№29 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2022/03/03
試験結果は、必須科目がA、選択科目がB,Aと評価され、残念ながら不合格となっています。専門的知識はお持ちだと思いますが、出題者の要求に対してダイレクトに答える練習が不足しているように拝見いたします。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。
これまで2回受験されたとのことですが、応用力を高める練習はされたてこられたでしょうか。文章の直しと暗記だけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。これまで学ばれた「文章は起承転結で書く。原稿用紙の最後の行まで書く。模範答案を暗記してアレンジする。最後に「以上」と書く」という戦略は昔の方法です。答案の中でも、当たり前の答えが多く、技術士としての提案が少ないように感じます。技術士問題は、ヒントがなく、出題趣旨が難解です。出題者の意図が解釈できないと実力を発揮できません。
本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。
音声ガイドによるコーチング指導内容(24分12秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新な取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。
(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
1.多面的な課題の抽出と分析
①多重防御による事前防災(観点:被害の最小化)
近年、大規模な自然災害による被害が各地で連続的に発生しており、国民の生活に大きな影響を与えている。また、長期間にわたる復旧・復興に伴い、多大な労力や資金を費やしており、財政的に厳しい状況である。
■問題文と同じ内容の繰り返しです。肝心の多重防御の課題や理由は書かれていません。
そのため、被害の最小化を目的とした、多重防御による事前防災を進めていくことが課題である。
②避難の円滑化・迅速化(観点:災害弱者の対応)
突発的な降雨や強風による災害が多発しており、高齢者などの災害弱者が逃げ遅れによる被害が発生している状況がある。
そのため、災害状況情報や共助体制を強化し、避難を円滑化・迅速化していくことが課題である。
③インフラ構造物の集約化(観点:地域社会の維持)
厳しい財政状況の中、大都市一極集中が進み、拡散している地域社会の活力は低下している。
限られた予算や労力では、社会資本の整備を兼ねつつ、災害対策を持続的に行っていくことは限界である。
そのため、地域社会の維持を目的とした、インフラ構造物の集約化を図っていくことが課題である。
2.最も重要な課題と複数の解決策
突発的な連続災害に対応するためには、人的・建物被害を最小限にし、復旧・復興を加速化していくこと
が最も有効であると考える。
そのため、①多重防御による事前防災を最重要課題とし、解決策を以下に列記する。
①河川の断面拡大・氾濫危険度の監視
突発的な集中豪雨により河川の水位が急激に上昇し、住民の避難時間に影響が生じている。
そのため、河道掘削や築堤・嵩上げにより、河川断面を拡大しリードタイムを確保する。
また、河川に危機管理型水位計や無人化流量観測機を設置し、きめ細やかな状態監視を可能にし、住民の初動対応を迅速化する。
②国土交通プラットフォームの構築
近年は水災害、風災害、土砂災害の単体ではなく、複合的な要因による災害が多発している。
そのため、国土の情報をサイバー空間で再現し、そこに自然現象によるシミュレーションを実施する。それを基にフィジカル空間で各対策を実施する。これにより、最適な防災対策を検討できる。
③道路ネットワークの確保・電気自動車の活用
災害時には迅速な人命救助や被災地への支援物資輸送を行えるような対策が必要である。
そのため、暫定2車線の4車線化や無電柱化を進め、災害時の道路ネットワークを構築し、リダンダンシーを確保する。また、給電機能を保有する電動車を移動式電源として用いることで、電気設備の復旧が間に合わない際に応急的な対応ができる。
3.解決策に共通するリスクと対策
①リスク:防災意識の低下
整備されたハード・ソフトによる事前防災対策への信頼性が高まるほど、住民の危機管理などの防災意識は低下する恐れがあり、二次災害などによる被害が発生する可能性がある。
②対策:効果的な防災活動の実施
防災活動時には複合災害や二次災害をCGにより再現し、それを基に災害時のマイ・タイムラインを作成させ、防災意識を確実に定着させる。さらに緊急速報メールなどによるプッシュ型配信を実施し、住民の初動対応の迅速化を図る。
4.業務を遂行することに伴う要件
①技術者倫理
予算や工期の制限がある中、防災対策箇所は大量に存在するが、決して計算データの偽装や施工不良があってはならない。コンプライアンスを遵守し、地形特性や構造物の重要度に応じた優先順位を検討し、公衆の安全を第一に考えていくことが求められる。
■偽装や不良はあってはいけませんが、しかし目標として悪すぎませんか。技術者倫理とはそのようなことを防ぐためにあるのではありません。もっと厳しい倫理観が欲しいです。
②社会持続可能性
自然環境の保護を考慮し、生物多様性の保全や地球温暖化防止を念頭に置いた、グリーンインフラ計画を策定する。具体策として、河川堤防における在来種を用いた緑化などが考えられる。
Ⅱ-1-4 既設コンクリート構造物において、浮きやエフロレッセンスを伴うひび割れが局所的にみられた。当該コンクリート構造物を長期間供用していくために詳細調査計画を策定すべく、非破壊検査を適用したい。そこで、生じている現象から推測される構造物内部の変状を想定したうえで、求める情報と適用すべき非破壊検査手法の組合せを2つ提案し、それぞれの計測原理及び実施に対する留意点を述べよ。ただし、微破壊により構造物内部を直接調査する方法を含まないものとする。
① PCグラウトの未充填・インパクトエコー法
コンクリート表面にPC鋼材に沿ったひび割れが生じており、PC鋼材のシース内に水分が供給と想定。
■水によってどんな変状が生じたか。だから、求める情報は何でしょう。単刀直入に言うように。
(1)インパクトエコー法の原理
コンクリート表面から衝撃弾性波を内部に行い、その時間や波形から、コンクリート内部の空隙やPCグラウトの未充填箇所を確認する手法である。
■時間差で判定するのが原理です。
(2)実施に対する留意点
インパクトエコー法の結果判断は、技術者によって左右されるため、資格を有した技術者を選定する。
■留意点と言うより、禁止事項かと思います
②鉄筋の腐食可能性・自然電位測定法
コンクリート表面に鉄筋に沿ったひび割れが生じており、鉄筋が腐食している可能性がある。
(1) 自然電位測定法の原理
腐食により変化する電位を測定することによって、鋼材の腐食可能性を確認する手法である。
■これでは言葉の説明です。 コンクリート中の鉄筋などの鋼材腐食は、電荷の移動を伴う電気化学反応で、腐食を起こしている箇所をアノード域、その周囲をカソード域という。
鉄筋が腐食しているとき、電子は鉄筋中をアノード域からカソード域へ流れ、アノード部(腐食部)の電位は卑側(マイナス側)に変化します。この電位を測定することにより、鉄筋の腐食推定を行う。http://kitanihonhihakai.co.jp/CONCRETE/entry14.html
(2)実施に対する留意点
コンクリート表面被覆やエポキシ樹脂塗装鉄筋が施工されている場合、電気を通さないため、適用可能な構造物かを事前に調査する。
■留意点と言うより、適用除外事項であり、それよりは効果的に行える方法を提案した方が良いでしょう。
Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
1.調査・検討事項
対象構造物:道路橋のRC橋脚
老朽化状況:コンクリート表面にひび割れや浮き
①構造物諸元・劣化状況の調査
設計図書等を確認し、適用基準・荷重条件・使用材料等の基本情報を調査する。
環境条件や劣化状況・損傷状況など、構造物の現在の状態を調査する。
②耐震補強検討
環境条件や資機材の搬出経路、施工ヤードや周辺施設・支障物などを事前に調査する。その現地条件を基に、過去の類似事例や耐震性能・施工性・維持管理性等を考慮し、最適な耐震補強工法を検討する。
■築30年の既設構造物がどのような問題を抱えているか想定できていません。予備知識なしで解くみたいな姿勢では経験力が感じられません。
2.業務手順および工夫点・留意点
①机上調査・現場調査
留意点:調査結果を基に、耐震性能や耐震補強工法を検討するため、手戻りやミスを防ぐこと。
工夫点:綿密な調査計画を策定し、各データを活用する前には、異常データの有無や追加調査の要否を関係者全体で照査する。
■ミス防止や問い合わせなど、特に鋼コンの技術応用とも思えません。
②耐震性能の評価・耐震補強工法の検討
留意点:劣化因子により耐震性能に支障を生じさせないこと。また、RC巻き立てなどの部材補強工法は、架橋位置の設置状況等により、仮設や施工が大規模となることや死荷重増加による基礎への影響があること。
工夫点:塩分含有量や鉄筋の腐食状態を考慮し、今後の耐久性も含めた検討をする。また、免震装置等による橋全体系の補強を視野に入れて検討を進めることで、大規模な工事を不要とする。
③周辺施設管理者との協議
留意点:検討した耐震補強工法や施工計画を基に、周辺施設管理者と事前に協議を行い、手戻りが生じないようにすること。
工夫点:工事内容を三次元モデルにより段階ごとに説明し、周辺施設の管理者側の懸念事項等を事前に解決する。河川管理者であれば河川阻害率、鉄道・道路管理者であれば建築限界への説明を的確に行う。
■一般的に行う事項ばかりのようです。やはり築30年の既設構造物に対するねらい、焦点が欲しいです。
3.関係者との調整方策
①発注者と施工者
CIMを用いての三者会議を適宜実施し、フロントローディングにより、安全性・品質性・施工性などを考慮した最適な計画を策定する。
■CIM、フロントローディングのキーワードはともかく、問2の業務を具体的にどう進めるかの話に集中してください。
②周辺住民
工事説明会やビラの利用により、周辺住民へ工事内容を周知し、事前に工事への理解を得ることで、円滑化を図る。また、そこで得られた情報は第三者への安全対策に活用する。
■住民に「周知、理解を得て、・・活用する」と一方的に伝え、行うだけで、私が行う「調整」が明らかではありません。「調整」の言葉の意味は何かご存じですか。調整とは新たに何かすることではなく、「スピード調整」という言葉にあるように、何かを減じて、別な何かを増す行為です。
Ⅲ-2 我が国では、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。
(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
1.多面的な課題の抽出と分析
①いかに新技術を活用したシステムにしていくか
厳しい財政状況下において、膨大な構造物を管理していくためには、適切な時期に適切な補修・補強を実施する必要がある。しかし、現在の労働集約型体制では、時間や労力を多く要する。
そのため、予防保全の促進を目的とし ←ここまで前置き
、新技術を活用したシステムにしていくかが課題である。
■予防保全に必要な新技術とは何ですか。自動化、ロボット化を挙げるように。新しければよいわけではありません。
また、問題文と同じ内容の繰り返しが冗長です。前置きは簡潔に、自身の提案を単刀直入に言うのが良いでしょう。
②いかに高規格材料により機能を向上していくか
構造物の老朽化や連続的な災害により、膨大な構造物の機能が低下しているが、限られた予算や人員で管理していくには限界がある。
そのため、高強度や高耐久性を持ち合わせた高規格材料を用いり、構造物の機能を向上していくかが課題である。
③いかにインフラ構造物を集約化していくか
人口減少・高齢化が進む中、大都市一極集中により、拡散している地域社会の活力は低下している。
その中で災害復旧や新たな防災対策工事を兼ねつつ、今後持続的に予防保全を実施していくことは困難である。そのため、予防保全を確実に進めることを目的とし、インフラ構造物の集約化を図っていくことが課題である。
2.最も重要な課題と複数の解決策
人口減少が進む中、膨大な構造物の予防保全を促進するためには、属人性の高い従来手法を見直し、新技術を用いることが最も有効である。そのため、いかに①いかに新技術を活用したシステムにしていくかを最重要課題とし、解決策を以下に記述する。
■課題1を宣言するだけでOKです。前置き↑不要です
(1)モニタリング技術による点検の効率化
予防保全を効率的に進めるためには、属人性の高い点検作業を効率化していくことが求められる。
そのため、遠隔でリアルタイムに構造物の変化等を検知することが可能なモニタリング技術を活用する。
これにより、点検の効率化が図れるとともに、得た情報は設計などへフィードバックできる。
(2)AIを用いた診断技術の高度化
予防保全を合理的に進めるためには、正確な診断が求められるが、現在主流となっている人間頼りの方法では技術者の技量に左右されるため、診断結果にばらつきが生じる。
そのため、撮影した画像や打音調査の結果から、損傷の進展状況や健全性を自動的に評価することが可能なAI技術を活用する。これにより、正確で定量的な結果を得ることができる。
(3)インフラ・データプラットフォームの構築
予防保全を戦略的に進めるためには、得られたデータを効果的に利活用し、維持管理サイクルを確立していくことが求められる。そのため、各管理者が保有している点検診断やその後の修繕更新データを一元的に集約化・共有を図れる、インフラ・データプラットフォームを構築する。これにより、予防保全を高度・効率的に進めることができ、小規模自治体における予防保全も補助することもできる。
3.解決策に共通するリスクと対策
①リスク:技術の空洞化
近い将来、熟練技術者の大幅な離職が予想される。
その中で現場での複雑な作業が少なくなることによる技術伝承の場の喪失、ICT機器やマニュアルへの依存が生じる。これにより、技術の空洞化が発生する可能性がある。
②対策:育成システムの再構築
官民学が連携しICT技術と現場技術力を兼ね備えた技術者を育成する。
熟練技術者の知識や技術をAIやloTによりナレッジマネジメント化し、それをOFF-JTにより効果的に学習させることで、技術力を向上させる。
また、地域コンソーシアム等でICT技術の研修やVRを用いた仮想ICT工事を実施する。これらにより、新たな育成システムを構築する。