機械部門 必須科目 解答者05 材料強度・信頼性 専門:強度設計
予想問題 Ⅰ-1 簡易答案1
新興国市場の拡大により顧客の多様な価値観に素早く対応する商品開発力が求められるようになり、「すり合わせ型モノづくり」はスピードとコストの両面で相対的な優位性を失いつつある。こうした中、製造業の設計現場に3DCADの導入、CAM、CAEが加わり、さらにPDMによって設計・製造・解析のデータを同期させて一体に検討するバーチャルエンジニアリングの環境が整備されつつあり、近年はこれにIOTやAIが加わり、さらなる進化を遂げつつある。一方、限られた資源の中で、市場競争力と設計・生産の合理性向上を同時追及し、市場で変動するニーズに対応可能にするためにはコンカレントエンジニアリングの取り組みが重要となる。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)近年の機械製品のものづくり開発においてコンカレントエンジニアリングを推進していくにあたり必要な課題を多面的に挙げ分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての継続研鑽、マネジメントの観点から述べよ。
1. コンカレントエンジニアリングを推進していくのに必要な課題
① 企業間連携:設計部品の量産化や価格を検討する上でサプライヤーとの間で3D
設計情報や仕様を共有し各拠点、企業に分散する設計情報の管理が必要。
② バーチャルエンジニアリング環境の構築:解析、形状、制御、機能、統計デー
タ等のデジタル情報に基づくノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できる場としてバーチャル環境構築が必要。
③ 技術者能力の向上:CAEの土台となる機械工学や計算力学といった知識を設
計者や生産技術者が習得し、適用場面や得られた結果の見方や考察力向上が必要。
④ 多様性と共通性を両立させる製品設計、生産技術の確立: 設計初期段階で設計
と工程をワンセットとし、機種毎の個別最適ではなく相似形設計とし、また生産工程をモジュール化して固定部と変動部を明確にしながら変動部はフレキシブルな生産方法確立が必要。
2. 最も重要な課題と解決策
重要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築、解決策は以下のとおり
① 設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築
設計部門が設計を行う上で使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。さらに設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。
② 3DCADを軸としたバーチャル環境の構築
各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。
③ リアルデータによるバーチャル開発
リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。
3. 解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。このため検証はバーチャルと実物試作を併用する。また解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。
4. 業務遂行において必要な技術者としての要件
バーチャルエンジニアリング推進のため、自らCAEの新たな機能や解析法の技術情報を得るとともにバーチャル環境に多くの専門家を広範囲参加させることで集団参加の創造活動を活性化させる。
予想問題 Ⅰ-1 完成答案
(1)コンカレントエンジニアリング推進上の課題
①ネットワーク組織への改編
従来のピラミッド型の階層型組織から全体組織としての方針、戦略を各グループ、個人がよく理解した上で自律的にかつ並列的に仕事を進められるようにするため、ネットワーク型の組織に改編する必要がある。また生産維持やQCD管理部門、設備保全などの人員をより上流の生産準備部門に配置し、設計工程と並列に作業しながら改善案の創出に結びつけられるようにすることが課題である。
②バーチャルエンジニアリング環境の構築
製品のコンセプト、基本機能仕様の目標等を決めていた設計初期の企画・ブランド、構想設計段階で設計の全仕様と製造の全要件について3Dモデルを用いたすり合わせにより決定できるようにする必要がある。また形状、解析、制御、機能、統計データ等のデジタル情報に基づくノウハウを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できるバーチャル環境の構築が課題である。
③顧客要求仕様の明確化
新しいテクノロジの採用による他の製品との差別化、コスト削減による既存製品からの低価格販売、ニッチ市場での利益確保等、製品開発における戦略を明確にする必要がある。その上で顧客満足度に影響を及ぼす製品のあらゆる設計上の要求属性を十分把握し、製品に表現できるようにすることが課題である。
④多様性と共通性を両立する設計、生産技術の確立
設計初期段階で設計と工程をワンセットとし、機種毎の個別最適ではなく相似形設計を採用し、また生産工程をモジュール化して固定部と変動部を明確にする。また変動部はフレキシブルな生産方法を確立していくことでマスカスタム生産を実現することが課題である。
(2) 最も重要と考える課題、課題への解決策
最も重要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築である。
①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築
設計部門が設計を行う上で使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。さらに設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。
②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築
各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。
③リアルデータによるバーチャル開発
リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクと対策
①リスク:製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。
②リスクへの対策:検証はバーチャルと実物試作を併用する。またバーチャル検証と実物施策検証の乖離を把握し、サプライヤが取り組む部品の解析範囲も含めモジュールモデルの特性を検証しながら製品全体のシミュレーションモデルの振る舞いになるよう各モジュールモデルの設計仕様の熟成を図ると共に解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。
(4)業務遂行において必要な要件
業務遂行においては下流工程を考慮した設計情報の作りこみが必要であり、加工・組立性の検証や生産設備の制約や廃棄やリサイクルのコスト等、設計は多方面のスキルや知識が求められる。また下流工程にいる技術者から新製造法を提案してもらう等、連携やコミュニケーション力を高める必要がある。
予想問題 Ⅰ-2 簡易答案1
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって顕在化したサプライチェーンの脆弱性が顕在化している。多くの製造業では、必要な部品がそろわず生産が止まる工場が続発している。こうした被害最小化の観点からサプライチェーンの多元化・分散化の必要性が高まると考えられており、企業は製造現場の自動化やリモート化、またデジタルマニュファクチャリングへの取り組みを推進していくことが重要となる。
このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりにおいて製造現場の自動化やリモート化、デジタルマニュファクチャリングへの取り組みを推進するのにあたり必要な課題を多面的に挙げ、分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において関係者と具体的にどのように調整を図るのか、実行にあたり品質、コスト、生産性の観点から述べよ。
製造現場のデジタル化や自動化、リモート化への課題
① 業務フローの可視化と標準化
デジタル化を進める上で工場毎、工場間において属人化しやすい業務に一定の評価指標を基にサプライチェーン運用に関わる仕組みやルール、個別のリスク対策やリスクが顕在化した場合の対応方法などの業務フローの可視化と標準化が必要。
② 先進的IT、IOT、ロボット技術の活用
需要変動に対してサプライチェーンの多元化・分散化により複雑化する供給体制に合わせて機敏に対応するため、カメラやセンサー等、センシング技術を使い情報をデジタル化して設備稼働の稼働状況可視化や自動化、遠隔支援化、また工場操業を代替可能とするAIロボット技術の活用が必要。
③ 複数工場を横断したバリューチェーンにおけるデータ基盤構築
現場のIoTデータと基幹情報システムの業務データとを組み合わせて活用できる基盤構築やデジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションにより、複数工場や海外拠点やサプライヤーまでを横断したものづくりのバリューチェーンでのトレーサビリティ、データ共有や品質管理にかかる期間や作業負荷削減、ものづくり現場の改善が必要。
2. 最も重要な課題と解決策
重要な課題は先進的IT、ロボット技術の活用
① AI、RPAを活用した設備保全
機械設備に死活自体を知るためのセンサーと予知を行うためのセンサーの双方を取付け、死活の前兆パターンをAIに学習させ、予兆に基づく警告を行えるように
する。またデータ抽出、加工、集計にRPAを活用し、機器の状況のモニタリング、予測、分析、判断、実行の一連のプロセスを一気通貫して自動化する。これにより機械設備の稼働状況や故障検知を集中管理可能し、生産現場のリモート操作と管理により最低限の製造現場人員で安全性と生産性を確保可能し、サプライチェーン脆弱性を防止する。
② ロボット技術の活用
AIを活用した協働ロボット技術により作業動作を自立学習させ、人手作業をロボットで代用可能とする。また工場内の自動搬送車に自動ソーティングAI技術を活用し、次の作業を先回りして予測させることで効率的な生産稼働を可能とし、需要変動に対して複雑化した多元化したサプライチェーン供給体制を可能とする。
③ 遠隔支援技術による工場作業業務のリモート化
ARスマートグラスを活用し、現場の映像や音声を遠隔支援者にリアルタイムに伝送し、クラウド上にあるマニュアルや指示書をスマートグラス上に表示させることで遠隔から現場作業支援により多元化により分散化した工場において画一化された技術による生産を可能とする。
3. 解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
先進的IT、ロボット技術の活用により膨大なデータを扱うが、データの見方や入出力方法等に専門的なスキルを要する一方、製造現場でのデータ処理にエラーや入力遅れが生じると共有するデータに狂いが生じ、サプライチェーン全体で間違った判断を行うことで生産過多や生産停止、生産不良等が発生するリスクがある。
このため人の判断を介する工程において、データに関する必要な技術やノウハウを定型化し、デジタルエビデンスを「正しさ」の根拠として基準管理し、実績情報との適合性を検証するプロセスをデジタル上で行える仕組みを作ることでリスクをを防止する。
4. 業務遂行において必要な技術者としての要件
IOT化やリモート化すべき生産設備の決定、技術確立について生産性、コスト、品質に着目したKPI設定について調達部門を中心に共同での検討を働きかける。
ARスマートグラス等、現物を使った作業従事者によるデモを推進する等、関係者との連携により業務を遂行する。
予想問題 Ⅰ-2 完成答案
(1) 製造現場のデジタル・自動・リモート化への課題
① 業務フロー分析による将来予測モデル構築
デジタル化を進める上で工場毎、工場間において属人化しやすい業務について、一定の評価指標を基にサプライチェーン運用に関わる仕組みやルールを定める。また個別のリスク対策やリスクが顕在化した場合の対応方法等、業務フローの可視化を進める必要がある。さらに見える化で得られた情報を分析し、被害最小化に関係する因子の抽出、事象のモデル化を進め将来予測できるようにする必要がある。
② AIを活用したロボット、リモート技術の活用
サプライチェーンの多元化・分散化に合わせて複雑化する製造現場において、接触抑制の観点からAIを活用したロボット技術により省人化を進める必要がある。また安定した生産稼働を実現するため、AIを活用した故障予知診断技術、遠隔で技術支援のリモート化を進める技術の導入が課題である。
③複数工場横断型バリューチェーンのデータ基盤構築
現場のIOTデータと基幹情報システムの業務データとを組み合わせて活用できる基盤構築し、デジタルツイン上でのデータ見える化や分析を可能にする必要がある。また複数工場を横断したものづくりのバリューチェーンにおけるデータ共有、トレーサビリティ管理を効率化し、品質管理にかかる期間や作業負荷削減、ものづくり現場の改善を進める必要がある。
(2) 最も重要な課題と解決策
重要な課題は先進的IT、ロボット技術の活用
① AIを活用した需要予測、設備保全
機械設備に死活自体を知るためのセンサーと予知を行うためのセンサーの双方を取付け、死活の前兆パターンをAIに学習させ、予兆に基づく警告を行えるようにする。これにより生産ラインの突発的な停止を回避し、生産工程の想定外の事態を排除し、稼働率を最大化させ、サプライチェーンを強靭化する。
② AIロボット技術による設備稼働、物流自動化
工場内ピッキング処理を人に代わり、指定された範囲内で対象物をAIが最適な位置を探索し、吸着ハンドで指定場所に移動させるロボット技術を活用する。また無人搬送車の自動運転技術を駆使し、製品の搬入や搬出、梱包など一連の作業を機械化する。これにより人とロボットが協働させ省人化しつつ、製造現場での接触抑制を図りながら設備稼働や物流を自動化させることが可能とする。
③ 遠隔支援技術による工場作業業務のリモート化
拡張現実技術を活用し、高度な技術・技能を持つ技術者がARスマートグラスを活用した現場作業者にリアルタイムで遠隔支援する。さらにスマートグラス上にクラウド上にあるAI指示書やマニュアルを表示させることで分散化した工場でも画一化された技術支援を可能とする。
(3) 解決策に共通して新たに生じるリスクと対策
①リスク:機械学習の技術を活用した AI による需要予測、設備保全、自動化において、インプットとなる情報源とアウトプットとしての情報に至る論性プロセスがブラックボックス化されている。このため学習させた内容に誤りがあれば間違った判断をする可能性がある。この場合、サプライチェーンに誤った需要予測に基づく生産不足、生産過多が発生するリスク、設備停止、故障発生等、生産停止に陥るリスクが発生する。
②リスクへの対策:AIに機械学習する場合には学習データを増やすとともに学習前に統計的管理手法を導入し、データの妥当性評価、見直しを持続的に行いAIによる判断精度を高める。
(4) 業務遂行において必要な技術者としての要件
AIによる判断は推論結果として確率を伴っている点で確実性の保証に限界がある。このためAI判断が人に害を及ぼさない、あるいは害を及ぼすような結果を生み出した場合の予防策を検討する。これは技術士倫理綱領の公衆の利益の優先に相当する。またIT技術やAIの活用により、資源利用効率の向上と安全・安心な環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じた産業改善を進め、持続可能性を向上させる。これはSDGsの17の目標の「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
予想問題 Ⅰ-3 簡易答案1
理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「富岳」が、世界ランキングで首位となり、マテリアルズインテグレーションシステムの研究開発等、科学的な分野だけではなく機械工学分野においてシミュレーションとAIの融合で様々な社会問題の解決に活用されることが期待されている。
このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)スーパーコンピュータを活用した機械機器・装置のものづくりを推進していくのにあたり、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。
1. 多面的な観点から複数の課題
① 近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発
航空機等、部品点数規模の極めて大きい製品の実機・実スケー ル解析により燃費改善や安全性向上を図ることや自動車に代表される性能評価指標の極めて多い製品の複合領域・多目的最適化を現実的な設計期間内で実施して製品開発期間の抜本的短縮を図ることが必要。
② エネルギーの高効率な創出、変換・貯蔵、利用の新規基盤技術の開発
分子・原子レベルの反応機構を解明するための装置や反応の全体、現実的な状況におけるシミュレーションを実現して多くの原子・分子が関係し合う複雑な現象の仕組みを解明し、低コストでつくることができる有機太陽電池や高効率太陽電池、太陽光で水から水素を取り出す人工光合成、高性能の燃料電池や蓄電池、日本近海の海底下に豊富にあるメタンハイドレートからメタンを回収する技術などの開発が必要。
③ 次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成
デバイスや材料のもとになる物質について機能や性能の向上と電子状態の関係を調べることで複雑な構造や組成も考慮した現実に近いシミュレーションを行い、産業化が可能な新しいデバイスや材料の設計により新機能デバイスや高性能材料の開発を進める必要がある。
2. 最も重要な課題と解決策
重要な課題は近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発
① 自動車・重機械溶接部大規模解析による製造プロセス高信頼化
高溶接条件制御や溶融部の水素脆化の評価が可能な高精細メッシュを使用した自動車・重機械フレームの解析モデル全体と溶融部の一括高精度計算を実現するためのコア技術として大規模並列マトリックスソルバーを開発する。これにより自動車・重機械フレーム全体規模で溶接工程による永久変形が実用的な時間内に高精度に予測できる高度溶接シミュレーション技術を確立し、製造プロセスの高信頼化・時間短縮を図る。
② 成形シミュレータの開発によるCFRP最適設計
ジェットエンジンのファンブレードや自動車ボディの抜本的な軽量化を実現するために、成形性の高い熱可塑CFRPのミクロ構造にまで考慮した高度な最適設計が求められているが現状では加熱成形後の繊維配置を正確に予測する手法がないため、正確な強度評価すらできていない。このため、設計したら製造し、破壊試験を繰り返すという試行錯誤的な設計が行われている。このため、CFRTP製部品の成形プロセスを正確にシミュレーションできるソフトウェアを開発する。
③ リアルタイムリアルワールド設計プロセス革新
新素材や新たな動力を用いた次世代自動車を早急にかつ高い品質で実現するため、実験代替を目的としたより高次元でCAEを利用した設計プロセスの革新が必要である。このため統一的なデータ構造に基づく流体連成解析手法を開発し、HPC 環境を活用することで、解析ランタイムを精度を損なうことなく現状の数十倍に抜本的に加速すると共に、時々刻々と変化する運転条件変化を考慮したリアルワールドシミュレーションを実現する。
3. 解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
シミュレーションはいずれも構造上の幾何学的の不確定要素や流体の界面での不確実性等、現実をシミュレーション上で再現しきれずに誤った予測を行い溶接部、CFRP構造の強度不足や力学的挙動予測の間違いにより破壊事故を起こすリスクがある。このため段階的にシミュレーション結果を試作等と組み合わせ現実と照らし合わせて解析結果や精度の妥当性を評価する仕組みを取り入れリスクを回避する。
4. 業務遂行において必要な技術者としての要件
解析シミュレーション業務は高い専門性に加え、結果を過信しない極めて慎重な取り組みが必要であることから、第三者の意見や現実の結果との照らし合わせを通じて公正な分析と判断を行う。これは技術士倫理綱領の公正かつ誠実な履行に該当する。
予想問題 Ⅰ-3 完成答案
(1) 多面的な観点から抽出した複数の課題
① 近未来型革新的設計・製造プロセスの開発
航空機等、部品点数規模の極めて大きい製品の実機・実スケール解析により燃費改善や安全性向上を図ることや自動車に代表される性能評価指標の極めて多い製品の複合領域・多目的最適化を現実的な設計期間内で実施して製品開発期間の抜本的短縮を図ることが必要である。
②エネルギー創出・変換・貯蔵・新規基盤技術の開発
分子・原子レベルの反応機構を解明するための装置や反応の全体、現実的な状況におけるシミュレーションを実現して多くの原子・分子が関係し合う複雑な現象の仕組みを解明し、低コストでつくることができる有機太陽電池や高効率太陽電池、太陽光で水から水素を取り出す人工光合成、高性能の燃料電池や蓄電池、日本近海の海底下に豊富にあるメタンハイドレートからメタンを回収する技術などの開発が必要。
③新機能デバイス・高性能材料の創成
デバイスや材料のもとになる物質について機能や性能の向上と電子状態の関係を調べることで複雑な構造や組成も考慮した現実に近いシミュレーションを行い、産業化が可能な新しいデバイスや材料の設計により新機能デバイスや高性能材料の開発を進める必要がある。
(2) 最も重要な課題と解決策
重要な課題は近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発であり、以下に解決策を示す。
①自動車等溶接部解析による製造プロセス高信頼化
高溶接条件制御や溶融部の水素脆化の評価が可能な高精細メッシュを使用した自動車・重機械フレームの解析モデル全体と溶融部の一括高精度計算を実現するためのコア技術として大規模並列マトリックスソルバーを開発する。これにより自動車・重機械フレーム全体規模で溶接工程による永久変形が実用的な時間内に高精度に予測できる高度溶接シミュレーション技術を確立し、製造プロセスの高信頼化・時間短縮を図る。
②成形シミュレータの開発によるCFRP最適設計
ジェットエンジンのファンブレードや自動車ボディの抜本的な軽量化を実現するために、成形性の高い熱可塑CFRPのミクロ構造にまで考慮した高度な最適設計が求められているが現状では加熱成形後の繊維配置を正確に予測する手法がないため、正確な強度評価すらできていない。このため、設計したら製造し、破壊試験を繰り返すという試行錯誤的な設計が行われている。このため、CFRTP製部品の成形プロセスを正確にシミュレーションできるソフトウェアを開発する。
② リアルタイムリアルワールド設計プロセス革新
新素材や新たな動力を用いた次世代自動車を早急にかつ高い品質で実現するため、実験代替を目的としたより高次元でCAEを利用した設計プロセスの革新が必要である。このため統一的なデータ構造に基づく流体連成解析手法を開発し、HPC環境を活用することで、解析ランタイムの精度を損なうことなく現状の数十倍に抜本的に加速すると共に、時々刻々と変化する運転条件変化を考慮したリアルワールドシミュレーションを実現する。
(3) 解決策に共通して新たに生じるリスクと対策
シミュレーションはいずれも構造上の幾何学的の不確定要素や流体の界面での不確実性等、現実をシミュレーション上で再現しきれずに誤った予測を行い溶接部、CFRP構造の強度不足や力学的挙動予測の間違いにより破壊事故を起こすリスクがある。このため段階的にシミュレーション結果を試作等と組み合わせ現実と照らし合わせて解析結果や精度の妥当性を評価する仕組みを取り入れリスクを回避する。
(4) 業務遂行において必要な技術者としての要件
解析シミュレーション業務は高い専門性に加え、結果を過信しない極めて慎重な取り組みが必要であることから、第三者の意見や現実の結果との照らし合わせを通じて公正な分析と判断を行う。これは技術士倫理綱領の公正かつ誠実な履行に該当する。
予想問題 Ⅰ-4 簡易答案1
世界的に調達、生産、消費、廃棄といった一方向の流れではなく、リサイクル、再利用、再生産、省資源の製品開発、シェアリングなどを通じた資源循環の実現を目指す循環経済(サーキュラーエコノミー)の概念が浸透しており、ものづくりにおいても循環させやすい素材の開発・採用だけでなく、長寿命化や回収、分離のしやすさを考慮した製品設計や製造にも取り組む必要がある。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)「サーキュラーエコノミー」を推進していくものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件をリーダーシップと機械技術者としての倫理の観点から述べよ。
1. 多面的な観点から複数の課題
①材料面からの課題
部品を構成する材料が微生物により分解され自然に戻すことができる生分解性プラスチックを活用し、再び素材として活用できるようになることから、生分解性プラスチックの分解性能を向上させる開発が課題。また使用済み製品に含有するレアアースの回収率向上を促進する技術の確立が課題である。
②設計面からの課題
製品設計の段階で部品を共通化し、また予め分離、分解が容易な構造を採用しておくと共に使用される材料は水平リサイクルが容易な素材を選定する必要がある。またリサイクル、リユースを想定し、耐久性を考慮した強度設計が課題である。
③製造面(分離・選別)からの課題
様々な樹脂材料、金属材料を分離、選別する技術、また軽量化材料として使用されるアルミ合金を水平リサイクルできる材料選別技術の確立が課題である。
2. 最も重要な課題と解決策
重要な課題は設計面の課題である。
① 色彩選別法による分別処理技術の活用
鉄、銅、アルミニウム等のミックスメタルの中に含まれる、銅とアルミニウムの色が異なることに着目し、色彩により両者を分離・回収して回収素材の品位向上可能な色彩選別法による分別処理技術を活用する。
② アルミニウム合金の水平リサイクル活用
軽量化のため輸送機器で多く活用が進むアルミニウム合金について、レーザー誘起ブレークダウン分光法によるソーター装置により細かく破砕した金属混合物をコンベヤーに載せて移動させながら連続的にレーザーを照射し、合金の種類を識別・選別することで展伸材を水平リサイクル可能とする。
③ 製品分離技術の確立
磁力や電磁誘導の反力で鉄鋼や非鉄金属とプラスチックを分離し、密度の差や帯電の強さでプラスチックの種類を分離する。X線検査で使えないプラスチックを判別し、エアガンで吹き飛ばす素材分離技術を活用し、リサイクルを可能とする。
解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
リサイクルに適した製品設計や分離技術により素材毎にリサイクル可能となるが、レーザー照射やX線等によって分離できない素材で低品質な材料が再生されることで予期せぬ破壊事故に至るリスクがある。このため対策として製造段階からリサイクルを視野に入れ、製品の構成素材情報を登録したRFIDタグを内蔵し、廃棄回収後、RFIDタグの情報を読み取り選別工程を自動化し、間違いを防止する。
3. 業務遂行において必要な技術者としての要件
業務遂行において製品を構成する部品構成や構造を明らかにし、技術を確立するためリサイクルに必要な分離技術や選別技術の知見を関係者から集約し、改良の方向性を示すようリーダーシップを発揮する。また技術者倫理も高めてするには、業務遂行においては様々な関係者の立場を尊重して協力するよう努める。これは技術士倫理綱領の相互の協力に相当する。
予想問題 Ⅰ-4 完成答案
(1) 多面的な観点から複数の課題
① 材料面からの課題
部品を構成する材料が微生物により分解され自然に戻すことができる生分解性プラスチックを活用し、生分解性プラスチックの分解性能を向上させる開発が必要である。またリユースを想定し、材料の洗浄性、表面再処理による影響等、耐劣化機構を把握し、製品寿命より長い寿命を持たせることが可能な金属材料の開発や寿命予測技術の確立が課題である。
② 設計面からの課題
リユースや解体・リサイクルを前提とし、モジュール単位の製品設計を行い欠陥部品だけを交換・修理することができるようにする必要がある。また製品設計の段階で部品を共通化し、また予め分離、分解が容易な構造を採用するリサイクル容易化設計の実現が課題である。さらに使用される材料は水平リサイクルが容易な素材を選定し、材料強度を考慮し、耐久性を考慮した強度設計が課題である。
②製造面(分離・選別)からの課題
樹脂材料、金属材料等、様々な使用済み製品について効率よく材料毎に分離、選別する技術、またアルミ合金や樹脂等、水平リサイクルを可能とする素材選別技術が課題である。また使用済み製品に含有するレアアースの回収率向上を促進する技術、の確立が課題である。
(2) 最も重要な課題と解決策
重要な課題は製造面の課題である。
①色彩選別法による素材分別処理技術の確立
鉄、銅、アルミニウム等のミックスメタルの中に含まれる銅とアルミニウムの色が異なることに着目し、色彩により両者を分離・回収して回収素材の品位向上が可能な色彩選別法による分別処理技術を確立する。
②水平リサイクル技術の活用
軽量化のため輸送機器で多く活用が進むアルミニウム合金について、レーザー誘起ブレークダウン分光法によるソーター装置を活用する。これにより細かく破砕した金属混合物をコンベヤーに載せて移動させながら連続的にレーザーを照射し、合金の種類を識別・選別することで展伸材を水平リサイクル可能とする。また異種材料が固着している複合材料は物理的に分離するのが困難であるため主成分の汎用樹脂を化学リサイクル法により高付加価値材料として取り出す。これにより汎用樹脂には影響を及ぼすことなく異種材料のみを完全分離することで水平リサイクルを可能とする。
③ 製品分離技術の活用
磁力や電磁誘導の反力で鉄鋼や非鉄金属とプラスチックを分離し、密度の差や帯電の強さでプラスチックの種類を分離する技術を活用する。またX線検査で使えないプラスチックを判別し、エアガンで吹き飛ばす素材分離技術によりリサイクルを可能とする。さらにレアアース磁石を回収し、熱処理工程を経て脱磁した上で磁石製造工程の原料としてリサイクルするスキームを確立することでレアアース有効利用を可能とする。
(3) 解決策に共通して新たに生じるリスクと対策
① リスク
リサイクルに適した製品設計や分離技術により素材毎にリサイクル可能となるが、レーザー照射やX線等によって分離できない素材では低品質な材料が再生される。この場合、航空機や自動車等の輸送機械で使用されると強度不足により死傷事故を起こすリスクがある。
②リスクへの対策
対策として製造段階からリサイクルを視野に入れ、製品の構成素材情報を登録したRFIDタグを内蔵させる。廃棄回収後、RFIDタグの情報を読み取り選別工程を自動化することで間違いを防止する。
(4) 業務遂行において必要な技術者としての要件
業務遂行において製品を構成する部品構成や構造を明らかにし、技術を確立するためリサイクルに必要な分離技術や選別技術の知見を関係者から集約し、改良の方向性を示すようリーダーシップを発揮する。また技術者倫理も高めてするには、業務遂行においては様々な関係者の立場を尊重して協力するよう努める。これは技術士倫理綱領の相互の協力に相当する。
予想問題 Ⅰ-5 簡易答案1
不確実性の高い世界では、環境変化に対応するために、組織内外の経営資源を再結合・再構成する経営者や組織の能力(ダイナミック・ケイパビリティ)が競争力の源泉となるとされている。これらの能力を発揮してプロセス改革を行い、様々な環境変化に柔軟に対応するためには製造業のデジタル化やデータ活用が有効とされている。一方、近年は製品の複雑化により、設計部門への負荷が著しく増大している一方、製品の品質とコストの8割程度は設計段階で決まると言われており、開発の初期段階に資源をできるだけ集中的に投入し、問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダを少なくすることが重要となる。
このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりの手法をデジタル化やデータ活用によって変革する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての継続研鑽、マネジメントの観点から述べよ。
1. 多面的な観点から複数の課題
① エンジニアリングチェーンにおけるバーチャル環境構築
解析、形状、制御、機能、統計データ等のデジタル情報に基づくノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できる場としてバーチャル環境構築により設計・製造リードタイムの短縮、多品種少量生産や事業環境の変化への柔軟性を高める必要がある。
② サプライチェーンのバリューチェーンにおけるデータ基盤構築
複数工場やサプライヤーの稼働状況データやIOT機器データを連携し、デジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションを行うことでサプライチェーン寸断時の対策や生産性の改善、故障予測を行う必要がある。
③生産設備のIOTデータによる予防保全技術の確立
老朽化した設備の振動や音といった物理現象の精密な計測データをIOT機器によりデータとして取得して工場内の個々の部品や機械を対象にした予知保全を行うことで現場の生産設備の予防保全技術を確立する必要がある。
2.最も重要な課題と解決策
要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築、解決策は以下のとおり
①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築
設計部門が設計を行う際使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。また設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。
②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築
各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。
③リアルデータによるバーチャル開発
リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。
2.解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。このため検証はバーチャルと実物試作を併用する。また解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。
3.業務遂行において必要な技術者としての要件
バーチャルエンジニアリング推進のため、自らCAEの新たな機能や解析法の技術情報を得るとともにバーチャル環境に多くの専門家を広範囲参加させることで集団参加の創造活動を活性化させる。
予想問題 Ⅰ-5 完成答案
(1) 多面的な観点から抽出した課題
①エンジニアリングチェーンでのバーチャル環境構築
設計部門が設計上、使用する設計部品表と製造部門が製造上、使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表がバラバラで互いに共有できていない。このためデータの変換処理に膨大な工数や処理時間が掛かるという問題がある。また作業工程・設備・治工具等の製造現場情報が設計仕様に反映できないために製造現場に過度な負担が掛かる等、連携が不十分である。このためデジタル情報に基づきノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できるバーチャル環境構築で設計・製造リードタイムの短縮、多品種少量生産や事業環境変化への柔軟性向上が課題である。
②サプライチェーンにおけるデータ基盤の構築
サプライチェーンにまたがって開発・調達・製造・物流・販売等の各プロセスにおける状況を過去の実績や予測から数値化する必要がある。そしてサイバー空間で数値化された情報を管理し、無駄のない製造販売計画を立てることが必要である。また複数工場やサプライヤーの稼働状況データやIOT機器データを連携し、デジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションを行うことが必要である。さらにはサプライチェーンの生産性の最適化や効率化、寸断時のボトルネックの把握等、サプライチェーンにまたがったデータ基盤の構築が課題である。
③生産設備のIOTデータによる予防保全技術の確立
老朽化した設備の振動や音といった物理現象の精密な計測データをIOT機器によりデータとして取得しておく。そして過去から現在までのセンサーの時系列データやイベントデータを結び付けておき、故障を事前に予測できるようにする必要がある。さらに予測結果に基づき、工場内の個々の部品や機械を対象にした予知保全を行うことで、生産性を高めることが課題である。
(2) 最も重要な課題と解決策
バーチャルエンジニアリング環境構築の解決策を以下に述べる。
①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築
設計部門が設計を行う際使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。また設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。
②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築
各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。また3Dモデル形状をNC加工機の読み込みI/Fプログラムに入力させることでNC加工機のティーチングが自動的に行わせることが可能となる。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階での同時検討が可能となる。
③リアルデータによるバーチャル開発
製品がどのようなシーンでどのような振る舞いをするのかという検討を行うための環境情報も持ったシーンモデルを活用する。これにより開発上流段階でリアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や設計仕様をバーチャルモデルで表現しながら詳細を決定していくことができる。
(3) 解決策に共通して新たに生じるリスクと対策
自動車の場合はシーンモデルで製品単体、製品の各部位のモデルの他、製品を使う環境、使う人の特性等をバーチャルモデル化する。このため人が想定以上に縁石を乗り上げるような運転をした場合、サスペンション部品が疲労破壊して破断し、死傷事故を起こす恐れがある。
(4) 業務遂行において必要な技術者としての要件
データを保証する約束事が実施されないと、バーチャルデータではなくフェイクデータを用いた解析結果で認定を受ける不正も発生することになる。このため契約ルールを機能させ、契約ルールに従ったバーチャルデータのみ信頼性が担保されたデータの扱いを受けられるよう仕組みを構築する。またバーチャルモデル認証制度を作り、信頼性の高いバーチャルエンジニアリング活用の環境づくりを進める。