニューラルネットワーク
などのキーワードから解くようにするとわかりやすいです。
※「多層ネットワーク」ではありません。
参考ページ5分で分かるディープラーニング(DL)をご覧↓ください。
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2104/26/news031.html
問題文 Ⅱ−2−1 近年、癒しロボットと呼ばれる製品が次々と販売されている。新たに癒しロボットを設計・開発する技術者の立場で下記のないようについて記述せよ。
(1)新たに開発する癒しロボットの概要を示し、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
癒しロボットの開発
1.癒しロボットの概要、調査・検討事項とその内容
1.1癒しロボットの概要
家族を見つけると反応する。癒し効果を高めるため、CGではなく実体がある。
■これ↑だけですか
注意点:大事なことを書き、当たり前のことは省略することです。これだけでかなり合格できます。
1.2 調査・検討すべき事項
①ターゲットユーザの調査・検討:癒しロボットに興味を持つ年齢層や性別を調査し、どの層をターゲットとするか検討する。
■あいまいな取り組み、漠然と調査・・という感じです
②部品の価格の調査:部品の価格を調査する。多くの個数を購入すると割引されるかも確認する。
②センシング方法の検討:用いるセンサ、センシング間隔、センサ配置などを検討する。
■否定はしませんが、メインではない。
2.業務を進める手順と留意点・工夫点
2.1 検討段階
・癒しの表現方法を検討する。可動部の動き、色、音声対話などから検討する。対話の処理が重くなる場合、クラウドの活用を工夫する。
■これこそ本質。1で宣言すべきことです。
・価格を抑えるため、オープンソースのソフトやハードの活用を検討する。商用利用に対応している、マニュアルが豊富に整備されているか留意する。
■ここは癒しロボットの本質ではないので不要。
2.2 設計段階
・部品を選定する。ノイズが家庭内の機器に悪影響を及ぼす恐れがあるため、VCCI規定をクリアした部品を選定することに留意する。また、ロボットのデザインを損なわないような大きさや形のセンサを選定することを留意する。
・部品が組み合わさることで想定外のエラーが発生する可能性があるため、シミュレーションや簡易的なハードを作成し、予備テストする。テストをクリアしたことを確認し、詳細設計へ移行する。
■いずれも本質ではないので不要です。これらがいくらできても「癒し」に寄与しません。
2.3 テスト段階
・所望の動作をするかテストする。開発者の想定から外れた操作をされる可能性があるので、複数のユーザにテストしてもらうことを工夫する。
・マニュアルを整備する。PL法に沿った記述がなされているか留意する。
■この↑ような手続きは当然することです。
3.業務を効果的,効率的に進めるための関係者との調整方策
・ユーザとの対話にデザイン思考を取り入れる。具体的には、潜在ニーズを引き出すためにじっくり対話する。一方、ニーズのずれを早期に気づくために、開発の初期段階でプロトタイプを作成し、ユーザにテストしてもらう。
■一般的、普通にすべきこと、していることでは・・。
・海外の業者に実装を依頼する場合、提供予定の技術について外為法の該否判定を実施しておく。さらに、実装手順や専門用語が日本と異なるかもしれないので、仕様書を日本の業者より詳細に記載する。
■問題の領域外。このようなことはあるかもしれませんが、わざわざここで議論する事項ではありません。
問題文 Ⅲ―1 2030年までの達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が2015年9月国連サミットで採択された。目標の1つに「4.すべての人々へ包括的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」がある。一方、日本では教育の情報化に関する取組として、プログラミング教育(プログラミング的思考の育成)の必修化や初等中等学校を対象にGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が進められている。このため、教育向けのICT環境整備がこれまで以上に重要となっている。そこで、SDGsの達成にも寄与する特徴を有する新たな学習者用端末を小学校で使用(小学生が使用)する想定で新規開発する担当技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)新規開発する学習者用端末の特徴を示し、担当技術者の立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を説明せよ。
(3)(2)で説明した解決策について、業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を述べよ。
SDGsの達成にも寄与する特徴を有する新たな学習用端末(小学生が使用)の開発
■見出しは簡潔に1行以内、下線は要りません
1.学習用端末の特徴と複数の課題
1.1 学習用端末の特徴
・小学生の同学年は同じ授業を受けるので、学習用端末はカスタマイズが不要である。
・大規模シミュレーションや深層学習の授業はないので、マシンスペックが高くなくてよい。
■着目点が△。不要なことは無視すればよいだけ。課題になりません。逆に必要/必須なことは何かです。
・生物の観察など屋外でも使用される。
1.2 学習用端末の課題
(課題1)価格を下げること:収入にかかわらず学習用端末を使用できることが、すべての人への教育実施につながる。これより、収入が低くても購入できるように、学習用端末の価格を下げることが課題である。
(課題2)Wi-Fi環境なしで使用できる:屋外での観察などWi-Fi環境がない場所での使用が想定される。これより、Wi-Fi環境がなくてもアプリを使用できたりデータにアクセスできることが課題となる。
(課題3)軽量化:小学生は大人より力が弱いこと、様々な場所へ持ち出すこと、ランドセルが教科書ですでに重いことから、学習用端末の軽量化が課題となる。
■いずれも否定はしませんが、運用で何とでもなること。重要ではありません。小学生が使用し、プログラミング教育、そして必修化し、ゆくゆくはGIGAスクール構想するのに必須なことは何かです。担当技術者の立場とは父兄ではなくコンピュータ工学の視点からです。以下↓は好ましくない方向に発散してしまいました。
2.最も重要な課題とそれに対する解決策
2.1 最も重要な課題
(課題3)軽量化を最も重要な課題とする。理由は、重いと持ち運ばなくなり学習の機会が減るからである。持ち運ばない小学生と持ち運ぶ小学生とで学習機会に差が生じ、SDGs4の「すべての人々へ」が守れなくなってしまうからである。
2.2 課題に対する解決策
解決策として、①必要なスペックに絞る、②学習用端末のサイズを小さくする、③バッテリを小さくする、が考えられる。②は画面が小さくなって見にくくなったりキーボードを打ちにくくなるデメリットがある。③は遠足時や充電し忘れ時に電池切れするデメリットがある。①は授業で必要とされないスペックならば削っても学習に支障がでない。これより、①必要なスペックに絞るを採用する。
具体的には、授業に不要なGPUやDVDを搭載しない。一方Wi-Fiがない環境も想定し有線LANポートやLTE通信対応を付加する。
3.業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果や波及効果
3.1 業務遂行上の各段階における結果
計画段階:授業内容を調査する。学習用端末を使用するシーンに、プログラミング、生物の観察、文書の作成を想定する。また、教室で用いる表示機器を調査する。大きなディスプレイにHDMIで接続していることを確認する。
設計段階:プログラミングや文書作成に事足りるコアが数個以下のCPUを選択する。また、生物の観察にはカメラで撮影し 高精細画像の表示は不要なのでGPUは採用しない。一方、価格は高くなるが屋外使用のため防水機能は搭載する。プロトタイプ機を小学生に試してもらい、スペックを修正する。
テスト段階:スペックに不足がないか、複数の小学校でテストする。加えて、小学生はキーを連打する恐れがあるので耐久テスト(ファジング)する。
3.2最終的に得られる成果や波及効果
最終的に得られる成果として、軽い端末が得られ、小学生が使いやすくなる。持ち運びやすいので学習の機会が増える。
波及効果として、軽いので、林業などアクティブに動く仕事や、力の弱い人もその学習用端末を使用しやすくなる。様々な仕事や人が使いやすい端末の提供に貢献できる 。