合格判定結果 R1年 2019年 添削と合格のカギについてのご説明 音声ガイドコーチング

R1年 建設部門、鋼構造・コンクリートの答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 この方の答案内容はかなり合格が期待できるレベルかと思います。もし本講座で学ばれたら、普段からのコーチング指導により、合格基準が明確となり、あいまいな状態で悩むことなく、楽勝での合格が可能です。

Ⅰ-1は答案は、全然問題なく書けていますが、本来なくてもよい記述がある一方、必要とする要件の内容がやや甘いです。

Ⅱ-2は残念ながら本質的な課題を示せていなかったようです。Ⅲ-2は実際にあった関空での船舶衝突事故などを事例として取り上げればよかったかと思います。今後はご注意ください。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分47秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 

  我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き方の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上などにより、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

(1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出して分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)
(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.生産性向上に関する建設分野の課題

 近年の公共工事は、設計・施工業務を別々の会社が受注しており、事業の細分化が進んでいる。そのため、設計から施工へと移る際、設計成果の確認作業が生じることで中々施工へと着手できずに生産性が下がっていることが問題点である。従って、設計・施工間のシームレス化が課題である。

 建設分野は単品受注生産・屋外作業が基本であるため、技能者一人一人のマンパワーに依存した労働集約型産業となっている。しかし、少子化によって働き手の数が減少していく中、いつまでも労働集約型の産業形態のままでは一向に生産性を上げられないことが問題点である。従って、資本集約型産業へと移行することが課題である。

 建設分野は12月〜翌年3月までの年度末に工事が集中しており、6月〜8月に掛けては工事量が少なく閑散としている。そのため、繁忙期はどの現場でも必要な人員・機材が揃わずに生産性が上がらず、反対に閑散期は工事量が少なすぎて生産性が上がらなくなっていることが問題点である。従って、施工時期を平準化することが課題である。

2.課題1つの解決策

 設計・施工間がシームレス化すれば、施工着手後の修正設計も減ることで公共工事全体の生産性が上がる。従って、設計・施工間のシームレス化を重要課題に挙げ、解決策を2つ示す。

 1つ目の解決策はECI方式の採用である。理由は、ECI方式であれば事業の上流段階から施工業者が介入できるため、設計成果の把握がしやすくなると共により施工に配慮した設計も行えるからである。具体的には、概略設計が出来た時点で発注者は施工業者を探し、優れた技術提案を示した業者と優先交渉権を結び設計段階から技術協力させる。そして、施工業者は設計者と協力しながら詳細設計を進め、設計完了後、金額的に発注者と折り合いが付いたら正式に受注して工事を進める。

 2つ目の解決策はCIMの導入である。理由は、CIMであれば3Dモデルによって構造物の中身が可視化されるため、設計成果の確認作業が容易となり、短時間で終えられるからである。具体的には、現地測量結果と構造計算結果を基に座標値と部材寸法値を得る。そして、それらの値を基に3次元CADソフトを使って橋やトンネル、ダム等の構造図面を3Dモデルで作図する。これにより、例えば鉄筋の干渉チェック等を行いやすくし、短時間で中身の把握、監査業務を終わらす。

3.共通リスク、その対策

 ECI方式やCIMを導入すると、施工に配慮した設計又は3Dモデルによる構造の可視化によって従来よりも施工が簡単になる。しかし、簡単になった反面、技能者の技能も徐々に低下していく。この結果、ECI方式やCIMを活用できない工事に出くわした際、技能の低下によって著しく品質が下がってしまうリスクが新たに生じる。

 そこで、リスクへの対策としてVRを活用した技能訓練を行う。理由は、VRであれば最新の3DCG技術よって高度な技能が必要な工事現場でも再現できるため、VR空間内で何度でも訓練すれば技能の維持・向上が図られ、品質低下を未然に防ぎやすいからである。具体的には、工事現場を360°カメラで撮影し、3DCG画像を作成する。そして、その3DCGを専用のVRゴーグルに落とし込み、技能者に装着させる。これにより、VR空間内で足場設置や鉄筋組立作業等をシミュレーションしてもらうことで技能の維持・向上を図る。

4.必要な要件

 ECI方式では施工に配慮した設計が行えるが、施工に気を取られすぎると地方のローカルルールを無視した設計が出来上がってしまい、地元住民に迷惑がかかる。従って、設計思想がローカルルールに反していないか常に監査することが技術者の倫理の観点から必要である。

なぜ(3)のECIですか。設問は「(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件・・」です。ニッチな提案、ローカルルールより全体最適を目指すべきでは。

 CIMはデータの容量が重いため、大容量サーバーが必要となることでこれまで以上に電気消費量が増える。従って、受発注者協力の基、CIMクラウドを立ち上げ、その中3Dモデルを一元管理することが社会の持続可能性の観点から必要である。

社会の持続可能性についてお考えになったことはありますか。SDGsのことです。

CIMクラウドはSDGsのどれに相当しますか。

Ⅱ−1−1

鋼構造物の設計又は架設(建て方)計画において、座屈照査が重要となる部材を1つ挙げ、その部材に生じる恐れのある座屈現象を述べよ。また、その座屈に影響を及ぼす主因子を複数上げ、それぞれについて説明せよ。

 座屈照査が必要な部材には、鋼道路橋の主桁間に設ける横構を挙げる。必要な理由は、主桁は面外剛度が弱く、地震・風等の横力は横構で負担するため、万が一横構が座屈すると全体崩壊を起すからである。

理由は本来なくても良いのです

オイラー座屈?ただの「座屈」ではダメなのですか

 横構に生じる恐れのある座屈現象はオイラー座屈である。オイラー座屈とは、部材に圧縮力が作用した際、その部材の降伏耐荷力未満の圧縮力あったとしても急に横方向に折れ曲がり、脆性破壊する現象である。

オイラー座屈の言葉の意味ではなく、ここは鋼道路橋主桁間の横構の座屈現象について述べることが求められています。

2.座屈に影響を及ぼす主要因子

 1つ目の主要因子は横構の細長比である。横構は部材断面積に比べて部材長が長いため細長比が100〜150と大きい。そのため、オイラー座屈による降伏応力度の低減を大きく受け、比較的小さな圧縮力であったとしても座屈してしまう。

 2つ目の主要因子はGussPLとの接合方法である。横構はGussPLと一面せん断接合にてボルト締めされているためGussPLから横構へと圧縮力が流れる際、偏心曲げが生じる。この結果、圧縮力+偏心曲げが同時に作用し座屈しやすくなる。

 3つ目の主要因子は床版の剛性である。地震・風等の横力は床版と横構にてそれぞれ分担する。この時、床版がPC床版やRC床版等、剛性が高ければ3/4以上の横力が床版へと流れ、横構に流れる横力が小さくなる。この結果、横構の座屈が剛な床版で拘束される。

Ⅱ−2−2

 鋼構造物の品質や精度を確保する上で、不適合(不良、不具合)を未然に防ぐことが重要である。あなたが、鋼構造物の品質や精度に関わる重大不適合の再発防止策を立案する担当責任者として、業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)技術的に重大と考える不適合の事例を1つ挙げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.不適合事例と、調査、検討事項

重大な不適合事例には鋼道路橋の主桁、横桁等の部材の出来形精度不足を挙げる。理由は、出来形が不足すると架設時にボルト締めした際、部材に拘束応力が残ることで数年後の亀裂、変形へと繋がり、鋼橋の寿命が下がるからである。

部材の出来形の内、主桁キャンバー(死荷重たわみ分のそり)は、主桁の剛性や自重がバラつくことで特に精度確保が難しい。従って、工場内で主桁を仮組してキャンバー精度を調査する。

部材一つ一つを精度良く製作しても主構全体を組み立てた際は、わずかなズレでもそのしわ寄せが接合部にいきボルト締めが困難となる。従って、仮組時にボルトが無理なく挿入可能か全数調査する。

仮にボルト締めが困難な場合、部材の製作し直しが望ましいが、ムダな費用が発生し工程に遅れも生じる。従って、ボルトを呼び径+4.5mmの拡大孔にして誤差吸収できないか検討する。

2.業務手順

 1つ目の手順は設計図書の確認である。線形計算書、設計計算書通り図面が描かれているか整合確認する。この時、製作キャンバー図は解析上の仮定剛度にて算出していることもあるため、キャンバー精度向上の観点から実剛度で算出しているか入念に確認し、必要に応じて設計者に修正させることに留意する。

 2つ目の手順は製作精度管理である。図面通り部材を製作し、工場内にある最も広い用地にて仮組する。これにより、キャンバー精度及びボルトが全数無理なく挿入できるか確認する。この時、工場内で全長に渡って仮組できる広い用地が無い際は製作部材を3DCGスキャナーにかけ、PC上でのシミュレーション仮組にて確認することに工夫する。

 3つ目の手順は架設時の精度管理である。ベントで部材を仮受けさせながらクレーンで順次架設していき、最後の落とし込みブロック架設前に一度、先に架設した部材の仕口間を計測する。そして、計測値を落とし込みブロック長に反映後、架設することで当日の温度伸縮や施工誤差を吸収し精度確保する。この時、落とし込みブロックは常に切断にて長さ調整できるよう100mm程、長めの製作に留意する。

3.関係者との調整方策

 架設時は継手付近にベント設備があった方が接合の際、ズレが発生せず出来形精度が良くなる。しかし、橋梁下には民家や道路が通っていることも多いため、自由にベントを置くと住民に迷わくがかかる。そこで、住民との調整方策にベントからのジャッキUPを行う。具体的には、ベントの上にジャッキを置き、ジャッキの上げ下げで継手位置の高さ調整を行う。これにより、継手の最寄りにベントがなくとも調整が可能となるため、住民の迷わくを最小限に抑えられる。

確かにその通りですが、これは難しい話ですか。つまり技術士の提案として評価できる要素はどこにありますか。

Ⅲ−2

 鋼構造物には通常の供用時における外力や環境条件などによる経年劣化に加え、豪雨、地震、火山噴火などの自然現象や車両・船舶の衝突などの人的過誤によっても、損傷が発生しうる。構造安全性を損なう劣化・損傷を受けた場合、速やかに適切な補修・補強策や再発防止策を立案する必要がある。その立案を担当する技術者として以下の問いに答えよ。
(1)構造安全性を損なう劣化・損傷を1つ想定し、その発生状況を概説した後、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。ただし、疲労亀裂は除くものとする。
(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの」対策について述べよ。

1.劣化・損傷1つとその発生状況、課題

 鋼道路橋の支間中央の主桁下フランジに孔食が生じた劣化を想定する。その発生状況は雨水が降った際、下フランジに滞水し、塗装が早期にはがれたことで孔食にまで至った。

間違いではありませんが、やや分析に不向きな単純すぎる損傷です

(1)通行止めを伴わない補修法の構築

 支間中央は断面力が卓越しているため、下フランジが孔食すると耐荷力の著しい低下から通行止めが生じる。この結果、復旧までの間、多くの車が迂回を強いられることで社会的損失額が過大となることが問題点である。従って、通行止めを伴わない補修法の構築が課題である。

明らかに不必要な目的(施工計画)に発散しています。

(2)下フランジの防食性能強化

 発生状況で述べたように、下フランジは元々滞水が原因での腐食が進展しやすい。にも関わらず、下フランジの防食性能は他の部位と同程度あり、今日まで何の改善もされていないことが問題点である。従って、下フランジの防食性能を強化することが課題である。

このことはただの経緯であって、腐食によって断面が失われたことだけでOK

(3)補修と並行した断面力のバランス修正

 支間中央には分配横桁が設けられているため、下フランジが孔食すると剛性の低下から分配横桁を介して他の主桁に多くの断面力が流れる。この結果、健全な主桁の作用応力度も大きくなり、橋全体の寿命が下がることが問題点である。従って、補修と並行して断面力のバランスも竣工時まで戻すことが課題である。

腐食(断面欠損)の波及的な影響を追い求めても仕方ありません。結局、断面を補償しさえすればすべて解決します。

2.課題1つの解決策

 主桁をベントにて仮支持すれば通行止めを伴わず補修できるが、橋梁下には河川や道路が通っていることの方が多いため常に採用できる方法ではなく、未だに有効策が確立できていない。従って、通行止めを伴わない補修法の構築を重要課題とし、解決策を2つ示す。

(1)バイパス材の活用

 1つ目の解決策はバイパス材の活用である。具体的には、市場性に優れるL形鋼をバイパス材に活用し、孔食の生じた下フランジ付近のウェブに高力ボルト摩擦接合で取り付ける。これにより、孔食部に作用する応力がL形鋼へと流れるため、孔食部の応力が0となることで車両通行時の安全性を確保でき、通行止めを解除できる

(2)横構・床版を含めた全体解析 

解析したところで、腐食(断面欠損)は何も変わりません。解析で「残存断面は十分」と出たら、それ「損傷」ではなかったということ。振り出しに戻ります。

 2つ目の解決策は横構・床版を含めた全体解析を行うことである。理由は、鋼橋の設計では主桁のみで車両活荷重に抵抗できるよう設計するが実際は横構・床版も有効に機能している。そのため、それらの部材も含めて評価すればたとえ孔食が生じていても補修までの間なら通行止めを解除できると考えたからである。具体的には、床版に剛度比1/7乗じて鋼桁上フランジに換算し、横構は薄板の下フランジに換算することで箱断面として計算する。これにより断面性能を向上させ、孔食が生じた断面でも車両活荷重に抵抗できる。

3.共通リスク、その対策

(1)活荷重の変形拘束による数年後の損傷

断面欠損をL形鋼で補強したのだから本来の強度にもどるはず。補修部材設置時の主桁たわみから復元変形を拘束・・とは、単なる施工ミスでは?まずは正しい施工を前提とする

 上述した2つの解決策は共にベントで仮支持しているわけではないため、車両通行時、腐食部付近の主桁のたわみは0にできない。そのため、万が一、補修部材設置時に主桁がたわむと補修部材が主桁の復元変形を拘束するとこで余計な応力が主桁に残り、数年後の損傷へと繋がるリスクが新たに生じる。

現実にはあり得ない方向に発展しています

 そこで、リスクへの対策としてひずみゲージを用いたモニタリング施工を行う。具体的には、孔食部周辺にひずみゲージを貼り、車両通行時のひずみを計測する。そして、計測ひずみに鋼材のヤング率を乗じて応力を求め、この応力変動が少ない瞬間をねらって補修部材を設置することで拘束応力の影響を小さくする。

(2)補修効果減による橋全体の寿命低下

 上述した2つの解決策はベントから主桁をジャッキUPできないため、補修部材は死荷重断面力には抵抗できず、活荷重断面力にしか抵抗できない。この結果、補修の効果が低くなり、橋全体の寿命が下がるリスクが新たに生じる。

 そこで、リスクへの対策として外ケーブル工法を行う。具体的には、主桁下フランジ下面にブラケットを設置し、ブラケット間をPCケーブルで繋いで緊張する。これにより、主桁にそりを与えその間に補修部材を設置することで死荷重断面力にも抵抗させる。

これらは本来、2ページの2の(1)に書くべき内容では?

もしこのようなことがわかっていたとしたら、ただL形鋼をあてるだけの補強はありえないでしょう。 

R1年 電気電子部門、電子応用の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 Ⅰ-1は答案は、最初と最後はとてもよくまとまっています。しかし、残念なことに、問題文の趣旨に対して、AIに依存するだけで中身が少ない話のようです。このため厳しい評価となっていたようです。電気電子・電子応用の技術で対応するようにしてください。

Ⅱ-2は残念ながら本質的な課題を示せていなかったようです。Ⅲ-2はA評価でしたが、今後はご注意ください。電気電子として課題、技術をきっちり説明するようにしてください。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(32分58秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は、2008年をピークに減少に転じており、2050年には1億人を下回るとも言われる人口減少時代を迎えている。人口が減少する中で、電気電子技術は社会において重要な役割を果たすものと期待され、その能力を最大限に引き出すことのできる社会・経済システムを構築することが求められる。

(1)人口減少時代における課題を、技術者として多面的な観点から抽出し分析せよ。解答は、抽出、分析したときの観点を明記した上で、それぞれの課題について説明すること。

(2)(1)で抽出した課題の中から電気電子技術に関して最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を示せ。

(3)その上で、解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点を述べよ。

解答

人口減少時代における電子技術・システム構築

1)人口減少時代における課題

 近年、人口減少に伴い労働生産人口が減少している。

生産現場では生産の効率化(省力化)や生産設備の維持管理が必要となる。

 これらを踏まえて以下の課題を挙げる。

①  生産現場における自動化(ロボット化)

最近の労働者不足を解消するためには、IoTを活用した生産システムの自動化や、単純なルーチンワークのロボット化などが必要である。

②  生産設備の稼働状況の情報収集

IoTであらゆる設備からの情報を収集し、的確で効率的な設備の運用プログラムを形成する。

 また、情報量が増加するため、5G通信による情報通信量の向上と、取得した情報の処理速度向上も必要。 

③  ベテラン技術者の暗黙知の形式知化

少子高齢化が進む中、後継者の育成は課題であり、機械化が困難な技術や経験から得られるノウハウを形式化する必要がある。 

2)最も重要な課題1つと複数の解決策

 1)で挙げた課題の中で、①が最も重要な課題である。その解決策について、以下で述べる。

2-1)AIの活用(ディープラーニング)

 近年、様々な分野で採用が進むAI技術を採用する。生産作業工程では、自動化が難しかった複数の作業工程をAIに学習させることにより、最適化と自動化を進めることができる。

安直にAIに依存するだけで中身のない話です。

電気電子・電子応用の技術で対応してください。

2-2)セキュリティの強化

 IoT機器からの情報は、ネットワークを経由するため、セキュリティ強化が必要である。各ポイントにゲートウェイを設けて管理することが必要である。

2-3)センサ技術の導入

 設備に各種センサを設置してデータを自動で収集する。その収集したデータをAIにより分析し、自動でフィードバックする仕組みを構築する。本内容により、人を介さない生産設備の保守が可能となる。

3)解決策に共通するリスクと対策

 新たに生じるリスクとしては、情報量の増加に伴う通信インフラに情報遅延が考えられる。 

わかりやすい事項、ほとんど前提事項では。もう少し技術士にふさわしい分析により、独創的な視点から未知のリスクを挙げる。

 情報量増加の要因としては、以下である。

①  情報センタと各ロボット間の情報伝達

②  IoTで接続される故障診断などのセンサ情報

③  AI活用時の学習データの増加

④  ベテラン技術者の暗黙知のデータベース化

これらの情報量の増加により、情報遅延の発生が予想されるが、次に示す対策を行う。

(対策①)新技術の採用

 5G通信を用いて、より処理速度を向上させたり、SoC-FPGAなど新しいデバイスを採用して高度なデータ処理をさせるじちで、高速かつ効率的な情報通信網を形成できる。

(対策②)ビッグデータの活用

 収集した情報をビッグデータ化し分析することにより、効率的な作業計画を立てることができる。

 ビッグデータの採用によって、過多な情報は削減され、ネットワークの省力化になる。

4)業務遂行に必要な要件

4-1)技術者としての倫理から必要な要件

 ロボットと人間が干渉する作業領域においては、安全性の確保が重要である。自動化が進んだとしても、ロボットを活用するのは人間である。そのことを踏まえた上で、人間が安全で安心して利用できるようなシステムを構築する必要がある。

 上記で述べたように効率化を優先するあまり安全が疎かにならないようにすることで、公益確保することにつながる。

4-2)社会の持続性から必要な要件

 環境への配慮や省エネを意識した設計・開発は非常に重要である。環境にやさしい機器(RoHS化)の採用や省エネ対応の生産設備を構築する。そうすることで、SDGs(持続可能な開発目標)にもある、次世代に開発のツケを残さないのが大切である。

 また、使用する技術が3R(リデュース、リユース、リサイクル)に合致している製品を採用する。

Ⅱ−2−2

 電波を利用した無線通信機器を電磁的環境の中で捉えると、他の電子機器との間で相互に動作上の問題を生じさせる可能性がある。このような電磁両立性の課題を緩和する技術の1つとして、可視光通信(Visible Light Communication :VLC)がある。あなたが電子応用技術者として、VLCの採用の可否を検討しながら開発業務を進めるに当たり、下記の内容について」説明せよ。

(1)VLCが有効と考えうる具体的なシステムを1つ想定し、電波並びに可視光の利用について調査・比較検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)(1)のシステムの開発業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

倉庫内における物品位置情報の検知

1)調査・比較検討すべき事項

 可視LEDタグを利用した物品の位置情報の検知を想定する。以下に調査・比較検討すべき内容を示す。

可視光通信を応用してどのように倉庫内の物品の位置情報を検知するか、それについて電波との比較が求められています。そして開発業務を定義するようにしてください。 

a)適用 

   LED照明は至る所で設置されており、照明機器に通信機能を付加するだけで容易にワイヤレス通信環境の構築が可能である。

このような既知のことではなく、提案した倉庫内位置情報システムとしてどう適用できるか、どのように電波より優れているかを述べる

b)安全性 

 可視光は、一部の電磁波や紫外線とは異なり、人体には影響を与えない。また、周囲で使用されている電波の影響も受けないため、安全に利用できる。

c)経済性

 可光通信は、大電力で通信可能であり、メンテナンスも容易であること、a)でも述べたように新たな設氏投資を比較的抑えることができるため、コスを抑制できる。

2)業務を進める手順

a)事前調査

 1)で示した内容を含め、VLCを適用するにあたり、メリット・デメリットを十分に検討した上で。通信方式を決定する。

これは一般的な方法論にすぎません。このような既知のことではなく1に挙げた倉庫内位置情報システムにおいて具体的作業をどう進めるかです。

b)詳細検討

 a)の内容を踏まえて、適用箇所の検討および工期・コストについても算出する。詳細検討の結果、適用箇所の増加や工期の変更などが必要な場合は、関係部署と早急に共有し、見直しを行う。

c)実証実験

 プロトタイプ試作にて実証実験を行い、机上検討では見えなかったトラブルや不具合への対策を設計にフィードバックし、改善を進める。

3)関係者との調整方策

a)技術動向の調査 2の業務について自身がどうするかで

 研究部門との進捗により、最新の技術動向の情報を共有したり、資材部門との情報共有をすることによって、新規部品のラインアップ・コスト情報が入手でき最適なシステム提案が可能となる。

独自に調べて役立てるという個人的行動では「調整」になりません。反対意見も取り入れて取りまとめるプロマネの役目が求められています。

b)関係部門との連携

 a)で述べた技術情報の連携に加え、営業部門との市場動向情報の共有や生産部門・品質管理部門と密に情報交換することで、生産現場での改善要望や品質面での注意点などを共有し、不具合の少ない製品にすることができる。

c)設計完了後の課題点の確認

 実際の生産・運用における課題点や改善点を確認し、次回以降の設計や改良にフィードバックをすることで

品質の高い安定した設計を行うことができる。

ここは調整業務について、自身の貢献をまとめる必要があります。

Ⅲ−2

  我が国の農業の強みは、気候や土壌などの地域特性に対応した匠の技に支えられた多種多様で美味しい品目、品種、消費者ニーズに即した安全安心な農産物である。しかし、現場では、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が必要であり、いわゆるスマート農業の推進により、新規就労者の確保や栽培技術力のスムーズな継承などが期待されている。

上記を踏まえ、電子応用技術者として以下の問いに答えよ。

(1)今後、スマート農業への取組が求められるとあなたが考える農業の具体例を挙げて、それぞれに対して、複数の観点から分析し、課題を抽出せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、電子応用技術者として、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

スマート農業の推進

1)スマート農業への取組み

①具体例

 我が国の代表的な農業として米作りを例に挙げる。近年、若年層の農業離れや農業従事者の高齢化が進み農業人口が減少しているため、スマート農業の推進は必要不可欠である。必要性を書かれているのですか?そういう話ではなく、取り組みの具体例の定義です。 

②課題

a)自然現象に左右されないしくみ

 稲作では、冷夏による成長不足や台風によって稲が倒れてしまうなど、自然現象の影響を受けやすい。自然現象に左右されないしくみの確立が可能である。

ねらいは良いですが、電気電子では何するのか明確ではありません。それが課題です。これでは採点できません。

b)熟練者からの技術継承

 近年は、若年層の農業離れが進んでおり、熟練者から次世代の後継者への技術継承ができていない。若い世代の農業への意欲を高める取組みや熟練者の技術・ノウハウを効率よく、確実に形式化し継承する方法の策定が課題である。課題になっていません

c)人手不足解消のための自動化

 上記で述べた自然現象に左右されたり、人手不足を解消するためには、農作業の機械化や自動化を推進していく必要がある。どのような技術を利用して、農作業を機械化や自動化を推進していくかが課題である。

これ↑ではほとんど前提事項みたいです。誰でもできる問題点の整理です。電子応用の課題とは思えません

2)最も重要と考える課題と解決策

 上記で挙げた課題の中で、人手不足解消のための自動化が最も重要だと考える。以下に解決策を示す。

a)準天頂衛星を用いた農耕機器の制御

 人手不足の解消のために農耕機器をロボット化し、自動制御化が必要となる。それを実現するには、日本のように狭い複雑な農地でも正確に精度よく、細かい制御が要求される。そこで準天頂衛星からの高精度な位置情報(1m級またはcm級)を利用することが非常に有効である。

具体的にどのように利用するのですか。

b)センサ技術を用いた農作物の栽培

 農作物を育てる上で、土の状態(水分量など)や外敵の情報などをモニタリングしながら育てる必要がある。例えば、センサによる水分量の最適化として、電気抵抗やpH濃度を測定し、土地の状態を高確度で測定する。それによって、与える肥料の適正化に活用することができる。  これはどんなセンサですか?

c)処理能力が高いデバイスの採用

 これまでに述べた2点の解決策を実現するには、大量のデータを高速かつ正確に演算し、最適解を導き出す必要がある。そこでもそれを実現可能とするSoC-FPGAの採用うぃ提案する。従来のCPUと比較し、処理能力が数段向上するのに加え、様々な機能を1パッケージ化することが可能になるため、小型化やBOMコストの低減にも貢献できる。

3)新たに生じるリスクと対策

(リスク①)

 準天頂衛星からの測位データを用いて、農耕機器の

制御を行うため、ハッキングによる誤動作・誤認知の恐れがある。 どうしてか。意味が分かりません。

(対策①)

 データを取込むポイント毎にゲートウェイを設けて外部からのアクセスについては、プロキシサーバなどを経由させて安全性を確保する。

(リスク②)

 SoC-FPGAは、新しい技術であるため、簡単に代用できるデバイスがない。 これ自体はリスクとは違います。真のリスクが述べられていません。

(対策②)

 SoC-FPGAについては、技術ロードマップやトラブル時のサポートに対する考え方を部品メーカや代理店と協議しておく必要がある。また、代替品として高機能SoCやMCUを用いたシステムの検討が必要である。

(リスク③)

 農耕機器の自動化を導入することによる、異常時の安全性をどう担保するのかつまりリスクは何か

(対策③)

 基本的に完全自動化にする場合は、システムを二重化しておき、異常時においても安全に動作できるように体系的な安全分析を実施する。

聞かれたことに対して的確に答える練習論理的に論旨を展開する練習電気電子の技術応用を言葉で表現する練習

が必要です。これらは暗記では学べません。

R1年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 この答案はとても残念なことに、Ⅰ-1は問題文の趣旨に対して、解答が述べられていないようでした。このため厳しい評価となっていたようです。生産性のテーマに対して、働き方改革とか、問題文とのダブリとも読み取れる内容であり、実質的な提案すればよかったと思います。この原因として、予想して用意した答案を書きだした結果となっていて、答案が今年の問題趣旨に適合していなかったようです。Ⅱ-1は合格点です。Ⅱ-2は後半部分でやや意味が通じないみたいです。Ⅲ-2は本質的なことについての答えが少なかったようです。都市構造の変革を提案できれば、専門家らしい内容となって楽勝で合格できたかと思います。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分52秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上等により、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっている事を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)       建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)       (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       (2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)       (1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.背景 

        下線はなくても構いません。内容が勝負です。

 昨今、少子高齢化に伴い人口減少が進むことによって、現役世代の働き手が減少し必要な労働力が確保出来なくなってきている。総務省によれば、生産年齢人口は2003年の7900万人に対し、2060年では4480万人に減少する。それに追随し、税収の減少や生産性の低下は免れない。加えて社会資本の老朽化が進み、自然災害の脅威も高まっている。

特に背景は求められていません。単刀直入に課題を述べましょう。

2. 生産性向上に関する課題

(1)建設技術者の魅力の向上

 労働者数の減少に伴い、長時間労働等の労働環境も悪化してきている。さらに、工事現場では、衣食住関連、エネルギー、情報などに至って多種多様化してきている。

 このような環境下に技術者にとって働き方改革に配慮した魅力ある労働環境を整備し向上させることが求められている。

ニーズの変化だからどうして「働き方改革に配慮して魅力ある労働環境整備」なのか論理が理解できません。生産性はどこへ行きましたか?

(2)建設事業の価値の向上

 我が国の近未来像として、交通インフラの進展やICTの進歩とともに、交通・物流・建設などにおいて自動化・機械化へと発展している。人々は災害リスクと相まって暮らし方も変化しつつある。

 このような背景下で、社会経済の安定に向けて技術革新や新技術開発のみにとらわれず新たな価値を生み出す建設イノベーションとしての取り組みが迫られている。災害リスクだからどうして・・新たな価値なのか。理解できません。こちらも生産性は?

(3)建設事業の経済効果の向上

 少子高齢化に伴う経済性の減少を、人口減少の影響を上回る生産性向上に進む方策が迫られている。

これは問題趣旨とダブリ。この解決に至る課題が求められています

3.重要と考える課題とその解決策

今年の問題を予測し誤ったようです。「働き方改革の答案」を用意していたのに「生産性」では書けません。このような暗記式の論文では正解できません。

無理をして書かれた結果、途中で採点が中止されて厳しい評価になったのではないかと思われます。

我が国の社会資本を担う、働き手の減少と相まって働き方改革の2面性に鑑み、生産性向上に最も重要と考える課題は、建設技術者の魅力を高めることである。

 なぜなら、建設技術者の減少は、担い手不足という深刻な問題を背景に災害対策・インフラ整備・メンテナンスなどを支えることが危惧されるからである。その課題への解決策を次に掲げる。

①    長時間労働の是正

②    発注者による適正な工期設定の推進

③    生産性向上(i-コンストラクション)

④    ダイバーシティ(多様な人材活用)

4.新たに生じうるリスクと対応

 上記で掲示した解決策により、新たに生じうるリスクとしては、担い手不足による多様な人材を活用するあまり、次のリスクが懸念される。

①    外国人労働者問題

②    技能者の技術伝承

③    高齢者雇用問題

④    正規非正規雇用問題

能力ある人材の不足が様々なリスクを生んでいる一方で、それらの対策として建設イノベーションの取り組みがあげられる。多様な人材の取り組みと活躍する場をもって新たな価値の創生がなされる。具体的には次のとおり。

①    オープン・イノベーション(新技術開発に関して産学官連携や異業種交流等を図ること)

②    I-コンストラクション(生産性向上)

③    建設キャリアアップシステム(技能者の技能や経験を評価し処遇改善すること)

5.業務遂行に必要とみる要件

 生産年齢人口の減少に伴う日本経済の波及は甚大なものといえる。担い手問題に伴う働き方改革は、最も重要なキーである。同様に、イノベーションや生産性向上も三位一体になってこそ日本経済が持続的な確実性が高まる。

 さらにこれらの遂行は、次世代への社会経済の安定に寄与でき、技術者倫理を踏まえた中で観光・ビジネス展開等の情報の強化により異業種とのイノベーションにつながる。

Ⅱ-1-4  

都市における公園緑地の多面的な機能を4つに区分して説明せよ。

解答

1.都市の憩いとしての機能

 都市における公園緑地は、都市住民の心の安らぎ、潤いのある憩いの空間としての機能がある。共働きによる家族間のコミュニケーションの場として、さらには子育て支援としての役割がある。

2.CO2削減としての機能

 都市における公園緑地は、緑の保全と緑化の推進が図られ、このことでCO2削減としての機能がある。

 高木を大きく育てたり、間伐や草刈りなどを行うことで、環境に優しい都市づくりにつながる役割がある。

3.子どもの情緒を育む機能

都市における公園緑地は、公園内の遊具により子どもの情緒を育成する機能がある。

ダブリはなくすように。また子育てだけではありません。

 遊具による遊びを通じて、コミュニケーション能力やルールを身につける役割がある。

4.防災活動拠点としての機能

 都市における気軽に立ち寄れることから、災害時の集合場所や避難場所としての防災活動拠点としての機能がある。

 さらに、炊き出しや防災資機材の保管など、救急・救助活動の拠点としての役割がある。

この下のリンクを見てください。答えがあります。

都市公園の役割

都市公園の9つのストック効果 6ページ

(講座の指導ではこのようにしてヒントをご紹介しております)

Ⅱ−2−1

 防災・減災対策と並行して、事前に被災後の復興まちづくりを考えながら準備しておく復興事前準備の取組を進めておくことが重要となっている。このため平時から災害が発生した際のことを想定し、ソフト的対策を含む防災・減災対策と並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておくことが必要である。大規模地震による被災の懸念のある地方公共団体において、復興事前準備の取組を行うことになり、あなたがこの業務の担当責任者として進めることになった。下記の内容について記述せよ。

(1)     調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)     業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)     業務を効果的、効率的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

1.調査・検討すべき事項とその内容

(1)大規模地震の対策

 大規模地震発生時、建物倒壊や道路閉塞、火災等が発生する。このため、避難対策と延焼防止策の調査・検討を行う。

 その内容としては、広域避難路や延焼遮断環境軸となる都市計画道路の整備、その沿道家屋の不燃化、耐震化の調査・検討を行う。

(2)津波災害の対策

 東日本大震災の津波発生時、堤防が決壊するなどハード整備の質的限界が明らかになった。このため、ハードソフトベストミックスの調査・検討が求められる。

 その内容としては、ハードは粘り強く壊れにくい構造とし、ソフトは、自助・共助・公助による避難対策等の充実について調査・検討する。

間違いではありませんが、出題趣旨の「ソフト的対策を含む防災・減災対策と並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておく」は読み取られましたか。

2.業務を進める手順

(1)地域特性の把握

 大規模地震に対して、建物密度、老朽度合い、道路幅員、公共空地等の調査・整理を行う。津波発生に対して、浸水シミュレーションによる浸水エリアの把握を行う。

 取り組みに当たっては、過去に発生した災害時の状況把握の際、地元の聞き取りや意見交換を行うことに留意する。

(2)基本的な方針の策定

 都市の総合計画や都市計画マスタープランに位置づけられた都市の関連計画と整合を図っていく。

 取り組みに当たっては、現状把握や住民の意向を踏まえた都市の将来性を掲げ、将来像を実現するための数値目標を設定することに留意する。

申し訳ありませんが、これはどこでも普通にやっている一般論で、この答案の答えではありません。

(3)具体的施策の立案

 多様な主体との協働体制の構築や施策の重点化を図るため、数値目標を達成するための具体的施策を立案する。

 取り組みに当たっては、高齢者や女子・子ども等の災害弱者とのコミュニティを図りながら実現性を高めていくことに留意する。

やはり一般論のようです。

(4)計画・事業の評価 

 事業実施による数値目標の達成度を評価・公表する。 

 取り組みに当たっては、住民・企業者の意見を踏まえ、翌年度に反映させることに留意する。

残念ながらこちらは答えに相当しません。

3.関係者との調整方策

残念ながらここは問題の意味が違います。業務を効果的、効率的に進めるための関係者との調整方策、すなわち上記2の(1)〜(3)について効果的、効率的に進めるための方策です。新たに住民対応することではありません。

 地域住民の意識啓発を図るため、住宅や職場の災害リスクや最寄りの避難場所の情報の共有化を図る。

 具体的には、住民への出前講座や街歩きによる発見などを行い、興味や関心の高まりにつなげていく。

 さらに、避難においては、自主防災組織を立ち上げ、災害弱者を誰が助けるかなど共助を強化する。

Ⅲ−2

  鉄軌道を含む公共交通の分担率が一定程度ある地方の都市圏において、都市圏全体を俯瞰する視点から、人口減少・少子高齢化を踏まえた都市の持続可能的経営を目的として都市構造の再編を進めることになった。あなたがその計画策定を担当責任者として進めるに当たり、以下の問いに答えよ。 なお、都市構造の再編を進めるに当たっては、公共交通が都市の形成に影響を及ぼすことを着目し、公共交通の利用を前提とするものとする。

(1)都市計画の技術者としての立場で多面的な観点から計画策定に係る課題を抽出し、その課題を分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つあげ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

1.計画策定に係る課題

(1)人口減少の視点に立った都市の活性化

 当該地方都市では、公共交通の分担率が一定程度あるが、モータリゼーションの進展によって、大型商業施設や高度医療施設が郊外に配置され、市街地が拡散している。併せて、人々は利便性が良く比較的安価な郊外に居住している。

よって計画策定に係る課題は、このまま拡散型都市構造が続くと人口減少も相まって、財政面や人材面から都市を維持できない恐れがある。(前置き部分)

従って、持続的経営にあたって、都市のコンパクト化を図り、居住誘導区域や都市機能誘導区域に人々を誘導し、都市の活力を高めることである。(課題)

(2)高齢者の視点に立った交通弱者の救済

 都市全体が広く低密度化しており、公共交通網により都市全体をカバーすることができず、自家用車による移動が主体となっている。その結果、公共交通機関の利用率は更に低下し悪循環になっている。

よって計画策定に係る課題は、高齢化の進行が早い地方都市において自家用車の運転に不安を感じ運転できなくなる交通弱者が増加する恐れがある。(前置き部分)

従って、都市の持続的経営にあたって、公共交通機関の利用促進を図り交通弱者を解消することである。(課題)

 課題の内容に比べて、前置き部分の文字数が多くなっています。前提条件や問題点の説明は簡潔にして、技術士としての提案に相当する課題をしっかり述べるようにしてください。

ここは「多面的な観点から」課題を抽出・・分析し、さらに(2)では「最も重要と考える課題を」解くのですからせめて3項目くらいほしいところです。

2.最も重要と考える課題と解決策

 鉄軌道を含む公共交通を気軽に利用できる環境の創設や公共交通ネットワークを目指すことは、交通弱者のストレス軽減につながり最も重要な課題と考える。

 その解決策としては、鉄道とバスのアクセスや複数路線が運行している公共交通機関にハブとなる交通結節点を設け、利用者の利便性や速達性が確保されるよう、運行表や乗降場所を改善する。

 併せて、待合スペースを整備し休憩できる空間を確保するとともに、ユニバーサルデザインの考えに基づいた安心して移動できる空間の創設を図る。

 さらに、PPP/PFIの民間の導入を図るなど民間事業と整合を図りながら、駅には核となる商業と共同住宅の複合施設を誘導し、歩いて暮らせるまちづくりの実現を図っていく。

交通施設の改善だけでは都市構造の再編としては不十分です。また項目を羅列するのではなく、明確な見出し、段落として表してプレゼンすることです。コミュニケーション能力が求められています。

3.新たに生じうるリスクとその対応

(1)公共交通空白地域の対応

 公共交通の利用が少ない路線については、費用対効果が懸念される。

なぜなら、鉄道・バス等の運行を維持していくためには、一定人数以上の利用客を確保することが必要であり、地域の人口減によって採算が合わない空白地域が増加する恐れがあるからである。

 それへの対応としては、従来型の鉄道やバスに変わってコンパクトな公共交通網やデマンド交通の導入を図るとともに、利用動向についての現況調査を行い、運行表や停留所を確定する。

これらの調査は、定期的に継続し、利用動向の変化に合わせて、臨機応変に公共交通ネットワークの見直しを行う。

(2)利害関係者との合意形成

このことは、リスクというよりは、いつでも予想される問題点にすぎません。当面の問題は解決されるとして、技術士でなければ予測しえない重大な問題を推論することを求めています。

 利害関係者との合意形成が長期化する恐れがあることである。

なぜなら、都市機能誘導区域及び居住誘導区域の都市市街地では、多くの関係者がおり、土地利用の意思や整備手法も多様だと考えられるからである。

 それへの対応としては、都市基盤施設や公共公益施設を集積することで土地の利用度が向上する意義や必要性を共有しながら投資効率の高いまちづくりを推進する。

こうしたことは、計画の初期段階から住民説明会やワークショップを行い、意見・要望を把握し、都市将来像の実効性を確保しながら計画の策定を行う。

R1年 環境部門、環境測定の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 全体的な書き方の注意として、前置きが長いようです。現在は単刀直入に書くことが求められています。本質的なの提案は遅いようです。しかも、提案内容は従来技術そのものであって、新たな技術提案ではありません。また、末尾のリスクはわずか3行しかなく、バランスが悪かったようです。大変惜しいことをされたと思っています。

 見識は備わっていますので、あとは書き方だけです。最新の答案作成の基本をご理解されていないように見受けられます。これは惜しいです。何か良いコメントを書かねば・・、と考えて作成されていませんか。しかし、試験官が求めているのは、純粋に問いの答えとしての提案です。それがないと、最悪の場合ほとんど点をもらえない危険性があります。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 本講座の答案練習をされれば、本来の論文としての説明の仕方を習得していただけると思います。そうすれば楽勝で合格できるでしょう。技術士は勉強すれば必ず合格します。1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。もしよろしければお力になりたいと考えております。音声ガイドコーチングを用いた指導では、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(13分51秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 環境課題への取組がイノベーションを誘発する過去の好例がある。例えば,自動車排ガス対策として三元触媒を利用するために導入されたエンジンの燃焼電子コントロール技術を燃費向上等のより広範な制御に用いることにより,我が国の自動車の燃費が飛躍的に向上した事例など,環境保全が進んだ事例がある。このような取組を契機として我が国のイノベーションを活発化するという観点から,持続可能な社会・経済システムへの転換に必要となる従来の枠を超えたイノベーションの社会実装について問うものである。

(1)持続可能な社会への転換のためにイノベーションが必要となる複数の課題を技術者としての立場で抽出し,多面的な観点から分析せよ。

(2)そのうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その解決策を複数示せ。

(3)その上で,解決策に新たに生じ得るリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

(1)持続可能な社会への転換のためにイノベーションが必要となる課題について

国連総会で全会一致で採択されたSDGsではゴール12の“持続可能な生産・消費”の関係で説明をする.例えば以下のような課題が考えられる.それぞれについての多面的な観点での分析を含めて以下に列挙する.

下記のは、問題点の記述に終始しています。簡潔にまとめて早めに課題の説明に入った方が前向きでよいでしょう。

1.太陽電池システムの生産に必要不可欠な限られた資源であるレアメタルを代替する金属元素の使用

(ア)持続可能な社会への転換のための再生可能エネルギーに関すること

(イ)枯渇することが懸念される資源であるレアメタルに関すること

これらの(ア)と(イ)については,相反する問題となっており,光変換効率に優れた無機金属材料を開発するイノベーションが必要となっている.

2.食糧生産に必須の元素である植物三大栄養素であるリンの回収のための植物プランクトンの探索

前提や状況は整理はされますが、しかしそのことをあえてここで整理しなくてもよいのでは。それより単刀直入に課題を述べた方がよいでしょう。

(ア)肥料の主成分となっているリン鉱石の枯渇が懸念されること

(イ)農業用地から流出し下流の水環境を汚染し,ひいては赤潮発生の原因となっていること

期待したいイノベーションとしてはリンの高効率回収を可能にする植物プランクトンの作出である.流出したリンを効率よく吸収する植物プランクトンをファイトレメディエーション技術を駆使しして増殖させ,回収したものを再び農地に還元することで,リン資源のリサイクルを図るものである.

3.温室効果ガス排出量が大きい石炭火力発電における微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率の向上

 (ア)単位熱量あたりに排出する二酸化炭素量が大きくなる石炭の高効率化

(イ)石炭は埋蔵資源量の豊富な化石燃料であること

確かにこのような技術が開発できれば素晴らしいですがしかし、

・・・・それ自体が大変なことなのでは。無理難題を提案しても実現性が伴わなければ逆効果です。

必要なイノベーションとして流動層燃焼技術のさらなる進化があげられる.これによって石油や天然ガス並みに効率の良い燃焼状態が確保できれば,埋蔵資源量の大きさがむしろ環境保全に有利に働くようになる

(2)石炭火力発電に関わる諸問題と解決策について

2019年12月にフランスで開催されたCOP25では,小泉環境大臣から日本のエネルギー政策としては原子力発電を積極的に使用しない代わりに石炭火力発電を使用していくエネルギーミックスについて発表があった.これにより日本は環境にとってよくない行動を取る国に与えられる賞である“化石賞”を国際NGOの団体から与えられた.しかし石炭は本当に環境に悪いのであろうか?石炭は固体であるため,流体である石油や天然ガスに比べて燃焼効率が悪いのは確かであり,燃焼によって得られる発電効率から排出される二酸化炭素量は化石燃料の中では最も悪いのであるが,熱力学的に考えればどの化石燃料を用いたところで,C+O2→CO2という酸化反応で得られる燃焼熱は同じである.従って,固体である石炭を流体のように扱うためのイノベーションによって,解決されていく.そのためには次の二つのイノベーションが求められる.

下記は既に実現されている在来技術にすぎません。

 (ア)石炭を均質に粉砕し微粉炭に調製することで比表面積を高め,燃焼効率を向上させるとともに,流動化を容易にするイノベーション

こちらは成熟した在来技術です。

(イ)循環型流動層ボイラーの圧力損失の低減と燃焼の高効率化

ア、イ共に間違いではありませんが、ただこれらをするだけでは解決になりません。

一歩進んだ解決策が求められています。

(3)解決策に生じうる新たなリスクとそれへの対策

石炭の燃焼効率の向上は,石炭の粉塵爆発のリスクが増加することを意味する.静電気対策が重要になる.

新たに生じるリスクではなく、これは古来からあるリスクのようです。

(4)以上の業務遂行に必要な要件を技術者倫理,社会の持続可能性の観点で述べよ.

 (2)で述べたような「石炭=悪」というような,短絡的なイメージはえてして声の大きなNGO組織に踊らされたマスコミを通じて広まった噂レベルの話に過ぎないことが多い.技術者として科学的に確かなことを説明しつつ,石炭火力発電に関するイノベーションの活発化によって,化石燃料の枯渇という観点からも持続可能な社会の構築に向けた努力と払っていく必要がある.  ↑これをどうやって遂行するかが見えません

確実にいえることはこの5年間で日本は温室効果ガスの削減量を削減できたことであり,多くの削減義務のある先進国で達成できなかった目標を日本は達成したということである.このことは堂々と胸を張って国際社会に主張して然るべきである. 

意気込みはわかりますが、このような見解、評論を求めているわけではありません。

R1年 衛生工学部門、 廃棄物・資源循環の答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 全体的な書き方の注意として、前置きが長いようです。現在は単刀直入に書くことが求められています。また、表が多いようですが、こんなに多いと文章の内容が薄くなって逆効果です。一般的に文章で十分表現できます。これは指導機関の講師の指導によるものだと考えますが、昔の先生ではないでしょうか。今は表がなくても十分合格できています。大変惜しいことをされたと思っています。

 Ⅰ-1は課題設定に問題があったようです。衛生工学の糸口によって解決の方向性を示せていないようです。2ページ目では方法論を書かれていますが、本当にこれでよいのか…?まだ説明不足な気も致します。Ⅲ-2は主題とやや違うことが書かれています。また表形式を多用することで細かい内容を表し切れていません。本講座の答案練習でできれば、本来の論文としての説明の仕方を習得していただけたらと思います。そうすれば楽勝で合格できます。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分46秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −2 我が国は、温室効果ガス削減の目標として、2030年までに2013年度比で26%削減するとしている。このため、あらゆる施設において温室効果ガス削減の対策が求められている。このことを踏まえて以下の問いに答えよ。

(1)       あなたの専門分野における省エネ等の温室効果ガス削減対策の現状について述べるとともに、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)       抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)       上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答

このような前置きは不要です。

私は、廃棄物処理施設の技術者である、その観点から記載する

SDGsやパリ協定にも温室効果ガス削減が盛り込まれている。日本の温室効果ガス削減として2030年までに温室効果ガスを26%削減、2050年までに80%削減目標を立てている。廃棄物処理施設は、国内の温室効果ガス排出量の3%を占める。廃棄物処理施設も温室効果ガス削減に努めなけれならない。

廃棄物発電は、ごみ中にバイオマスを含む再生可能エネルギーであり、温室効果ガス削減に貢献する。

(1)廃棄物処理施設での温室効果ガス削減の現状と課題          

現状の分析はそこそこにして課題を単刀直入に挙げるように。

温室効果ガス削減は、あまり進んでいない。

以下に示す項目が課題と考える。

①    エネルギー回収が進んでいない。

②    人口減少、人で不足

③    小規模施設が多い

中小都市(10万人以下)廃棄物50〜100万t/日 8%、50t/日以下でほぼ0%とエネルギー回収し温室効果ガス削減が進んでいない。

これらは問題点にすぎません。誰でもわかること。

どうやってこれらを解決するのか。衛生工学の視点で分析することです。

課題とは、工学原理を応用した対策の基本方針にほぼ近いものとお考え下さい。

(2)廃棄物処理施設の熱回収による温室効果ガス削減と解決策

①エネルギー回収の方策を以下表に示す。

課題、解決策は良くてもこれだけでは説明不足です

表1 エネルギー回収方策と省エネ化

項目

内容

熱回収量の向上

低空気比燃焼

低温エコノマイザ

熱損失の低減

白煙防止装置不採用

乾式排ガス処理設備

排水クローズド不採用

電気変換効率の向上

ボイラ高温・高圧化

水冷復水器

タービン設計点の最適化

省エネ化

電動機高効率化

インバータ化

項目、機器名がわかればよいというわけではありません

②③については集約化・広域化で対応する。

規模の小さい市町村を統合し集約化を図る。また県レベルで広域化することでごみ収集量が増加し発電量が増加、地域に安定したエネルギーを供給することができる。

(3)温室効果ガス削減での新たなリスクとその対策

廃棄物処理施設単独では、安定供給に脆弱性があり。様々なものと連携することで安定供給できる。

表2 新たなリスクへの対策

項目

内容

再生可能エネルギの導入

廃棄物処理施設と再生可能エネルギーを連携

エネルギーセンター

地域にエネルギーを供給し自立化し地域エネルギーセンターとする。地域資源で発電し、地元企業にエネルギーを供給する。

再省畜エネ企業

再エネを地域エネルギー供給企業が買い取り、地域に供給することで資金循環を形成する。

再省畜エネネットワーク

地域間でネットワークを作り安定供給し有効利用する

上記事項を業務として遂行するための要件・留意点です。上記事項とは何か考えていますか?

(4)廃棄物処理施設での持続可能な社会

技術者倫理、社会持続可能性の2つの答えが要ります

持続可能な社会を構築するため、廃棄物処理施設の強靭化を図る。

留意点として、廃棄物処理施設の設置は、地域住民と十分に協議を行い地域の自立したエネルギー源、温室効果ガス削減し地域循環共生圏に導くべきである。

そもそも問題趣旨の社会持続可能性とはもっと広い概念です。

この下のリンクをご覧ください。

社会を見据えた持続可能性

持続可能性「Sustainabilityサステナビリティ」とは何

持続可能な社会とは

持続可能性

Ⅲ−1 第五次環境基本計画(平成30年4月17日閣議決定)において、各地域が自立・分散型の社会を形成し、地域資源等を補完し支え合う「地域資源循環共生圏」の創造を目指すとされた。

(1)      廃棄物処理を核とする「地域循環共生圏」を構築するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)      (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)      (2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれえの対策について述べよ。

解答

考え方を断片的に羅列するのではなく、技術管理者としての見解を概念の柱として提案する必要があります。

第五次環境基本計画は、SDGsやパリ協定採択後に制定された基本計画である。

以下に示す基本的な考えと6つの目標を掲げ、環境・経済・社会を統合的に向上する地域循環共生圏を目指している。

表1 基本的な考え方

項目

内容

目指すべき社会の在り方

循環共生圏の構築

今後の環境政策の役割

様々なイノベーション

今後の環境政策の展開

環境・経済・社会の統合的向上

SDGsの考え方の取り込み

表2 6つの目標

項目

内容

①    グリーンな経済システム

 

②    国土のストックとしての価値向上

 

③    持続可能な地域づくり

 

④    健康で心豊かな暮らし

 

⑤    技術開発

 

⑥    国際貢献による我が国のリーダーシップ

 

(1)地域循環共生圏を構築するための課題

地域循環共生圏を構築するに当たって、以下に示す課題が想定される

主題とは関係性が薄いです

①    廃棄物の適正処理

廃棄物処理の基本であり、減容化+衛生がこれまでの廃棄物処理であった。

人口減少によりごみ収集についても難しくなっており、人口減少・高齢化社会に対応した廃棄物処理システムを構築しなければならない。

②    再生可能エネルギーの活用

廃棄物処理を核とする「地域循環共生圏」ですからエネルギーだけでは△

ごみ処理場単独では、人口減少等によりごみ量が減少し安定した処理・発電が困難である。そこで地域に存在する再生可能エネルギーを活用し、ごみ処理場と再生可能エネルギーを組合せて地域循環共生圏を作る。

③    エネルギー回収と省エネ化

ごみ処理場において、温室効果ガスを削減するにはエネルギー回収と省エネ化を進める。また地域に安定した電力を供給することで地域循環共生圏を構築する。

(1)から絞り込んだ課題が何か見えません。

(2)廃棄物の適正処理の課題と解決策

廃棄物の適正処理が最も重要な課題と考える。

環境、経済、社会を統合的に向上する。

環境:温室効果ガスの削減

経済:AI、IOTの取り込み

社会:人口減少

環境面の温室効果ガスを削減するためには、再生可能エネルギーの取り込みやエネルギー回収・省エネ化が必要である。

廃棄物処理の「地域循環共生圏」ですから再生エネだけでは無理があります

再生可能エネルギー導入の方策を以下に示す。

表3 再生可能エネルギー導入方策

項目

内容

間伐材と廃棄物コンバインド

地域で発生する木質間伐材と廃棄物焼却炉をコンバインドさせ有効利用

下水汚泥との混合燃焼

分かれていた下水汚泥と廃棄物を混合燃焼し効率化

燃料化

廃棄物中のバイオマスを乾燥させ燃料化

エネルギー回収・省エネ化の導入の方策を以下の表に示す。

表4 エネルギー回収・省エネ化

項目

内容

熱回収量の向上

低空気比燃焼

低温エコノマイザ

熱損失の低減

白煙防止装置不採用

乾式排ガス処理設備

排水クローズド不採用

電気変換効率の向上

ボイラ高温・高圧化

水冷復水器

タービン設計点の最適化

少子高齢化・人口減少の社会面と経済面の同時解決には、AIの技術革新が必要である。

AIにより自動運転することで、運営の効率化や熟練技術者を補完することができる。

(3)廃棄物適正処理のリスクと対策

棄物を適正に処理するには、新たなリスクが発生する。そのリスクと対策を以下に示す。

表5 課題の新たなリスクと対策

項目とリスク

対策

1エネルギーセンター

単独施設では脆弱性がある

リスクが何か特定できていません。数は2でもOKです。

地域にエネルギーを供給し自立化し地域エネルギーセンターとする。地域資源で発電し、地元企業にエネルギーを供給する。

2再省畜エネ企業

 地域に資金循環が形成されない

再エネを地域エネルギー供給企業が買い取り、地域に供給することで資金循環を形成する。

3再省畜エネネットワークづくり

 地域単独発電では安定性にかける

地域間でネットワークを作り安定供給し有効利用する

4集約・大規模化

中小規模では効率が悪く、発電ができない

ごみ処理施設を集約し、大規模化することで発電可能で効率が良い

R1年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 今年の結果は大変惜しいことをされたと思っています。Ⅲ問題がA評価であるということは実務能力が高い事を表しているかと思います。後は俯瞰的な解答力、それから専門分野での的確な表現ができるようになれば充分かと思います。

、残念なことに、Ⅰ-1はバランスに課題があるようです。社会の持続可能性とは全員が勉強が必要です。答案末尾に掲載したリンクをご覧ください。Ⅱ-2は減点された可能性があります。手順については具体的に「エレクトロスラグ溶接、ラメラテア」など主要課題を早めに取り上げて実質的な提案すればよかったと思います。Ⅲ-2は幸い試験官からは高い評価を得られていると想像します。これで安心されずに、できれば、さらに専門家らしい内容とできれば楽勝で合格できます。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

上記の続きを聞く>

 音声ガイドによるコーチング指導内容(13分54秒、5分33秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き方の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上などにより、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

(1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出して分析せよ。。

(2)(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

前置きが役に立っていません。こうした記述はなくても構いません。

西地方豪雨、北海道イブリ東部地震や高度成長期に整備した社会資本の老朽化の加速による更新等に関する生産性の向上は重要となっている。以下に私見を述べる

1.生産性の向上に関する課題

残念ながら課題が正しく分析できていません。

・若手入職者の減少、若年労働者の早期退職により、建設業界の担い手の減少が懸念されることから、中長期的にみた担い手の確保が課題である。

・団塊世代の優れた建設労働者の大量退職が今後、懸念されることから、社会資本整備に関する技術力の確保が課題である。

・社会資本整備事業の完成工期が年度末に集中することで、優れた人材や必要とする資機材を確保することが困難となることが懸念されることから、施工効率の向上により、品質を確保した資本を整備することが課題である。

品質を確保した資本を整備する」とは?曖昧過ぎる提案。このことばの意味は何か?

社会資本整備に対する財源がピーク時と比較して復元してきたとはいえ、未だ社会資本整備の予算は不足していることが課題である。予算は技術課題ではありません。

2.重要な課題と解決策

1)重要な課題

 建設労働者について、中長期的にみると建設業界の若手労働者の減少と優れたベテランの大量退職により、担い手が不足することが件年されることから、労働力の代替えが重要な課題となっている。

2)課題に対する解決策

新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくという趣旨はご理解されていますか

・優れたベテランを再雇用することで、品質管理、照査、完成検査、安全管理部門へ配備することで、社会資本の性能を維持、向上させる。

・女性労働者の活躍推進を図るため、専用のトイレ、更衣室のハード整備や子育て世代のワークシェアリングや専用情報ポータルの構築により情報交換の場を整備することを図る。

■ここは正解です。

・ICT建設機械の活用により、土工事等の多量な繰り返し作業を自動化することで、少人化を図る。また、不慣れな作業も代替えすることで、重機と手元が接触することが削減できることから、安全性も向上できる。

・ゼロ国債や複数年度債務負担行為を採用することで

完成工期が年度末に集中することによる繁忙期の発生を第1〜2四半期の閑散期へシフトすることにより、施工効率を向上させることで、労働力の代替えに繋がる。

・工事現場でプレキャスト製品の導入を進めることにより、配筋、型枠、Co打設等の作業過程を削減することで、少人化を図ることにより施工の効率化を向上させて、労働力を確保する。

3.新たに生じうるリスクと対応策

1)リスク

■残念ながら↓これらはリスクと呼べるほどのものではありません

・ICTの操作は操縦者が未だ少ないことから、人員の確保または操作技術の習得が必要である。また、導入にコストがかかるため、地元中小企業でICTを採用する場合には費用負担の影響が大きい。

・三次元測量やCIMデータのデータは大容量化し、調査や作図に関するデータは情報が漏れることが懸念されることから、データ保存に関するセキュリティ対策が必要になる。

2)対応策

・ICT建設機械の操作に関してOJTによる内部研修による技術の伝承や、OFF−JTによる社外専門家の講習会に参加することで操作技術を習得する。また、ICT建設機械の助成金の活用により建機の導入を推進することで活用を図る。

・三次元CIMデータの情報管理の一元化するための部署と情報処理を実施する人材等を確保することで、情報を適切に扱う対策を図ることが重要である。

4.業務を遂行するための必要な要件

技術者倫理、社会持続可能性の観点は意識されていますか

・優れたベテランの習得した技術は暗黙知も多く存在することから、ナレッジマネジメントによりデータベースを構築・運用することにより、若手に技術を承継していく。

・OJT、OFF-JTで習得した優れた技術は情報プラットフォームの活用により、社内で情報の水平展開を図る。

・VRの活用により、現場の労働災害や安全管理をシュミレーションにより、見える化・見せる化することで、

若手や若年労働者に対して安全対策を承継していく。

そもそも問題趣旨の社会持続可能性とはもっと広い概念です。

この下のリンクを見てください。

社会を見据えた持続可能性

持続可能性「Sustainabilityサステナビリティ」とは何

持続可能な社会とは

持続可能性

Ⅱ-1-1  

 地震動によって生じる地盤の液状化の仕組みを説明せよ。また,液状化の発生を抑制する原理を3つ挙げ,それぞれに関して対策工法を述べよ。

解答

(1)液状化の仕組み

液状化は地震外力の影響により、砂質地盤の粒子間の結合が減少することで、間隙水圧が一時的に増加して、砂の粒子が沈下すること生じて、地盤に水が上昇する現象である。

■「地盤に水が上昇する現象」これでは説明不足です

(2)抑制する原理

これでは原理の説明になっていません。

砂質地盤部における沈下 

②砂質地盤部における密度

③砂質地盤部における地下

(3)防止工法

①砂質地盤にズラリーを圧縮空気で送り込み、撹拌により地盤を改良する深層混合処理により、対策を実施する。砂質地盤と固化材の配合について、回転翼の速度や材料の量を変化させ、室内力学試験により、強度特性を確認しなければならない。

②サンドコンパクションパイルにより、バイブロまたはオーガーで削孔した後、圧縮空気で砂を送り込んだ後に振動またはケーシングの圧入により、密度の高い砂で柱状改良を施工することで、砂質地盤を安定させる。

③砂質地盤部における地下水をディープウェルにより

揚水して水位を低下させることで、液状化を防止させる。ディープウエルはポンプで地下排水を強制排水させることから、周辺地盤の地下水位低下による沈下に意しなければならない。

Ⅱ−2−2

 住居地域にある4車線の幹線道路を横断する老朽化した場所打ち鉄筋ゴングリートボックスカルパート(内空幅1. 8m X内空高1. 8m,上被り1. 2m)を撤去し,プレキャストボックスカルパート(内空幅2. 5m X内空高2. Om)に更新する工事の施工計画を策定することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。なお,施工方法は開削工法とし,道路の車線規制は夜間のみ可能,カルパートは農業用排水及び雨水排水を兼ねた行政が管理する施設である。

(1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点,工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

(1)調査検討すべき事項と内容

①土質調査

■正解はまだ見えないが、とりあえず調べます、という感じでは△です。シナリオを作成して解決方向を想定して書いてください。

ボーリング、標準貫入試験、室内力学試験を実施して、開削工事をするうえでヒービング、パイピング、ボイリングを検証するため、土質定数を把握する。

■「ヒービング、ボイリング」のダブリ課題が正しく分析できていません。

②地下水位観測

 開削工事で土留めを用いる時にはヒービング、ボイリングにより地下水の影響から掘削底面部が不安定になることがあるため、ボーリング孔内、地下水位計により地下水位を測る。

与条件から検討すべき材料はたくさんあります。これらについて1つ1つ丁寧に解いていくことです。

  • 住居地域にある       騒音振動
  • 老朽化した場所打ち鉄筋       崩壊危険性
  • 道路の車線規制は夜間のみ可能  工程管理
  • 農業用排水及び雨水排水 仮設

③周辺家屋の変状調査

 土留壁の変形により、背後地盤の沈下、傾斜により周辺家屋へ影響が発生することが想定できるため、周辺地盤に沈下計測杭や地表面傾斜計を設置して、事前に変動に備える。

(2)業務を進める手順

①地形測量、用地境界測量により、地形の縦横断の把握と官民境界を確定させて、土質調査を開始する。

②ボーリング、標準貫入試験、サンプリングにより、カルバート設置底盤部と土留め背後の土質定数を把握する。

③土留めの安定を検討するために、土圧と水圧を作用させた簡易計算法により耐えうる土留め構造を設計する。

■ここは正解です。

)ボイリング、パイピングに対して、開削部を安定させるため、土留壁材の安全な根入長を確保する設計の検討を実施する。

)ヒービング、ボイリングから生じる倒壊に対して、土留壁材の剛性を高めて、安定した仮設土留を構築するため土留材の剛性を検討する。

④開削断面の安定

開削底面部が不安定の場合は適切な地盤改良により底面部を改良して安定を図る検証を実施する。地盤が安定している場合は改良を省く方法で検討する。

⑤ボックスカルバートの施工

 ボックスカルバート施工で使用する重機のトラフィカビリティを確保するため、地盤の表層改良と敷鉄板を敷設して、安全性を確保する。

3)関係者との調整方法

自らの行動だけ。他者との調整はありません。

①現状の農業用排水、雨水排水を適切に流下させるため、カルバートの管理者である行政機関と協議を図り、適切な排水流量と排水断面を確認して、切り回し仮設排水施設を整備する。

②車線道路の幹線道路を横断して、車線規制を実施した工事のため、規制期間を道路管理者から確認して、カルバート工事の最適な工程計画を立案して工事を実施する。なお、夜間施工となることから、安全施工のための適切な照明を準備すると伴に、交通整理員を適

所に配備する交通安全計画を立案して、カルバートボックス施工時の安全性を確保する。

■これらは工事上の留意点であって、他者との調整はありません。

Ⅲ−2

  大然資源が極めて少ない我が国が持続可能な発展を続けていくためには,「建設リサイクル」(建設副産物の発生抑制,再資源化,再生利用及び適正処理)の取組を充実させ,廃棄物などの循環資源が有効に利用・適正処分されることで環境への負荷が少ない「循環型社会」を構築していくことが重要である。今後,社会資本の維持管理・更新時代の本格化に伴い建設副産物の質及び量の変化が想定されることなど,更なる「建設リサイクル」の推進を図っていく必要がある。

  このような状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。

(1)「建設リサイクル」の推進の取組に関して,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

会基盤整備事業で発生する廃棄物を適正に処理することで、循環型環境社会を構築するための「建設リサイクルの推進」が必要となっている。以下に私見を述べる技術コンサルタントとしての見解であって、私見ではありません。試験なのでへりくだる必要もありません。

1.建設技術者としての課題

■ここはなぜ箇条書きなのか。一般的な文章形にするように。

・建設リサイクルを推進するうえで、廃棄物処理法に基づいた3R政策(リデユース・リユース、リサイクル)のサイクルを活用して、廃棄物を適正に処理することが課題である。これは基本原則。改めて書く必要ありますか

・排出事業者として、廃棄物処理を下請けに任せきりではなく、マニュフェストにより排出から処理までの過程が正確に実施されていることを確認することが課題である。3Rとも建設とも関係のない廃棄物の一般的手続きばかり。

・廃棄物処分場が行政機関から許可を取得しているか、有効期限が切れていないかを確認し、満たしていない場合は、その処分場に廃棄物の処分を依頼しないことで適切な処分を実施することが重要である。

・廃棄物の取集運搬、処分を委託する場合の委託契約書について、契約先が契約内容の廃棄物品目を扱っているかを確認し、扱っていないようであれば契約を締結しない。適切な契約を推進することが課題である。

・建設発生土の排出受入について、地区の発生土協議会で情報を入手し、発生土の流用手続きを行うことで、効率的な発生土の活用を実施することが課題である。

・建設リサイクルで処分できない廃棄物は最終処分により、安全で的確に処理することが課題である。

「建設リサイクル」「循環型社会」社会資本の維持管理・更新時代の本格化に伴い建設副産物の質及び量の変化が想定される

これらを意識されていますか?

2.最も重要な課題とその解決策

内容は間違いではありませんが、建設廃棄物の3Rが先決でしょう。

社会資本の維持管理の一環ととらえて評価してくれた可能性があります。

1)重要な課題

廃棄物最終処分場を長寿命化させることにより、今後の社会基盤整備で発生する廃棄物を最終処分場で適正に処分することが最も重要な課題である。

2)重要な課題に対する解決策

・廃棄物最終処分場は埋立地で廃棄物から発生する浸出水(汚れた水)が地下に漏水しないように、周辺環境の汚染を防止するため浸出水を遮水しなければならない。以下の対策方法が重要である。

①埋立地遮水施設整備の多重化により、遮水シートを二重化して遮水構造の安全を図る。

②埋立地底面部の冗長化のため、ベントナイト砕石を敷設し、浸透速度を遅延させて安全性を向上させる。

・埋立施設のメンテナンスサイクルによる点検・診断・措置・記録のサイクルを実施することにより、施設の維持管理、運用に生かす。

・中長期的および災害時にも廃棄物最終処分場が廃棄物を受け入れできるように、廃棄物の残余容量が確認できる組織内部の情報プラットフォームと外部の事業者が廃棄物を排出するときに、残余容量の確認と受け入れ予約が可能な情報ポータルシステムを整備する。

・施設の維持管理工事について、今後は事後補修ではなく、予防保全型で予算の平準化を行う。

3.新たに生じるうるリスクと対策

■出来ればもう少し予測困難な「リスク」はありませんか。

1)生じうるリスク

・優れたベテラン労働者が大量退職することで、処分場の維持・補修に関する技術力の低下することが懸念される。例として、埋立地の遮水シートの接合技術や埋立地底部に敷設するベントナイト砕石の品質管理等は、特殊な技術を要するため、若手への技術の継承が必要である。

・若手入職者の減少や若年労働者の早期退職により、廃棄物処理施設の維持管理工事に関する担い手の不足が懸念される。

2)リスクに関する対策

・ベテランの習得した技術は暗黙知であることが多いため、ナレッジマネジメントにより形式知化させて、データベースを整備・運用することにより若手に技術を継承する。

・OJTによる内部研修やOFF-JTによる外部専門家による講習会に参加することで、ベントナイト砕石敷設の品質管理等の技術を習得させる。

・ベテランの再雇用により、品質管理、照査、完成検査、安全管理部門へ配備し、若手とペアを組み業務に従事することで、技術を継承する。

・UAVの活用により廃棄物処理施設の確認や埋立工事の進捗を確認することにより、少人化を実施することで、担い手不足の対応策を図る。

R1年 建設部門、鋼構造・コンクリートの答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 見識はお持ちだと思いますが、残念なことに、Ⅰ-1はバランスに課題があるようです。社会の持続可能性とは全員が勉強が必要です。答案末尾に掲載したリンクをご覧ください。Ⅱ-2は減点された可能性があります。手順については具体的に「エレクトロスラグ溶接、ラメラテア」など主要課題を早めに取り上げて実質的な提案すればよかったと思います。

出題者の求めていることが単刀直入に答えられていませんでした。ご自身は「自分の得意分野に無理やり引き込んで回答したが、この切り口でいいのか知りたい。」とのことで、自己流の書き方では限界があるようです。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分38秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き方の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上などにより、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

(1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出して分析せよ。。

(2)(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1. 課題

 我が国の人口は平成10年にピークを迎え2065年には9000万人に、また労働者人口も4500万人まで減少することが見込まれている。また建設系の労働者はその3割を55歳以上が占めており、10年後にはその大半が離職することが予想されている。

また若手の理系離れも進んでおり、人材不足が深刻であり、また少子高齢化が進行しているため税収が減少することから国内の事業が縮小することが予想できる。

一方で東南アジア等では、質の高いインフラシステムに対して旺盛な需要があり、日本の高い技術が必要とされている。

 以上の背景を踏まえ以下の3点が課題である。

①人材が不足する中で、建設生産プロセスをいかに効率的に推進するか

②国内需要が低下する中で海外の旺盛なインフラ需要をいかに確実に取り込むか

③上記の2つの課題を解決するため、いかに新技術の開発を推進するか

どうしてここまで2を書かねばならなかったのでしょうか。

2,解決策

 上記の課題の内最も重要な課題は①の建設生産プロセスの効率的な推進である。以下にそれに対する3つの解決策を示す

①i-constructionの推進技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 従来計測機器を人手により実施していた測量にドローンにGPSと3次元レーザースキャナを搭載し3次元データを取得する。

 また、主に国交省の直轄工事で平成28年度から適用しているICT土工を地方公共団体へ水平展開する。

 さらに、ICT土工に加え、舗装工事や浚渫工事へもICT施工の適用範囲を拡大し、さらなる各建設生産プロセスの効率化を推進する。

 設計段階においてもCIMを採用し、3次元設計を推進することで、数量の自動算出や、測量時に取得した架空線等の支障物の3次元データを取り込んだ施工計画を立案することで、橋梁の架設ブロック割りを最適化し、現場での手戻りを回避する。

 また、3D動画の作成や3Dプリンターを活用した模型を作成し地元説明で説得力のあるプレゼンを実施することで、地元との合意形成を迅速化する。

 3Dモデルに4D(時間)や5D(コスト)を組み入れることで施工ステップやコストを見えるかすることが可能となり、事業の推進に大きく寄与する。

 さらに出来形計測時には3Dスキャナでの出来形計測値と設計値を照合することで省力化する。

 測量、設計、施工時に積み上げ属性を持たせた3Dデータは、点検結果や補修履歴も付与し、効率的な維持管理にも活用する。

②二次製品の採用

 コンクリート工では、埋設型枠を採用することで型枠の設置や脱型の工程が省略し、現場作業の負担を軽減する。併せて、部材の形状・寸法の共通化及び標準規格化することで、鉄筋をプレファブ化することで現場での配筋作業を省力化する。

 さらに、フレッシュコンクリートには高流動コンクリートを採用し、締固め工の作業人員の削減を図ることで、作業の効率化を図る。

③は特になくてもよかったでしょう

③労働環境の改善

 受発注者で連携し、受注者と発注者の両方の視点から労働安全マネジメントを徹底する。

 PDCAサイクルを徹底することで、不慣れな作業員でも事故に対するリスクを認識することが可能となり事故による現場作業員の減少を回避し生産性を確保する。

3.リスクと対策

■下記2つは共にリスクと呼べるものではないでしょう

・初期投資

 各建設生産プロセスの省力化で生まれたコストで補完する。

・人材不足

 建設リカレント教育を実施し必要な人材を効率的に育成する。

■下記は2行では技術者倫理、社会持続可能性の観点が見えません。

4.必要な要件

・粘り強い意志と実行力

・PDCAの確実な実施による持続性を確保す

■そもそも問題趣旨の社会持続可能性とはもっと広い概念です。

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社会を見据えた持続可能性

持続可能性「Sustainabilityサステナビリティ」とは何

持続可能な社会とは

持続可能性

Ⅱ-1-4    

 鋼構造物の疲労き裂の発生状況を把握するための現地における調査又は試験方法を2つ挙げ、それぞれの概要と適用位あたっての留意点を述べよ。ただし、外観目視調査は除く。

解答

1.磁気探傷試験(MT)

 磁性体に表出又は2~3mm程度の深さにあるき裂があると、そのき裂に直行する方向を磁化した際に漏洩磁束が発生する。

 その漏洩磁束に黒色や蛍光磁粉を流すとき裂に吸着され、き裂が拡大され目視が可能となる。

留意点:磁化する方向がき裂の方向と直行していないと正確な検査ができない。また磁粉を流す方向も同様で直行させる必要がある。

 磁性体ではないアルミニウムやステンレスでは適用できない。また2~3mm以深の内部キズは検知できない。←なぜか

2.超音波探傷試験(UT)

 直進性が強く、境界面やき裂で反射する超音波の性質を活用した試験方法

 探触子から発信した超音波がき裂や境界面から反射する時間を計測し、き裂の位置と寸法を計測する。計測結果は、モニターにエコーとして表示される。

留意点:ブローホールなどの球状の欠陥は正確に計測できない。また、低温割れなどの欠陥は48時間以上経過したのちに試験を行う。

 目視できないき裂を探査するため一定の技量が必要となる。←「一定の技量」とはどの程度か?

■ほとんど完璧に近い内容で、言うことありません。マーカー部分について根拠を挙げておけば、なおよかったでしよう。

Ⅱ−2−2

 鋼構造物の品質や精度を確保する上で、不適合(不良、不具合)を未然に防ぐことが重要である。あなたが、鋼構造物の品質や精度に関わる重大不適合の再発防止策を立案する担当責任者として、業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)技術的に重大と考える不適合の事例を1つ挙げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

1.事例

 鋼製橋脚の隅角部は板が複雑に交差しており溶接の品質確保が難しい。また高度成長期には様々な溶接手法が適用されていたり低品質の材料が使用されている事例がある。

 地震時には隅角部に大きな応力が発生し、たとえ微小な溶接欠陥や割れであったとしてもそれを起点とし延性的に進展し、重大な損傷に発展する可能性がある。

2.調査内容

①発見された損傷が近接目視点検時の場合、磁気探傷試験や超音波探傷試験を組み合わせ、損傷の位置と寸法を確認する 

②事前にしゅん功図書を確認し、板組や溶接方法や材料等の基本条件を調べておく。

③施工計画書や材料ミルシートで施工方法や使用材料の特徴を調べておく。

④現地では、必要に応じて、断面をマクロ試験でき裂の位置が溶接金属内なのかルートギャップからなのかを特定す

3. 業務手順と留意するべき点

 上述の調査をすることを踏まえ、業務手順を示す。

(1)原因調査

 現地の詳細調査及び事前の書類調査を実施する。 

(2)原因推定

■とても惜しいです。これら↓の内容を、「上記2.調査内容」に書くべきでした。

エレクトロスラグ溶接による溶接欠陥 

 大電力で大量の溶接を行うため施工性がいいが、欠陥も発生しやすい。同じ受注者が施工した他の個所についても同様の欠陥が発生している可能性が高いため、点検範囲を拡大する。

ラメラテア

 材料に硫黄分が多く含まれている場合に、溶接で板厚方向に板が引っ張られ割れが生じてしまうことがある。同じ鋼材メーカーで同じ時期に生産された板を使用している類似箇所の点検が必要。

・板組

 隅角部には溶接線が3方向で交差する箇所があり、溶接の品質が確保しにくい。大きなギャップが内部に残ってしまうためそこを起点とした疲労き裂が発生しやすいため、同様の板組箇所を点検する。

(3)対策立案

■残念ながら下記は説明不足です。これでは具体的な対策法がわかりません。

①    同じ施工方法を採用しない

②    対策された材料(耐ラメラテア材)を使用する。

③  設計時に不具合の発生しにくい板組を採用し、受発注者で協議し、設計変更で対応する

4.関係者との調整方策

下記の内容は、この業務でなくとも、いつでも、何でも当てはまることです。いわば心構えみたいなことで、申し訳ありませんが、技術的内容と言えません。ここは具体的に(2)と(3)で書いたことに対して、どう巧みに進めるかという視点で、プロマネとしての取りまとめの業務を表現してください。

 受発注者間で役割分担を明確に分担するよう指示し、

PDCAのサイクルをしっかり回し、確実に業務を推進する。必要であれば産学から有識者を招きアドバイスをいただき、正しいアウトプットを導く。

Ⅲ−2

 鋼構造物には通常の供用時における外力や環境条件などによる経年劣化に加え、豪雨、地震、火山噴火などの自然現象や車両・船舶の衝突などの人的加護によっても損傷が発生しうる。構造安全性を損なう劣化・損傷を受けた場合、速やかに適切な補修・補強策や再発防止策を立案する必要がある。その立案を担当する技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)構造安全性を損なう劣化・損傷を1つ想定し、その発生状況を概説したのち多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。ただし、疲労亀裂は除くものとする。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

どうして↓このような冗長な前置きを書かれたのかわかりません。全く不要です。昔の技術士答案の作戦であり、今は通用しません。

.背景 

 わが国では平成30年7月に集中豪雨、9月に台風21号、さらに北海胆振東部地震が発生し各地に甚大な被害を及ぼした。

 また今後30年以内に南海トラフ地震が7割から8割の確率で発生することが予想されており、近年は激甚化した自然災害が頻発化かつ局地化している状況となってい

2.想定する損傷

 規模の大きい地震が発生し、鋼道路橋の支承が損傷し、路面に30cmの段差が生じている。

 下部工は橋脚耐震補強が実施されており上部工と下部工にはおおきな損傷は発生していない。

 一方で、支承は平成8年以前の設計基準で設計されており、水平震度Khは0.25、鉛直荷重Vは0.1Rd

で設計されていた。

 そのため、アンカーボルトの引き抜け、サイドブロックの破断及び上沓と下沓が外れ、その結果、路面上に30cmの段差が生じた。

3.課題

 以上の損傷の発生状況を踏まえ、以下の3つの課題を抽出する

補修・補強策や再発防止策を立案するのですから、残念ながらこれらは答えになりません。

①災害復旧を早急に推進するため、緊急車両を通過できるよう、いかに応急復旧を迅速に実施するか

②被災地域に物資を運び入れ、早期の復興を実現するため、一般車両を通過できるよう、いかに応急復旧を実施するか

③今後発生すると想定される大地震が発生しても既設の構造物が想定した損傷で収まるよう耐震性の向上をいかに迅速で確実に実施するか

4.解決策

 鋼構造物で最も重要な課題は③の迅速で確実な耐震性向上の実施であり、以下に3つの解決策を示す

(1)耐震補強

2の想定する損傷とは無関係の話です。対策として一貫性がありません。

 想定される地震力に応じた断面耐力となるよう各部材を補強する。橋脚の基部のように弾性応答で抑えることが困難な部材には塑性応答を許容し、設計上は水平震度をその応答塑性率に応じて低減する。Khc=Kh÷√(2μ―1)、ここでμ=塑性率

(2)制震による耐震性向上

 粘性ダンパー等により、構造物固有の減衰率に加え減衰効果のある装置を追加し地震時の応答を低減する手法。

 速度に依存する粘性オイルダンパー、水平力に依存する摩擦ダンパーや変形量に依存するせん断パネルダンパー等種々のタイプのダンパーが存在しており、目的に応じた選定が必要である。

 詳細な影響を評価するためには動的効果をモデル化し動的解析に組み入れる必要がある。

③免振による耐震性向上

 例えば上部工と下部工の間にゴム支承を挟み応答を切りはなし、構造物全体を長周期化することで、地震応答を低減する手法。

 ゴム支承の中に鉛プラグを埋めこんだり、高減衰ゴムを適用することで制震と組み合わせ、さらなる応答低減を図ることが多い。

 地震力を低減できる一方で、長周期化することで変位量が増大するため伸縮装置や支承のサイドブロックの許容変位量の設定に留意が必要。

 また制震と同様にその効果を正確に評価するためには動的解析が必要。

5.リスクと対策

コストや工期は工事の前提みたいなものであり、意味のあるリスク分析になりません。

想定されるリスクと対策は以下の通りである。

・相応のコストが必要。ただし、道路啓開路線上の橋梁等重要な橋を選択し、緊急三か年対応とするなどして集中的に事業を推進することでコストを最適化できる。

・相応の工事期間が必要。ただし、その進捗率を見える化、見せる化を徹底し、適切な進捗管理を実施する。

残念ながらリスクが書かれていません。リスクとは頻度が小さくて経済損失の大きい出来事です。

ハード対策だけでは不十分。住民目線でのソフト対策を推進する。例えば橋梁上で被災した場合の避難方法や緊急車両への配慮等についての広報を徹底し、防災意識の啓発活動を実施する。

R1年 森林部門、森林土木の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 見識はお持ちだと思いますが、残念なことに、出題者の求めていることが単刀直入に答えられていませんでした。ご自身は「自分の得意分野に無理やり引き込んで回答したが、この切り口でいいのか知りたい。」とのことで、自己流の書き方では限界があるようです。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分23秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

Ⅰ−2日本では、収益性の悪化などの理由により皆伐・再造林が進まず、結果として高齢級人工林が増加している現状にある。

(1)このことから考えられる負の影響を、技術者としてあなたの専門的立場から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた影響から1つを取り上げ、複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策によって新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(3)の対策を遂行するに当たって必要な要件を、技術者倫理、社会の持続可能性観点から述べよ。

解答

(1) 高齢級人工林にかかる負の影響について

1)齢級配置のアンバランス

現在10齢級以上の人工林は5割以上となっているが、2020年にはこの割合が7割となると予想されている。

この場合、若齢級の人工林が少なくなる事から、下刈、除伐等の保育技術の継承が困難となり、保育作業の不足から、林地崩壊等の災害の素因となる。

2)流木災害の激化

 近年、我が国においては、温暖化に伴う気候変動により、長時間に渡る極端な集中豪雨に見舞われ、林地崩壊に伴う流木災害が毎年発生している。

 今後、収益性の悪化等で、皆伐・再造林が進まなければ、人工林は大径化し、また、手入れ不足の人工林が林地崩壊を引き起こすことで、流木災害は激化すると考える。

(2) 流木災害激化の解決策について

 人工林の林地崩壊が流木発生の原因であるため、以下の解決策となる。

1)林内植生の根系の発達、侵食防止対策

 樹木の根系は、土壌中のせん断抵抗力を増加させるとともに、根系の引き抜き抵抗によって、林地崩壊防止機能を発揮するため、根系の発達促進が必要である。

 また、下層植生等の地被物により、土壌侵食防止機能も発揮される。

 これらの機能を十分発揮させるためには、間伐を中心とする、適切な森林整備が必要である。

2)針広混交林化

 スギ、ヒノキを中心とする人工林に、深根性の広葉樹を導入することによって、土壌中に複数層の根系ネットワークを形成させる事が有効である。

 また、広葉樹からの落葉落枝が、更に土壌浸食への抵抗性を高める。

(3) 新たなリスクについて   ←ここはリスクが何か明確に書かれていないのでわかりません。

1)林内植生の根系の発達、侵食防止対策

 急激に強度の間伐を行わず、弱度の間伐を複数回実施し、目標とする立木密度に仕立てる事が重要である(これは対策に相当します)

特に過密な人工林で一度に強度の間伐を行うと、風害等気象災害が発生する可能性がある。また、林内の乾燥が進む可能性もある。(こちらは問題点であり、リスクが書かれていません)

 一方、下層植生を繁茂させようとしても、近年増加しているシカによる食害で、下層植生が消失する事例があるため、間伐等森林整備を実施した範囲を、獣害防止ネットで囲う対策が必要である。

2)針広混交化

 広葉樹は天然更新により導入するが、1)と同様のリスクが有る他、周囲の競合する植生の影響で、発芽した稚樹の生育が遅れたり、枯死する可能性があるため、天然更新がしにくいリスクがある。

■これも問題であってリスクではありません

 この対策は、1)に加え、下刈等保育作業を行うことと、豊作年に地がき等の更新補助作業を行うことが必要と考える。

(4) 対策にかかる必要な要件について

■技術者倫理、社会の持続可能性の観点はそれぞれどこにありますか。

 森林管理や鳥獣保護等森林の生態系の知見を有するとともに、間伐等森林整備にも精通している人材の確保、育成が必要である。つまり、スイス等ヨーロッパにおける「フォレスター」の働きをもつ人材の育成が必要と考える。

 また、シカによる森林被害の抜本的な対策は、頭数管理だと考える。そのためには、捕獲事業の強化や、狩猟による頭数管理が必要であるが、野生とは言え、鳥獣を捕獲する事に対する、世論の醸成が進んでいない。今後、ジビエ等で野生鳥獣の食肉が流通すると、世論の醸成が進んでいくものと思われる。

 最後に、皆伐・再造林が進まないのは、木材の使用先が少ないためである。

 今後、新規の住宅着工数は減少すると予想されており、ますます木材使用量が減少していく中で、非住宅分野、中高層住宅分野の木造化や、内外装の木質化を進めることにより、木材使用量の拡大を図る事が最大の要件である。この事により、循環型社会形成が促進されると、期待される。 

論理的にやや無理があるでしょう

Ⅱ-1-4    

 林道における排水施設について、その種類を挙げながら説明し、それぞれの目的や設置に当たっての注意点を述べよ。 

解答

1)林道の排水施設は、大きく分けて、①側溝、②横断溝、③溝渠、④地下排水工、⑤のり面排水工に分類され、それぞれ次のとおりとなる

①側溝  これだと言葉の意味に近いので、解答としての提案価値が低いです。

路面水やのり面水を集水し、処理する機能を持つもので、林道の縦断方向に設置される。

 下流側は水量が多くなるので、適切な位置で横断方向へ排水することが必要である。

②横断溝

 路面水による路面侵食を防止するために、適切な間隔で設置し、横断方向に排水する。路面水発生を防止するため、設置間隔が長くならないよう注意のこと。

③溝渠

 渓流水等を、林道を横断させて排水するもので、開渠、暗渠、洗い越し工に分類される。

 落葉等で閉塞しないよう、余裕を持った断面とすることに注意のこと。

④地下排水工

 湧水や流入水により、路盤や基礎地盤内に間隙水圧が生じないよう、円滑に排水するもので、湧水等の発生箇所の把握が必要である。

⑤のり面排水工

切土及び盛土のり面に発生する流水を、処理するものである。小段の排水については、横断勾配を設けることが必要である。

Ⅱ−2−1

 東日本大震災に起因する津波によって東北地方などの海岸防災林が大面積にわたり甚大な被害がもたらされたことから、現在その復旧再生への取組がなされている。海岸防災林は、潮害、飛砂、風害の防備等に加え、津波に対する被害軽減の機能も確認されており、これら復旧への取組の知見が今後の全国の海岸防災林の整備に生かされることが期待される。以上のような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)海岸防災林の復旧・再生を図るために,東北地方などの海岸防災林の被害状況や復旧の取組を踏まえて,今後,海岸防災林の復旧・再生を図るために,検討すべき事項について列挙せよ。

(2)(1)の検討事項について,あなたが特に重要と考える技術的課題を1つ以上挙げ,その解決方策を提案せよ。

(3)将来,あなたの提案を津波被害が予想される地域に適用する際,起こりうる問題点と対応策について述べよ。

解答

■このような冗長な前置きでは、消極的な姿勢(文字数かせぎ)と受け取られて点を取れません。逆効果です。

(1)平23311日に発生した東日本大震災により発生した、10mを超える津波により、東北地方における海岸防災林を、根から流出させた。しかし、一部の海岸防災林は、漂流する船舶等を捕捉すると共に、津波の威力を減勢した事例が報告されている。また、樹木につかまる事で、津波の引き波から生還した事例も報告されており、人命を救う働きもあった。 

 東日本大震災から8年経過した現在においても、用地買収や、盛土の造成等が進められている一方、準備が整った地域から植栽が進められており、海岸防災林の再構築が進められている

 この海岸防災林を再造成する中で、検討すべき事項もあり、それを以下に挙げる。

■下記のような一般論の項目ではなく、実際に東北で行われている復旧の取り組みから、問題点を見つけて、そうした障害を乗り越えるための検討事項を挙げよ、と求めているのです。具体的な内容を想定してベストの提案をしてください。

樹種の選定 

②樹木の根系を地中深くまで伸長させる。 

③防潮堤等と組み合わせた多重防御の中での役割

■樹木の根が深い方が強い、などということは想像しなくても分かります。問題はどうやって深く根を張らせるかにあります。

(2) 重要と考える技術的課題について

 私が重要と考える技術的課題は、樹木の根系を地中深くまで伸長させることである。

 先の大震災により発生した津波により、樹木が根から抜けて流出したことは、今後の海岸防災林の造成に、大きな問題であると考える。

 この解決方策は、地下水位を低下させるとともに、盛土により2m程度地盤を嵩上げすることで、マツ類の根系を地中深くまで誘導することである

■これ↑は非常に困難なことです。実現性が低い提案は、エンジニアとしての常識が疑われる場合がありますのでご注意ください。

 また、直径生長を促すことで、船舶等漂流物の捕捉機能を高めることも必要である。

■(3)は正しい問題の趣旨がイメージできていません。出題者は津波被害地域にこの提案を行った場合に起こりうる問題点、対策を求めています。地域を限定した議論なのです。

一方答案に書かれている答えは、場所とは関係ない一般論です。一般論に発散せずに

(3) 起こりうる問題点と対応策について

 海岸防災林を造成する際に、その中心となる樹種は、深根性のアカマツ、クロマツであるが、マツクイムシ対策が必要であるため、抵抗性マツを使用する事が必要である。

 また、広葉樹では、カシワ、タブノキ、コナラが海岸防災林に使用できる事から、マツに混在させることも可能だ。

 海岸防災林の造成では、1ha 当たり1万本程度の植栽本数が必要となる事から、抵抗性マツの供給体制が問題となる。

 このため、広葉樹をある程度の割合で導入する事は、抵抗性マツの供給力の負担を減少させる事が可能となる。

 また、多様な樹種の導入は、多様な生物相を形成することになる事から、海岸防災林においても、森林の有する多面的機能の発揮が期待される。

■クロマツ、広葉樹の議論が冗長です。一方末尾は評論的な議論に発散しています。ここはねらいを明確にして津波被害防止に私有中すべきです。森林科学66号に書きのような参考となる記事が掲載されています。こうした記事から学ぶことが大切です。

Ⅲ−1

 近年、地球温暖化に起因すると思われる異常な降雨が各地で見られ、それによる大規模な崩壊などの山地災害が発生している。これらの災害の発生は従来多く発生した比較的小規模な表層崩壊とは異なるものがある。大規模な崩壊については、従来の防災対策と異なった対策も必要となってくることから、対策のリスクも考慮した被害の軽減が求められている。森林土木の技術者として以下の問いについて答えよ。

(1)大規模な崩壊について,近年の降雨の特徴を踏まえてその発生機構の概略を述べるとともに,森林の防災機能,災害の発生形態等の観点から多面的に課題を抽出せよ。

(2)抽出した課題に対する解決策として,機構調査,対策調査,構造物によるハード対策を説明せよ。

(3)異常な気象条件等による新たに生ずるリスクとその対策について,主としてソフト面から述べよ。

解答

(1)-1 発生機構の概略

 温暖化に伴う気候変動により、毎年長時間に渡る極端な集中豪雨が発生している。

 一方、我が国の山岳地帯の地形は急峻で、かつ、火山堆積物、風化花崗岩、断層、破砕帯等風化、浸食にぜい弱な地質が広範囲に分布している。

 近年発生している、長時間に渡る集中豪雨は、森林の根系が影響を及ぼす範囲の土壌を飽和させ、更に深部の地層において、間隙水圧を発生させることにより、深層からの崩壊を引き起こす。

(1)-2 課題

 大規模な崩壊と、流木災害の状況から、課題は以下のとおりとなる。

■対策にすぐ結論付けるのではなく、目的とかねらいを示してください。いきなり方策が3つ出てきても課題になりません。

①林地崩壊の防止

②山脚固定

③流木発生、流下の抑止、抑制

■正解は次のページにあります。こうしたページから学ぶことが合格の道です。

深層崩壊〜その実態と対応〜

増加する深層崩壊、特に危険な8%の地域を調査

木曽川上流域における深層崩壊の発生する恐れのある斜面の抽出検討事例

深層崩壊の発生予測手法と警戒対応の確立

(2) 解決策について

■①機構調査、②対策調査、③構造物ハード対策この3つを見出しとして書いてください。

①林地崩壊の防止

 森林内の根系の影響範囲を、可能な限り深部まで拡大するため、間伐を中心とする適切な森林整備により、根系の深部への伸長が必要である。

 また、針広混交林化により、深根性の広葉樹の導入を図ることも有効である。

 しかし、更に深部からの崩壊には、森林の持つ防災機能の限界を超えており、対応が不可能である。

 特に、0次谷等山腹の凹地形においては、雨水が集中しやすく、深層の間隙水圧が発生し、崩壊する可能性がある事から、ボーリング調査等によりすべり面を機構解析し、アンカー工、ロックボルト工、暗渠工、集水ボーリング工等の必要な対策を、予防的に行うことが必要である。

②山脚固定

 大規模な崩壊、地すべり性崩壊は、山腹の最下方から上部に伸びるすべり面に沿って崩壊するため、山腹最下方の山脚に治山ダム工を設置し、その上流部の堆砂により、崩壊に対する抵抗性を増加する。また、必要に応じて流路工、護岸工を設置し、渓岸侵食を防止すること。

③流木発生、流下の抑止、抑制

 山腹崩壊により、発生した流木の流下抑止、抑制と、流下中の洪水、土石流に渓岸の立木が巻き込まれ、新たな流木化を抑止する必要がある。

 流木の捕捉は、流下速度が遅い状況で効率がいいとされているので、可能な限り発生源に近い箇所で、スリットダムを設置することが有効である。

 また、渓岸の立木は事前に伐採しておき、流木化を防止すると共に、周囲の森林は、間伐を中心とする適切な森林整備により、渓岸侵食を防止する。

(3) 新たに生ずるリスクとその対策について

 近年の想定を超える集中豪雨により、治山事業の全体計画策定時点では予想されなかった、土砂量や流木量が発生する可能性がある。

 その場合、一部の流木は、下流の市街地に流出し、様々な被害を及ぼすことになる。

 また、スリットダムに堆積している石礫や流木の除去が進まないまま、次期の豪雨に見舞われる可能性もある。このため、ハード対策と並行し、ハザードマップの作成及び説明会の開催や、住民への情報提供、避難所の整備及び、避難所までのルートの整備等のソフト対策も必要である。

■残念ながら↑ここで言うハード対策とは避難ではありません。最初に前提として深層崩壊が宣言されていますので、その予測に関することでしょう

 一方、下流の河川管理者や、砂防部局と連携し、施設の管理状況等の意見交換を行うことや、平素から地元住民に対する啓発活動、情報提供を行うことが必要であるとともに、事前の防災情報の入手には、地元気象台との連携が不可欠である。

 このことから、災害対策、軽減には、各関係機関と地元住民との密なコミュニケーションを、平素から図っておくことが最大の対策である。

R1年 建設部門、鋼構造・コンクリートの答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 お若くして頑張っていらっしゃるようですが、書き方が昔の戦略となっています。今は技術者の思いとか訴えても、昔と問題が違いますので答えになりません。単刀直入に答えを考えて提案しないと、答えが答えでなくなって、大きく減点されます。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(24分13秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I−1我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており,今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で,その減少を上回る生産性の向上等により,我が国の成長力を高めるとともに,新たな需要を掘り起こし,経済成長を続けていくことが求められている。  こうした状況下で,社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて,以下の問いに答えよ。

(1)建設分野における生産性の向上に関して,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1・はじめに  課題を単刀直入に書くように

 我が国の人口は2065年までに8800万人まで減少すると見込まれている。建設業就業者はピーク時より27%減少した。さらに、2024年には改正労働基準法が建設業に適用され、1人あたりの労働時間に罰則付きの上限が設けられる。このように労働力が減少する中でも、国土を守り、国際成長を続けるため、社会資本整備を遂行しなければならない。このような状況を踏まえ、建設分野の生産性向上についての課題、解決策を以下に述べる

1.生産性向上に関する課題 

(1)現場作業の省力化 

 建設業は現地屋外生産であるため、生産性が気象条件などに左右される。建設業の生産性は製造業と比較し、半分である。生産性を向上させるため、現場作業を省力化することが課題である。

(2)工期の平準化 

 公共工事は単年度会計が基本である。そのため、閑散期と繁忙期が生じる。閑散期と繁忙期の工事出来形ベースの差は1.8倍にのぼる。限られた人材を効率的に活用し、生産性を向上させるため、工期の平準化が課題である。

(3)若手技術者への技術継承 

 建設業の人材教育体系はOJTが基本であった。しかし、人材不足で1人あたりの業務量が増え、OJTでの教育が限界となってきている。技術者の技術力向上による生産性向上を図るため、若手技術者への技術継承が課題である。

2.重要な課題と解決策 

 重要な課題として「現場作業の省力化」を挙げる。その理由は、現場作業の省力化は建設業全体の生産性向上に直結するからである。以下に解決策を述べる

2.は良く書けています

(1)2次製品の活用 

 2次製品の活用が解決策となる理由は、現場作業を工場作業に移行することができ、気象条件の影響を受ける現場作業を削減できるからである。例えば、現場打ちコンクリートをPCa化することで、現場での型枠設置、鉄筋組立、打設などの作業を省略できる。しかし、PCa部材などの2次製品はコストが高い。コストを下げ利用を促進させるためには同一寸法の部材を繰り返し使用する必要である。

(2)ICT施工の実施 

 ICT施工の実施が解決策となる理由は、ICT建機で施工することで測量作業を省力化できるからである。例えば、3次元データを活用してICT土工を実施することで、丁張作業を省略できる。しかし、中小企業ではICT施工を行える技術者がいない。そこで、現場支援型モデル事業を活用し中小企業のICT施工技術者を育成する。

(3)CIMの導入 

 CIMの導入が解決策となる理由は、設計段階で3次元モデルを作成することで、平面図と断面図との不整合、構造物の干渉による施工の手戻りを防止できるからである。例えば、配筋図を3次元モデル化することで、施工前に配筋の干渉を防止でき、干渉による鉄筋の組み直し作業を削減できる。

3.解決策のリスクと対策 

(1)共通のリスク 

いずれの解決策もコスト増と担い手の不足がリスクである。

 やる前からわかっていることはリスクではありません

(2)対策 

2次製品の活用:単一部材を活用しやすくするため、標準設計を導入する。地域企業、教育機関などでコンソーシアムを構築し、人材を育成する。

ICT施工の実施:ものづくり補助金制度を活用しICT建機を購入する。ICTアドバイザー制度を活用しICT技術者を育成する。

補助金、アドバイザーでは安直です。

CIMの導入:CIMを活用した工事検査などを導入し、これまで検査などに費やしていた労務を削減する。受発注者によるフレームワークを実施し、CIMができる技術者を育成する。

何をするのか、これだけでは意味不明です。CIMに関する具体的な指導を示してください。

4.業務遂行のための技術者倫理 

 解決策を遂行する際は地球環境などへの影響を評価しなければならない。技術者として、技術を駆使し公衆の利益を優先し、社会貢献する所存である。

4は心構えでは答えになりません。2、3で提案した内容に対して何をすれば、技術者倫理や社会の持続可能性に貢献できるかお考え下さい。

Ⅱ-1-4    

作成中

解答

1.暑中コンクリートの施工で留意する事項 

(1) 材料・配合 

・総水和熱の上昇を抑えるため、単位セメント量に留意する。

・早期凝結を防ぐため、使用する混和剤に留意する。

・スランプロスを防ぐため、流動性に留意する。

(2) 打込み及び養生 

・コールドジョイントを防ぐため、打ち重ね許容時間に留意する。 

・材料分離を防ぐため、配管計画留意する

・プラスチック乾燥ひび割れを防ぐため、初期養生に留意する

2.留意すべき理由と対策 

(1) 材料・配合 

・総水和熱が上昇すると温度応力ひび割れが発生する。これを防ぐため、セメントをフライアッシュに置き換える。

・早期凝結によるコールドジョイント防ぐため、遅延型の混和剤を使用する。

(2) 打込み及び養生 

・打ち重ね許容時間を厳守するため、アジテーター車を増台する。サイクルを早める。

・材料分離による豆板を防ぐため、配管を短くする。

・プラスチック乾燥ひび割れによる耐久性低下を防ぐため、湿潤養生を行う。

問題

作成中

解答

 Ⅲ−2

解答

R1年 機械部門、熱・動力エネルギー機器の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 現在の技術士試験は応用力の傾向が強いので、毎年問題は予想不可能な形で変化します。その出題傾向が予測できずに、いきなり現れた新規の問題に付いていけなかったように感じます。Ⅰ-1のSDGsもそうですし、Ⅱ-2-1では副生ガスのご経験に基づく本質的議論がないと得点できません。一方、Ⅱ-1-4は大変良くかけていました。見識は十分です。それだけに惜しいです。見識問題ではあまりエネルギーを費やさないようにしましょう。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(30分34秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I−2 持続可能な社会実現に近年多くの関心が寄せられている。例えば, 2015年に開催された国連サミットにおいては, 2030年までの国際目標SDGS(持続可能な開発目標)が提唱されている。このような社会の状況を考慮して,以下の問いに答えよ。

(1)持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けて,あなたの専門分野だけでなく機械技術全体を総括する立場で,多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

解答

(1)持続可能な社会の実現に向けたものづくりの課題

(1)-1 労働力不足

このような身近な視点ではなく、世界的な視点で答えるべきかと思います。

 少子高齢化か進み労働者人口減少は深刻であり,即時対策を講じる必要がある。リタイヤした労働者の再雇用や女性の更なる活躍が期待される。

(1)-2 IT技術の活用による高度化・効率化

IT化ありきの議論になっていませんか?

 IoTやビックデータ,人工知能などの最新のIT技術をものづくりの分野に積極的に取り込んでいく必要がある。その為には,各分野間の技術交流が積極的に行われることが効果的である。

(1)-3環境保全・地域環境への配慮

着目点は◎ですが、原則論のみで特に提案にふさわしい答えがありません。

 従来の技術では環境負荷は低く,安全とされている物質や手法でも,将来に渡って安全であるとは断言できない。常に最新の知識得られる体制を確保する。

 (1)-4労働者の安全とライフワークバランス

 労働者の衛生環境をしっかりと整備しなくては,労働者離れにより,生産現場を維持する事は出来ない。そこで業務の標準化や機械による自動化が期待される。

これは社会ではなく企業経営(会社の中の話)の問題に過ぎません。

(2) IT技術の活用による高度化に対する解決策

(2)-1 オープンイノベーションの積極的な活用

 モノづくりの現場においてIT技術の活用に対して最も高い障壁となるのは,知識や技術の不足である

これをすればすべて解決みたいな楽観的な議論に感じます。オープンイノベーションとは本来の使い方はこのような目的ではないでしょう。

これを解決する手法としてオープンイノベーションが挙げられる。これにより,社内リソースを掛けず,多岐に渡る最新の技術を用いる事が可能とな。

(2)-2 技術管理のアウトソーシング

マネジメントの問題であって機械技術の提案ではありません。したがってこれでは点の取れる提案になりません。

IT技術は,その進歩は目覚ましく,従前のものづくり現場におけるスピード感とは全く異なる。一方,    ウィルス対策にも代表されるように,当該技術は常に最新の状態に更新されている必要がある。この様な状況から,アウトソーシングの活用が有効である。

(2)-3 ビックデータの利用

 IT技術の導入により,大量のデータを取り扱う事になり,この管理と活用はものづくりの発展・持続のカギとなる。ここで,ビックデータ解析を活用する。これにより現場での判断は効率化し,生産性が向上する

このようなことが有効なことは今の時代は常識ではないでしょうか。むしろどう使うかというテクニックが必要だと思います。マーケットの動きを引用しただけで、そこに機械技術があるのでしょう。

(3) 新たに生じるリスク

(3)-1 組織内における抵抗

昔のラッダイト運動みたいなものですか。しかし機械技術で解く問題ではなく、釈迦問題かと考えます

 ものづくりの世界,特に機械を中心とした産業界において,IT技術に対する抵抗感が強い場合が多い。特にオープンイノベーションにより導入された技術には更なる強いNIHが働く事が予想できる。

間違いではありませんが、機械技術の提案ではないのでどうにも評価できません。

 これに対し,有効な解決策となるのは,相互の技術に対する理解を深める活動である。更に,最終的に判断するのは人”であり,人とITのコミュニケーションの重要性を理解する事が,解決の助けとなる。 

(3)-2 情報漏洩と技術流出

(2)項に述べた手法には,社外とのインターフェイスが多く発生する。これにより,ハッキング等による情報漏洩や技術の流出が発生した場合,その被害は多大である。これに対し解決策の一つとして挙げられるのは契約による保護である,例えイノベーションパートナーが大学等の機関であっても互いの利益を守る契約を取り交わす必要がある。また,ITと人による二重の監視体制にすることも効果がある。

(3)-3 ITの暴走による被害

システムのエラーのみならず恣意的な操作によって装置が暴走し,物的・人的被害が生じる恐れがある。これに対しても,ITと人の二重監視が必要である。

(4) 業務遂行における必要案件

これの何処が技術者倫理といえますか。?

(4)-1 人命および環境保全に対する危機意

「モノは壊れるもの,人はミスをするもの」との認識を常に持っている必要がある。これにより「このポンプが壊れたらどの様な環境影響があるか」「このタンクが破裂しても作業員はケガをしないか」に考えが及ぶ。生産性を考慮しつつ,この様な配慮を行う事が,統括する立場には必要である。

配慮することは正しいですが、それだけでは技術者とは言えません。危険があるなら、技術者なら放置できないはずなので、対処法まで示すべきかと思います。

(4)-2 広い視野で,周りを見渡し

 モノづくりの現場において,一度重大な不適合や災害が発生すれば,影響の及ぶ範囲は多岐に渡る。例えば,潤滑油の河川流出が起これば,自治体・警察・消防への届け出が必要となる。また停電時に自家発電設備に余剰があれば,電力会社に逆潮流を申し出られる。こうした,有事の際であれ,落ち着いて周囲を見渡せる素養は必要な要件である。 

つまり何を言いたいのですか。これだけではよくわかりません。社会の持続性の視点から、「業務を行う上で」必要な要件を述べるようにお願いします。

Ⅱ-1-4    

 作動流体を理想気体としたブレイトンサイクルにおいて,タービン及びコンプレッサで等エントロピー変化と仮定した場合のサイクル熱効率を,圧力比と比熱比を用いて示せ。また,再熱ブレイトンサイクルの各過程を説明せよ。

解答

1.ブレイトンサイクルのP-V,T-sサイクル

 ブレイトンサイクルの理論サイクル図を図1に示す。

ブレイトンサイクルは一般的にガスタービンに用いられるサイクルで,次の4つの工程から構成される。

1→2:断熱圧縮(定エントロピー)

2→3:等圧加熱→ボイラ 圧縮機

3→4:断熱膨張(定エントロピー)

4→1:等圧冷却→復水器 タービン

2. サイクル熱効率

ブレイトンサイクルの理論効率ηは次式で示される。

 η=1/φ(κ―1)/κ

ここで φ;圧力比,κ;定圧比熱

3.再熱ブレイトンサイクル

 サイクル図を図2に示す。ブレイトンサイクルに対し,3→3’が再熱工程となる。タービン部を多段とし再加熱することでサイクル効率の向上を図る。

また,排ガス熱を利用し吸気を加熱する再生サイクルにより更にサイクル効率の改善が可能である。

Ⅱ-2-1

  石油化学工場で,石油精製工程から得られた副生ガス(主成分:水素,副成分:一酸化炭素)を利用した発電設備導入を計画している。技術責任者として,本工場で使用する発電システム選定も含めた設備導入の計画業務を進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。

(1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)導入する発電システムを1つ選定し,業務を進める手順について,留意すべき点,エネルギーの有効利用の観点から工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

(1)            調査・検討すべき事項

(1)-1 副生ガスの発生量と変動

間違いではありませんが、初期段階での検討項目に過ぎません。前提事項かもしれません。

 副生ガスの利用となる為,発生量および変動量は生産設備の稼働状況に依存する事となる。これを把握し,導入する発電システムに与える影響,即ち,発電装置の運用性と発電電力量を検討する必要がある。

(1)-2 副生ガスの取り扱いに対する安全性

これは水素に対する常識的な対処方法にすぎません。既知のこと、わかりやすいことではないでしょうか。

素は非常に燃焼速度が早く(メタンの6.6倍), 

一酸化炭素は極めて毒性が高い(数ppmで致死量)。 

その為,副生ガスの移送および利用設備で,十分な安全性が担保されるよう,検討が必要である。

(1)-3 設備導入から保守に対する経済性

これは前提事項でしょう。副生ガス発電に関する本質的な検討事項はありませんか?

生ガスの発生量に合わせた発電設備を導入した場合,買電に対する経済合理性を検討する必要があり, 

導入から設備廃棄までのLCCを考慮すべきである。場合によっては,燃料の外部調達先の確保も検討する。

(1)            導入するシステムと業務手順

(2)-1 導入システムについて

なぜSOFCなのか。どういう場合にGTFCとなるのか?2つとも挙げたらどちらが答えかわかりません。

 副生ガスの成分(H2,CO)および目的(発電)より,固体酸化物方燃料電池(SOFC)の導入を検討する。

当該石油化学工場における電力デマンドによっては,GTFCの導入も検討の範囲とする。

(2)-2 業務手順について

設備規模および性能の決定

(1)-1項で検討したSOFCの燃料となる副生ガスの消費に

より発電出力を決定する。

コンバインド発電の提案は◎です。ただし何をどうするのですか?触れただけでは説明不足です。

手順はこの2つしか無いのでしょうか。しかも1つ目は前提。

その際SOFCの反応温度は600-1,000℃と非常に高く,ボトミングとして蒸気タービン発電が行える事を考慮する。これによりエネルギーが有効に使われ,発電効率も70%程度となる。

運用方法の確認 

 発電設備は系統事故等による停電時こそ効果を発揮する。そこで,上流設備のBCP方針に合わせた設備運転計画の検討や,BOS設備の導入を考える必要がある。

一般的な注意点に過ぎません

(3)関係者との調整方策

(3)-1 社内における調整

設問の前提や提案内容と関係のない事項です。一貫性があるとは言えません。

 当該発電設備の発電量は工場の生産量に依るものであり,更に保守や故障も想定する必要がある。従って,常に系統電力や,その他発電設備によるバックアップを用意し,主生産設備に対する影響を最小限としなくてはならない。また,運転員や,保守費,買電価格の変化などに常に注視し,当該設備の経済的運用メリットを更新しなくてはならない。

(3)-2 社外における調整

これも同じです。いつでも、どこでも、どんな物件でも言える便利な解答です。そのような一般事項は答えじゃないと考えるべきでしょう。

 発電設備は,運転・保守に対し非常に専門的な知識と経験を必要とする。場合に応じて,サプライヤへの委託も効率的となる。突発的な不適合対応を含めた包括契約を結ぶなどすると,コストダウン効果だけでなく,発生費用の平準化が図れる。但しその際は情報漏洩に対する覚え書きを交わす事が求められる

 Ⅲ−2

 将来の脱炭素社会を見据えたエネルギーシステムには大きな改革が求められており,現在政府では,あらゆる選択肢の可能性を追求する野心的な複線シナリオとした取組を進めている。資源の少ない日本にとっては,今後も技術力で世界をリードし,エネルギー選択の多様性を確保することが,この問題に関するリスクを最小化し,工業先進国として生き残る道であると考えられる。このことから,革新的なエネルギーシステムや要素技術が,今後一層求められているといえる。これらを踏まえて,以下の問いに答えよ。 

(1)動力エネルギー技術分野(内燃機関,水車,ボイラ,発電機,蒸気タービン,ガスタービン,風力発電,太陽光発電,燃料電池,及びこれらの複合システム)の中で,あなたが今後重要と考えるシステムを1つ挙げ, 2020年から10年ごとの到達目標を設定した2040年までのロードマップを示せ。また,各到達目標を達成するための技術課題を提示してその内容を述べよ。 

(2)(1)のロードマップを実現する上で,あなたが重要と考える技術課題を1つ挙げ,それを解決する方策を提案せよ。 

(3)あなたの技術的提案がもたらす効果を示すとともに,提案の実施において発生する可能性のあるリスクと課題について述べよ。

ロードマップとは、下の図のように政府や企業が将来どのような技術的取り組みをしていくかという計画を時系列でまとめた図、あるいは表のことです。

解答

(1) 2030年度目標の実現に向け重要な技術分野と課題

 最も重要な技術分野として,「水素の有効利用」を 挙げる。水素は,エネルギーとしての利用過程でCO2を発生せず,従来の化石燃料の代替えとなれば,温室効果ガス削減の助けとなる。

ロードマップが文章で書かれており時系列での工程が読み取れません。

(1)-1 インフラ整備

 水素利用の普及に対し最も高い障壁となるのは,インフラ整備である。特に輸送に対する課題解決が大きなカギとなる。水素の液果は非常に大きな電力を必要とし比重も小さい事から輸送効率化が極めて悪い。

 パイプラインの利用が効果的ではあるが,国内で水素が移送できるパイプラインは,一部のコンビナートに限られる。

(1)-2 安定利用

 水素は燃焼速度が時報に早く,メタンの6.6倍にも及ぶ。そのため,従来のガスタービンやガスエンジンでは安定的に燃焼させるのが困難である。更に穂遠距離が短い,局所燃焼してしまう等も水素の扱い難さの要因である。

(1)-3 生産量の確保

 現在,水素を利用する際,その入手経路は以下であり,その課題を併せて示す。

①    水の電気分解;大量の電力を消費する。再生可能エネルギー由来の電力を用いた場阿合,水素の生産コストは非常に高くなる。

②    コークスや苛性ソーダ等の生産に際する副産物

;水素生産量が,主生産物の生産量に依存してしまう。またコークス生産では水素は既に熱源として組み込まれている。

③    バイオマスの改質;原料となるバイオマスの確保

(2) インフラ整備に対する解決策

 エネルギー自給率向上の観点から,国内での生産・移送に焦点を当て検討する。

メタンを利用した化学技術です。用途としては合っていますが、しかしこれで機械技術と言えるでしょうか。機械部門で受験することを考えると、やや領域外のように感じます。2も同じです。

(2)-1 メタネーション 

 (1)-2 項でも述べたように,エネルギーの移送には,既存パイプラインの利用がコスおよび安全の観点から最とも合理的である。そこで水素をメタンに変化させ既存のパイプライン設備を用いる手法が考えられる。  反応式は 3H2+CO2→CH4+2H2O で示される。

これを一般的にメタネーションと称し,CO2をエネルギー利用する副次的なメリットも得られる。

(2)-2 水素キャリアとしてのアンモニア

 分子に水素を含み,比較的容易に扱える物質としてアンモニアの利用も有効である。アンモニアは液化に必要なエネルギーが少なくて済む。

想定される発電設備では,脱硝装置の反応剤としてアンモニアを用いており取り扱いになれている。

(2)-3 発生地でのエネルギー変換 

水素やめて電気にしたら、そもそも熱・動力エネルギーでもなくなって、電気ではありませんか。電気電子部門の提案ならともかく機械部門としては領域外に感じます。

 エネルギーは変換を行なう毎に熱損失や機会損失により,利用可能熱量は目減りしていく。

 従って,発生場所に置いて最終利用形態に変換させるのが最とも効果的となる。一方,エネルギー形態としては,やはり電力が最も汎用性が高い。

から,水素の生成場所に効率の良い電力変換設備を配し,系統を介してエネルギー供給する手法が合理的である。電力変換設備としては,2030年度を念頭に置くとSOFCが現実的である。

(3) 新たに生じうるリスクと対策

(3)-1 水素の十分な確保

(3)は(2)の解決策に依頼するリスクとその対応です。しかしそのエネルギー源、水素をを対象とすると、解決法のいかんによらず水素をエネルギー源とする限りいつでも当てはまることです。しかもそれは石油と同じであるというであれば、まったく旧来のリスクと同じで、新たにリスクを議論する意義が薄いです。

 水素利用の普及に重要となるのはコストダウンである。産業界で広く用いられる為には既存のエネルギーより,有利な入手性が求められる。水素の主たる入手先を現在の化石燃料同様に輸入に依存した場合,地政学的リスクは避けられない。 

 対策としては,水素の国内生産が必須となる為には,水の電気分解を普及させる必要がある。従って,水力・風力・太陽光等の再生可能エネルギー由来の電力設備を補強し,これにより得られた電力の夜間利用などにより,合理的な水素生産を可能とする。

(3)-2 水素に対する利用書の理解 

 水素は未だに「取り扱いが難しく,危険なもの」と認識している人も多い。これにより産業界への普及が滞る事が考えられる。これに対しては,エネファームや燃料電池自動車など既に確立された技術製品の更なる展開・普及が効果的である。

ここもほとんど留意点みたいな内容になっており、リスクを求めている出題意図に答えているとは考えにくいです。また内容としては技術士としての提案内容はありません。これでは得点しにくいと思われます。

R1年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 相当勉強されていて見識は十分ですが、独自に答案練習を続けてこられたせいか、解答法についての戦略が欠けているように見受けられます。Ⅰ-1は分析力は素晴らしいです。しかし最後の問いでは論点がややそれていたようです。今回Ⅰ-1では問3、4で応用的な問題が出題されました。このような難問に対して落ち着いて答える必要があります。また、Ⅱ-2は残念ながら出題者のねらいが見えていなかったようです。その結果プロのエンジニアの答えになっていません。問いが求めている議論の中心に答えないと点が取れません。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 これからは、毎年応用力問題の傾向が続きますので、変化球のように、考えたことのない未知の問題を解かされます。ですから普段から練習しないと解けません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分24秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1

  上下水道は、市民生活にとって重要なライフラインであり、災害や事故発生時においても事業を一定のレベルで継続させ、早期に業務レベルを復旧することが必要不可欠である。このため、頻発するさまざまな災害や事故にもいても実効性のある上下水道共通の計画立案と災害リスクの低減が求められている。

 上記のような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で多面的な観点から上下水道に共通する課題を抽出し、分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる上下水道事業に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

(1)技術者としての立場で多面的な観点から上下水道に共通する課題を抽出し、分析せよ。

問題文をそのまますべて書き写す必要はありません。

 上下水道事業が抱える問題を踏まえて課題を抽出する。上下水道事業が抱える問題は以下の通りである。

  ①人口減少による料金収入の減少

  ②給水量減少に伴う施設の効率性低下

  ③都市部の人口集中に伴う水源の汚染

  ④渇水や豪雨などによる利水の安定性低下

  ⑤高度経済成長期に布設された管路や施設の老朽化  

1がやや冗長です。ここまで書かなくてもOKです。エネルギーを温存された方がよいでしょう。

  ⑥料金収入減少など外部環境の変化により施設更新のための資金の確保が困難

  ⑦団塊世代職員の大量退職による職員数の減少および高齢化

 以上の問題を踏まえると水道事業の課題は以下の通りである。

  ①アセットマネジメントの実践

 中長期的な財政収支見通しを元に、管路や施設の更新を計画的に実施する。必要に応じて水道料金の見直しを実施する。

  ②省エネによる経営効率の向上

 省エネによるライフサイクルコスト削減により経営効率を向上させる。

全体を合格答案としてまとめる戦略が足りないように感じます。

  ③人口減少を踏まえた水道施設の再構築

 ダウンサイジングも含めた利用人口に見合った施設規模とすることで維持管理費の縮減を図る。

  ④水源の保全

 水源涵養機能を高める事で洪水や水源水質事故などのリスクを低減する。

  ⑤高度処理

 生物膜処理などの高度処理を実施することで給水水質や放流水質を向上させる。

  ⑥危機管理対策

 事故や災害に対する対応力を強化する。

  ⑦広域化・官民連携

 水道事業の運営基盤を強化する。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる上下水道事業に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

 災害や事故のリスク低減を図るうえでは、水源の保全を行う事で水循環の健全性を確保することが最も重要と考える。

 解決策としては以下の通りである。

 1)集水、排水区域内の保全対策

 関係する環境行政機関、上下流地域住民、ボランティア団体等と協働で水源保全を行う。

  ①関係機関と情報交換と共有を図り、密接な連携の元、集水、排水区域の自然環境の保全を行う。下水道事業者は、排水規制の遵守を徹底する。

②集水、排水区域の森林の水源涵養機能を高めるため、森林の整備を行う。また、乱開発による水質の汚染防止を図る目的で山林や原野を自ら取得する。

  ③上下流地域の交流等により水源地や水源林の大切さを認識する事業等を積極的に行う。

  ④水道原水の水質保全を目的とした水源二法の活用を図る。

 2)貯水池における保全対策

  ①湛水区域の樹木を伐採する。

  ②貯水循環により水温成層を破壊し、貯留水の水質改善を図る。

  ③底泥浚渫によりリン等の栄養塩類を除去する。

  ④流入水バイパス

 問題となる流入水を貯水池の下流へ放流する。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

 貯水循環を例に挙げると、水温成層の破壊により水温が下降し、下流域の稲作や漁業へ影響を与える可能性がある。そのため、対策としては躍層を破壊せず底層部に酸素を供給し底層部の水質を改善する深層曝気循環法などを活用する。

「貯水循環」に勝手に絞り込んでは△です。汎用的な答えが求められています。

 このようなリスクに対応するため、下流域の関係者とも情報交換や共有を図る事が重要である。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 業務遂行において、応急的な処置ではなく恒久的な対策を主眼に置くことで将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

このような個人的な思いでは△。答えになっていません。問4では、業務遂行、すなわち答案の(2)(3)に書かれた内容について、考えることであって、心構えを書くところではありません。

Ⅱ-1-2     

 凝集沈殿地(横流式)の処理の仕組みと運転における複数の留意点を述べよ。

解答

1.処理の仕組み

凝集沈殿処理は混和工程、フロック形成工程、沈殿工程で構成されるため、それぞれの工程について述べる。

 1)混和工程:原水中に含まれるコロイド状の濁質は負に帯電しているため、水中では互いに反発して浮遊した状態で存在している。そのため正の電荷を持つ鉄やアルミニウムなどの金属水酸化物を注入して急速攪拌して均一に分散させることで電気的反発力を打ち消し、微小なフロックを形成する。

 2)フロック形成工程:緩速攪拌してファンデルワールス力や凝集剤の架橋作用によってフロックを大きく成長させる。

 3)沈殿工程:懸濁物質やフロックの大部分を重力沈降作用によって沈殿除去し、後段のろ過池にかかる負荷を軽減する。

 水面積負荷は沈降速度よりも小さくする必要がある。沈降面積を大きくするほど処理量を増やすことができ、2段式や傾斜板を使用した沈殿池が該当する。

2.運転における留意点

 ①原水の水温によって凝集性が変わるため、季節変動による水温やフロックの形成状態、沈降状態を監視する必要がある。

監視してどうするのか?どうすべきかが具体的に書かれていません。

 ②沈殿池に直射日光が当たる場合、水温の変化による密度流の影響に留意する必要がある。

密度流がどうだと、何をどうするのか?

Ⅱ-2-2

 河川表流水を原水とする急速ろ過方式の浄水場においてスラッジの脱水効率の低下が問題となっており、改善が求められている。

 あなたが、この改善業務の担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について説明せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

解答

1. 調査、検討すべき事項とその内容

 原因究明を行うため、水源と施設に分けて調査・検討を行う。

 残念ながら問題点が見えていないようです。この種の問題では過去の経験から問題の原因が予見できないと、てきぱきとした対処ができません。その結果、結局あれもこれもとりあえず全部調べて後から考える…今は原因については何もわからない・・・・・という対応になりこれではプロのエンジニアの答えになりません。

 1)水源

  ①流域調査

 河川へ流入する下水など、河川の水質を形成する流域の環境や流量などを調査する。

 また、降雨などによる高濁水や水源水質事故の影響の有無についても調査する。

  ②水質調査

 項目としては、水温、濁度、pH値などを測定する。

 2)施設

 原因となる設備ごとに分けて調査・検討を行う。

  ①混和池

   ・攪拌状況

   ・フロック形成状況

   ・薬注量

  ②フロック形成池

   ・攪拌状況

   ・フロック形成状況

   ・薬注量

  ③沈殿池

   ・処理水量

   ・フロックの沈降状況

   ・キャリーオーバーの有無

   ・ジャーテストによる最適pHや薬注量の確認

  ・既存の凝集剤では凝集性が悪い場合は、他の凝集剤を検討する。

  ④調整工程

   ・スラッジ濃度

   ・返送水の水質、水量

  ⑤汚泥濃縮工程

   ・スラッジ濃度

   ・汚泥濃縮機の運転状態

   ⑥脱水工程

   ・ケーキの含水率

    ・脱水機の運転状態

残念ながら原因が分からないため、解決策が決まらず、それに伴う手順や留意点も意味のある内容になっていません。一般論にすぎず、答案の答えではありません。

2.業務を進める手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

 ①調査、検討する項目は多岐にわたるため、全てを一から調査するのではなく、日常管理における運転データーシートなどを利用する。

 ②問題が起きている脱水工程から調査・検討を開始し、対象を順次前段装置へ移していくと効率的に業務を実施できる。

 ③水安全計画などを事前に作成しておき、リスクとなるポイントを事前に

抽出しておくことで作業を円滑に実施できる。

3.業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

①流域の関係者と平常時からリスクコミュニケーションを図ることで、流域に関する情報を事前に把握するができる。

②運転管理マニュアルを作成し、定期的な訓練やマニュアルの見直しおよび改定を行う事で円滑な維持管理を図る。

Ⅲー1

  我が国の水道普及率は約98%となり、ほとんどの国民が水道を利用できるようになっている。一方で近年の水道を取り巻く環境は大きく変化し、特に水道水に対する安全性・快適性への関心がますますたかまっていることから、今後はさらにレベルの高い水質管理を実践することが求められている。

 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)安全・快適な水道水を供給するために、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、分析せよ。
(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要な技術的課題と考えるものを1つ挙げ、解決するための技術的提案を複数示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

(1)安全・快適な水道水を供給するために、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、分析せよ

↑見出しは冗長なので1行にするように

 水道事業が抱える問題を踏まえて課題を抽出する。水道事業が抱える問題は以下の通りである。

  ①人口減少による料金収入の減少

  ②給水量減少に伴う施設の効率性低下

  ③都市部の人口集中に伴う水源の汚染

  ④渇水や豪雨などによる利水の安定性低下

  ⑤高度経済成長期に布設された管路や施設の老朽化

1は書きすぎです

  ⑥料金収入減少など外部環境の変化により施設更新のための資金の確保が困難

  ⑦団塊世代職員の大量退職による職員数の減少および高齢化

 以上の問題を踏まえると安全・快適な水道水を供給するための水道事業の課題は以下の通りである。

  ①アセットマネジメントの実践

 中長期的な財政収支見通しを元に、管路や施設の更新を計画的に実施する。必要に応じて水道料金の見直しを実施する。

  ②省エネによる経営効率の向上

 省エネによるライフサイクルコスト削減により経営効率を向上させる。

  ③人口減少を踏まえた水道施設の再構築

 ダウンサイジングも含めた利用人口に見合った施設規模とすることで維持管理費の縮減を図る。

  ④水源の保全

 水源涵養機能を高める事で洪水や水源水質事故などのリスクを低減する。

  ⑤高度処理

 活性炭処理やオゾン処理などの高度処理を実施することで給水水質を向上させる。

  ⑥危機管理対策

 事故や災害に対する対応力を強化する。

  ⑦広域化・官民連携

 水道事業の運営基盤を強化する。

(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要な技術的課題と考えるものを1つ挙げ、解決するための技術的提案を複数示せ。

 安全・快適な水道水を供給するためには、水道事業の広域化を行い、運営基盤を強化する事が最も重要と考える。

 解決策としては以下の通りである。

 1)水質管理の一元化と技術レベルアップ

 水質試験センターを共同設置し、水質試験・検査業務を共同で行い、水質管理の一元化を図る。

 設備を1箇所に集約した事により維持管理費の縮減および管理の一元化によるスケールメリットを得る事が期待できる。

 また、熟練した水質技術者をリーダーとして技術研修を行い、レベルアップと技術継承を図る。

 2)施設の運転監視業務の集中化

 最も規模の大きい事業体の浄水場に隣接して新たな中央監視所を構築する。それ以外の浄水場や配水場には遠方監視施設や監視制御施設を設置して運転監視の集中化を図る。

 設備を1箇所に集約した事により維持管理費の縮減および管理の一元化によるスケールメリットを得る事が期待できる。また、維持管理に必要な人員も削減できる。

 3)緊急時連絡管の整備

 近隣の水道事業者等と連絡管を整備し、漏水事故や大規模な水源水質事故等の非常時に水を融通する事でバックアップ機能の強化、給水の安定性を図る。

 4)資機材の共同備蓄

 緊急時の応急復旧用や応急給水用の資機材等を近隣の水道事業者などと共同備蓄する事により、備蓄し機材の充実および経費削減を図る。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ

↓これがどうしてリスクてなのですか?リスクとは発生頻度が小さく、壊滅的経済被害を伴うものです。

 解決策に共通して建設費や機器購入費等がかかる。そのため、人口減少による施設のダウンサイジング等を検討し、維持管理費用の縮減や停止させる設備内の機器の転用等で支出を抑える必要がある。また、関連事業者との密接な連携および情報の共有化が必要なため、定期的な合同訓練や情報のデータベース化を実施する必要がある。

R1年 電気電子部門、情報通信の答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 見識や表現力文章はOKですが、論点がややそれているようです。問いが求めている議論の中心に答えないと点が取れません。答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたします。

 応用力問題では変化球のように、いきなり未知の問題を解かされます。ですから普段から練習しないと解けません。音声ガイドに基づいて練習していけば予想問題に対する対策法がわかるようになり、必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分43秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題

Ⅰ-2

 我が国の人口は、2008年をピークに減少に転じており、2050年には1億人を下回るとも言われる人口減少時代を迎えている。人口が減少する中で、電気電子技術は社会に置いて重要な役割をはたすものと期待され、その能力を最大限に引き出すことのできる社会・経済システムを構築していくことが求められる。

(1)人口減少における課題を、技術者として、多面的な課題から抽出し分析せよ。解答は抽出、分析したときの観点を明記した上で、それぞれの課題について説明すること。

(2)(1)で抽出したか課題の中から、電気電子技術に関して最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)その上で、解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれえの対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)(1)から(3)までの業務遂行において、必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.人口減少時代における課題

(1)社会の観点

 ここは観点ではなく課題を書くところです。観点は多面的な考察を誘導するための要求であって主題ではありませんし、ここでは求められていません。一方、書かねばならない課題が書かれていません。

最新のデータでは日本の人口は1億2千4百億人。生産労働人口がその59%、65歳以上は28%にも及ぶ。少子化と共に65歳以上の人口比は更に大きくなっていく。高齢者が地域とのコミュニケーションを図る場が一層必要となってくる。

(2)企業の観点

企業にとっては熟練者の退職が続きそのノウハウが企業から離れてしまう。先進国の中でも日本の生産性は低くこのままでは生産性の向上は望めない。人口減の中でも企業の生産性を向上させていく必要がある。

これは問題文にも書かれており前提に近いことですので答えに相当しません。

(3)労働者の観点

企業はその生産活動のために新しい技術を導入したり機械による自動化を図っている。人が減り労働者としてはその作業範囲を広めるためにも技術を吸収し自身のスキルアップを図って行く必要がある。

2.重要と考える課題とその解決策

 最も重要と考える課題は企業の観点で述べた「生産性の向上」である。というのも生産性を上げることが社会経済を維持発展させることにつながるからである。以下に解決策を示す

前置きは冗長なので不要。こうした書き方は消極的な姿勢を記すことになりますので単刀直入に書くことをおすすめします。

(1)AI、RPAの活用

ディープラーニング技術、ビッグデータ収集、計算機の高性能化によって精度の高いAI処理が可能になっている。今までは人手で実行していた作業の非定型部分までがAIやRPAによって可能となっている。(2)テレワークの活用

女性や高齢者など働く意欲がありながら生産に携われない人のために在宅勤務やモバイル勤務、サテライト勤務を提供する。またそのためのコミニュケーションツールやDaaSを活用してセキュアな環境とする。

(3)IoTの活用によるイノベーションの創生

フィジカル空間とバーチャル空間をつなぎ、今まで処理できていなかった非定型なデータを収集、分析、予測を行う。これによって予防保全を行い生産性の劣化を防ぎ、新たなビジネスの創出を行っていくことが可能となる。

3.解決策に共通するリスクとその対策

前置きの議論は不要です。単刀直入にリスクを言う。

リスクとはなにか。破壊的状況がわかりません。

 上記の解決策に共通するのはネットワークを介してデータの流通を行っていることである。例えばその遅延を最小化しながらAIを遠隔で操作する。高速大容量の映像データを臨場感を持って家庭と企業とで共有しながらテレワークを進める。膨大な数の非定型なIoTデータをネットワークを介して収集する。こういった多種多様なネットワークサービスを個別に準備することで一時的な生産性の向上にはつながる。しかし、個別のコストが発生したり保守運用が個別になることで恒久的な生産性の向上にはつながってこない。これがリスクとなる。対策はネットワークのプラットホーム化である。図1にはネットワークプラットホームを示す。足回りにはHetNetを利用して多種多様なサービスのデータを一元的に受け付ける。そのサービス機能の切り出しははコアネットワークのネットワークスライシング機能によって行う。仮想化したサーバやそのうえで動作するNFVによって実現する。

図1で提案している内容が何か良くわかりません。また、この提案がなぜ対策となるのか。提案の狙いがはっきりと書かれていません。

4.業務遂行に必要な要件

(1)技術者としての倫理から必要な要件

 データ流通には個人情報も流れるためデータ流出、改ざんやなりすましの可能性がある。個人情報保護のためのセキュアプロトコルの採用や匿名加工技術の採用も要件に含めていくことが必要となる。情報銀行の活用も検討する。

 ここは答えがやや違っています。(1)から(3)までの業務遂行において、必要な要件です。技術者としての倫理ではなく、業務を正しく行う上での倫理的判断はどうあるべきかを問いかけています。

(2)社会の持続可能性から必要な要件

 ネットワークプラットフォームの可用性を高めることが社会の持続可能性を高めていく。人口減となっても生産性を高め社会の発展を継続させるためである冗長化や障害に強い強靭なネットワークの構成とすることが必要となる。 

そのために何をすることが要件なのか。 

Ⅱ-1-3     

 OFDM変調信号の生成方法について説明せよ。さらに、OFDM変調信号の持つ利点と欠点をそれぞれ説明し、どのような通信システムへの適用がふさわしいか述べよ。

解答

生成方法を単刀直入に書くことをお勧めいたします。図の説明は必ずしも役に立っていません。

1.OFDM変調信号の生成

図1にOFDM変調で利用するサブキャリアの信号を示す。数学的に直交する各サブキャリアによって独立した信号が変調される。これら直交するサブキャリアで変調されるために信号相互間での干渉が発生しない。

図1はあまり深い内容もなく、概略的に説明の補助(イメージを示す)程度にすぎません。

2.OFDMの利点と欠点

利点①FDMに比べると、干渉防止のためのサブキャリア間のGBが不要となる。従って周波数効率が高くなる。②独立した信号の並行伝送ができるため高速通信が可能となる。

欠点①マルチパスフェージング対策のためのCPが挿入されるが、マルチパスフェージングが長いとCPも長くなり伝送効率が悪くなる。②変調した信号のサイドロープが発生し隣の信号と干渉を起こしやすくなる。サイドロープを除去するフィルタが必要となる。

3.OFDMの利用にふさわしい通信システム

OFDMは4Gや5Gの他に無線LANや地上デジタル放送にも利用されている変調方式である。リアルタイム性の必要な高速伝送に向いている。

Ⅱ-2-2

  あなたは、不特定多数の人が出入りする、ある商業施設の公衆無線LANシステムの管理業務担当責任者である。最近、この公衆無線LANの利用者から、データのアップロードに、通常より大幅な時間が掛かるとのクレームが頻繁に報告されるようになった。あなたがこの問題に対処するため、必要に応じてシステムを更新する一連の業務を進めるにあたり、以下の内容について記述せよ。

(1)想定すべきすべての要因を明記したうえで、問題の切り分けを行うための調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意する点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

1.想定する要因と切り分け事項、その内容

本無線LANシステムの既設計で、何人の同時アクセス想定したのか、データサイズ、通信する距離はどう設計したのかといった設計条件と設計値での事実確認を行う。

(1)要因1:同時アクセス数が設計値より多い

アクセス者が増えると無線LANのチャネル待ちが発生する。或いは隣人との電波の干渉が起きやすくなる。これらが原因となる。切り分けは、事象再現時にアクセスポイントのログを採取してチャネル待ち動作やリトライ発生の有無を確認する。

(2)要因2:データサイズが設計値より大きい

アップロードするデータのサイズが設計値より大きいと転送時間が余分に掛かる。切り分けは、再現試験を行ないデータ転送時間を測定する。

(3)要因3:アクセスポイントまでの距離が長い

 人の出入りが増えているため、アクセスポイントから離れたところからアプロードしている可能性がある。電波は距離と共に減衰するためアップロードの際に転送リトライが発生する。切り分けは要因1と同様に通信ログを確認しリトライ有無など確認する。

1は比較的良く書かれていますが、2以降では業務手順がうまく述べられていません。

2.業務を進める手順、留意点、工夫点

 業務を進める手順を図1に示す。原因を特定し、除去できるものは取除く。

留意点としては、原因と取り除いた後に事象が再発しないことを確認する必要がある。また、その再発しないことを一定期間監視する稼働監視の期間を設けることである。工夫を要する点としてはシステム更改となる場合には既設計の流用してコストや工期の短縮を図っていくことである。

3.業務を効率的、効果手時に進めるための関係者との調整方法

 業務を効率的に進めるにはオーナーや店舗関係者との認識合わせが重要となる。以下を進めてステークホルダとの関係を深める。

(1)原因の説明

 データのアップロードが遅くなった原因の説明をオーナーや店舗関係者に行う。それによって以降の対応策が変わってくるからである。

(2)費用の説明とシステム更改の計画の説明

システム更改や原因の取り除きで発生するコストを明確に伝える。そしてシステム更改の場合にはその計画を伝えて状況を理解していただく。

Ⅲー1

 高速大容量・高性能な通信環境が広く提供される時代の到来により、ライフスタイルやワークスタイルの変革が期待されている。それらの通信環境の特徴を活かした高度なサービスでは一人一人の利用環境や個々の端末に応じて柔軟にきめ細やかな情報を提供することが重要となる。この場合、インターネット経由の集中型クラウドでは処理が集中するために高速大容量・高性能な通信の利点がエンドツーエンドのネットワーク全体では活かせなくなる。それを活かすにはいわゆるエッジコンピューティングを活用することが求められる。このような状況を踏まえ、情報通信ネットワーク分野の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)上記のエッジコンピューティングを活用する上での課題を、技術者として多面的な観点から抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうる懸念事項とそれへの対策について述べよ。

解答

1.エッジコンピューティングを活用する上での課題

(1)利用環境の違い

違いが何なのか。課題が良くわかりません。

エッジコンピューティング利用者一人一人の利用環境が異なっている。固定網、無線網、或いはWiFiといった多様な利用環境に対応する必要がある。データ速度、帯域保証の有無なども必要となってくる。

だから何なのか。やはり課題が見えません。

(2)処理の集中

エッジコンピューティングに収容する端末が増えれば増えるほど処理が集中する。処理が集中すればレスポンスが悪化する。希望するレスポンスに応えるためにも処理の集中への対応が必要となる。

集中する問題点はわかりますが、では情報通信技術でどう対応するか提案の焦点がはっきりしません

(3)膨大なデータ量

図1にはエッジコンピューティングの構成を示す。エッジ側の端末のIoTデバイスは2020年には世界中でも300億個を超えると想定されている。発生するデータ量も2021年には2018年の2倍にあたる319エクサバイト/月となる。この膨大なデータを処理していく必要がある。

ここも同じ。問題点を示すだけで情報通信技術での対応がはっきりしません

2.重要と考える課題とその解決策

 最も重要と考える課題は「処理の集中」への対応である。というのも処理の集中が回避できれば大容量高性能な通信の利点を活かすことができるからである。以下に解決策を示す。

ご自分の提案を羅列するだけで、それならどうやって課題に対応するかが見えません。課題の分析が不十分だったせいもあるかと思います。

(1)ヘテロジニアスネットワークの活用

図2に示すHetNet構成でトラフィックの最適化を行う。ネットワークリソースの空いている網を活用して利用者と通信を行うのでその網の配下にあるエッジコンピュータへのトラフィックが分散されることになる。

 (2)1:n配信の軽量化プロトコルの採用

例えばMQTTプロトコルではエッジコンピュータは膨大なIoTデバイスと直接通信する必要はない。MQTTブローカとだけ通信を行えば、MQTTブローカがIoTデバイスにデータを配信する。このような1:n通信が可能なプロトコルをエッジと端末側で採用する。MQTTブローカが負荷分散の役目を果たす。

(3)プロキシサーバの活用

プロキシサーバは企業がインタネットにアクセスする際にキャッシュを行い余分なインタネットアクセスを防ぐための技術である。このサーバをエッジ側にも設置する。利用者が参照するデータは同じものが多くリピート率が高い。従ってこのキャッシュへのアクセスによりエッジコンピュータへのアクセスの集中が減ることになる。

3.解決策に共通して生じる懸念事項と対応

上記の解決策に共通するのはネットワークを介してデータの流通を行っていることである。 

(1)懸念事項

①可用性

 データセンタや基幹のネットワークは障害発生時、或いは災害発生時に対応するための冗長化対策が何層にもわれている。震災の苦い経験から生じた対策である。エッジコンピューティング側でも同様の障害時、災害時の対策を折り込むことが懸念となる。

これがどうして懸念事項、なのか?

②セキュリティ

 利用者に最も近いところにあるエッジ側では利用の個人情報や見えやすい。これらの情報の流出、改ざんが行われる可能性が懸念事項となる。

(2)対応策

①可用性を高める対策

 冗長化構成だけでなく、エッジコンピュータの分散設置を提案する。利用者には複数のエッジコンピュータを見えるようにしメッシュネットワークの構成とする。利用者の利便性も高まるからである。

②セキュリティを高める対策

セキュアプロトコルの採用とIPアドレスを利用しないNIID技術を提案する。攻撃する標的を隠ぺいするためである。 

R1年 金属部門、表面技術の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 素材産業では国際競争力が問われていますのでそのような準備が必要です。しかし残念ながらそのような準備がされていなかったようです。音声ガイドに基づいて練習していけば予想問題に対する対策法がわかるようになり、必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(27分43秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題

Ⅰ−1     

問題文 金属材料製造における主要技術の多くは、生産現場の経験の蓄積に基づいて改善されてきた。国際競争力強化へ向けた新展開を図るためには、従来の技術を承継しつつ、新たな概念に基づく更なる生産技術・プリセスの高度化も不可欠となる。また、既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料の開発も視野に入れていかなければいけない。上記の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)構造材料を対象として、新たな生産技術・プロセスや新材料を検討するうえで、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、あなたの専門技術を踏まえて考えを述べよ。

(4)上記事項を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答

1.新たな生産技術・プロセスや新材料を検討する上で考えられる課題 

 考えられる課題を以下に記載する

見出しの視点の取り方が違ったようです

①    特性面の課題:我が国の国際競争力強化のためには、より高強度なものやより軽量なものなど、従来よりも高い特性をもつ材料の開発が必要である。

これらはごく当たり前のことでは?問題文の要求は2つです。

  • 従来の技術を承継しつつ、新たな概念に基づく更なる生産技術・プリセスの高度化
  • 既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料の開発

コスト面の課題:競争力強化のためには、従来の特性を維持したまま更に低コスト化することも求められる。生産技術・プロセスを高度化し、より低コストに材料を生産することが必要である。

環境面の課題:近年では国際的な環境保全への意識の高まりから、環境に優しいものづくりが求められている。良好な特性や低コストを実現しつつ、鉛や六価クロムなどの有害物質を使用しないなど、環境への配慮も両立したものづくりが必要である。

④技術承継面の課題:現在の生産現場では、一担当者レベルの暗黙知と言える技術が多く存在する。その技術が充分に承継されないまま労働者が引退し、暗黙知な技術が失われつつある。これを防ぐために、暗黙知な部分も含めた技術承継が必要である。

2.最も重要と考える課題と、それに対する解決策 

 上述した課題のうち、私は④技術承継面の課題が最も重要と考える。なぜなら、近年では少子高齢化が急速に進んでいることから労働者の平均年齢が上昇を続けている背景があるため、技術が失われてしまう危機が最も差し迫っていると考えるからである。そこで、上記課題に対する解決策を以下に列挙する。

a)マニュアルや手順書の整備:暗黙知も含めた技術をマニュアルや手順書などの書類に残すことで、後生に技術を承継する。

b)OJTの実施:熟練の作業者が教育者となり、後進の作業者に対して教育を行う。コツ・ノウハウといった部分を含めて教育することで、暗黙知な技術も承継される。

c)センサによるデータ収集:清算作業におけるパラメータや生産したものの特性をセンサによりデータ化し収集する。収集したデータを利活用し、技術を承継する。

残念ながら上記のような金属工学技術と関係ない手続きなどを議論する場ではありません

3.解決策に生じうるリスクと、それに対する対策 

 上述した解決策に共通して生じうるリスクとして、適切に技術が伝達されないということが挙げられる。例えば、溶射作業時の手の角度など作業中のちょっとしたコツは言葉で説明しにくいといったケースや、そもそも担当者がなにげなくやっているだけで技術と認識しておらず説明がされないといったことが考えられる。

 これに対する対策として、IoT やAI技術の利活用が挙げられる。例えば、溶射等は手作業で実施することが多くあるが、作業者の腕や手に加速度センサなどのセンサを取り付けた状態で溶射作業を実施し、作業中の腕や手の角度や位置等のデータを収集し、コツを見える化することで技術承継をより確かなものにする。更には、AIやロボット技術も活用し、熟練作業者の動きを再現した溶射ロボットの開発等にも展開できる。

4.業務遂行における必要な要件 

・技術的な視点から

 作業者にセンサを取り付けるという性質上、センサは作業者の容赦作業のジャマにならない形状や生態親和性でなければならない。また、作業者のどこに、何のセンサを取り付ければ、技術を的確にデータ化することが可能かよく検討する必要がある。

・技術者倫理、社会の持続可能性の観点から

作業者にとっては自分が蓄積したコツ・ノウハウなどの技術を公開することであり、自分の技術や仕事が奪われるといった思考に至る可能性がある。作業者の協力を得るためにも、技術承継の必要性、作業者の技術の重要性、仕事を奪うわけではないといった事を伝え、作業者のフォローをよく行うことが必要である。

また、前述の通り少子高齢化が進んでいる現在では、技術承継をする後進がいないことも懸念される。社会の持続可能性を考慮し、ロボット技術の活用まで展開することが必要である。これにより労働人口減少の対策にもなる。

なぜここでグリーン、エコなのか。社会の持続可能性をとにかく増せばよいという提案ではなく、主題は2と3で提案したことを遂行するための要件です。やや唐突な感じがします。

Ⅱ-1-1     

真空技術を利用した成膜法について1つ挙げ、原理、技術的特徴、実用上の注意点を述べよ。

解答

真空技術を利用した成膜法の1つであるスパッタリングについて、以下に記載する。

1.原理

 真空容器内に基材と成膜材料(ターゲット)を設置し、電極とターゲット間に高電圧を印加する。すると導入ガスであるアルゴンや酸素がイオン化し、ターゲットに勢いよく衝突する。その際にターゲットから原子がはじき出され、はじき出された原子が基材に到達し付着・堆積することで成膜する手法である。

2.技術的特徴

a)膜の密着強度や緻密性が高い。

b)成膜時間の制御により高精度な膜厚制御が可能である。

c)反応性ガス(酸素や窒素)を使用することで、容易に酸化膜や窒化膜の成膜が可能である。

d)処理液等が不要で、低環境負荷である。

3.実用上の注意点

 成膜速度は高くないので厚膜形成は苦手である

これは注意点ではなく、制約事項 注意しなくても必然的にこうなります

また、真空容器を要するので処理可能な基材のサイズに制約が生じる。基材の形状は基本的に板状に限られ、三次元な基材に対するスパッタリングは開発は進められているが(バレルスパッタリング等)、一般的な実用には至っていない

ここは注意点ですから、巧みに行うための提案を書いてください。できないこと、制約事項は聞いてもも仕方ないことです。生産的な提案はありませんか。 スピード化、品質向上、コストダウンetc

Ⅱ-2-2

 電子機器の小型化に伴い、モジュール基盤の配線微細化が求められている。この配線を形成する1つの技術として、新たに湿式めっきを開発することとなった。この業務の担当責任者として進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

電子機器の小型化のための配線微細化です。新たに湿式めっきを開発する・・この意義は何かをお考え下さい。

1.調査、検討すべき事項とその内容

a)配線の材質:形成が必要な膜の材質調査は必須である。湿式めっきの場合、成膜が容易な材質や困難な材質が存在し、また、成膜可能だとしてもその成膜パラメータは膜の材質により変わるからである。

b)配線の厚さ:配線形成に必要な膜の厚さにより、適用すべき湿式めっきの種類が変わる。例えば、ある程度以上の厚みが必要であれば電解めっきが適し、逆に膜厚は薄く高精度な膜厚制御が必要であれば無電解めっきが適する。

配線の密度、配線断面(幅)は?

c)基板のサイズ:湿式めっきの場合、基板を処理液に浸漬する必要がある。基板のサイズにより必要となる浴槽のサイズが異なるため、基板サイズの調査が必要である。

(1)調査、検討すべき事項とは配線微細化と、湿式めっきの対応です。

d)モジュール基板の使用環境:実際の使用環境を調査し、その環境でも不良の発生しない膜とする必要がある。例えば、基板上に膜を形成するという性質上、温度変化のある環境では基板と膜の熱膨張率の違いから膜には熱応力が生じる。熱応力が生じても回路が断線などの不良が発生しない膜厚や材質の設計が必要である。

(2)業務を進める手順にでは、配線微細化・湿式めっきする上での、品質向上につながる、留意事項や工夫を述べてください。

2.業務遂行手順(留意点、工夫点含む)

 業務の遂行手順をいかに記載する。

①調査を実施し、要求事項をまとめる。この時、現在の生産方法や特性等も併せて調査しておくと、開発完了時にレビューしやすい。

②得られた要求事項を基に、適用するめっきの方針を決定する。例えば、必要な膜厚や材質にで電解めっきか無電解めっきかを決める。

③決定した方針を基に、細かな生産におけるパラメータを調整しながら試作及び評価を行う。この時、1条件ずつ試作・評価を繰り返すのではなく、複数の条件でまとめて試作・評価を行うことで、生産パラメータと得られる特性のそう考えられやすくなり、効率的に開発が進められる。

④③の結果から最終的な生産条件を決定し、その結果生産された物が要求事項を満たしているか確認する。要求事項を満たしていれば、既存の物との比較等のレビューを行い、開発を完了する。

3.関係者との調整方策

・試作段階における方策:開発活動において、実験用の生産装置・ラインの有無に関わらず、実際の製品の生産装置・ラインを使用する必要がある時が必ずある。その際には製品の生産に大きな影響を与えないよう、実施時期や実施者等について生産担当者等の関係者と事前によく打ち合わせてく。

・開発完了後における方策:開発した生産技術をスムーズに現場に伝達できるよう、手順書等を十分に整備し、必要であれば時間を確保して教育の機会を設ける。

このような作業手順についての提案をしたところで何の意義があるのでしょう。関係者との調整とは、プロマネとして下請けや、協力業者に裁量権を与えて仕様の最適化を図ってもらい、結果として製品の品質を高める(そのようなことを下請けや、協力業者に促す)提案です。

Ⅲー1

 RoHS指令は現在各種産業分野の環境規制に及んでいる。本気性が我が国の製造業に与える影響は計り知れないものがある。このような状況を踏まえて金属表面処理の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更に当たって、技術者としての立場で多面的な観点で課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)あなたの技術的提案の効果及び潜在的に持っている不確実性あるいはリスクについて、具体的に論述せよ。

解答

1.         RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更における課題

特性の観点から見たときにどんな課題がありますか。

特性面の課題:製造技術や製品設計の変更により、製品の持つ特性が低下してしまう可能性がある。例えば、近年では鉛入りはんだに代わり鉛フリーはんだが使用されているが、鉛入りはんだでは発生しなかったウイスかという現象が鉛フリーはんだでは発生するようになってしまった。製造技術や製品設計の変更をしても、極力特性が低下しないようにする必要がある。

②コスト面の課題:RoHS指令では6種類(RoHsⅡでは10種類)の材料が有害物質として指定され、製品に規定値以上含有されないことが求められている。そのため、製品設計の変更時には上記の有害物質を使わず代替品となる材料を使用することが多い。しかし、現状では代替品となる材料は比較的高価な傾向にあり、製品としてのコスト増加につながる。RoHS指令に対応しながらも同等のコスト、あるいは低コストな製品設計が求められている。

結局、有意義な課題の方向性を示せていません。

③環境面の課題:上述の通り、RoHS指令では指定した有害物質が製品に含有しないことが望まれているが、製造現場でも有害物質を使用しないようにする取組が行われている。例えば、硬質クロムめっきの製造現場では従来六価クロムの浴が使用されてきたが、六価クロムはRoHS指令で有害物質に指定されている。このため、六価クロム浴に代わり三価クロム浴を用いた硬質クロムめっきの実用化が進められている。しかし、現状では三価クロム浴は排液処理が困難であり、処理時に必要な電力消費も大きい。有害物質を使用しないという利点はあるが、排液処理や消費電力といった他の環境側面で問題を抱えており、更なる低環境負荷な表面処理技術が望まれている。

不要な議論に発散しています

2.最も重要な課題とその解決策 

 上述した課題のうち、③環境面の課題が最も重要であると私は考える。なぜなら、近年では持続可能な開発への意識が国際的に高まっており、特性やコスト面で優れていても環境面への配慮に欠けた製品は求められないと考えるためである。

 課題に対する解決策を以下に記載する。

a)乾式めっきへの移行:真空蒸着やスパッタリング等、処理液を必要としない、つまり排液処理も不要な乾式めっきを適用する。例えば、六価クロムによる硬質クロムめっきはスパッタリングで直接クロムを成膜する技術開発を行いそれに移行する。あるいは、高い硬度を求めるだけなら、既存技術である窒化チタンの成膜等も考えられる。

b)他の材質のめっきでの代用:六価クロム浴を使用することで問題にされることの多い硬質クロムメッキは、基材に高い硬度や摩擦係数の低減を目的として適用されることが多い。しかし、本来硬質クロムめっき程の硬度(約1000HV)は必要なくそれよりも低い硬度でも問題ない用途でも硬質クロムめっきが適用されているケースも多い。そのような物に対しては、硬質クロムめっきほどではないが高高度なニッケルめっき(600

HV)やアルマイト(200〜600HV)等で代用することも対策として挙げられる。ニッケルめっきやアルマイトは製造工程においてもRoHS指令で指定される有害物質を使用しておらず、より低環境負荷な表面処理技術であると言える。

3.技術的提案の効果及び不確実性あるいはリスク 

a)乾式めっきへの移行

・効果

 乾式めっきは処理液を必要としないため、湿式めっきと比較して極めて環境に優しい処理方法である。

・不確実性あるいはリスク

式めっきには真空技術を利用したものが多くある。その性質上真空容器が必要となり、処理可能な基材のサイズに制約が生じる

b)他の材質のめっきでの代用

・効果

 既存技術で代用可能な条件であれば、技術開発の必要もなくすぐに実行でき、直ちに低環境負荷の製品が出来上がる。

・不確実性あるいはリスク

 特性が低いもので代用する場合、必要な仕様の調査が充分でないと不具合発生の恐れがある。

R1年 建設部門、施工・道路の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 良く勉強されていて合格の可能性十分です。さらにこう書いておけば完璧なのに・・・と思われる惜しいところがあります。

 わかりきっている議論、原則論を丁寧に尽くしても物足りません。一般常識を超えたプロの提案が求められています。

 漠然とした答えがやや多いようで、コンピテンシーの表現が不足しているようです。このような場合どう書けば正解かは、ケースバイケースでチェックしないと正解が判断できません。これらを解決するのが添削とコーチングです。音声ガイドに基づいて練習さえしていけば必然的にわかるようになり、必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分36秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題

Ⅰ−2     我が国は,暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波,噴火その他の異常な自然現象に起因する自然災害に繰り返しさいなまれてきた。自然災害への対応については,南海トラフ地震,首都直下地震等が都区内将来に発生する可能性が高まっていることや,気候変動の影響等により水災害,土砂災害が多発していることから,その重要性がますます高まっている。   こうした状況下で,「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靭化」(ナショナル・レジリエンス)を推進していく必要があることを踏まえて,以下の問に答えよ。

(1)ハード整備の想定を超える大規模な自然災害に対して安全・安心な国土地域・経済社会を構築するために,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクと、それへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり,必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.安全・安心な国土・地域・経済社会を構築するための課題

1−1.リダンタンシーの確保

 大規模な自然災害の発生により経済社会に多大な影響を与える恐れがある。

 なぜなら、我が国の人口は大都市に集中しており、経済、政治、行政機能も大都市に集積しているため、大規模な自然災害が大都市で発生すると主要な機能が停止することが懸念されるからである。また、災害復旧を支えるネットワークが弱いことも要因として挙げられる。

 したがって、リダンタンシーの確保が課題である。

1−2.防災意識社会の構築

 ハード整備の想定を超える大規模な自然災害の発生が予見される場合は、人命を守るために国民による避難が必要である。

 しかし、避難指示などの情報が発令されているにも関わらず、逃げ遅れによる犠牲者が後を絶たない。これは過去の経験などから正常性のバイアスが働き、避難を決断できなかったことが原因として考えられる。

 したがって、防災意識社会の構築が課題である

根拠の説明がややくどいです。

2.リダンタンシーを確保するための解決策

2−1.コンパクト+ネットワーク

 大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するにはコンパクト+ネットワークが有効である。

 なぜなら、コンパクト化により行政サービス等を集約化し、ネットワーク化により圏域人口を拡大することで地方創生を促し、大都市への人口流出を緩和することができると考えられるからである。

 特にリニア中央新幹線の開通によるスーパーメガリージョンを形成することで、1日の移動圏域を拡大することで、対流を促進し、地方の活性化に寄与できると考えられる。

2−2.災害復旧を支えるネットワークの強化

 大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するには災害復旧を支えるネットワークの強化が有効である。

 なぜなら、災害復旧を支えるネットワークを強化することで、大規模な自然災害発生後、迅速な復旧を可能にし、経済社会に与える影響を緩和できると考えられるからである。

 具体的には、大都市の高規格環状道路の未整備区間の整備や主要な港湾、空港のラストマイルの整備によるモーダルコネクトの強化による陸路、海路、空路のネットワーク強化が挙げられる。あわせて、高規格幹線道路の暫定2車線区間の解消や、港湾の高潮対策、空港の耐震対策などをネットワークの耐震性を向上させることも有効である

3.新たに生じうるリスクとその対策

これは人口減少の対策なのに、どうして地方で困難なのか?

 コンパクト+ネットワークや災害復旧を支えるネットワークの強化を推進する上で、特に人口減少が進む地方部では費用対効果の観点から事業化が困難になることがリスクとして挙げられる。

 対としては防災の観点での便益を費用便益分析に適切に反映し、事業の有効性を示すことが挙げられる。

これがなぜ対策となるのですか。いったい何の対策なのか

 また、発現したストック効果を取りまとめ、見える化・見せる化することで国民のコンセンサスを得ることも重要である。

レポートだけで何が解決するのか?やや説明不足です。

4.業務遂行に当たり必要となる要件

4−1.技術者倫理の観点

 業務遂行に当たり技術者倫理の観点から必要となる要件として、業務で知り得た情報の守秘義務が挙げられる。

2-1、2-2の業務と直接関連ありません

これは当然必要なことです。問題を解いたことになりません。

 なぜなら業務で知り得た情報が外部に漏れることで、談合による不正入札に発展する場合などが考えられるからである。そのため、業務を遂行する上で、適切に情報管理することが重要である。

4−2.社会の持続可能性の観点

 業務遂行に当たり社会の持続可能性の観点から必要となる要件として、生物多様性の保全が挙げられる。

 生物の多様性を保全するためにはグリーンインフラの採用を検討することが重要である。具体的には多自然川づくりやエコロードを推進することで生物多様性の保全による持続可能な社会の形成に貢献できると考えられる。

なぜここでグリーン、エコなのか。社会の持続可能性をとにかく増せばよいという提案ではなく、主題は2と3で提案したことを遂行するための要件です。やや唐突な感じがします。

Ⅱ-1-2     

 平成30年3月の道路法改正により創設された,重要物流道路制度の目的を説明せよ。また,重要物流道路制度の概要について述べよ。

解答

1.重要物流道路制度の目的

・平常時・災害時を問わない安定的な物流の確保

国際競争力の強化

物流生産性の向上によるトラックドライバーの労働環境の改

目的とは直接的なことです。因果関係がやや遠いものは△です。

2.重要物流道路制度の概要

 高規格幹線道路、直轄国道、都市高速道路及び主要拠点へのラストマイルを国土交通大臣が重要物流道路として指定する。また、重要物流道路が災害により寸断される恐れのある区間では代替路が、防災拠点へ連絡する道路では補完路が指定される。

 指定された道路では以下の制度が適用される。

前置き抜きに、項目を2〜3挙げるように。

①国際海上輸送コンテナ車の特殊車両通行許可申請の不要措置

見識としては〇ですが、付帯的事項(役所の手続き)であり、建設道路工学の本質ではないので好ましくありません。

 国際海上コンテナ車の特殊車両通行許可申請の不要にするため、重要物流道路において建築限界の高さを4.5mから4.8mに引き上げる。

②被災時の国による道路啓開の代行支援

 重要物流道路及び代替路、補完路が被災した場合、地方公共団体は国に道路啓開の代行支援を要請することが可能となる。

民間施設直結スマートインターチェンジ整備の支援

 民間施設直結スマートインターチェンジの整備を行う民間事業者に対し、整備費用の一部を無利子貸付する支援を行う

支援されたいお気持ちはわかりますが、国の政策に依存することであり、国土交通省(国会)で承認されなければ実現しません。技術士の提案としては好ましくありません。

Ⅱ-2-2

ある市街地の生活道路(地区に住む人が地区内の移動あるいは地区から幹線街路に出るまでに利用する道路)において,地区に関係のない自動車の走行やスピードの出し過ぎなどの問題が発生しており,交通安全対策(ゾーン対策)が検討されている。

この対策の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1)調査,検討するべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について,留意すべき点,工夫する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

この問題は下のような道路での事故発生が増加していることに基づいています。そのような社会ニーズはお感じになっていますか。

解答

1.調査・検討すべき事項

①生活道路のネットワーク状況や構造

 築に関係のない自動車の走行ルートや交通安全対策を立案するために、生活道路のネットワーク状況や道路構造(幅員、線形、縦断勾配、横断勾配など)を調査する。

通過交通(抜け道)の恐れがあります。

②生活道路の交通特性

 生活道路の時間別、平日休日別の自動車交通量、自転車交通量、歩行者交通量や自動車の実勢速度、事故発生箇所や事故の状況についても調査し、生活道路の交通特性を把握する。

③生活道路の交通規制状況

 生活道路における速度規制の状況やスクールゾーンの指定、一方通行指定などを調査し、交通安全対策立案の際に考慮する。

2.業務を進める手順

①事前調査

 生活道路のネットワーク状況や構造、交通特性、交通規制状況等を現地調査または資料調査により事前に把握する。

 ETC2.0プローブデータが利用できる場合は、走行挙動履歴からヒヤリハット箇所を分析し、交通安全対策について検討する。

②交通安全対策の立案

 事前調査結果に基づき、最も効果的な交通安全対策を立案する。対策例としてはハンプ、シケイン、ライジングボラードなどが挙げられる。

 生活道路の利用者の状況やバリアフリー推進計画等を考慮し、横断舗装にハンプを設置する場合は歩道に段差のないスムース歩道の採用についても検討する。

 また、対策効果を事前に把握する必要がある場合は社会実験の実施についても検討する。例えばハンプであれば可搬式ハンプの設置やシケインであればラバポールの設置などが挙げられる。

③交通安全対策の効果の確認

 交通安全対策の効果を確認するため、対策実施後の交通状況を調査し、事前調査の結果と比較分析する。期待した効果が得られなかった場合は追加の安全対策について検討する。

3.関係者との調整方策

2の①〜③を進めるための調整ですが、その理解はよろしいですか。利害関係者同士の紛争解決ではありません。

 業務を効率的・効果的に進めるためには、計画段階から道路管理者、交通管理者、地元住民で構成される協議会を立ち上げることが有効である。

こうした形式や手続きではなく中身の話(何をするか)が必要です。

 なぜなら、協議会を通じて地元住民にアンケート調査を依頼したり、交通管理者に事故調書の提供などを依頼できる。また立案した安全対策について検討段階から協議会で議論することにより、速やかな合意形成を図ることができると考えられるからである。

こういう話ではなく生産的な提案が求められています。

Ⅲー2

 橋梁,トンネル等の道路構造物については,平成25年から平成26年にかけての道路法,同施行令及び同施行規則の改正を経て,平成26年度に策定された定期点検要領等に沿って,各道路管理者において点検が実施されており,平成30年度で一巡目の定期点検が完了したところである。道路構造物のメンテナンスを担当する技術者として,以下の問に答えよ。

(1)地方公共団体が,二巡目となる道路橋の定期点検を実施するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクと、それへの対策について述べよ。

解答

1.定期点検を実施する上での課題

1−1.予防保全による維持管理

 平成30年度で一巡目の定期点検が完了し、道路橋の損傷状況も明らかになった。しかし、地方公共団体では予防保全的措置がほとんど行われていない

 これは、予防保全的措置を実施するために必要な予算が確保されておらず、予防保全的措置が必要な個所に対する対応を先送りしていることが原因として考えられる。

途中の説明がくどいです。

 したがって、予防保全による維持管理型の体制への移行が課題である。

結論は結局同じ。それでは予算不足で無理では?

1−2.メンテナンスサイクルの継続

 令和元年度より二巡目の定期点検が開始されたが、地方公共団体において、定期点検の継続は困難である。

課題の文の末尾が否定形であまり好ましくありません。

なぜなら地方公共団体は全体の約7割の道路橋を管理しており、10年後には約半数が耐用年数である50年を経過する。そのため、修繕・更新に要する費用が増大し、点検に要する費用が大きな負担になると考えられるからである

 したがって、メンテナンスサイクルの継続が課題である。

途中の説明が冗長で、結論は結局最後の1行だけという説明不足となっています。

1−3.点検品質の確保

 道路橋の定期点検において、点検困難箇所を多く有することや部材別の健全度評価だけでなく、構造物全体としての健全性評価も必要なことから、点検技術者には高度な技術力が求められる。

ここは答えの前置きです。

 しかし、少子高齢化に伴う新規就労者の減少や厳しい建設産業の労働環境による就労者の定着が進まないことから、技術の伝承が十分に行えず、点検品質が低下することが懸念される。

冗長な根拠です。そして結論は下の1行にすぎません。

 したがって、点検品質の確保が課題である。

2.予防保全を実現するための解決策

2−1.アセットマネジメント

 予防保全による維持管理型の体制へ移行するにはアセットマネジメントが有効である。

この予防保全・アセットマネジメントの説明は今ではやや陳腐化しています。そろそろ新しい提案をしませんか。

 なぜなら、各ストックに対するライフサイクルコストを推計し、最適な維持管理シナリオとなるように、修繕・更新事業計画を策定することで、予防保全的措置を実施する予算を確保することができると考えられるからである。

 また修繕・更新に必要な事業費の推計結果を見える化し、国民のコンセンサスを得ることも予算確保の上で重要である。

これは行政の仕事であって技術士としての提案ではありません

2−2.新技術活用による点検の効率化

 予防保全による維持管理型の体制へ移行するには新技術活用による点検の効率化が有効である。

これが解決策。しかしまだ冗長です。

 なぜなら、新技術活用により点検の効率化を図ることで、点検に要する費用を削減し、予防保全的措置に要する費用に充てることができると考えられるからである。

 具体的には、赤外線サーモグラフィやドローンなどを活用した点検支援技術を採用することが挙げられる。また、各道路管理者の点検データをプラットフォームに集積し、分析することで点検の効率化を図るインフラメンテナンス2.0も推進する必要がある。

3.リスクとその対策

3−1.リスク:地方公共団体の技術職員不足

 アセットマネジメントや新技術活用による点検の効率化を推進する上で、地方公共団体の技術職員の不足がリスクとして挙げられる。

 なぜなら、現状、地方公共団体の技術職員は不足しており、適切な維持修繕・更新の事業計画の策定が困難になることや知識不足により新技術の採用を見送ることが懸念されるからである。

3−2.対策:民間人材の活用

 対策としては民間人材の活用が有効であると考えられる。

 なぜなら、PPP/PFIによる民間人材を活用することにより、地方公共団体の技術職員不足を解消でき、民間のノウハウを取り入れることで業務の効率化を図ることができると考えられるからである。

 具体的には、有料道路事業であればコンセッション方式の採用や東日本大震災の復興事業で採用された事業促進PPPの活用などが挙げられる。

楽観的すぎませんか。PPP/PFIをやれば何でも楽勝で解決するわけではありません。実務的提案を求められています。

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