№26 R3年 建設部門 鉄道の答案について添削致しました。 2021/12/08
試験結果は、ABBと非常に残念な結果でした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。これまでキーワード学習が中心で、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。。
これまで過去に4回も受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。
音声ガイドによるコーチング指導内容(20分19秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題 Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。
(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
1.風水害の被害を防止・軽減するための課題と内容
(1)想定を超える災害への対応
わが国での集中豪雨の約6割で、バックビルディング現象などによる線状降水帯が発生していた。地球温暖化の影響で、数十年に1度の大雨が毎年のように発生しており、甚大な被害が発生している。防災の観点から、人命や暮らしを守るため、想定を超える災害に対応することが課題である。
■1〜3の課題は一応〇ですが、いずれも課題ではなく問題点です。現況から言えることにすぎず、建設・鉄道の視点はありません。
(2)複合災害への対応
2つ以上の災害が発生すると、さらに被害が深刻となり、復旧が長期化する。地震、台風、豪雨、土砂崩壊、洪水、浸水、避難所での感染症拡大などの同時または連鎖しての発生が懸念される。二次災害の観点から、被害を深刻化させないため、複合災害に対応することが課題である。
(3)省力化の推進
わが国の総人口は2065年には約8800万人にまで減少する。生産年齢人口は約4500万人まで減少すると予測されている。高度経済成長期以降に整備したインフラが今後一斉に老朽化する。災害の防災・減災・復旧活動にはマンパワーが必要である。人材の観点から、限られた技術者での対応が求められるため、省力化を推進することが課題である。
2.最も重要と考える課題とそれへの解決策
近年、自然災害が大型化し、甚大な被害をもたらしているため、私は「想定を超える災害への対応」が最も重要な課題と考える。以下にその解決策を述べる。
■上記は不要です
(1)ハード対策の実施
①事前防災ハード対策:法面の防護や堤防の嵩上げなどインフラを整備・強化し、防災対策をすることで被害を未然に防止する。
②避難確保ハード対策:避難場所の整備やインフラを粘り強い構造にし、減災対策をすることで人的・社会経済被害を軽減する。
■やや視点があいまいです。建設・鉄道の視点がありません。
(2)ソフト対策の実施
国土強靭化を推進し、ハード対策とソフト対策を組み合わせた多重防御により被害を最小にする。
①ハザードマップの整備:各種ハザードマップを検索・閲覧できるハザードマップポータルサイトを拡充し、迅速な避難をすることで被害を軽減する。
②マイタイムラインの作成:マイタイムラインを周知し、作成を促進させ、国、企業などと連携して対応することで、被害を軽減する。
(3)効率的なインフラ整備
①DXの推進:モニタリング技術やロボットなどICT技術の活用を推進し、インフラの防災・減災対策を効率的に行う。
②NETISの活用:民間などの技術を一般に共有することで、新技術の活用を推進する。
■新しい提案の視点がここで示されたようで〇です。
3.共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)被害発生のリスク
防災機能は充実するが、災害を完全に防ぐことは困難なため、被害が発生するリスクが生じる。
■これでは真のリスクが何かわかりません。問いの趣旨はこういうことではありません。
整備前または対策済み箇所での対策以上の災害の発生が懸念される。被害が生じると迅速にインフラの機能を復旧し、輸送手段を確保する必要がある。
(2)被害発生への対応策
①リダンダンシーの確保
ミッシングリンクを解消するため、暫定2車線の4車線化や鉄道とバス事業者などの協力体制の構築などをすることで、輸送手段が途絶えないようにする。
②「選択と集中」の徹底
インフラの役割や目的を踏まえて、優先度と時間軸を考慮して、思い切った選択と集中を実施し、ストック効果を最大化させる。
■対策の視点の広さは〇です。
4.業務上必要となる要件
(1)技術者倫理の観点
風水害対策にあたり、公益の確保を最優先に考慮するよう留意する。常に専門技術の力量や知識を高めるとともに、将来世代を担う人材の育成に努める。
(2)社会の持続可能性の観点
データプラットフォームを構築し、インフラのストック効果の最大化と持続性を保つ技術開発方策を選定・採用するよう留意する。SDGsを達成することが持続可能な社会インフラの整備につながる。以上
■技術者倫理、社会持続可能性は〇です。
問題文
Ⅱ-1-1 ロングレール化のための「レール溶接法」を3つ挙げ、それぞれの溶接方法と特徴について説明せよ。
■ ここはOKです。
1.ロングレール化のためのレール溶接方法と特徴
(1)フラッシュバット溶接の溶接方法
レールを突き合わせ、大電流による電気抵抗を利用してレール端部を溶かし、圧力を掛けて接合させる。溶接時間は3分程度である。
(2)フラッシュバット溶接の特徴
特徴として、長所は①生産性が高いため、一次溶接に適する。②熟練技能が不要。短所は①初期投資が高い。②レールが短くなる。
(3)テルミット溶接の溶接方法
レールを突き合わせ、酸化鉄とアルミニウムの間に起こるテルミット反応による溶鋼をレールの間に流し込み、接合する。溶接時間は30 分程度である。
(4)テルミット溶接の特徴
特徴として、長所は①機動性があり、レールを動かす必要がないため、三次溶接に適する。②レールが短くならない。短所は一口あたりの材料費が高い。
(5)ガス圧接溶接の溶接方法
レールを突き合わせ、ガス炎により加熱して圧接する。溶接時間は6分程度である。
(6)ガス圧接溶接の溶接方法
特徴として、長所は①機動性と生産性のバランスがいいため、二次溶接に適する。②一口あたりの材料費が安い。短所は①レールが短くなる。②機動性は有るが、優れているとは言い難い。
Ⅱ-2-2
道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化を計画することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
1.単独立体交差化の調査、検討事項とその内容
(1)調査事項
①地盤状況(地質、N値、地下水位)
②踏切状況(交通量、単線・複線、交差角、迂回路の有無)
③周辺環境(架空線、地下埋設物、民家)
④作業スペースや搬入路、置き場所(作業員、資機材、重機械)
■何のために、何を調べるのかという技術管理者の視点がありません。とりあえず調べる項目の列挙・・これでは資質能力を測る試験になりません。問題、課題、解決策のシナリオを作成して掛かってください。
(2)検討事項
①設計(仮設計画、本体計画、施工順序、踏切移設計画)
②施工計画(開削・非開削工法、仮設工法、騒音・振動対策)
③立体交差構造(アンダーパス・オーバーパス、材質、形式、寸法)
④軌道構造(材質、省力性、低ばね性、道床の有無)
■やはりこちらも一般的事項です。「道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化」でなくとも行うことです。
2.手順について留意点と工夫点
(1)調査
地盤調査を実施し、周辺地盤を沈下・陥没させないよう留意する。軟弱地盤等で施工する場合は、地盤改良を行うよう工夫する。
(2)分析・検討
踏切交通量を考慮し、立体交差方法の検討に留意する。歩行者専用や歩道の有無、車線数などにより寸法を検討し、アンダーパスまたはオーバーパスを選定するよう工夫する。
(3)計画
初期費用だけでなく維持管理まで考慮した時にコストが増大とならないよう留意する。ライフサイクルコストを最小化または平準化するよう工夫する。メンテナンスの容易な構造や耐久性の高い部材の使用について費用対効果を考慮して採用する。
■これも一般的事項です。「単独立体交差化」に必要な手順とは何か、それに特化した議論が必要です。
3.関係者との調整方策
(1)沿線住民
立体交差化により音や振動の発生が変化するため、事前に住民などに説明会などで積極的にPRすることで理解と協力を得る。工事前に家屋調査を行うことで、家屋の破損と工事の影響の関連性が証明できる。工事に対する安心を生み、損傷が発生しても冷静な判断ができる。
(2)道路管理者、鉄道事業者、都市計画事業者
計画書を作成し、架設式または跨線式を検討し、土被りや空頭、取り付け道路、交通規制方法、踏切除却時期などを協議する。費用負担や範囲について取り決めを行い、合意形成を図る。
(3)道路利用者
取り付け道路の交通量を考慮し、道路切替の時間帯を調整する。
■業務の留意点ではありますが、しかし「調整」ではありません。こうした個々の作業を上手に進める以外に、プロマネとしての取りまとめ判断が必要なのです。
Ⅲ-1 我が国においては、少子高齢化の進行により労働力人口の減少傾向が続いている中で、「働き方改革」への対応が求められている状況である。建設業界では施工の効率化だけでなく現場休業の取組など、様々な取組が行われているが、鉄道工事に関しては終電から始発の間や活線下での列車間合いで施工されることが多く、各鉄道事業者において運行形態や保守体制に応じて、さまざまな検討が行われている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
1.鉄道工事の作業時間を確保するための課題と内容
(1)生産性の向上
少子高齢化やベテラン技術者の退職、不規則な勤務、就職先の多様化により人材の確保が困難となっている。高度経済成長期以降に整備したインフラが今後一斉に老朽化することが見込まれる。老朽化が進むインフラを適切に維持管理・更新する必要がある。人材の観点から、限られた技術者での対応が求められるため、省力化を推進することが課題である。
■建設一般の視点であり、求められている鉄道としての視点が見えません。
(2)インフラの安全の確保
昨年では令和2年7月豪雨により、くまがわ鉄道の河川橋梁が流失した。現在も運休が続き、復旧には4、5年程度かかるとみられる。今後も地球温暖化の影響による自然災害の激甚化や巨大地震の発生などが懸念される。鉄道構造物の損傷・機能低下は地域の足を止めることにつながる。安全の観点から、人命や暮らしを守るため、災害に強いストック効果を確保することが課題である。
■災害、ストックはテーマではありません。
(3)効率的な資金運用
モータリゼーションの進展、コロナ禍の外出自粛に伴い、鉄道事業者によっては、工事に必要な予算の確保に苦慮している。少ない予算ではメンテナンス不足、旧型設備の使用などにより、事故や輸送障害の発生が懸念される。メンテナンスコストを考慮した対応が重要である。資金の観点から、限りある資金で生産性を向上させるため、上手に資金を運用することが課題である。
■経済性、資金効率はテーマではありません。
2.最も重要と考える課題とそれへの解決策
少子高齢化が進み、今後も技術者が減少することが予測されるので、私は「生産性の向上」が最も重要な課題と考える。以下にその解決策を示す。
(1)省力化の推進
①保守労力の減少:TC型省力化軌道や次世代分岐器、ロングレールなどメンテナンスの容易な構造や耐久性の高い部材にする。新設・更新時に維持管理を踏まえ、メンテナスコストの縮減可能な材料・工法を採用する。
②設備統廃合によるスリム化:設備の更新時に適切なサイズや数量への変更や不要な設備を廃止し、維持管理対象物を減少させることで、省力化する。
省力化は間違いではありませんが、いわば前提です。
(2)予防保全への転換推進
①メンテナンスサイクルの構築:アセットマネジメントを導入し、ライフサイクルコストを最小化または平準化する適切な維持管理を継続的に行うことで、構造物を長寿命化させる。
②定期的なレール削正:レールにき裂が発生し、進展すると、レールが破断し、列車の運転規制につながる。累積通過トン数5000万トン程度で定期的にレール削正し、接触疲労層を除去することで、傷の発生が抑制され、レールが長寿命化する。
■やはり一般論です。主題である「働き方改革」への対応とは何か。鉄道工事の活線、列車間合い施工への対応。鉄道事業者の運行形態や保守体制とは意識しましたか。
(3)新技術の活用
①DXの推進:線路設備モニタリング装置や構造ヘルスモニタリングシステム、GMACなどのICT技術の導入・活用を推進し、効率的に行う。
②オープンイノベーションの推進:建設用機材の高度化や5G技術の導入に向けて、情報関連産業など、他産業との技術連携強化を推進する。
■間違いではありませんが、どこでも言えることであり、このテーマの必須事項ではありません。
3.共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策
(1)技術力低下のリスク
解決策を実施し、作業が省力化されることで、個々の技術力が低下するリスクが生じる。システムの操作法は習得するが、技術の理解と理論などが身につかないことが懸念される。現場で作業する機会が減少するため、技術を継承する必要がある。
■一般論に発散して、何のリスクなのかわかりません。問いは問2の解決策の見直しを求めています。「省力化推進、予防保全への転換推進、新技術の活用」をやればやるほど発生するリスクは何かです。
(2)技術力低下への対策
①OJTとOFF−JTの組み合わせによる技術継承
従来のOJTに加え、eラーニングなどのOFF−JTとの組み合わせにより技術を継承する。両方の特徴を考慮し、効果的に人材育成をする。
②ナレッジマネジメントの構築
ベテラン技術者が持ち合わせている経験や知識などの暗黙知を形式知化し、データベース化して連携・共有することで、組織全体で能力を向上する。
③研修施設の共有・研修の合同
鉄道事業者によっては研修設備や人材が不足しているため、研修施設の共有や合同での研修を行う。以上
■対策はさらに一般論です。