技術士二次試験模範解答と解説 H27年 2015年 総合技術監理部門 必須科目問題Ⅰ−2

問題文 Ⅰ−2

 2020年には東京でオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるが,このような国際会議,国際文化・スポーツイベント,国際展示会・見本市などの国際的なイベントは,我が国の課題である活力ある経済社会の構築,安全・安心社会の実現,地域の活性化や観光振興等を推進していく上でまたとない機会であり,これら国際的なイベントに直接的にあるいは間接的に関係するプロジェクトでは,この機会の有効な活用が期待される。またこれらのプロジェクトの成果は,それが有形であっても無形であっても,一過性のものに留まらず,例えばオリンピック・レガシー【注1】で謳われているように,良い遺産(positive legacy)として後世に引き継がれていくことが望ましい。

 その一方で,プロジェクトやプロジェクトの成果を取り巻く環境には多くの不確かさが存在し,それらはプロジェクトを推進していく上で,あるいはプロジェクトの成果を引き継ぎ管理・運営していく組織にとって,さまざまなリスクの源となる。これらのリスクをあらかじめ認識し,適切なリスク対応を取りながらプロジェクトを計画し,実行することは,総合技術監理部門の技術士に要求される重要な業務の1つである。

 そこで,あなたがよく理解しているプロジェクトを取り上げ,さらに,近い将来我が国で開催される国際的なイベントを想定して,その国際的なイベントをそのプロジェクトに関連付けた上で,プロジェクトを推進していく際のリスクマネジメントについて,総合技術監理の視点から(1)〜(3)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは,「経済性管理」,「安全管理」,「人的資源管理」,「情報管理」,「社会環境管理」の5つの視点をいう。

 なお,あなたが対象とするプロジェクトと想定する国際的なイベントについては,以下の(ア)〜(エ)のとおりとする。

 (ア)「国際的なイベントをプロジェクトに関連付ける」とは,その国際的なイベントの開催を契機にして(あるいは利用して),そのプロジェクトの成果が,我が国や地域社会のさまざまな課題の解決のために,貢献できるよう工夫することをいう。

(イ)あなたが対象とするプロジェクトは,国際的なイベントの開催期間末までには終了する。

(ウ)そのプロジェクトの成果は,プロジェクト終了後に適切な組織に引き継がれ,将来にわたって管理・運営されていく。

(エ)プロジェクト終了後にその成果が引き継がれ管理・運営されている期間に発生する可能性のあるリスクについても,プロジェクト期間中に可能な範囲で対応策をとる。

 リスクマネジメントについては,その用語や考え方を整理した国際規格IS0 31000 :2009及びその翻訳版であるJIS Q 31000 : 2010 が制定されている。問いに対する解答論文(あなたの答案)を作成するに当たっては,この新しいISO/ JIS 31000 の枠組みに基づいて作成してもよいし,従来一般に用いられてきたリスクマネジメントの枠組み(例えば,JIS Q 2001 : 2001 や『技術士制度における総合技術監理部門の技術体系(第2版),日本技術士会』で紹介されている枠組み)に基づいて作成してもよい。

(1)本論文においてあなたが対象とするプロジェクトと国際的なイベントの内容を,次の①〜⑤に沿って記せ。この際,以後の問い(2),(3)の解答に必要な内容を含めて記すこと。なお,あなたの立場は,当該プロジェクトの総括責任者あるいはそれと一体となってプロジェクトを推進する総合技術監理部門の技術士であり,プロジェクトの責任を他に転嫁できないものとする。  (問い(1)については,問い 2)と併せて答案用紙3枚以内にまとめ,解答せよ。)

① 想定する国際的なイベントを設定せよ。

② 対象とするプロジェクトの名称,目的,事業期間及び予定される成果を記せ。

③ プロジェクトの置かれている背景状況ないし環境を記せ。

④ そのプロジェクトに国際的なイベントを関連付けよ(そのプロジェクトの成果が国際的なイベントの開催を契機に,我が国や地域社会のどのような課題に対して,どのような工夫をすることによって,どのように貢献できるかを記せ。)。

⑤ 国際的なイベントの終了後(この時点ではプロジェクトも終了している。)にプロジェクト成果が置かれていると予想される状況を記せ。

(2)対象とするプロジェクトの主要な作業ステップを①に従って記せ。また,プロジェクトを推進していく上での主要なリスクを丘2取り上げ,②に従って記せ。ただし,取り上げる4つのリスクのうち少なくとも1つは,国際的なイベントの終了後に発生する可能性のあるものとする。  (問い(2)については,上の問い(1)と併せて答案用紙3 r内にまとめよ。) 

① プロジェクトの主要な作業ステップ及びその作業ステップにおける留意点を記せ。

② 取り上げる主要なリスク4つのそれぞれに対して,(a)リスク源(ハザード,危険因子),(b)事象(ある一連の周辺状況の出現又は変化),(c)その事象により生じうる結果,について説明せよ。また,(d)そのリスクが①の作業ステップのどの段階で出現する可能性があるかを示せ。なお,国際的なイベントの終了後に発生する可能性のあるものについては,その時期を記せ。

(3)問い(2)で取り上げた4つのリスクのうち,対象とするプロジェクトに大きく影響を与えるリスクを呈ご2取り上げ,それぞれのリスクに対して,次の①〜③に沿ってリスク分析とリスク対応について説明せよ。ただし,取り上げるリスクのうち之な立と玉上回は,国際的なイベントの終了後に発生する可能性のあるリスクとする。  (問い(3)については,答案用紙を替えて2枚以内にまとめよ。) 

① そのリスクに対して,(a)起こりやすさ(確率の程度)と,(b)プロジェクトヘの影響(あるいはプロジェクトの成果を管理・運営していく上での影響)の程度について想定し,記せ。また,(c)そのように想定した理由を簡潔に述べよ。 

② リスクに対する具体的な対応策(プロジェクト期間中にとる対応策)を提案せよ。  なお,対応策は,当該リスクヘの対応のみならず,より広い視点からのものであることが望ましい。 

③ 上で提案した対応策の提案理由を述べよ。提案理由には予想される効果と対応策実施上の留意点を含めること。また,他の懸念に対する配慮,総合技術監理の管理分野を踏まえた視点からの考察,生じる可能性のあるトレードオフ,その対応策を採用することによる新たなリスクの発生等についての考察を含めることが望ましい。

【注1】

 『オリンピック憲章』には「オリンピック競技大会の有益な遺産を,開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する(to promote a positive legacy from the01ympic Games to the host cities and host countries)」(第1章,第2項の14号)とあり,この「オリンピック開催を契機として社会に生み出される持続的な効果」は,一般に「オリンピック・レガシー」と称される。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答1

答案形式 解答者 建設・道路 専門事項: 道路構造物、道路管理 

(1)国際イベントと対象とするプロジェクト

①国際イベント:サッカーワールドカップ世界大会を2028年に日本で開催しその地方会場となる。

②プロジェクとの名称、目的、事業期間、予定成果

地域高規格道路の建設を行い、サッカースタジアムと高速道路を結び、プレ大会の開催される2027年には完成をはかる。会場へのアクセスを容易にすることで観客の移動の円滑化を図る。

③プロジェクトの背景状況と環境

 大会会場まで市内を通過するルートは、恒常的に渋滞が発生している。また、計画ルートが想定される市街地周辺は県立自然公園が指定されており自然環境配慮が必要である。

④プロジェクトの成果

 市内の交通は通常的に交通渋滞が発生しているが、同時にこの解消が求められている。高速道路と大会会場を結ぶ路線の建設を実施するにあたって、市街地を迂回し、 外環状道路としての機能を持った計画を行う。さらに高規格道路として計画することにより、効果的に交通を分散させ渋滞の解消を図ることができる。

⑤国際イベント終了後のプロジェクト成果

 会場までの各ICにおいて周辺の土地開発が進むことにより、当地域の産業の発展や地域観光資源等の利活用の推進が図られる。

(2)−1プロジェクトに必要な作業ステップ

①ステップ1 道路計画の策定時

 既設高速道路と大会会場を結ぶ路線計画を策定する。計画区間には、県立自然公園、人家連坦地や農地が存在する。

留意点: 経済効果を高めるよう、効果的なネットワークを形成し、他観光資源等の連携、渋滞解消、周辺土地開発並びに自然環境との調和を取れたものとする。

②ステップ2 道路設計と用地買収時

 地形、地質、ルート通過地点の諸条件等により道路詳細設計を実施する。

留意点:砂岩層や火山性堆積物のある区間を通過するため、設計する構造物の経済性、環境保全対策やステークホルダである土地所有者やルート周辺の関係者を考慮し設計を進め、リスク低減を図る。

③ステップ3 施工時

 本大会前年実施されるプレ大会までに完成するように工程計画を策定し実施する必要がある。

留意点:工程管理に対しては、クリティカルパスとなる区間の施工について、リスク検討を十分に行う。

④ステップ4 道路供用時

 基幹的な道路として役割を担い地域の進展に向け、各観光資源等と連携し広域的な人や物の流れの効率化を図る必要がある。

 留意点 :接続する道路のネットワークとしての整備。

や道の駅等の特色ある道路空間の創出を継続して行う。

(2)主要なリスク 

ⅰ. 地域の活力の低下

(a) リスク源;人口減少と地域間競争の激化

(b) 事象:地域の活力の低下

(c) 結果:更なる人口減少と産業の衰退                                                                 

(d) 出現:作業ステップ①

Ⅱ.人的資源の不足

(a) リスク源:高規格道路建設に精通した職員

(b) 事象:プロジェクト担当事務所における職員確保

(c) 結果:専門性に優れた職員を確保できなければ、プロジェクトの進捗と効果に影響を及ぼす。

(d) 出現:作業ステップ①、②、③

Ⅲ. プロジェクト事業費の増加

(a) リスク源:地形、地質や土地所有者や住民

(b) 事象:対策工法にかかる費用が増大

(c) 結果: 事業費が増大することにより道路建設に対する社会的受容に変化が生じる。

(d) 出現: 作業ステップ①、②

Ⅳ. 地域経済の衰退

(a) リスク源:地域の魅力創出を牽引していた国際大会終了後、他の観光資源等の振興に向けた道路の交通機能や空間機能が十分でなければ道路利用者が減少。

(b) 事象:当地域への入込客数が予想よりも減少する。

(c) 結果:地域経済の衰退や更なる人口減少が生じる。

(d) 出現 作業ステップ④

(3)−1 人的資源の不足

①−(a) 起こり易さ:当該自治体が初めて施工する地域高規格道路であるため、高い確率で生じる。

①−(b) 影響の程度:高規格道路を活用した地域振興に対し、高い効果を得ることが困難となる。

①−(c)  理由:高規格道路と地域振興を効果的に結び付ける能力を持つ人材の不足により、有効な計画設計ができず様々な難題を露呈させてしまうからである。

②対応策

 高規格道路を活用した地域振興に対して実積のある組織での研修により人材育成を図る。又、SECIモデルを組織内に採用することにより、研修者が得た知識の共有化を進め効率的に職員のスキルアップを図る。

③提案理由

 地域振興の好事例を生むノウハウを学び、暗黙知となる事象や業務遂行上のネックとなる個所を理解し効果的な対策を立てることが出来るからである。

 また、研修の成果を組織に浸透させ、活性化を図るため、困難とされる暗黙知から形式知への相互変換に対しSECIモデルを採用する。これにより情報管理として知識の共有化はもとより、地域振興に対して、創造性を発揮した対策の展開を図ることが可能となり、組織の対しインセンティブを与えることができ、人的資源開発を効果的に行なえる。

(3)−2当該プロジェクト区間の道路利用者の減少

①−(a) 起こり易さ:国際大会の終了や、人口減少、 地域間競争等の他の要因も合わせ、高い確率で生じる。

①−(b)影響の程度:国際大会終了後に、交通量の減少が生じ、地域振興が停滞する恐れがある。

①−(c) 理由:地域観光資源等と道路の空間機能の有機的な連係が不十分であることにより地域の魅力創出が出来ず集客が減少するからである。

②対応策                                                               

 道の駅やオープンカフェ等の道路占用施設等の道路空間における魅力創出を図ることにより集客力を高める。例えば地域色ある食事、土産等のサービス向上。中央ブランド店舗の誘致、観光施設のPR等をおこなう。これらを有効的にするため各施設のネットワーク化と人的資源開発を行う。また PRを充実させ、メディア、インターネット等で情報発信を積極的に行う。

③提案理由

 地域観光資源や人的資源を十分に生かすことで、活力が創出され地域経済の振興を図ることが出来る。実施に当たっては、効果を高めるため、国際大会開催前から戦略的な取り組みを行うことに留意する。

又, 交通機能の強化による移動コストの低下が更なる地域間競争の激化を生じさせるが、品質管理を徹底させたサービス向上や、他地域並びに民間等と連携したネットワーク化を図り、 競争性と協調性を両立させることによりリスク低減を図って行く。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答2

答案形式 解答者 建設・道路 専門事項: 道路構造物、道路管理 

(1)プロジェクトと国際イベント

①国際イベント

東京オリンピック・パラリンピック

②プロジェクトの概要:

主な競技会場となるスタジアムの建設をおこなう。

事業期間として5年後のプレ競技大会までには完成を図る。

③プロジェクトの背景状況

工期が限定されており、スタジアムはハード・ソフトの多くの機能をもつ施設としての役割が期待される

④プロジェクトと国際イベントとの関係

主会場となるスタジアムであり多くの競技や運営上の核となる施設を受け持ち、競技などの情報発信や国際的なPRの場となる

⑤終了後の成果

東京オリンピック・パラリンピックのレガシー継承として拠点施設の役割を持ち、周辺の都市空間の整備やスタジアムへのアクセス及びその周辺の交通の円滑化が図られる。

(2)作業ステップと主要なリスク

①主要な作業ステップと留意点

ステップ1.調査・計画

オリンピック終了後、高まったスポーツ熱を継承するため、

スタジアムを核とした継続的な活用ができるようニーズの調査を行う。スポーツや文化事業等の多目的な利用が可能となるような施設計画を図り、又、様々なスポーツ関連組織の拠点とすることで、連携を容易にし、人材や民間・NPО等の育成につなげる。

ステップ2.設計

コスト縮減のため、構造形式や新技術・新工法の導入を図りスタジアム周辺の整備による都市空間としての質の向上や交通円滑化対策として交通結節点設計や交通ネットワークの整備等の設計を行う。

ステップ3.施工

工程管理としてクリティカルパス、品質管理として検査体制の整備および適切な原価管理、安全管理として安全衛生管理体制の充実を図る。

ステップ4.管理運営

オリンピックレガシー継承のため、スタジアムの拠点機能としての役割や周辺施設を含めた維持管理、新たな観光等の創出に向けた拠点としての役割を果たしていけるよう持続的な発展を促す。

②主要なリスク

リスク1:コスト増

(a) リスク源:オリンピック特需により人材不足や資材不足が発生しコスト増となる。

 (b)事象:コスト増により入札不調を引き起こす。

 (c)結果:落札業者が決定しないことによりプロジェクトの遅延を生じ、大会開催に影響を与える。

 (d)段階:施工段階で発生する。

リスク2:施工時の環境負荷

(a) リスク源:建設公害訴訟を起こされる。

 (b)事象:スタジアム建設の際に振動騒音等により環境が悪化する。

 (c)結果:周辺住民の健康被害が生じ、訴訟や公害対策等により工事遅延を招くこととなる。

 (d)段階:施工段階で発生する。

リスク3:移動の円滑化阻害

(a) リスク源:オリンピック関連施設建設時やオリンピック終了後の施設等へのアクセス増加により交通モビリティーのひっ迫を招く。

(b)事象:渋滞による時間的損失が発生する。

(c)結果:移動に対する経済的損失を招くこととなる。

(d)段階:施工や管理運営段階で発生する。

リスク4;イベント終了後のスタジアム利活用の低下(レガシー継承の喪失)

(a) リスク源:東京オリンピック・パラリンピックが終了し、スポーツに対する社会的意識の変化によりスポーツに関連したマーケット縮小が生じる。

(b)事象:スタジアムの利用率の低下を招き、維持管理費のひっ迫が生じ、更に利用率が低下すると言った負のスパイラルを生じる。

 (c)結果:存在意義が問われ、負の遺産となり国民の厳しい批判の目にさらされることで閉鎖に追い込まれる。

 (d)段階:管理運営段階で生じる。

(3)プロジェクトに大きな影響を与えるリスク

1)リスク1:スタジアム建設のコストが増となる。

(a)起こり易さ:高い

(b)影響:遅延が生じ、国際的な信頼性が低下する。

(c)想定理由:東日本大震災復興事業や他のオリンピック関連施設建設などにより資材や人件費の高騰を招くからである。

②対応策:全体工程のクリティカルパスを検討し基礎や梁等の各種部材をPC化し省力化を図る。

③対応策の提案理由

(a)予想される効果と対策上の留意点:総労務費低減、工程短縮や品質確保ができるからであり、設計施工一括方式による発注により効果を高める。

(b)他の懸念への配慮:部材のPC化による現場施工の安全性に対し運搬車や揚重機の施工計画や接合部設計のリスクマネジメントを実施する。

(c)総監の視点:PC化した部材の施工を効率的かつ高品質とするため、情報管理としてBIMやモバイル端末の活用、施工技能者と設計者との情報共有を実施。

(d)トレードオフ:部材をPC化すれば、施工の総労務費は低くなるが、一方部材の価格は高くなる。可能な部材は工場でなく現場内で製作し運搬費の低減を図る。

(e)新たなリスク:PC化により高所で作業安全性のリスクが高まるが、IОTを活用した情報化施工や、作業者のウエアラブル端末の使用により安全性を高める。

2)リスク4:イベント終了後の利活用の低下

①(a)起こり易さ:高い

 (b)影響:スタジムやその周辺も含め街並みが衰退しレガシーとしての継承が困難となる。

(c)想定理由:一過性のイベントとして認識され易く、終了すると人々の意識から忘れ去れるからである。

②対応策:周辺整備による都市空間の質的向上、円滑なアクセスが可能な交通結節点や交通ネットワークの整備、スタジアムの拠点化とレガシーの継承を踏まえたスポーツや健康関連等の民間事業の創設を行う。

③対応策の提案理由

(a) 予想される効果と対策上の留意点:高付加価値を持つ街づくりにより都市の魅力を高めることでレガシー継承が図られるからであり、にぎわい創出や地域活動支援、空間利用等のコミュニティ形成の進展を図る。

(b) 他の懸念への配慮:東京への集積の分散化を図るため交通ネットワーク整備や観光等の情報提供を行う。

(c)総監の視点:事業計画段階からサステナビリティを踏まえ、各対応策のLCCの低減や品質の向上を図る。

(d)トレードオフ:各対応策は都市空間の質を高めるが、一方整備費の総額は多大となるため、既存施設の再構築や長寿命化を図ることにより総コストを抑制する。

(e) 新たなリスク:人口集中により地震時等での危険性が増大するため、危機管理対応として減災対策や企業等のBCPを支援するための活用を検討する。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答3

答案形式 解答者 建設・鋼コン 専門事項: コンクリート 

(1)国際イベントと対象とするプロジェクト

①国際イベント

RWC(ラグビーワールドカップ)2019

②プロジェクトの1)名称2)目的3)事業期間4)成果

 1)地方と各都市とを結ぶ外郭環状高速道路である。

 2)地域経済の活性化と交通渋滞の低減を目的とする。

 3)RWC開催半年前の完成を目指す。

 4)交通の利便性向上と地域経済を活性化する。

③プロジェクトの1)背景状況2)環境

 1)RWCを通じ、交通の利便性を向上することで地域経済を活性化することが背景にある。

 2)計画ルートが想定される地域は、自然豊かな環境であり住宅密集地でもある。

④プロジェクトの成果1)課題2)工夫3)貢献

 1)都市部には慢性的な交通渋滞が多発しており、外郭環状高速道路により、都市部を通行することなく効果的に交通量を分散して、交通の利便性向上を図ること、また、それに伴う地域経済の活性化を図ることが課題である。

 2)予防保全によるコンクリート構造物の品質向上と道路維持管理費を削減する。また、道路構造物を地下化することで、沿道環境の維持と生活環境の改善を図る。

3)コンクリート構造物の品質改善と交通渋滞の低減に貢献するとともに、地域に新たな雇用を生み出すことで、地域経済の活性化にも貢献する。

⑤国際イベント終了後のプロジェクトの成果

交通の利便性向上と土地開発の促進に伴い、産業及び観光資源の活用範囲が拡大することで、地域経済が活性化する。

(2)プロジェクトの主要な作業ステップ

①作業ステップ及び留意点

①計画:計画区間は自然豊かな環境であるため、環境アセスメントを反映した路線計画とする。

②設計:ライフサイクルでのコスト最適化とするために、予防保全技術を設計に反映する。

③施工:工程・品質・安全の各管理が円滑に進むようにPDCAを効果的に運用する。特に、工程管理については、クリティカルパスとなる工種を見極め、リスク検討を十分に行う。

④道路供用: 定期点検を有効に活用して維持管理費用を抑制するとともに、地域経済の振興に向け、産業及び観光資源等と連携して、広域的な人や物の流れを促進する幹線道路としての役割を担う必要がある。

②主要なリスク(a)リスク源(b)事象(c)結果(d)出現

1)地域経済の衰退

(a)地域経済が破たんする。

(b)労働人口の移動により、地域経済の活力が低下する。

(c)交通量が激減する。

(d)作業ステップ④

2)技術者の人的資源不足

 (a)技術者が不足する。

(b)施工管理・道路管理不足により、品質の不具合が発生する。

(c)コンクリート構造物の劣化が進行する。

(d)作業ステップ③,④

3)地域環境の悪化

(a)プロジェクトに対する住民の不満・怒りが爆発する。

(b)プロジェクトに対して住民と対立する。

(c)プロジェクトへの工事中止運動が起こる。

(d)作業ステップ③,④

4)重大災害となる危険要因の増加

 (a)重大災害の危険因子となるヒヤリッハット事象が現場で起こる。

(b)墜落・転落災害等の重篤災害発生頻度が増加する。

(c)プロジェクト完成に向け、組織構成員の士気に多大な影響を及ぼす。

(d)作業ステップ③

(3)プロジェクトに大きく影響を与えるリスクに対するリスク分析とリスク対応

①-1技術者の人的資源不足 (a)起こりやすさ(b)影響の程度(c)想定理由

(a)RWCに向け、他のプロジェクトもほぼ同時期に開始されるため、高い確率で発生する。

(b)コンクリート構造物の品質不具合により、道路維持修繕費用が増える。

(c)技術者不足により、施工中及び供用した道路の品質管理が細部にまで行き届かずに、コンクリート構造物の不具合が多発するため。

②-1対応策

<1> ベテラン技術者の持つ施工管理ノウハウをデータ化して組織内に展開し、若手技術者との融合を図る。<経済性管理>

<2> 現場における問題解決能力を養成するため、ケースワークによる課題を設定し、それを解決する能力を養うことで、即戦力となる技術者を育成する。<人的資源管理>

<3> 業務を通じて、有能な非正規社員を発掘して育成し、継続して活用する。現在、施工管理技術者の人材不足が深刻であり、その中で有能な人材を継続して囲い込むことが必要である。<人的資源管理>

③-1提案理由 [効果・留意点]

<1>ナレッジマネジメントの活用により、ベテラン技術者の持つ技術を若手技術者が習得することで、組織としての生産性向上を図るため。

<2> 階層別教育訓練の実践により、技術者のモチベーション向上を図るため。

<3> コミュニケーション等の意思疎通を十分に図れる職場環境を整備することで、組織全体における作業能率の向上を図るため。

①-2地域環境の悪化 (a)起こりやすさ(b)影響の程度(c)想定理由

(a)施工中や道路供用後においても、高い確率で発生する。

(b)プロジェクトに対する地域住民の反対により、工程が遅延する。

(c)プロジェクトに対する地域住民の理解・協力が得られないため。

②-2対応策

<1>施工中や道路供用後における騒音・振動・大気質及び水質を計測して、プロジェクトが実際に及ぼしている地域への環境影響を調査する。

そして、環境基準を満たさない調査結果が現われた場合には、該当項目の環境負荷を低減する改善策を実施することで、プロジェクトに対する社会的認知の促進を図る。<経済性管理>

<2>環境保全か開発かのどちらかを選択するうえで、地域住民の目線に立った広報活動(パブリック・コミュニケーション)により、社会との共生を図る。<社会環境管理>

③-2提案理由[効果・留意点]

<1>環境アセスメントを適正に評価することで、住民に対して納得性の高い安全・安心社会の実現につなげるため。

<2> 正確なリスク認知活動を継続的に実施することで、プロジェクトに対する住民の正しい判断を促すため。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答4

答案形式 解答者 建設・道路 専門事項: 道路計画 

(1)プロジェクト概要

①想定する国際的なイベント

 東京オリンピック、パラリンピックを想定する。

対象とするプロジェクトの概要

名称:新国立競技場整備事業

目的:東京オリンピックなどのメインスタジアムとして競技トラックや観客席など施設機能を確保した競技場を整備し大会終了まで施設管理する。

事業期間:パラリンピック終了まで

成果:国際大会を成功に導き、大会終了後国際スポーツ大会招致に貢献する都市インフラが整備される。

③プロジェクトの置かれている背景・環境

 オリンピック開催半年前からリハーサルなどの大会準備が予定されている。大会後は、民間事業に移行し運営会社が施設を維持管理・運営することとなる。

④国際的イベントとの関連

 ユニバーサルデザインやバリアフリーなどのホスピタリティ機能で大会を成功させる。大会終了後は、各国際スポーツ大会の要求を満たす施設改修により招致を成功させ、国際化の進展に継続的に貢献する。

⑤イベント終了後置かれている状況

 民間に管理が移り、国際大会やイベント収入などで維持管理・運営する。サッカーワールドカップなどは収容人員などの機能が不足するが、日常のコンサートイベントなどでは未利用施設の発生が予想される。

(2)プロジェクトの作業ステップとリスク

①プロジェクトのステップ、留意点

構想段階:大会時と将来ニーズを明確化し、施設の規模・仕様や概算整備費、予算、将来の事業収入や維持管理経費の収支予測など事業フレームを決定する。

計画・設計段階:パブリックコメントなどPI手法を採用し国民の意見を集約する。そこでの議論を事業計画に反映させ、施設や設備の配置・能力、事業費を具体化する。事業目的や計画についてホームページなどの広報活動で国民的コンセンサスを確保する。

施工段階:発注仕様を明示しプロポーザル総合落札方式で入札し、応募企業の工期・工事費・施設内容・特徴など技術的提案を総合評価し落札業者を決定する。落札業者からの施工計画提案について協議し、リスクマネジメントにより計画内容を修正する。施工計画に基づきPQCDSMを総合監理する。

②取り上げる4つの主要なリスク

リスク1:円安の進行による工程・予算の逼迫

リスク源:円安の進行

事象:大会関連事業が集中し建設資材の需要は増大するが、円安進行しより外国輸入に依存する建設資材の高騰や品不足が発生する。

生じうる結果:材料手配の遅れによる作業遅延や資材高騰による予算逼迫が発生する。

発生する段階:施工段階で発生

リスク2:作業員不足による工程逼迫

リスク源:大会関連工事の集中により熟練技能者や建設作業員が不足。

事象:外国人労働者や未経験者を採用し対応するが、不慣れな作業員により作業遅延・労働災害・品質低下による手直しが発生する。

生じうる結果:クリティカルパス上の各作業の遅延が重なり全体工程が遅延し工事完成が遅れる。

発生する段階:施工段階で発生

リスク3:施設規模不足で国際大会招致に失敗

リスク源:国際スポーツ大会招致の開催条件に必要な施設の規模や機能が不足

事象:他国との誘致競争に負け招致に失敗する。

生じうる結果:レガシーとして期待されていた国際スポーツ大会誘致の効用が低下する。

発生する段階:運用段階で発生

リスク4:大会後の経営悪化、税金投入

リスク源:少子高齢化・人口減少や競合施設が建設されることによる施設利用需要の停滞

事象:施設利用が減り料金収入が減少し施設運営収支が悪化する。

生じうる結果:運営会社が経常的な赤字により経営が悪化し、赤字補填として継続的に税金投入せざる得なくなる。

発生する段階:運営段階で発生

(3)リスク分析とリスク対応

1)リスク2:作業員不足による工程逼迫

①発生確率、プロジェクトへの影響、想定した理由

(a) 発生確率大、(b) 影響多大、(c) 発生確率大は、大会関連による作業員需要増・建設作業員供給減と予測されるから。影響多大は、プロジェクトの最重要目標である納期順守の達成を困難にするから。

②具体的な対応策

経済性管理:PERT/CPMを活用しコスト・安全面の問題に配慮しながら、クリティカルパス上の作業の短縮・複線化など検討する。また、関係者と連携し、不測の事態を抽出し対応策をPDPC にまとめておく。

人的資源管理:熟練者と外国人労働者との作業チーム編成しQC 活動を実施することを推奨する。

安全管理:安全教育に関する新規入場者研修や労働災害未然防止活動,安全確認型インターロックシステム採用の建設機械使用を推奨する。

③提案理由

 提案した理由は、チームの生産性の向上、事故・手戻り工事のリスク低減、問題が発生した場合の工期への影響最小化により全体工程を短縮できるから。

他の懸念に対する配慮として、コスト増が懸念されるためCPMによるコスト縮減に配慮する。

2)リスク4:大会後の経営悪化、税金投入

①発生確率、プロジェクトへの影響、想定した理由

(a)発生確率大、(b)影響大、(c) 発生確率大は、人口減少や競合する施設出現のため。影響大は、施設の規模に見合う利用収入が得られず運営会社が経営破たんした場合、税金投入により施設が負の遺産となるため。②具体的な対応策

経済性管理:開催が確実なオリンピックなど需要に合わせ施設規模を設定する。サッカーワールドカップなどの招致対策として、要求される施設規模拡張にも柔軟に対応できる構造とする。

 メイン構造の長寿命化による保全予防、小まめな補修などによる予防保全によりLCCミニマムを実現する。

招致や中期的なイベント利用ニーズの変化へは、観客席・壁材などの2次製品やフレキシブル構造を採用し低コストで施設を改修することで需要を創出、収入の安定化が図れる工夫をする。

情報管理:建設CALSにより計画・設計・施工時のメンテナンス情報を継承し、大会終了後の予防保全に役立てる。

③提案理由

 提案した理由は、予防保全・保全予防で維持管理経費を削減、改良保全で新たなニーズを喚起する機能を確保できるから。

柔軟に対応できる構造を採用することによるメンテナンス時の品質不良リスク発生を防止するため、建設CALSによりメンテナンス情報を確実に伝達する。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答5

答案形式 解答者 建設・施工 専門事項: 施工計画 

(1)私が対象とするプロジェクトおよび国際的なイベント

①   FIFA日本ワールドカップ

②   プロジェクトについて

名称:〇〇競技場周辺 大規模貯留管設置工事

目的:エリアの浸水被害軽減

③   背景:近年のゲリラ豪雨に対する浸水被害が多発

環境:現地は緊急輸送道路に位置づけられている。交通量多い

④   関連:ゲリラ豪雨に対する浸水被害軽減、工夫として新潟駅から競技場までの地域限定対策、シャトルバスの円滑な運行に貢献

⑤   浸水被害に強いエリアとしての地域発展

(2)プロジェクトの作業ステップとリスク

①   1.調査 過去の浸水状況と解消状況の詳細な把握

2.基本計画 背水影響の有無を考慮した対策の立案

3.実施設計 周辺の環境悪化低減を考慮した工法の選定

4.積算,発注,契約 積算ミスを低減するシステムの開発

5.施工 フリーフロートを考慮しながら各工種の工程管理を実施

  ②【リスク1】(a)大地震の発生(b)既存設備が破損し使用不可能となる(c)再整備に時間を要しイベント開催に間に合わない(d)常時

【リスク2】(a)世界的な経済不況の発生(b)材料メーカーの倒産、世界的流通の停滞により材料入手が困難(c)イベント開催に間に合わない(d)施工時

【リスク3】(a)手抜き工事の発生(b)工期遵守が最重要課題となり品質低下、許容値を逸脱する(c)イベント開催中に破損し大事故発生(d)プロジェクト完成後

 【リスク4】(a)メンテナンス不足(b)労働力人口低下により事後保全対応が主体となりLCC増加(c)貯留管運用中止(d)イベント終了後の30年程度経過後

(3)【リスク3】

①(a)確率大(b)影響大(c)工程短縮が必要となればなるほど品質が低下するトレードオフが発生するため。

②   CPMによる工程の複線化、検査体制の多重化、QC工程表の整備、安全確認型インターロックの採用

③   複線化による無理のない工程短縮により品質維持へ配慮する。管理値再確認や検査によるチェック体制の充実。ヒューマンエラー防止。

CPMや残業等でのコストアップが懸念される。業務拘束時間が長くなりモチベーション低下する。インセンティブの付与やPM理論での人材開発が必要。

【リスク4】

①   (a)確率大(b)影響大(c)構想物劣化は確実に発生する。労働力人口は減少傾向であり、メンテナンス不足が予見できる。

②   メンテナンスが容易な構造設計、二次製品使用率向上

③   耐久性向上、ごみ上げ等が容易な構造設計、二次製品により現場施工削減し品質向上

建設コストは拡大するがLCCでの低下を考慮する。

新たな課題として予知保全に対する残存強度算定基準の策定が必要

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答6

答案形式 解答者 電気電子・電気設備 専門事項: 工場電気設備 

(1) 私が取り上げる対象プロジェクト

①   想定する国際的イベント:東京オリンピック

②   名称:〇〇センタービル電気設備工事

目的:災害耐性に優れ、高い電源供給信頼度を実現する建物の構築

事業期間:プレ大会開催前からオリンピック閉幕まで

予定される効果:イベントま開催までに全ての工事を完了すること。また天災等においても情報発信基地としての機能を損なわず(停電等のBCP対策)高い災害耐性を発揮し利用者等に安心を供給する。

③   プロジェクトの置かれる背景・課題

背景:景気の閉塞感や建築物ストックの問題か、ミティゲーションの観点より既築建築物の改修工事によるものが望ましい。国際的イベントは海外へのアピールの場でもあるのでリノベーション技術を披露する場にもなる。

④   プロジェクトと国際的イベントの関連付け

200を超える国と地域が参加する国際的なスポーツに関連する建築工事は国際的なプロジェクトと言える。

⑤   国際的イベント終了後の置かれているプロジェクト成果と予想される状況

高い次元で災害耐性を備えた本建築物は、イベント終了後にiDC(インターネットデータセンター)への転用が期待される。

(2) 対象プロジェクトの主要ステップ

①   主要作業ステップと留意点

設計時:電源の供給信頼度向上のための冗長設計を行う。またBCPのため電源系統に予備電源用発電機の設置計画を行う必要がある。

施工時:国ごと異なる電源電圧に対応するため3φ4W変圧器による異電圧供給を行う。この際、二次側電線の取出しを間違わないよう留意する。

運用時:冗長設計により複数系統より電源が供給される。このため運転管理員スキル不足により感電災害に留意する。

用途変更時:各国電圧に対応するため変電所の変圧器が特殊となっている。用途変更時に二次電圧を導入機器に対応した電圧に変成するため部分改修が必要になる。

②   取上げる主要リスク

1.     テロによるイベント停止

(a) リスク源:テロリストによるプレスセンター占拠または設備破損を伴う被害。

(b) 事象:メディアを牛耳るため各国プレスが終結するメディアセンターを不当占拠する。

(c) 生じうる結果:工期遅延やイベント自体の停止。

(d) 出現するステップ:施工時や運用時に起こる。

2.     導入機器・ケーブル盗難による工程の遅延

(a) リスク源:盗難

(b) 事象:特に納期の掛かる機器類が現場に納品後に盗難されイベントまでの工期が間に合わない。

(c) 生じうる結果:オリンピックやプレ大会開催時期に竣工が間に合わない。

(d) 出現するステップ:施工時や用途変更時に出現する。

3.     地震による予備電源の不動作

(a) リスク源:地震による冷却水配管の破断など

(b) 事象:震災等の有事の際に電圧補償すべき発電機が起動しない。

(c) 生じうる結果:大会期間中に各国が情報を発信できなくなる。また用途変更時に於いてはデータサーバなどがダウンしてしまう。

(d) 出現するステップ:運用時または用途変更後にも出現する。

4.     法改正による既存不適格リスク

(a) リスク源:法改正による既存不適格

(b) 事象:当初改修予定がなかった部位で建築基準法などと照らし、既存不適格が見つかる。結果、大幅な改修を余儀なくされる。

(c) 生じうる結果:当初予定していた改修コストを大幅に上回り計画が頓挫する。

(d) 出現するステップ:用途変更時に出現する。

(3) プロジェクトに大きく影響を与えるリスク2つ

1.     地震による予備電源の不動作

①   そのリスクに対して

(a) 起こりやすさ:大規模地震時に燃料供給が絶たれたり、配管の破断など高い確率で起こる危険性がある。

(b) 影響の程度:事業の維持が出来なくなるため設計時に対策が必要である。

(c) 想定した理由:地震大国である日本では災害耐性を大きく問われるため、予め想定する必要性がある。

②   リスクに対する対応策

 設計時に地震対策として

 ・発電機への地震影響を軽減するため耐震架台

設置はもちろん、下層階への設置とする。

・冷却水配管を要しない空冷式を採用する。

また燃料の冗長性を確保するためデュエルフ

ーエル発電機を採用する。

③   提案理由

想定外の災害が多発しSCM、BCPの観点から燃料などの冗長性に加え複雑化した制御に関するフールプルーフ化も要する。また、停止リスク低減策を講じれば講じるほど(安全管理)運転員の運転・日常点検、異常時対応スキル(人的資源管理)がより高いレベルで求められることとなる。

2.     法改正による既存不適格リスク

  (a)起こりやすさ:事故や多発する天変地異によっ

て法規制が厳しくなってきており法改正リスク

は高い。

 (b)影響の程度:特に耐震など建築物に関する法改

正は全体工程に遅延を招く危険性が高い。

(c)想定した理由:国内で頻発する大規模震災及び

経済生活に与える影響を勘案した法改正が今後

も検討されることが予想されるため。

②リスクに対する対応策

関連法規動向について関係省庁のホームページや国会の議案内容などに常に目を通し情報の集約を行う。(情報管理)

④   提案理由

日常的に関連法規の動向を見極め会社に情報を発信することで設計・施工に関し重大な意思決定をできる体制を確立する。(情報管理)留意点として既存建築物流用のため余計なコストを掛けないよう法の遡及の有無を確認することが重要となる。

多くの法改正情報の集約(情報管理)は情報集約のための人材を必要とし人件費の高騰(経済性管理)につながる。

H27年、2015年 総合技術監理部門 問題Ⅰ−2 模範解答7

答案形式 解答者 建設・施工 専門事項: 海外工事管理 

(1)

立場及び事業

  • 県内の道路トンネルの20%は供用開始30年以上となり、老朽化が進んでいる。将来的な維持管理費用を圧縮するために、トンネルの構造・設備点検を実施し、ライフサイクルの観点から維持管理事業を行う。
  •  県のトンネル維持管理責任者

a.「計画・設計時」

①情報管理 設計図書、施工記録を集める。点検結果、補修事例の保全予防情報を収集し、計画・設計をする。

 対応困難原因:点検結果は電子化されておらず、活用できず、計画・設計に手間がかかってしまう。

②人的資源管理 トンネルの状態を把握出来る経験豊富な技術者の確保。

 対応困難原因:トンネル変状の程度を判定する際、個人の技量差が出てしまう。

b.「施工・製作時」

①経済性管理 表面皮膜、漏水対策、覆工空洞充填補強対策工法を用いて補修・補強工事を予算内で早く完了させる。

対応困難原因:使用材料、工法は比較的新技術であり、割高になってしまう。

②安全管理 コンクリート頂上部で不具合は起きやすく、補修工事は閉鎖空間での高所作業となる。

対応困難原因:補修工事は覆工表面に近接し、常に上方を見上げる状態での作業となり、転落災害のリスクが高くなってしまう。

c.「運転・保守・維持管理時」

①経済性管理 変状が比較的小規模な内に、適切な予防保全を実施して、長寿命化を図る。

対応困難原因:予算の関係上、巡回のみの点検が中心であり、トンネル変状を把握できず、事後的管理が中心となってしまう。

②社会環境管理 補強工事により、発生する大量の廃棄物を適正に処理する

対応困難原因:老朽化したトンネルの割合は10年後から大きく増加し、補強工事が必要となり、廃棄物が増えてしまう。

(2)対策についての効果・影響を3点A,B,Cと略記する。

A:対象課題に関する管理以外の管理事項に及ぼす正・負の影響がある。

B:同一事業等の他のステージに与える効果・影響がある。

C:事業等を越えて、組織の活動や事業等の改善につながる効果・影響がある。

(2)−1 a.「計画・設計時」

①保全情報不足への対策

B:トンネル台帳の整備、点検結果を電子化、データーベース化する。点検補修設計マニュアル、点検標準歩掛を整備出来る。計画を効率化出来る。これと共に問題箇所のトレンドを掴むことにより、点検時チェックリストに発展させ、保守点検ステージにも活用できる。

②維持管理を行う人材不足への対策

B:人材バンク登録制度、再雇用制度促進による専門職員の確保。啓蒙活動。専門職員の義務づけ。人材情報に専門分野、適正を含めて、他の施工ステージ及び保守・点検ステージに合った人材を最適配置できるようになる。

(2)−2  b.「施工・製作時」

①最適工法の選択

B:FRP材、炭素繊維シートによる皮膜、最新材料により長寿命化出来る。表面を均一の材料で覆うことにより、トンネル内部の変状が表面に現れ、確認しやすくなり、保守ステージでの点検が容易になる。

②解体時の安全対策

A:ロボット施工、自動化技術の開発により安全を確保する。しかし費用は割高になる。

(2)−3 c.「運転・保守・維持管理時」

①ライフサイクルコスト縮減、長寿命化修繕計画

B:トンネル変状が少ない内に、補修工事を行う事により、ライフサイクルコスト縮減する。トンネル変状と補修工事データのデーターベース化をする。劣化予測手法として発展させ、予知保全の精度を上げ、他ステージの計画効率化につながる。

②点検の合理化と手法の応用

C:点検マニュアルを整備し、スクリーニングにより優先順位をつけ点検する。大きな障害は新設初期段階から変状が発生する傾向がある。その傾向は老朽化を迎える社会資本全てについて同様である。手法を応用し、県内の取壊架替等の新設工事、補強工事を無くし、産業廃棄物大量発生を回避し、県予算を削減する。

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