問題文 Ⅱ-2-1
防災・減災対策と並行して、事前に被災後の復興まちづくりを考えながら準備しておく復興事前準備の取組を進めておくことが重要となっている。このため平時から災害が発生した際のことを想定し、ソフト的対策を含む防災・減災対策も並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておくことが必要である。大地震による被災の懸念がある地方公共団体において、復興前事前準備の取組を行うことになり、あなたがこの業務を担当責任者として進めることになった。下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
模範解答1 (答案形式) 添削履歴 1回 2019.07.19 専門事項 交通計画
(1)調査、検討すべき内容
(1)-1既存建物の耐震性、耐火性、空き状況
既存建物の耐震性等や空き家の状況を調査し、建て替え促進範囲を検討する。
(1)-2きょうあい道路の状況
2項道路や私道等きょうあい道路を緊急輸送道路等に接続し、避難路を確保するよう検討する。
(1)-3医療施設の状況
平時の医療施設の配置状況を調べることで、被災時に生活弱者が避難できる場所を検討する。
(1)-4地域のコミュニティの状況
地域住民同士のコミュニケーションがとられているか調査し、被災時の連携の仕方を検討する。
(2)手順
( 2 ) -1 復興まちづくりトレーニングで課題明確化
住民が主体的に生活再建シナリオと市街地復興シナリオを作成する。この際、住民同士のワークショップを通じて、市街地と住民のシナリオのバランスをとった上で復興のための課題を明確にする。
( 2 ) -2 共同建物移転で密集市街地解消
防災街区整備地区計画で行政機能を含む防災施設建築物へ住民を移転させる。この際、立体換地制度を活用し、都市計画決定を要しない早期の移転を促す。
( 2 ) -3戸建への移転で避難路確保
共同建物移転を望まない住民を個別利用区に移転さ せ、避難路を拡幅する。この際、準耐火建築物以上と して道路沿いの建物を不燃化し、倒壊防止のため耐震化する。
( 2 ) -4地 域 医 療 拡 充
防災施設建築物に行政機能が移転し、空き地となっ た公的不動産を民間の医療施設に転用する。この際、地域のイベントを活用し医療施設を活用した住民同士の防災訓練を定例化する。
(3)調整方策
( 3 ) -1 復興まちづくりリーダーを育成
両者のバランスを取り、食い違いを抽出できるリーダーを育成する。
( 3 ) -2保留床で移転者への補償確保
立体換地制度に伴う保留床を売却して、共同建物移転者の移転保証を捻出する。
( 3 ) -2 容積売却で建て替え資金確保
個別利用区建物整備の際、容積適正配分型地区計画で容積率売却により戸建移転者の建て替え資金を確保する。
( 3 ) -4小規模連鎖型の土地収用で屋外防災施設整備
周辺の空き地をNPO が譲り受け、小規模連鎖型の土地収用で行政が土地を安く買い取り、屋外スペースを防災訓練やコミュニティスペースとして活用する。
模範解答2 (簡易答案1) 添削履歴7 作成日2020/6/25 建設部門 科目:都市・地方計画 専門事項 公園緑地
1. 調査、検討すべき事項
・津波の浸水想定を調査し、高台地域へ公的住宅や宅地を用意して移転を検討する。
・延焼エリアを調査し、避難路となる骨格道路の確保と沿道建物の不燃化を検討する。
・独居高齢者の居住場所を調査し、支援組織体制の検討を行う。
2.業務を進める手順
①被災世帯の収容準備をする。被災世帯の主要規模から仮設住宅建設のほか、安全性が高い民間住宅を借り上げるなど、被災世帯の収容準備を行う。
②延焼火災の拡大を一定の時間遅延をさせるため、避難場所と連絡する骨格道路の整備と沿道建物の不燃化を進める。
③要支援対象者を割り出し、日常から声掛けを行うなど、信頼関係を図る。
④町内会を活用した自主防災組織による支援訓練を行い、活動拠点場所や救援体制の具体的な取り決めを行う。
3.関係者との調整
・住民は、海の近くに住んで生業をしたいため、住み慣れた地に永住を主張する。
・水産業者は、海岸施設の利便性や運送手段が失われ、経済損失を訴える。
・行政は、伝統的政策から高台移転による住民の安全を主張する。
私は、高台への移転は高齢化社会での確実な安全安心に避難する正攻法であって、個別毎ではなく地域コミュニティ単位で移転したり、鉄道や交通も一緒に移転することで利便性を確保することができることを提案し、生活拠点の移転の問題を解決して3者をとりまとめた。
この答案での添削指摘事項
●調査検討すべき事項
・調査することと、検討(考察)することをそれぞれ分離して掘り下げて、多面的視点を表すため、ダブらないように3つ程度挙げるように。
・抽象化過ぎたり、検討の内容が曖昧すぎると分からないから、検討事項を言ったことにはなりません。
・「を調査し、を検討する」と単刀直入に言う。検討は解決策の文で述べてOKです。
●業務を進める手順
・手順とは、業務を実施すること、その仕方を言うことです。
・調査することと検討することをそれぞれ分離して掘り下げる。多面的な視点を表すためダブらないよう3つ程度挙げるように。
・曖昧に考えているだけでは何を言っているのか意味がわかりません。そうなるのは行動が見えないからで、目標レベルでとどめないで行動形式でちゃんと示すことが大事です。
・上の調査、検討すべき事項に連動した答えとなればOKです。
●関係者との調整
・調整とは、「人と人のあいだの対立や、意見の相違をうまく調整する」のことを指します。
そして、企業で求められる調整とは、もう少し具体的に「利害の対立する人たちを、ある目的のために協力させる」ことです。
・調整の仕事とは「(各組織の利害関係や利益を踏まえ)一つの目的を達成する為に、組織(例えば部署や部局間)をつなぎ、ある方向に関連の部署や人たちが動き出す為のコミュニケーションと政治的な仕事」です。
・求められる調整力とは人と人の間に立って意見や主張の整理、すり合わせをし、グループ全体をまとめる力です。 単にコンセンサス(意思の一致)を得るだけでなく、そのことにより何らかの成果へと結びつけることを目的とします。
・関係者3者の意見がテンでばらばらに主張する違いを明確に食い違って絶対にまとまりません。三者の要求、意見の不一致問題を満足してとりまとめるイメージをもって下さい。
模範解答2 (簡易答案2) 添削履歴1 作成日2020/6/27 建設部門 科目:都市・地方計画 専門事項 公園緑地
1.調査、検討すべき事項
(1)高台への移転
津波の浸水深や予測範囲を調査し、高台地域へ公的住宅や住宅地を用意して移転を検討する。災害リスクが低いエリアでの安全な居住環境づくりを検討する。
(2)避難路確保と不燃化の促進
延焼エリアを調査し、安全性を高めるための避難路となる骨格道路の確保と延焼防止策としての沿道建物の不燃化を検討する。
(3)要支援援護者の支援体制づくり
独居高齢者などの要支援援護者の居住場所を調査し、行政・町内会・民生委員など多様な主体との協働体制の構築を図った迅速かつ的確な支援組織体制の検討を行う。
2.業務を進める手順
(1)被災世帯の収容準備
被災世帯の主要規模から仮設住宅建設の他、安全性が高い民間住宅を借り上げるなど、被災世帯の収容準備を行う。
(2)延焼火災の拡大防止
延焼火災の拡大を防ぐ準備をする。延焼火災の拡大を一定の時間遅延させる効果を期待するため、避難場所と連絡する骨格道路の整備と沿道建物の不燃化を進める。
(3)支援組織の体制づくり
地域の要支援対象者を割り出し、日常から見守りや声かけを行うなど安心して生活するための信頼関係を図る。要援護者とのコミュニケーション化につながり、地域を巻き込んだ体制づくりの実現性を高めていく。
(4)支援訓練の実施
町内会を活用した自主防災組織による支援訓練を行い、集合場所や避難体制の具体的な取り決めを行うなど、地域で支え合う体制づくりに取り組む。地域住民の意識啓発や災害リスクの情報の共有化により、共助の強化につなげていく。
3.関係者との調整方策
高台への移転にあたって、関係者の意見に食い違いがあった。地域住民は、海の近くに住んで生業をしているので住み慣れた地に永住を主張する。水産業者は、海岸施設の利便性や運送手段が失われ経済損失を訴えていた。行政はこれまで同様、持続可能な伝統的政策から高台移転による住民の安全を主張していた。
私は、高台への移転は個別毎の移転でなく地域コミュ二ティ単位で移転すること。さらに、物流や交通も一緒に移転することで利便性を確保できることを提案し、生活拠点や経済活動の移転の問題を解決して3者のとりまとめを行った。
この添削での指摘事項
●全般
・簡易答案2は答案としての表現型をチェックするので、指定文字数に留意して積極的に表現すること。
●調査検討すべき事項
・調査することと、検討(考察)することをそれぞれ分離して掘り下げて、多面的視点を表すため、ダブらないように3つ程度挙げること。
・抽象化過ぎたり、検討の内容が曖昧すぎないように単刀直入に言うように。
・「を調査し、を検討する」と端的に言うと良いでしょう。
・住民の安全を高めていくためにはハード整備の効果を120%高めるようなことを考えると良いでしょう。
・具体的にどのような業種とか、集団なのか、「多様な主体」の補足説明するように。
●業務を進める手順
・手順とは、業務を実施すること、その仕方を述べることです。
・調査することと検討することをそれぞれ分離して掘り下げる。多面的な視点を表すためダブらないよう3つ程度挙げる。
・調査、検討と論理的につながる一貫した答えとなれば良い。
●関係者との調整
・調整とは、「人と人のあいだの対立や、意見の相違をうまく調整する」のことを指します。
そして、企業で求められる調整とは、もう少し具体的に「利害の対立する人たちを、ある目的のために協力させる」ことです。
・調整の仕事とは「(各組織の利害関係や利益を踏まえ)一つの目的を達成する為に、組織(例えば部署や部局間)をつなぎ、ある方向に関連の部署や人たちが動き出す為のコミュニケーションと政治的な仕事」です。
・求められる調整力とは人と人の間に立って意見や主張の整理、すり合わせをし、グループ全体をまとめる力です。 単にコンセンサス(意思の一致)を得るだけでなく、そのことにより何らかの成果へと結びつけることを目的とします。
・関係者3者の意見がテンでばらばらに主張する違いを明確に食い違って絶対にまとまりません。そこで、三者の要求、意見の不一致問題を満足してとりまとめることです。
模範解答2 (完成答案) 添削履歴0 作成日2020/6/30 建設部門 科目:都市・地方計画 専門事項 公園緑地
1.調査・検討すべき事項
(1)高台への移転
津波の浸水深や予測範囲を調査し、高台地域へ公的住宅や住宅地を用意して移転を検討する。災害リスクが低いエリアでの安全な居住環境づくりを検討する。
(2)避難道路の確保と不燃化の促進
延焼エリアを調査し、安全安心を高めるための避難路となる骨格道路の確保と延焼防止策としての沿道建物の不燃化を検討する。
(3)要支援援護者の支援体制づくり
独居高齢者などの要支援者の居住場所を調査し、行政・町内会・民生委員など多様な主体との協働体制の構築を図った、迅速かつ的確な支援組織体制の検討を行う。
2.業務を進める手順
(1)被災世帯の収容準備
被災世帯の主要規模に見合った仮設住宅の用地確保や資材調達などの建設準備のほか、安全性が高い民間住宅を借り上げるなど、被災世帯の収容準備を行う。
(2)延焼火災の拡大防止
延焼火災の拡大を一定の時間遅延させる効果を期待しつつ、避難場所と連絡する骨格道路の整備と沿道建物の不燃化を進める。
(3)支援組織の体制づくり
地域の要支援対象者を割り出し、日常から見守りや声かけを行うなど、安心して生活するための信頼関係を図る。要援護者とのコミュニケーション化につながり、地域を巻き込んだ体制づくりの実現性を高めていく。
(4)支援訓練の実施
町内会を活用した自主防災組織による支援訓練を行い、集合場所や避難体制の具体的な取り決めを行うなど、地域で支え合う体制づくりに取り組む。地域住民の意識啓発や災害リスクの情報の共有化により、共助の強化につなげていく。
3.関係者との調整方策
(1)関係者の意見
高台への移転にあたって、関係者の意見に食い違いがあった。
地域住民は、海の近くに住んで生業をしているので住み慣れた地に永住を主張する。水産業者は、海岸施設の利便性や運送手段が失われ経済損失を訴えていた。行政は、これまで同様、持続可能な伝統的政策から高台移転による住民の安全を主張していた。
(2)意見の調整方策
私は、高台への移転は個別の移転でなく地域コミュ二ティ単位で移転すること。さらに、物流も交通も一緒に移転することで利便性を確保できることを提案し、生活拠点や経済活動の移転の問題を解決して3者のとりまとめを行った。
解説
(1)課題の分析のしかたについて
提案内容を、抽象化すぎたり、検討内容が曖昧すぎると、何をしようとしているのか分からなくなり、検討事項を言ったことになりません。
「を調査し、を検討する」と単刀直入に言うこと。
1調査することと、2検討することを、それぞれ分離して掘り下げて言う。
設問の趣旨から考えると、事前復興準備に取りかかることが解答の主題であり、これをどんどんやっていくこと。
ただし、作業内容そのものを記述するのではなく、技術士として本質的な問題にどう対処するかという記述に専念すること。
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
手順とは、業務を実施することで、その仕方を言うことです。
曖昧に考えているだけでは、意味不明です。これは行動が見えないからで、そこで目標レベルにとどめないで行動形式を示すことが役立ちます。
(3) 留意点などの考え方、書き方などについて
業務手順は、上の問いの調査、検討すべき事項と関連づけるように。
調査検討すべき事項は「するため、を調査し、を検討する」、業務手順は「をする」という文で表すと良いでしょう。
曖昧な表現や一般的なことは、技術提案として伝わらないのでカットしてください。
(4) 調整の考え方、書き方などについて
「調整」とは、「人と人のあいだの対立や意見の相違をうまく調整する」ことを意味します。
この問題で求められる調整力とは、人と人のあいだに立って、意見や主張の整理、摺り合わせをし、グループ全体をまとめる力です。
関係者三者の意見がテンでばらばらに主張する違いがあり、このままでは明確に食い違って絶対にまとまらない・・・。そんな前提に対して、三者の要求や意見の不一致問題を満足してとりまとめるイメージを明確に打ち出すことです。