この日のコーチングによる指導時間は18時00分から、1時間30分間行なわれ,その受講者様は総監部門、建設・施工科目を目指す方で、場所は新潟からスカイプを用いて相談されました。総合技術管理部門の基本演習として業務課題に対して総監の視点から課題のあるべき姿を提案すると言う練習を行いました。
ご指導したK様の業務と課題は次のようなものでした。
業務: 〇〇物件工事における計画、積算および施工監理の品質を高める。
1.主要課題1 事故発生を未然に防止し工期短縮を図る
自然環境由来のリスクがあるため、事故を未然に防止し、工期を短縮する。
2. 課題のあるべき姿
2-1人的資源管理 【OJTとOFF−JTによる短期間での人的資源開発】
短期OJTと発注者合同OFF−JTによる短時間での職員育成を実施した。
2-2社会環境管理 【汚染者負担原則による現場監理】
現場にて汚染した排水を水質基準値内に現場内で調整後に排出した。
2-3安全管理 【ヒューマンエラーに対するミス防止】
フールプルーフ設計により重機可動範囲を安全範囲に設定しミスを防止した。
これに対して次の指導を行ないました
まず人的資源管理について、一般的に用いられるOJT、OFF−JTという言葉は、教育の区分を表しているものの、総合技術監理都市の工夫や貢献に関する内容が含まれてはいないことをご指摘しました。このためただ「OJT、OFF−JTする」と言うだけでは総監の視点での課題とは呼べません。見方によっては特に感慨もなくひたすら業務注文を業務中以外も教育すると言う事に過ぎません。
このギャップは何から生じるかを言いますと、人的資源管理の意義が伝わってないことからです。ただ教育するだけでは人的資源管理として不十分であり、学びのプラスの効果をもたらすには、人間の能力に関する理論を応用する必要があるということです。それがPM理論やマズローの自己実現後5段階説にといった手法に相当します。人的資源管理ではこうした技術や原理を応用して効果的に指導を行うことを提案すべきと申し上げました。
次に社会環境管理では「汚染者負担原則による現場監理」と言う課題を設定されていましたが、この汚染者負担原則PPPがどのように位置づけられるのか意味がわかりませんでした。すなわち現場の工事で発生する排水を水質基準以下に浄化して排出すること自体は法律で定められた最低限の務めであり、汚染者負担原則を持ち出す必要がないからです。汚染者負担原則を用いるのは誰が負担すべきか明確でない場合にその負担原因者を特定するための考え方であって、このように自らの現場で発生するという責任が明確な場合には不要な概念をなります。総監のキーワードをどこでもいいから当てはめて使えば良いと言うものではなく、
総合技術監理の要素技術はふさわしい場で使わねばならない
ということなのです。
そこでこの現場の真の社会環境管理の課題はどこにあるかを考えると、それは排水の浄化による環境負荷低減であり、そうした現場の浄化活動の効率化による社会への環境負荷低減法どのように効果的に進めるかを課題に設定するように指導しました。
最後に安全管理では「ヒューマンエラーに対するミス防止」が課題として挙げられていました。しかしこれはヒューマンエラーの問題に対してミス防止という対策を行うという単純な問題解決に過ぎません。現実にはそうした目標を設定しても、
その解決法を満たすこと自体が困難なため、目標設定はともかく実現は困難
なわけです。こうした
「 言うは易しく、行うは難し。」
と言う課題は実際には実現不可能なことになるため適切な課題ではないと言うことを申し上げました。
「フールプルーフ設計」も取り上げていらっしゃいましたので、具体的にそれが何を意味するかを述べることによって、総監としての課題のあるべき姿を述べるように指導しました。
この受講者様のK様は、建設施工の分野で十分な経験を積まれてきた方ですが、総監の考えはまだ十分慣れていないようでした。このため数回の添削の後に、添削の修正が行き詰まってしまい、赤ぺんで指摘しているにもかかわらず、改善のための展開がほとんどを行われないという状況に陥っていました。これは添削を何回も行っていくとよく見られる現象です。いわゆる「答案が煮詰まってきた」という状態です。こうした答案の行き詰まりを解消するには、
コーチングによってまだご自身が気づいていない不理解の点を明らかとして、誤った考え方を払拭し、前向きな答えに直結する考え方を口頭で伝える
必要があります。赤ペンの直しを赤ペンだけで伝えるには相当な文字数が必要であり、一般的な添削指導の範囲内では不可能なのです。
一方、コーチングでは話し言葉で表現しますので、問題となる誤解のポイントを単刀直入に説明が可能です。そして誤った考え方の払拭と改善方向の指摘については、単に言葉でわかるだけではなくて、
実例や感覚的な評価、感情的な表現も交えて直感的に伝える
ことを行っています。このため、指導の文言を言葉で暗記するというしんどい作業ではなく、直感的に理解できて身に付く指導となっています。だから正しい考え方が腹に落ちて、正解を導き出すことができるのです。
コーチングの内容は以上です。本研究所では疑問が生じた際は随時相談をこのような方法受け付けており、疑問を短時間で解決するよう努めています。