「GX推進による製造業の持続可能な未来: 環境保護と競争力強化に向けた技術者の課題と戦略」

予想Ⅰ  GX(グリーン・トランスフォーメーション)は、気候変動の気候変動と国際的な削減目標に対応し、持続可能な経済構造への変革を促す社会的なトレンドである。従来の省エネや環境負荷低減だけでは限界があることから、消費者や投資家の環境意識の高まりに応えるため、デジタル技術とグリーン技術の統合による自由なアプローチが求められている。一方、機械企業は、環境規制の厳格化、コスト削減要求、技術革新のスピード、競争の激化、資源制約、そして持続可能性への社会的要求に応えることが求められている。これらの要因を踏まえて、あなたが企業のGX推進責任者として、企業のモノ作りを計画するとします。

(1)今後日本における環境保護と持続可能性を両立させるため、技術者としての立場から考えた場合にどのような課題が考えられるか、多面的な観点から3つを抽出しそれぞれの観点を明記したうえで、それぞれの課題内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する解決策を機械技術者として3つ示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

解答

(1)課題

①再生可能エネルギーの導入促進

 日本の発電量の70%は火力発電等、化石燃料に依存している。そのため、化石燃料依存脱却の観点から、工場で使用する電力を再生可能エネルギーに転換する。    

 最新型のペロブスカイト太陽電池、風力発電設備、排熱回収ボイラを積極導入し、再生可能エネルギーの利用率を向上させる。

②環境負荷の低い機械製品の開発

 機械製品が消費する電力、消耗品、冷却水等を削減することで、環境負荷の低い機械を開発できる。革新的な機械製品開発の観点から、より環境負荷の低い製品開発を行う。

 摺動部に耐摩耗性の高い機械要素を導入し、潤滑油の消費を減らす。また、溶接構造品を削り出し構造として多部品溶接構造を一体構造とし強度向上を図る。

③生産技術の革新

 DX化に取り組んでいる製造業は30%程度である。そのため、革新的技術の普及により、生産技術の環境負荷低減を図る必要がある。生産システムDX化の観点から、材料の節約、電力消費を削減する。

 また、3Dプリンタを導入し、複雑な部品の製作である。また、デジタルツインによる加工前シミュレーシを行い、効率的で無駄の無い機械加工を行う。

(2)課題②に対する解決策

①ハイブリッドセラミック軸受

 回転機械の支持部には、一般的に潤滑油を用いた構造が多い。そこで、転がり軸受の転動体に窒化ケイ素セラミックスを用いたハイブリッド軸受を導入する。耐久性を30%向上させることができ、グリース潤滑を使用できる範囲拡張できる。

 機器の耐久性向上に加え、グリース潤滑構造とすることで、潤滑材の交換頻度を低減できる。結果として廃棄物削減と環境汚染防止に繋がる。

②溶接構造の一体化による工程短縮

 回転機械の羽根車等、溶接構造品はブローホール、割れ等の溶接欠陥により強度が低下する。また、溶接に使用する溶接棒や電気、アセチレンガスの燃焼により、CO2の排ピ出が発生する。

 そこで、2ピース構造を導入する。溶接構造部品を削り出し技術により、2分割構造とする。これにより溶接工程と組み立て工程を大幅に短縮してCO2排出を低減し、溶接欠陥除去による信頼性向上を図る。

③ICTセンサーによる状態監視と自律運転

 機械製品の定期的な整備には、分解作業、検査、再組立による作業が一般的である。しかし、分解作業、部品の製作、交換には作業工程でCO2が発生する。

 そこで、遠隔モニタリングシステムを導入する。I Tセンサーにより、機械の振動、温度、出力をリアルタイムで管理できるクラウドシステムを構築する。自動制御により、機械の異常温度、異常振動を検知した場合は出力を低下させて安全運転を行う。運用者に迅速に通知して予知保全整備を行う。

(3)波及効果と懸念事項、対応策

 機械の長寿命化により、整備の機会が減少する。その結果、整備や修理に要する人的資源の節約につながり、労働時間の短縮が可能となる。

 懸念事項は、近年の少子高齢化による、機械技術分野での人材不足である。その影響は、機械製品の開発、製作及び導入に及び、生産工程に影響が生じる。

 対応策として、ICTやデジタルツインを人材教育にも活用する。セラミック軸受設計の技術や現場における状態監視のノウハウをリモートで多人数に教育する。

(4)技術者としての要件、留意点

①技術者倫理の観点

 近年の温暖化に起因する高温環境に対応して、材料の熱膨張による破損事故を防止した設計とする。変形を吸収出来る機構を採用し、部品間の接触による破損事故を防止する。技術士倫理綱領「安全、健康、福利の確保」に寄与する。

②持続可能性の観点

 スマート工場は、災害時に自然エネルギーとEVを併用、電力を供給する自立式発電を行う。周辺住民の生活を支援し、インフラ復旧を促進。これはSDGs目標の「産業と技術革新の基盤をつくろう」に寄与する。

講評

良い点、評価できる点

  1. GX(グリーン・トランスフォーメーション)に対する課題設定の妥当性
     日本のエネルギー構造や製造業が直面する環境課題を適切に捉え、再生可能エネルギーの導入、環境負荷の低い機械製品の開発、生産技術の革新という具体的な3つの課題を抽出している点が評価できます。これにより、製造業が直面する現実的な課題を技術者視点で幅広く考察していることが示されています。

  2. 具体的な技術的解決策の提案
     ハイブリッドセラミック軸受や溶接構造の一体化、ICTセンサーによる状態監視と自律運転など、技術的に具体的な解決策が示されており、実務的かつ応用可能な提案となっています。これにより、機械技術者としての専門知識がしっかり反映されている点が評価できます。

  3. リスクと対応策の明確な考察
     波及効果としての労働時間短縮や、少子高齢化による技術者不足といったリスクを明確に認識し、それに対するICTやデジタルツインを用いた教育の提案がされている点が優れています。リスクマネジメントの視点を持ち、柔軟に対応策を考慮している点が評価に値します。

改善を要する点と改善案

  1. 解決策の実現可能性や技術的障壁についての詳細化
     提案されている解決策自体は技術的に妥当であるものの、それらの実現に伴うコストや技術的な課題についての言及がやや不足しています。特に、ハイブリッドセラミック軸受や溶接構造の一体化には高度な技術とコストが伴うため、これらの導入における障壁についてもう少し掘り下げると良いでしょう。
    改善案: 解決策の実施に伴う技術的ハードル、コスト、時間などについて具体的に述べることで、実現可能性をより現実的に捉えることができます。

  2. 波及効果に関するさらなる具体性
     波及効果として「労働時間の短縮」が挙げられていますが、その具体的な影響や数値的な根拠についての言及が不足しています。これにより、提案の効果がやや抽象的に感じられます。
    改善案: 提案された技術導入の結果、どの程度の労働時間短縮やコスト削減が見込まれるか、具体的なデータや過去の事例を挙げることで、提案の説得力を高めることが期待されます。

  3. 技術者倫理や持続可能性に関する深掘り
     技術者倫理や持続可能性の観点に触れていますが、もう少し具体的な実践例や実務的なアプローチが必要です。例えば、どのように技術者としての倫理観を維持しつつ、環境に配慮した設計や運用を行うかについて詳しく述べると、論文の内容がより深まります。
    改善案: 技術者としての倫理や持続可能性を具体的に実践する方法(例:環境負荷を最小限に抑えるための設計基準や、持続可能な材料の選定基準)についての詳細を加えることで、論文がさらに充実します。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
技術的な提案やリスク管理の視点がしっかりしており、現実的な課題に対する解決策を技術者の視点から論じています。ただし、解決策の実現可能性や波及効果に関するさらなる具体性を強化し、技術者倫理や持続可能性についての議論を深めれば、さらに高い評価が期待できるでしょう。

「スマート製造技術によるエンジニアリングチェーンの最適化と課題解決:設計段階の高度評価とリードタイム短縮を目指して」

 1.スマート製造技術を導入するための課題

(1)設計プロセスの標準化とモジュール化

 様々な顧客要求品質への対応の観点から、品質要求を個別構成と標準構成に定義し、各モジュールに求められる要件・強度・寸法精度などを標準化する。

モジュール設計標準をデータベース化し、顧客要求にもとづき、製品上の要求属性が分類され、モジュール選択を自動設定する。これにより、迅速に組合せ設計が統合される自動設計システムを構築する。

(2)エンジニアリングチェーンのデジタルツイン化

製品開発の効率性の観点から、研究開発・設計・製造・保守の実際の工程を仮想空間で再現し、全体最適化をする。基盤技術の統合化による複合現象モデルの開発を行い、デジタルツインへ展開することにより、サイバー空間で設計と検証をする。これにより、設計開発期間の短縮を図る。

(3)スマート工場のCPS化

 生産プロセスの効率性の観点から、物理的な工場の製造設備へIoTセンサを設置し、全ての情報をデジタル化しサイバー空間に再現する。例えば、製造設備の稼働率、温度、圧力、流量といった操業状態をリアルタイムで収集し、産業ロボットや製造技術者の動きをシミュレーションすることで、モジュールに合わせた最適な生産工程を自動選択する。

2.エンジニアリングチェーンのDT化の解決策

(1)多岐にわたる材料特性の解明

デジタルツインモデルに使用する材料定数の精度と信頼性を向上するため、高温・腐食環境・繰り返し負荷等での正確な材料試験をする。非線形・時間依存現象など弾塑性シミュレーションにより、実験データと解析を比較し精度を向上する。

得られたデータを一元管理をするため、AWSやMicrosoft Azureなどのクラウドプラットフォームを利用し、分析・シミュレーション基盤の構築をする。

(2)機械損傷プロセスモデルの構築と検証

 機械要素の損傷・破壊過程や非線形変形を仮想化するため、熱や繰り返し荷重や振動、流体潤滑が同時に作用する複合現象の解明によりモデル化をする。例えば、クリープ疲労相互作用を考慮した予測モデルを導入し、複合現象をデジタルツイン環境下で再現する。

 シミュレーションは、ANSYSやSimuliaなどのソフトを利用して、高精度で効率的な開発を行う。

(3)リアルデータによる構造デジタルツイン化

市場の実機に、ひずみセンサや加速度計を設置し運動や変形を計測する。一部の計測部位をFEM解析により構造全体へ数値シミュレーションする。累積疲労損傷度や腐食劣化などをリアルタイムで評価し、3DCADへフィードバックし改善・開発をする。

収集したリアルデータは、AIで分析し、寿命予測を行い予知保全の最適化をする。

3.リスクと対策

構造デジタルツインは、実機の限られた計測部位からFEMにより構造全体を補間し実機の挙動を推定する。このため、使用環境の変化に対し非計測部位で不連続点が発生した場合、補間精度が低下し、予測寿命と実際の寿命が乖離し、製品が設計寿命より前に破損するリスクがある。

対策として、実機の検査間隔を定期的に設け、予測と実測を比較し、センサ測定位置や補間法の改良により予測の信頼性向上を図る。

4.技術者として必要な要件・留意点:

(1)技術者倫理

複合現象のモデル化において、採用した寿命則、解析手法を共有化し、関係者とバリデーションとベリフィケーションを徹底することで、データの透明性を高める。これは、技術士倫理綱領の真実性の確保に相当する。

(2)持続可能性

高温・腐食環境や繰り返し負荷下での使用材の環境負荷を定量化し、持続可能な材料選定を優先させる。複合現象の高精度な設計により、材料使用料を最適化し軽量化する。これにより、資源のムダ使いを減らし環境負荷を低減する。これは、SDGs12つくる責任つかう責任に相当する。

解答

 1.スマート製造技術を導入するための課題

(1)設計プロセスの標準化とモジュール化

 様々な顧客要求品質への対応の観点から、品質要求を個別構成と標準構成に定義し、各モジュールに求められる要件・強度・寸法精度などを標準化する。

モジュール設計標準をデータベース化し、顧客要求にもとづき、製品上の要求属性が分類され、モジュール選択を自動設定する。これにより、迅速に組合せ設計が統合される自動設計システムを構築する。

(2)エンジニアリングチェーンのデジタルツイン化

製品開発の効率性の観点から、研究開発・設計・製造・保守の実際の工程を仮想空間で再現し、全体最適化をする。基盤技術の統合化による複合現象モデルの開発を行い、デジタルツインへ展開することにより、サイバー空間で設計と検証をする。これにより、設計開発期間の短縮を図る。

(3)スマート工場のCPS化

 生産プロセスの効率性の観点から、物理的な工場の製造設備へIoTセンサを設置し、全ての情報をデジタル化しサイバー空間に再現する。例えば、製造設備の稼働率、温度、圧力、流量といった操業状態をリアルタイムで収集し、産業ロボットや製造技術者の動きをシミュレーションすることで、モジュールに合わせた最適な生産工程を自動選択する。

2.エンジニアリングチェーンのDT化の解決策

(1)多岐にわたる材料特性の解明

デジタルツインモデルに使用する材料定数の精度と信頼性を向上するため、高温・腐食環境・繰り返し負荷等での正確な材料試験をする。非線形・時間依存現象など弾塑性シミュレーションにより、実験データと解析を比較し精度を向上する。

得られたデータを一元管理をするため、AWSやMicrosoft Azureなどのクラウドプラットフォームを利用し、分析・シミュレーション基盤の構築をする。

(2)機械損傷プロセスモデルの構築と検証

 機械要素の損傷・破壊過程や非線形変形を仮想化するため、熱や繰り返し荷重や振動、流体潤滑が同時に作用する複合現象の解明によりモデル化をする。例えば、クリープ疲労相互作用を考慮した予測モデルを導入し、複合現象をデジタルツイン環境下で再現する。

 シミュレーションは、ANSYSやSimuliaなどのソフトを利用して、高精度で効率的な開発を行う。

(3)リアルデータによる構造デジタルツイン化

市場の実機に、ひずみセンサや加速度計を設置し運動や変形を計測する。一部の計測部位をFEM解析により構造全体へ数値シミュレーションする。累積疲労損傷度や腐食劣化などをリアルタイムで評価し、3DCADへフィードバックし改善・開発をする。

収集したリアルデータは、AIで分析し、寿命予測を行い予知保全の最適化をする。

3.リスクと対策

構造デジタルツインは、実機の限られた計測部位からFEMにより構造全体を補間し実機の挙動を推定する。このため、使用環境の変化に対し非計測部位で不連続点が発生した場合、補間精度が低下し、予測寿命と実際の寿命が乖離し、製品が設計寿命より前に破損するリスクがある。

対策として、実機の検査間隔を定期的に設け、予測と実測を比較し、センサ測定位置や補間法の改良により予測の信頼性向上を図る。

4.技術者として必要な要件・留意点:

(1)技術者倫理

複合現象のモデル化において、採用した寿命則、解析手法を共有化し、関係者とバリデーションとベリフィケーションを徹底することで、データの透明性を高める。これは、技術士倫理綱領の真実性の確保に相当する。

(2)持続可能性

高温・腐食環境や繰り返し負荷下での使用材の環境負荷を定量化し、持続可能な材料選定を優先させる。複合現象の高精度な設計により、材料使用料を最適化し軽量化する。これにより、資源のムダ使いを減らし環境負荷を低減する。これは、SDGs12つくる責任つかう責任に相当する。

講評

良い点、評価できる点

  1. スマート製造技術の課題に対する多面的な視点
     設計プロセスの標準化、デジタルツインの導入、スマート工場のCPS化といった多面的な視点から、エンジニアリングチェーン全体の課題を幅広く捉えています。それぞれの観点から具体的な改善方法を提案しており、技術的な裏付けがしっかりしている点が評価できます。

  2. 具体的な解決策の提示
     デジタルツイン化のための材料特性の解明や損傷プロセスモデルの構築、リアルデータによるフィードバックなど、課題に対する技術的な解決策が具体的かつ詳細に記述されています。特に、クラウドプラットフォームやシミュレーションソフトを活用したアプローチは、現代の製造技術に即した実践的な提案です。

  3. リスクの明確な認識と対策の提示
     デジタルツインの補間精度に関するリスクを明確に認識し、予測寿命と実際の寿命の乖離リスクについて言及している点が優れています。これに対し、定期的な検査やセンサ測定位置の改善という具体的な対策を提案しており、リスクマネジメントがしっかり考えられています。

改善を要する点と改善案

  1. 解決策の実現可能性に関する詳細な考察が不足
     解決策自体は適切ですが、その実現に伴うコストや技術的な障壁についての具体的な言及が少ない点が課題です。例えば、デジタルツイン化にかかる初期導入コストや、既存のインフラに対する影響などに触れることで、実現可能性をより明確にする必要があります。
    改善案: 解決策を実現するためのコスト、技術的ハードル、必要なリソースに関して、現実的な検討を加えると、より説得力が高まります。

  2. リスク対策の実効性に関する具体性の強化
     補間精度の低下に関するリスクとその対策について言及していますが、対策の具体的な実施プロセスや技術的な詳細に関する説明がやや不十分です。特に、検査頻度や補間法の改良に関する具体的な技術的詳細が加わると、より信頼性の高い対策として受け取られます。
    改善案: 検査頻度や補間法の具体的な技術的手法、例えばセンサの配置最適化や補間アルゴリズムの詳細について、さらに詳しく述べることで、リスク対策の実効性を高められます。

  3. 倫理的な議論と持続可能性の深掘り
     技術者倫理や持続可能性について触れていますが、もう少し具体的な実践例や実務的なアプローチが必要です。例えば、関係者との透明性確保のための具体的なプロセスや、持続可能性を達成するための具体的な材料選定や製造プロセスについての詳細な説明が加わると良いです。
    改善案: 技術者としての倫理や持続可能性を実現するための具体的な実践例を取り入れることで、より実務的な議論が展開でき、信頼性が向上します。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
技術的な知識や解決策が具体的で、現実の製造現場に即した提案がなされている点が高く評価されます。特に、デジタルツインやリアルタイムデータ解析といった先進技術を活用した具体的な提案が充実しています。ただし、実現可能性やリスク対策の具体性、技術者倫理に関するさらなる深掘りが必要です。これらの点を補強すれば、さらに高い評価を得られるでしょう。

「コボット導入による製造ラインの革新と課題:労働力不足解消と生産性向上に向けた技術者の挑戦」

 コボット(協働ロボット)は人間と安全に協働できるように設計されたロボットで、センサーやビジョンシステムを搭載し、リアルタイムで環境に対応する。プログラムの柔軟性が高く、簡単再設定できるため、さまざまなタスクに適用可能である。こうしたコボットの特性とその導入のメリットを生かして、現実の工場製造ラインに導入する担当者の立場で考える。コボットはユーザーフレンドリーなインターフェースを持っているものの、特定のタスクに合わせた詳細な設定やプログラムのカスタマイズには高度な専門知識が必要である。また、コボットを既存の生産ラインやシステムに統合することは技術的に難しい場合があり、既存の機械や設備との相互運用性を確保するための調整や再設計が必要と言われている。これらを前提にいかの問いに答えよ。

問1 コボットにより、危険な作業や重労働を代替し、労働力不足の解消に大きく貢献し、全体的な生産性と効率を向上させるには機械技術者としてどう対処すべきか。広い視点で観点を挙げた上で課題を述べよ。

問2 前問1で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題をその理由とともに1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を具体的に示せ。

問3 前問2で示した全ての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

問4上記業務を遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。

解答

1. コボットの生産性、効率向上の課題

1)既存設備との連動性と生産性向上

 効率的生産ライン設計の観点から、生産プロセスとコボットの制御連携による効率的運用や周辺設備とのインターオペラビリティの構築が課題となる。具体的にはコンベアシステムに同調したコボットの動作や異なるメーカー間の装置(パーツフィーダーなど)情報と連動した作業指示、検査情報の共有や前後工程とのインターロックによりサイクルタイムを短縮する。

2)既存システムとのデータ統合

統合運用の観点から、データフォーマットの統一や他のデータベースと統合運用、上位層の生産管理・品質管理システムとのシステム統合が課題となる。インターオペラビリティ基盤の構築により機器・工程間に分散する生産データの統合管理ができ、上位生産管理システムとのデータベース連携により柔軟な生産工程の組換えや自律的な製造実行計画の立案が挙げられる。

3)安全性と柔軟性の両立

 効率とリスク対策の観点から、生産システム全体でのリスクアセスメントと残留リスクへの対処、可用性の高い安全システムの構築が課題となる。コボットの安全機構を活用した人機一体となったシステムリスク回避やAGVなどコボットを可搬型システムとして運用することで、柔軟性と安全性を両立したシステム構築が挙げられる。

2.重要な課題:既存設備との連動性と生産性向上

 コボットは人との協働作業とともに生産ラインとの連動や関連設備とのシームレスな統合運用により、全体システムの生産性向上に繋がるため。

1)インターオペラビリティの構築

他の設備・機器間連携では共通インターフェースやプロトコル設計によるシームレスな通信環境を構築し相互運用を強化する。また、生産プロセスとコボット間データやリアルタイムフィードバックデータについては、専用通信を用いた高速フィードバックにより同時性を担保し、精度の高い相互運用を可能とする。  

2)生産ラインとの同調によるシステム生産性の向上

物理的スペース確保によるコボットの適正配置やコンベアとの同期制御により生産サイクルタイムの短縮を図る。コボットは単純作業を連続動作可能なため、コボットを中心としたライン設計に変更し稼働率を高め、コンベアとの同調性を高めることでライン停滞を解消しながら複数作業を可能とする。

3)コボット単体での設備生産性向上

コボットの動作シーケンス調整による協調動作の最適化やディープラーニングによる人との最適協働作業を実現する。動作シーケンスは対象設備による最短ルート選択や回避ルートの設定、ワークによる待機時間の短縮調整を行い、協調動作は次工程である人の状態監視や生産状況把握により、自律的協調を実現する。

3.新たに発生するリスクと対応

 作業者の労働安全規制強化により、コボットと人との協働作業条件が厳格化され、協働生産ラインの運用が困難になる可能性がある。 

(対応策)コボットによる作業の高度化を進め、人機協働ラインの自動化率を高める。また、高度な作業についてはハプティクス技術を用いた遠隔操作により、安全を確保した協働生産しステムを構築する。 

4.技術者倫理と持続可能性を高める要件と留意点

4.1技術者倫理を高める要件、留意点 

ディープラーニングによる自律的協働作業の高度化や画像解析技術、ハプティクス技術のライン応用研究を進め、人機生産ラインの適用範囲拡大や適用事例を社会に広く共有、産業の発展基盤を構築する。これは、技術士倫理綱領「技術者の社会的責任の遂行」に該当する。

4.2 社会持続可能性を高める要件、留意点

製品改廃、生産計画に応じたコボットの適正配置見直しや協働行動の最適化により、原材料やエネルギー資源の有効活用を推進し、消費と生産の持続可能なパターンを確立する。これは「つくる責任つかう責任」(SDGs開発目標12)に該当する。

講評

良い点、評価できる点

  1. コボット導入の課題を多面的に分析
     コボット導入に際しての「既存設備との連動性」「データ統合」「安全性と柔軟性」という3つの課題を明確にし、それぞれの観点から具体的な技術的課題を考察している点が評価できます。これにより、現実の製造現場で直面する可能性の高い問題に対し、実務的なアプローチが見られます。

  2. 具体的な解決策の提示
     インターオペラビリティの構築や、生産ラインとの同調による効率向上、コボット単体での動作最適化など、課題に対する解決策が具体的に示されています。特に、高速フィードバックやスペース確保といった実装レベルの提案が現実的であり、実際の製造ラインへの導入可能性を強く感じさせます。

  3. 新たなリスクに対する対応策
     協働作業における安全規制強化というリスクに対して、ハプティクス技術を使った遠隔操作による安全確保を提案している点が優れています。新たに発生するリスクに対しても、技術的な対応策を的確に示しており、柔軟な対応が可能であることが評価されます。

改善を要する点と改善案

  1. 解決策の実現可能性の詳細化
     提案された解決策は具体的であるものの、その実現にかかるコストや技術的な課題、導入までの時間などの現実的な要素がやや不足しています。例えば、インターオペラビリティの構築に必要な技術的なインフラや、既存のシステムとの連携にかかる時間や費用に言及することで、提案の実現可能性をさらに高めることができます。
    改善案: 解決策の技術的・経済的なハードルを具体的に示し、それに対する対応策を提案することで、実現可能性を強調する。

  2. リスクへの対応策の具体性を強化
     新たなリスクへの対応策として、ハプティクス技術を提案していますが、その実現に伴う技術的な課題や具体的な導入方法に関する詳細が不足しています。特に、遠隔操作の技術的課題や、その導入に必要な条件についてさらに詳しく述べることで、リスク対応の実効性が高まります。
    改善案: ハプティクス技術の導入に必要なインフラや技術的なハードル、操作のトレーニングや安全基準の確立などについてさらに掘り下げて説明すると、より具体的で説得力のある対応策になります。

  3. 技術者倫理と持続可能性の深掘り
     倫理や持続可能性に触れていますが、もう少し具体的な実践例が欲しいところです。例えば、労働者の役割や再教育プログラムについての考察や、持続可能性の具体的な指標について言及すると、より現実的な内容になります。
    改善案: 技術者の倫理的責任や持続可能性を実現するための具体的な施策(例:労働者再教育のプロセス、環境負荷軽減の具体的取り組み)を掘り下げて議論することで、さらに実務的で説得力のある内容となります。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
コボット導入に関する課題設定や解決策が具体的で、技術的な内容も現実的な提案となっています。特に、新たなリスクに対する柔軟な対応策が示されている点は評価されます。ただし、提案の実現可能性や技術者倫理の具体性にさらに深掘りが必要であり、これらの点を強化すれば、より高い評価を得られるでしょう。

「スマート製造技術による設計プロセスの最適化とリードタイム短縮: 課題と機械技術者の解決策」

製造業の機械部門では、エンジニアリングチェーンにおいて、設計段階での漏れのない評価やプロセス全体のリードタイム短縮が求められている。顧客の要求品質に対応し、効率的な業務遂行を目指すためのスマート製造技術の導入も重要である。このためあなたが勤める企業でエンジニアリングチェーンにおける設計段階の評価を高度化するためにスマート製造技術を導入することとなった。

(1)プロセス全体のリードタイムを短縮し、顧客要求に対する迅速かつ効率的な対応を実現するため、技術者の立場で、多面的な観点から3つの課題抽出し、それぞれの観点を明確にしたうえで、その課題の内容を示せ。

(2) 前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その理由を述べよ。その課題に対する解決策を機械技術者として示せ。

(3) 前問(2)で示した解決策を実行しても残存しうる若しくは新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4) 前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の継続可能性の観点から必要となる要件・留意点について題意に即して述べよ。

 

解答

1. エンジニアリングチェーン高度化の課題

1)設計共通基盤の構築

 設計プロセス効率化の観点から、設計ルールの標準化やデータフォーマット統一による可用性向上が課題となる。設計データは部品レベルの粒度で管理し、作成合手順のルール化や関連するオブジェクトデータの作成、3Dモデル化による視認性向上により、検索容易性の向上や設計工数削減が必要となる。

2)生産プロセスの柔軟性と効率化

シームレスな情報連携の観点から、分散する生産情報データの収集・統合管理や自律制御による柔軟な生産運用が課題となる。インターオペラビリティ基盤の構築により機器・工程間のデータ統合を行い、製造実行システムと情報連携することで生産工程の柔軟化や自律的な製造実行システム構築が挙げられる。

3)データ解析による製品・設備品質の向上

 IоTデータの高度活用の観点から、AIによるリアルタイムデータ解析やビックデータ蓄積PLMへの活用が課題となる。設備の常時監視はTBMからCBMへの移行による故障リスク削減や統計データ解析による設計フィードバックの強化による製品品質の改善が挙げられる。

2.重要な課題:生産プロセスの柔軟性と効率化

 設計・保守と言った生産工程の前後工程とも密接に連携し、サプライチェーンとの連結点となることから、生産プロセスの柔軟性と効率化を推進することでエンジニアリングチェーン全体の最適化ができるため。

1)効率的な生産ラインの実現

繰り返し作業の自動化や共通工程の集約により設備総合効率を高める。また、生産実績データや設備のインテリジェント情報など制御系のОTデータ蓄積、画像データを活用した深層学習により、AI判断の適用領域を拡大し、エッジ階層での自律制御を適用することで柔軟性の高い生産ラインを実現する。  

2)製品品質の要求精度向上

3Dモデルを活用したデジタルモデル生成による立体的な形状の確認や3Dプリンタのよる試作品開発により要求品質を具現化する。また、制御情報との連携による動作確認や解析シミュレーションによる設計強度確認や熱的評価など評価精度の向上により、設計フィードバックを強化し、要求品質確度を向上する。

3)多様なニーズへの対応と柔軟な工程設計

共通部品の標準化により中間製品のストックするBTО生産体制構築により、多様な顧客ニーズを一定の製品パターンで製造することで、顧客満足度と生産効率の両立を実現する。また、生産ラインを機能別セルに分割することで工程設計の自由度を高め、工程間の自動搬送により工程組み換えを自動生成することで、生産計画変更への柔軟性を高める。

3.新たに発生するリスクと対応

 (リスク)部品共通化やパターン生産体制は、多様な顧客ニーズへの対応と効率生産の両立を可能とするが、顧客ニーズの先鋭化により、現状の生産パターンが陳腐化する可能性がある。 

(対応策)設計ルールの自動適用や自律制御レベル向上により、マスカスタマイゼーションによる個別生産体制への段階的移行を図り、顧客ニーズへの高度な生産体制を構築する。 

4.技術者倫理と持続可能性を高める要件と留意点

4.1技術者倫理を高める要件、留意点 

自動化やAIによる自律制御の実装範囲拡大により、作業者を単純労働から解放、設備教育を実施することで現場知識を有するファンクショナル人材を育成する。これは、技術士倫理綱領「継続研鑽と人材育成」に該当する。

4.2 社会持続可能性を高める要件、留意点

生産ラインの自動化や自律制御モデル開発は、経済生産性に加え、エネルギー生産性を管理指標に加え、継続的エネルギー使用量とCО2削減に貢献する。これは「働きがいと経済成長の両立(SDGs開発目標8)に該当する。

講評

良い点、評価できる点

  1. 多面的な視点の課題抽出
     エンジニアリングチェーンの高度化に向けた課題として、設計共通基盤の構築、生産プロセスの柔軟性、データ解析による品質向上という3つの観点から考察されており、実務的かつ広範な視点が反映されています。これにより、現実的な問題点を多角的に捉えることができており、技術者の視点からの課題設定がしっかり行われています。

  2. 具体的な解決策の提示
     課題に対する解決策として、生産ラインの自動化や製品品質の精度向上、共通部品の標準化による柔軟な工程設計など、具体的で実現可能な解決策が示されています。これにより、エンジニアリングチェーンの効率化や顧客ニーズへの対応力を強化する提案が評価できます。

  3. 新たなリスクへの対応策の考察
     顧客ニーズの変化による生産パターンの陳腐化というリスクを指摘し、段階的なマスカスタマイゼーションへの移行という対応策を示している点が良いです。リスク管理の視点を持ち、柔軟に対応策を提案していることが評価に値します。

改善を要する点と改善案

  1. 課題の優先順位の明確化
     3つの課題が挙げられていますが、それぞれの重要性や優先順位についてもう少し明確にする必要があります。特に「生産プロセスの柔軟性と効率化」を最重要課題としていますが、なぜ他の課題より優先されるのか、より具体的に説明することで説得力が増すでしょう。
    改善案: 課題の比較を行い、選定理由を技術的・経済的な観点から詳細に説明することで、課題選定の根拠を強化する。

  2. 解決策の実施可能性に関する具体性
     解決策自体は適切ですが、実施に伴う技術的課題やコスト面についての具体的な考察がやや不足しています。例えば、AI導入にかかるコストや設備の大幅な変更が必要になる場合、その影響についても触れると、より現実的な提案となります。
    改善案: 解決策を実行する際の技術的な障壁やコスト、時間に関する考察を加え、実施可能性を具体的に述べることで、より現実的な計画となります。

  3. 倫理や持続可能性に関する深掘り
     技術者倫理や持続可能性について言及しているものの、実務的な具体例が不足しています。特に、AIや自動化の導入による労働者への影響や、エネルギー効率の向上に向けた具体的な施策についてさらに詳しく述べることで、論文全体がさらに充実します。
    改善案: 労働者の再教育プログラムや、エネルギー効率を実現するための具体的な技術的手法について詳述することで、倫理や持続可能性の議論がより実務的かつ説得力のあるものとなります。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
課題の設定や解決策が具体的で、現実的な提案が行われている点が高く評価されます。また、新たに生じうるリスクへの対応策も考慮されており、技術者としての視点がしっかりと反映されています。ただし、いくつかの部分で説明の深掘りが必要であり、特に課題の優先順位の明確化や倫理・持続可能性への具体的な対応策を強化すれば、さらに高い評価が期待できるでしょう。

日本の製造業におけるスマート製造技術導入の課題と未来展望」

現代の製造業は、脱炭素化の要求、消費者ニーズの多様化、人材不足などの課題に直面している。これらの問題を解決し、産業競争力を維持・向上させるために、IoTを基盤とするスマート製造技術の導入が不可欠である。しかし、実際の導入には多くの困難が伴う。膨大なデータを収集しても、それを効果的に分析・活用するための技術が不足している。また、機械加工分野では熟練工の暗黙知が存在し、自動化が難しい。これらの技能をデジタル化し、AIや機械学習に組み込むには、さらなる技術開発と時間が必要である。このような日本の製造業を取り巻く現状を踏まえたうえで、以下の問に答えよ。

(1)今後日本における産業競争力を維持・向上させるため、技術者の立場から考えた場合どのような課題が考えられるか、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明確にしたうえで、それぞれの課題内容を示せ。

(2) 前問(1)で抽出した課題のうち重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を機械技術者として3つ示せ。

(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、更に新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。

(4) 前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の継続可能性の観点から必要となる要件・留意点について題意に即して述べよ。

解答

1. 産業競争力向上のデータ活用課題

1)技能情報のデジタル化

 技能継承など社会的観点から、特定人材のノウハウに頼らない技能のデジタル化が必要となるが、熟練工の経験に基づく感覚的な良否判断、感性や五感に基づいた微妙なアナログ調整、作業プロセスデなど、複雑性を伴うデータ解析が課題となる。データ解析には技能者が有する精緻なアナログセンサ開発や大量のアナログデータ収集、判断アルゴリズム解析が挙げられる。

2)デジタルトランスフォーメーションの推進

汎用性や拡張性など経済性の観点から、個々のデータ収集・解析に留まらない広範囲な製造データ収集が必要となり、統合されたデータ活用基盤の構築が課題となる。技術的には個々の装置で異なるデータフォーマットの統合や通信プロトコルの統一、大容量データストレージの設置、エッジコンピュータなど高速データ領域の活用が挙げられる。

3)AIモデルの活用と実装

 AI技術のライン実装など技術的観点から、技能者の有する暗黙知の形式知化、機械学習データによる実現性を伴ったAIアルゴリズム開発が課題となる。複雑な技能者の判断を解析し汎用的な知識に落とし込む汎知化モデル開発や機械学習の蓄積に基づく一致判断の精緻化、エッジ領域など高速処理領域でのライン実装など実用化検証が挙げられる。

2.重要と考える課題:AIモデルの活用と実装

1)実装対象工程・設備の選定

技能者の暗黙知は解析に複雑性を伴うため、実装に当たっては解析容易性や反復性、類似性と言った適用基準に基づき対象作業の選定を行う。解析の単純化は安定した判断モデルの生成、反複性は機械学習モデルのデータ蓄積と学習の深化、類似性は対象作業の集約と設備の水平展開が可能となり、AIモデルを用いた安定した運用や実装ラインの安定性が向上する。

2)作業の自動化と自動製造ラインの構築

 AIモデルの実装を見据え単純作業の自動化やロボットへの代替、また複雑な製造ラインにおいては協働ロボットによる人機混合ラインを導入することで自動化度向上を図る。また、生産ラインデータ蓄積により、チョコ停の要因排除や作業標準化、製造プロファイルの見直しなど安定性の分析・改善を行い向上を図るとともにクロスファンクショナル人材を育成する。

3)AIモデルの開発・検証及び実装

対象作業のAIモデル生成のため、作業分析に基づく判断アルゴリズム構築とパラメータデータ収集を行う。パラメータデータは可能な限り精緻な作業データを収集する他、環境変動要因や物質特性データなど複雑な解析が必要となるため、深層学習により継続的にアルゴリズムの改善を図る。また、製造ラインへの実装検証により、実用性の高いAIモデルを開発する。

3.成果と波及効果及び懸念事項への対応

1)成果と波及効果

技能者の暗黙知を汎知化することで自律制御範囲が広がり、実装データの蓄積により設備適用範囲を拡大し、段階的に特定作業者に依存しない製造業が実現できる。また、データ連携や事例共有により産業界への適用範囲拡大や、クロスファンクショナル人材の育成により、関連産業の発展や設備投資拡大、技術継承により産業競争力の維持といった波及効果も期待できる。

2)懸念事項への対応

技能(暗黙知)の形式知化や生産データの蓄積は、従来囲い込みのできた生産技術ノウハウの流出につながる懸念がある。ローカルネットワークによる外部遮断や技術ノウハウの管理体制構築、人的流出防止、分散管理など情報流出を防止する施策を講じる。

4.技術者倫理要件と持続可能性の留意点

4.1技術者倫理の要件 

AIモデル開発・実証検証を通じ、生産技術と合わせ持ったクロスファンクショナル人材を育成し、実装技術向上を図る。これは技術士倫理要綱の「継続研鑽と人材育成」に該当する。

4.2 社会持続可能性の要件

AIを活用した自動化率向上を図り、単純作業からの労働者の解放と産業競争力の向上を推進する。これはSDG’s目標8「働きがいも経済成長も」に該当する。

講評

良い点、評価できる点

  1. 課題の多面的な視点
    脱炭素化や消費者ニーズの多様化、人材不足といった現代の製造業が抱える複数の課題を挙げ、それに対してスマート製造技術を導入する際の技術的・経済的観点を含めて考察している点が評価できます。特に、デジタルトランスフォーメーションやAIモデルの実装に焦点を当てているのは、現代の技術革新に即しており、実務的な観点を反映した論述です。

  2. 具体的な解決策の提示
    AIモデルの実装における工程選定や自動化の推進、データ蓄積の活用といった具体的な解決策が示されています。これにより、スマート製造技術の導入に際してどのような工程が必要かが明確であり、読者に対して実現可能性を感じさせる構成になっています。

  3. 波及効果の詳細な説明
    暗黙知の汎知化による自律制御の範囲拡大や、データの連携による産業界への波及効果が明確に述べられています。技術的な成果がどのように他の産業や関連分野に影響を与えるかについて、具体的な視点が提供されている点は評価できます。

改善を要する点と改善案

  1. 課題の優先順位の論理性の強化
    3つの課題を挙げていますが、それぞれの重要性や優先順位を明確にすることが必要です。特に、どの課題が他よりも重要であるかをもう少し具体的に説明し、なぜそれが最も重要と考えられるのか、技術的および経済的な観点からの論理を強化することで、説得力が高まります。
    改善案: 課題の優先順位を示し、他の課題と比較した際の理由を補足することで、議論の深さを増すことが期待されます。

  2. 懸念事項への対応策の具体化
    「技能ノウハウの流出」を懸念事項として挙げていますが、その対策がやや表面的です。具体的なデータ管理方法や、技術の知識流出を防ぐための法的・技術的な対応策に触れることで、懸念事項に対する現実的な対策を示すことが求められます。
    改善案: ノウハウ流出防止策として、セキュリティ技術の具体例(暗号化技術やアクセス制限など)や法的保護手段(知的財産権や契約)を取り入れると、より実践的な議論となります。

  3. 技術者倫理と持続可能性の深掘り
    技術者倫理について「継続研鑽と人材育成」と述べている部分は妥当ですが、もう少し具体的な実践例を示すと良いでしょう。また、持続可能性の要件もSDGsに関連付けている点は良いですが、特にどのような行動が具体的に持続可能性に寄与するのか、さらに詳細に触れることが求められます。
    改善案: 倫理と持続可能性の実践方法について、AI導入が労働市場や環境に与える具体的な影響を深掘りし、それに対応する技術者の行動を明示することで、倫理的責任をより鮮明に表現できます。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
技術的な知見や具体的な解決策がしっかりと示されており、論理的な構成になっています。また、現代の製造業の課題に対してスマート製造技術の導入を提案している点は評価されます。ただし、改善すべき部分もあり、特に懸念事項への対応策の具体性や技術者倫理に関する深掘りが不足しているため、その点を改善すればさらに高い評価が期待できるでしょう。

機械部門 必須科目 解答者01 機構ダイナミクス・制御 専門:精密機器

機械部門 必須科目 解答者01 機構ダイナミクス・制御 専門:精密機器

予想問題 Ⅰ-1   簡易答案1

問題

 我が国は、今後労働力人口が減少する状況の下で、技術的な国際競争力を更に高めていく必要がある。特に消費者は価格以上の機能・性能を備えた製品であるか、つまりコストパフォーマンスの高い製品かという点を一つの基準として製品を評価し購入する傾向にある。そこで、ものづくりの観点からこれを有利に展開する手段として、「デジタルトランスフォーメーション」の導入によるものづくりの効率化が挙げられる。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.検討項目と課題

(1)フロントローディング:3D-CADデータの段階で品質部が耐久性シミュレーションする。最終試作品に耐久試験の問題がでると各部門の追加コストが莫大となる。それを抑制し価格への転嫁を抑えつつ、耐久品質を向上させる。

(2)バーチャルコミッショニング:メカ部分の試作機でなく3Dデータを動かして制御系を仕上げる。制御系とよりマッチするメカ部分の修正も試作品のコストなしにできる。よって価格への転嫁を抑えつつ制御系も優れた製品を提供できる。

(3)製造工程低コスト化:設計部門が3D-CADで構想試作品設計の段階で製造部門が工程設計をシミュレーションする。製品の機能・性能を向上させる新構造の製造を低コストで製造可能にし、価値(=機能÷コスト)を向上させる。

2.最も重要と考える課題「1.(1) フロントローディング」の解決策

(1)開発コスト抑制:低コストで開発する為試作を1回で済ませる。それでも高い機能・性能を持たす為試作前にCAEで耐久性等の品質項目も確認解決しておく。

(2)製造コスト抑制:同じ機能・性能を満たす設計候補から最も製造コストの安い設計を選択する。候補はジェネレイティブデザインでコストをかけず挙げる。

(3)顧客ニーズ対応製品:顧客の真のニーズに対応した製品にして製品の価値をあげる。IoTで収集したビッグデータからかゆい所に手の届くニーズを分析する。

3.リスクと対策

リスク:CAEで仕様とコストを追求すると実物を確認する機会がなく、製品が消費者の感性とかけ売れないリスクがある。フラッグシップの一眼レフカメラの外装がABS樹脂で防水等十分でも売れない。なぜならユーザは撮影機能だけでなくCAEで見積もるのが困難なステータスや審美性といった事を求めてカメラを買うからである。

対策:3Dプリンタによるモックアップでの確認やバーチャルリアリティで製品検証する。フィラ入り樹脂等で低コストを維持しつつ質感を持たせる。

4.業務遂行要件

倫理の観点:品質問題につながる事象を設計段階にてFTAで漏れなく抽出し試作前のCAEによる検討項目に入れる。これは公衆の利益の優先に相当する。

 予想問題 Ⅰ-2   簡易答案1

日本の機械産業は、自動車、電気電子産業、製造機器、精密機器、医療機器などのニーズに応えた高付加価値機械、高機能製品を提供することにより競争力を高め発展してきた。しかし、最近は中国、台湾、韓国などの技術力向上により、これらの機械産業の国際競争力が低下傾向にある。また、グローバル化の進展、技術情報の急激な進歩及び地球温暖化に伴う環境規制強化など、競争環境の急激な変化に見舞われ、従来の施策のみでは今後の日本の機械産業の発展には限界がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

 

(1)日本の機械産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題を、機械技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、分析せよ。

(2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げて、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に関連して新たに生じうるリスクとその対策について述べよ。

(4)(1)から(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.日本の機械産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題

 

(1)日本が得意な擦り合わせ設計に更にCAEを活用しより高付加価値なハイブリッド車に注力する。充電インフラの整備困難な国ではEVより現実解である。そこでCAEを活用し燃料費がEVに大きく勝るハイブリッド車を設計する。

(2)日本が得意とする高技能を要する高付加価値製品の製造技術に更にIoTを活用しベアリングの製造をする。多くの製品に汎用的に搭載される軸受は持続的社会実現に必要な省エネに寄与する重要部品である。そこで従来の高度技能に加えてIoTで検査結果を加工機へリアルタイムでフィードバックし品質をより安定化させ、数年で割高分を回収できる軸受性能を追求し普及させる。

(3)Covid-19や温暖化に配慮しつつ持続的社会実現に必要な省エネに寄与する空調装置を世界に製造販売する。そこで各国の気候や住宅事情に合った地域別仕様で開発する。その際従来のPLC制御に拘らずAI制御も活用し快適性を維持しつつ省エネでその地域の電力供給に空調が負荷をかけない様にする。

2.最重要課題のCAEの積極活用に対する複数の解決策

(1)バーチャルコミッショニングを使って実験ではやりきれない多数の制御条件とそれらにおけるエンジン・モータの駆動を再現し制御条件を最適化する。

(2)磁石の大きさと磁気回路を最適化して軽量化と高効率化により燃費の向上を最適にするハイブリッド用モータを磁気シミュレーションで設計する。

(3)必要なトルクと出力の組み合わせ毎にエンジンとモータの駆動条件をそれぞれどうすれば最も高燃費かシミュレーションで求める。

3.リスクと対策

CAEで最適化設計をするとエンジンとモータがお互い補完し合って共に性能限界で駆動する機会も少なく想定以上に長持ちする。するとせっかく新モデルを出しても売れないリスクがある。そこで車の運行状況や燃費の実使用におけるビッグデータをIoTで取得しCAEで活用する事で更に改良した製品を作る。

4.業務遂行において必要な要件

(1)開発メンバに外国人やシニアを入れる事で従来の日本の強みと最新ハイテクを融合させ競争力を向上させられるのに加え、自社及び社会の持続の源泉となる。

(2)リサイクルしやすい設計にすることで不法投棄抑止を促進し、加えて将来世代も引き続き貴重な資源を使える様にして、社会の持続の源泉となる。

予想問題 Ⅰ-3   簡易答案1

我が国は2000年前後から機械製品の生産拠点を海外に移してきた。これにより国際競争力を更に高めていくことを目論んでいた。しかし国際情勢の変化から、近年生産拠点の日本への回帰や、海外の進出国を変更するといった転換がはかられている。特に日本へ回帰した場合、そのものづくりのやり方は海外に移す前のやり方とは大きく異なっている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

 

(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.必要な検討項目

 

(1)イノベーション拠点化:国内生産拠点は海外生産拠点との差別化を図るための拠点とし、新しい技術や製品など新たな付加価値を産み出す。

(2)マザー工場化:海外へ移管する生産技術や海外工場のバックアップを担う。

(3)フレキシブル工場化:多品種少量生産や短納期対応などに柔軟に対応する。

2.最も重要と考える課題「1.(1)イノベーション拠点化」の解決策

(1)新生産装置導入:新たに開発された新型生産装置を最初に導入し課題出しと対策を完了した上でまずは国内マザー工場、そしてマザー工場から海外工場へ水平展開する。

(2)新製品早期立ち上げ:新製品の開発と工程設計を開発・設計部門とコンカレントエンジニアリングを行う事で安定的生産開始を早期に可能にする。

(3)ノウハウ形式知化:熟練工の暗黙知によるノウハウをIoTや3Dの活用により形式知化するツールを研究部門と協業して構築する。そしてマザー工場が海外工場にノウハウを効率良く伝えられる様にする。

3.リスクと対策

リスク:イノベーション工場が研究部門、開発設計部門、マザー工場と国内部門との協業が増え交流が活発になると、海外工場の生の声を聞く機会が減る。その結果海外工場のイノベーション化も試みた提案をしたつもりでも、海外工場の実情を加味しない受け入れ難い提案に陥りやすくなるリスクがある。

対策:ITやIoTを使って海外工場の稼働状況をイノベーション工場にいながら見える化し、又気軽にリモートでコミュニケーションを取れる環境を構築する。

4.業務遂行に必要な要件

(1)倫理の観点:他部門のメンバを尊重しつつ自らの意見も主張して最善の施策を模索する。これは相互の協力及び公正かつ誠実な履行に相当する。

(2)社会の持続性の観点:職場のメンバにシニア、障害者、外国人等を入れ多様にしてイノベーションを多様な切り口で推進し、更に自社及び社会の持続の源泉とする。「働きがいも経済成長も」に相当する。

 

予想問題 Ⅰ-4   簡易答案1

日本の消費資源は多く、また、資源の多くを海外からの輸入に頼っている。世界の人々が日本人と同じ生活をした場合、地球が2.9個必要という試算もある。よってこのままの生産・消費のライフスタイルでは次世代の我が国の社会が成り立たなくなるおそれがある。そこで国際的な取組であるSDGs(持続可能な開発目標)について我が国でも積極的な取組が行われている。SDGsの目標の一つに「つくる責任、使う責任」がある。これは持続可能な生産消費形態を確保することを目的とするものである。そんな中エコデザインはつくる責任に対して機械技術者に求められる重要事項の一つである。限りある資源を廃棄する製品から回収しあらたな製品に活用する仕組みを構築するエコデザインは、3Rを更に進化させた者であり、持続的社会を維持するために非常に重要である。

 

(1)「エコデザイン」を履行するための機械機器・装置のものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

1.エコデザイン履行の課題

(1)自動リサイクル装置のセット設計:製品のエコデザインとそれに最適な自動リサイクル装置をセットで設計する。

(2)良いアイデアの幅広い製品搭載:エコデザインの特許はパテントプールで管理し、良いエコデザインが普及し、将来は標準化による部品の再利用にもつながる。

(3)業界全体での総括的取り組み:製品が備えるべき最低のエコデザインの要件を業界団体の自主規制として制定する。

2.最も重要と考える「1(1)」の課題の解決策

(1)3Dデータの活用: CAD、CAEを使ってエコデザイン製品がリサイクル装置で自動処理されるのを検証し、製品、装置双方の設計レベルを向上させる。

(2)リサイクル業者との協業:CADとCAEの計算結果の視覚化表示により製品設計を3Dマウントディスプレイによるバーチャルリアリティでリサイクル業者にレビューする。そして装置をより良いものにする。

(3)自動リサイクル装置の普及:製品がモデルチェンジした際には容易に装置の仕様を変えられる様に、ロボットハンドをアタッチメント式にする等汎用適応性をリサイクル装置に持たせる。

3.リスクと対策

リスク:せっかくリサイクル装置を作っても業者が導入しないリスクがある。

対策:リースにして処理した台数に応じて課金する。

4.業務遂行において必要な要件

 技術者倫理も高めて遂行するには、リサイクル容易な金属で3Dプリンタを使ったセル加工で軽量化しプラスチックに代替する等、自動リサイクル装置の工程以降の最終工程までの工程も考慮した設計をする。これは公益の利益の優先、持続可能性の確保に相当する。

 

予想問題 Ⅰ-5   簡易答案1

我が国は、今後労働力人口が減少する状況の下で、技術的な国際競争力を更に高めていく必要がある。特に労働者人口の減少は深刻であり、効率的なものづくりをしないとメイドインジャパンは消える運命をたどる可能性がある。そこで、ものづくりの高効率化を根本的に向上させる「デジタルトランスフォーメーション」の導入が期待されている。機械製品のものづくりにおいても、「デジタルトランスフォーメーション」は大きな高効率化のインパクトを与えようとしている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

 

(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1. 課題の抽出と分析

(1)製品企画でのビッグデータ活用:顧客元の自社製品と自社をIoTで結び顧客が製品をいつ、どの様に操作したかを逐一把握する。顧客のニーズをより満たす競争力ある製品を効率的に企画する。

(2)設計での3D-CAD活用:3D-CADで設計した試作品のメカ部分をバーチャルコミッショニングで制御シミュレーションし、メカ部分の完成を待たずして制御系を仕上げる。

(3)生産での履歴活用:1部品毎製造履歴を確認・記録し、製造中即時に不良品を発見可能にして効率的・確実に工程能力指数を維持する。

2.「1(1)製品企画でのビッグデータ活用」の課題に対する解決策

(1)ビッグデータ分析:顧客がどの様な機能を真に欲しがり又不要としているかをビッグデータから読み解き製品仕様を決める。工作機器のロボットアームの軌跡データを集め、高頻度の軌跡を短くしタクトを短縮させる自由度のアームにする。 

(2)ツール環境整備:OLAP、OLTPを使って効率的にビッグデータ分析をする。上述の工作機器では、軌跡データを簡略化した経路グラフの自動生成による起動分析技術を活用して、頻度の高い軌跡を探し出す。

(3)データ環境構築:製品に取付けたスマートセンシングにより必要なデータを収集し、IoTを使ってメーカへ逐次送信する。上述の工作機器では、ロボットアームの軌跡と加工されているワークの軌跡を時間的相関がわかる形で収集する。

3.リスクと対策

リスク:ビッグデータを基準としたニーズに基づき製品企画を続けて行くと、いつしかマイノリティのニーズを無視した製品企画に陥るリスクがある。

対策:企画担当者が疑似体験技術を使ってビッグデータを補完するマイノリティのニーズデータを収集しニーズを満たすユニバーサルデザインを企画に反映させる。

(4)業務遂行において必要な要件

倫理の観点:ビッグデータは管理を徹底し個人情報の保護に努める。これは秘密の保持に相当する。

社会の持続性の観点:ビッグデータ分析ではシニア等多様なメンバを入れる。多面的ニーズを考慮した企画力向上、雇用機会提供で社会の持続性に寄与する。働きがいも経済成長も、に相当する。

 

予想問題 Ⅰ-6   簡易答案1

データの改ざんなど、近年製造業の技術的な不正が相次いで発覚し、如何にメイドインジャパンの信頼を取り戻すかに対して国内外から関心が寄せられている。この背景としては日本の技術力によって維持されていた諸外国に比較して高い競争力、それを支えた高いQCDを近年維持できなくなった点が根本原因の一つと考えられる。よって今こそ日本のものづくりにおける高いQCDを維持するためにアクションを起こす必要がある。それには他国でやられていない品質(仕様)を達成し、ものづくりの効率化により短納期やコストを下げる必要がある。

 

(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.検討すべき課題

 

(1)高品質・短期間の設計:日本が得意な擦り合わせ設計に更にCAEを積極活用してより高付加価値な仕様の製品設計を素早く行う。これにより耐久性や燃料費がEVに大きく勝るハイブリッド車を設計する。

(2)高品質の生産:日本が得意とする高技能を要する高付加価値製品の製造技術に更にIoTでワーク1つ毎の検査結果を加工機へリアルタイムでフィードバックし工程能力指数を向上させ品質をより安定化させる。

(3)効率化による短納期・低コスト化:日本が得意とする産業ロボットとFAを更に効率を上げるためにIoTでMES(製造実行システム)に結び製造現場を完全自動化する。

2.最重要課題「1.(1)高品質・短期間の設計」の解決策

(1)S-N曲線データと応力計算値Sから耐久寿命を算出する。これにより時間をかけずに高機能設計の耐久寿命と初期破壊箇所を明らかにする。

(2)短時間に高精度の計算をする為にモデルを最適化する。サンブナンの原理を用いたモデル最適化をする。

(3)短時間で要求精度を満たす計算ができる様に最小のメッシュ数にする。例えば応力勾配小の領域や評価領域より遠い領域は粗くメッシュを分割する。

3.リスクと対策

(1)リスク:高品質・短期間でシミュレーションをする為の複数の近似テクニック(耐久寿命算出の際の平均応力修正理論、サンブナンの原理、メッシュ数低減)を同時に使うと、それらの交互作用で想定外の計算と実際とのかい離が生じるリスクがある。

(2)対策:最終設計については試作品でリアルな性能確認を行う。

4.業務遂行において必要な要件

(1)倫理の観点:加工機へフィードバックしていたワーク1つ毎の検査結果を一定期間保管し、万が一顧客元で製品事故発生の際にトレイサビリティを取れる様にする。これは真実性の確保に相当する。

(2)社会の持続可能性の観点:高いQCDのみならず高いエコロジーも設計に加える。エコデザインにしてユーザのリサイクルに係る負担を小さくし、資源再利用を促進する。これはつくる責任、つかう責任に相当する。

予想問題 Ⅰ-7   簡易答案1

工場の効率化を求めSmart Factoryの構想が以前からあったが、世界的にCOVID-19(コロナウイルス)が流行した今日その注目度は一気に大きくなった。製品の工場検収は現地訪問不要のリモート検収、指導者と受講者が3Dゴーグルで画像を共有して行う技術指導、工場間をIoTでつないでインフラ共有など、様々な取組が行われている。これらの取り組みをうまく軌道に乗せて、COVID-19の対策をしつつものづくりの効率もあげられるものづくりのやり方に転換する必要がある。

 

 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.必要な検討項目

(1)工場管理業務のスマート化:IoTでスマートセンサや製造装置、ロボットをつなぎ、在庫管理や装置への部品供給、仕掛品、完成品の管理を行う。感染は物に付着したウイルスとの接触や人と人の接触によるのでそれを防止する。

(2)リモートコンタクト:各地工場にカメラ、電子タグ、各種センサーを設置する。それらのデータをクラウド上で共有しマザー工場にいながら各地工場の生産状況を確認可能にする。ウイルスが人の移動で拡散するのを防止する。

(3)工程設計最適化:製造装置をIoTでつなぎ、作業員レスでの工程設計をする。ウイルスは人と人の接触で感染するのでそれを防止する。どうしても人の介在を要する工程は、作業員同士の接触を避けるレイアウトを検討する。

2.最も重要と考える管理業務のスマート化の解決策

(1)部品メーカとの協業:部品メーカと自社工場の在庫部品の増減の相関関係の傾向をAIで学習させ最適な供給・受給が両社で成り立つ様にする。これにより物流業務を最小にとどめ、物流に伴うウイルス拡散のリスクを低減する。

(2)収納・庫出自動化:納品された部品をロボットが自動で所定の部品棚に収納する。工作機器からの部品切れ信号を受けた管理システムがロボットに部品を棚から自動採取させ指定場所まで自動搬送させ人同士の接触を避ける。

(3)生産数管理:営業部員のPCや納品済み製品を管理システムとIoTでつなぐ。即時に製品や消耗品の必要生産数を把握しAIで分析して先々の需要数まで予想して無駄な生産を無くし、ウイルスが人から人へ拡散するのを防止する。

3.リスクと対策

リスク:スマート化すればする程ハッキングされた際に被る被害が広範に渡るため、長期操業停止のリスクがある。

対策:適切にファイアーウォールを構築し、逐次ウイルスチェックを行うシステムを完備する。

4.業務遂行に必要な要件

(1)倫理の観点:部品業者と互いの効率向上に有効な情報を共有する仕組みの構築を要件とする。これは相互に信頼し相手の立場を尊重し協力する事に相当する。

(2)社会の持続可能性の観点:自動化し省人化を推進する事を要件とする。これはCOVID-19対策及び就業者一人当たりの実質GDPの年間成長率向上に相当する。

予想問題 Ⅰ-8   簡易答案1

交通や通信の発達した今日、ものづくりの現場で使う部品やモジュールは世界一安いコストと品質を両立したものを求めて、世界各国から集められている。しかし災害、国際紛争などでサプライチェーンが寸断され生産が止まってしまうリスクに常にさらされてきた。今回COVID-19(コロナウイルス)の世界的流行もサプライチェーンの寸断を助長するものとして懸念されている。この状況を鑑み、我が国の生産業において世界中に工場を進出させている多くは安いコストと品質を両立できる新たなサプライヤを世界各地で発掘・育成し、100%地産地消することで事業継続を維持しようとしている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

 

(1)上述の地産地消型のものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ

1.地産地消型のものづくりの課題

 

(1)部品や工程を小分けにして得意な企業に任せる。

(2)サプライヤの在庫数をデータベース化し、部品仕入れ先の自由度を増して、在庫を充足する。

(3)目的とする機能、品質を満たしながら、調達可能な部品や機能へ変更することにより、製造を維持する。

2. 最も重要な課題1.(1)の解決策

(1)工程の小分け化:自社の調達部門において部品の製造工程を理解し、各工程をどの現地企業に任せれば良いか判断する。切削加工が得意な企業に切削加工を任せた後に、放電加工の得意な企業に切削ではできない微細な追加工を依頼する。

(2)物流確保:安価で高品質な現地運送業者を確保する。工程毎に異なる企業を部品が行ったり来たりする。よってコスト低減の為安価でなければならない。加えて時間通りに破損なく届く事で次工程の企業が効率良く低コストで作業できる。

(3)進捗管理:仕掛部品が今どの企業で何の工程をしているのか自社が即時分かる様にして進ちょく管理する。各企業の部品の出荷データや受入データを自社と各企業が共通で接続できるクラウドにあげておく。

3.リスクと対策

リスク:進ちょくをクラウドで管理され、決まった日時にモノを受け取りに取りに来られるという納期に対するプレッシャーに各企業はさらされる。更に各企業は他社には絶対負けないというプライドもある。その結果企業による品質データの改ざんのリスクがある。

対策: IoTで各企業の検査装置の生データが逐次自社に送られる様にする。

4.業務遂行に必要な要件

現地企業や運送会社の選定においてはQCDだけではなく、環境に配慮しているかも判断指標にする。これは地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める事に相当する。

機械部門 必須科目 解答者05 材料強度・信頼性 専門:強度設計

機械部門 必須科目 解答者05 材料強度・信頼性 専門:強度設計

予想問題 Ⅰ-1   簡易答案1

新興国市場の拡大により顧客の多様な価値観に素早く対応する商品開発力が求められるようになり、「すり合わせ型モノづくり」はスピードとコストの両面で相対的な優位性を失いつつある。こうした中、製造業の設計現場に3DCADの導入、CAM、CAEが加わり、さらにPDMによって設計・製造・解析のデータを同期させて一体に検討するバーチャルエンジニアリングの環境が整備されつつあり、近年はこれにIOTやAIが加わり、さらなる進化を遂げつつある。一方、限られた資源の中で、市場競争力と設計・生産の合理性向上を同時追及し、市場で変動するニーズに対応可能にするためにはコンカレントエンジニアリングの取り組みが重要となる。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

(1)近年の機械製品のものづくり開発においてコンカレントエンジニアリングを推進していくにあたり必要な課題を多面的に挙げ分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての継続研鑽、マネジメントの観点から述べよ。

1. コンカレントエンジニアリングを推進していくのに必要な課題

 

①         企業間連携:設計部品の量産化や価格を検討する上でサプライヤーとの間で3D

設計情報や仕様を共有し各拠点、企業に分散する設計情報の管理が必要。

②         バーチャルエンジニアリング環境の構築:解析、形状、制御、機能、統計デー

タ等のデジタル情報に基づくノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できる場としてバーチャル環境構築が必要。

③         技術者能力の向上:CAEの土台となる機械工学や計算力学といった知識を設

計者や生産技術者が習得し、適用場面や得られた結果の見方や考察力向上が必要。

④         多様性と共通性を両立させる製品設計、生産技術の確立: 設計初期段階で設計

と工程をワンセットとし、機種毎の個別最適ではなく相似形設計とし、また生産工程をモジュール化して固定部と変動部を明確にしながら変動部はフレキシブルな生産方法確立が必要。

2.       最も重要な課題と解決策

重要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築、解決策は以下のとおり

①         設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築

設計部門が設計を行う上で使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。さらに設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。

②         3DCADを軸としたバーチャル環境の構築

各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。

③         リアルデータによるバーチャル開発

リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。

3.       解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策

製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。このため検証はバーチャルと実物試作を併用する。また解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。

4.       業務遂行において必要な技術者としての要件

バーチャルエンジニアリング推進のため、自らCAEの新たな機能や解析法の技術情報を得るとともにバーチャル環境に多くの専門家を広範囲参加させることで集団参加の創造活動を活性化させる。

予想問題 Ⅰ-1   完成答案

(1)コンカレントエンジニアリング推進上の課題

 

①ネットワーク組織への改編

 従来のピラミッド型の階層型組織から全体組織としての方針、戦略を各グループ、個人がよく理解した上で自律的にかつ並列的に仕事を進められるようにするため、ネットワーク型の組織に改編する必要がある。また生産維持やQCD管理部門、設備保全などの人員をより上流の生産準備部門に配置し、設計工程と並列に作業しながら改善案の創出に結びつけられるようにすることが課題である。

②バーチャルエンジニアリング環境の構築

 製品のコンセプト、基本機能仕様の目標等を決めていた設計初期の企画・ブランド、構想設計段階で設計の全仕様と製造の全要件について3Dモデルを用いたすり合わせにより決定できるようにする必要がある。また形状、解析、制御、機能、統計データ等のデジタル情報に基づくノウハウを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できるバーチャル環境の構築が課題である。

③顧客要求仕様の明確化

 新しいテクノロジの採用による他の製品との差別化、コスト削減による既存製品からの低価格販売、ニッチ市場での利益確保等、製品開発における戦略を明確にする必要がある。その上で顧客満足度に影響を及ぼす製品のあらゆる設計上の要求属性を十分把握し、製品に表現できるようにすることが課題である。

④多様性と共通性を両立する設計、生産技術の確立

 設計初期段階で設計と工程をワンセットとし、機種毎の個別最適ではなく相似形設計を採用し、また生産工程をモジュール化して固定部と変動部を明確にする。また変動部はフレキシブルな生産方法を確立していくことでマスカスタム生産を実現することが課題である。

(2) 最も重要と考える課題、課題への解決策

最も重要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築である。

①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築

 設計部門が設計を行う上で使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。さらに設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。

②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築

 各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。

③リアルデータによるバーチャル開発

 リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクと対策  

①リスク:製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。

②リスクへの対策:検証はバーチャルと実物試作を併用する。またバーチャル検証と実物施策検証の乖離を把握し、サプライヤが取り組む部品の解析範囲も含めモジュールモデルの特性を検証しながら製品全体のシミュレーションモデルの振る舞いになるよう各モジュールモデルの設計仕様の熟成を図ると共に解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。

(4)業務遂行において必要な要件

 業務遂行においては下流工程を考慮した設計情報の作りこみが必要であり、加工・組立性の検証や生産設備の制約や廃棄やリサイクルのコスト等、設計は多方面のスキルや知識が求められる。また下流工程にいる技術者から新製造法を提案してもらう等、連携やコミュニケーション力を高める必要がある。

予想問題 Ⅰ-2   簡易答案1

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって顕在化したサプライチェーンの脆弱性が顕在化している。多くの製造業では、必要な部品がそろわず生産が止まる工場が続発している。こうした被害最小化の観点からサプライチェーンの多元化・分散化の必要性が高まると考えられており、企業は製造現場の自動化やリモート化、またデジタルマニュファクチャリングへの取り組みを推進していくことが重要となる。

このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)機械製品のものづくりにおいて製造現場の自動化やリモート化、デジタルマニュファクチャリングへの取り組みを推進するのにあたり必要な課題を多面的に挙げ、分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において関係者と具体的にどのように調整を図るのか、実行にあたり品質、コスト、生産性の観点から述べよ。

製造現場のデジタル化や自動化、リモート化への課題

①         業務フローの可視化と標準化

デジタル化を進める上で工場毎、工場間において属人化しやすい業務に一定の評価指標を基にサプライチェーン運用に関わる仕組みやルール、個別のリスク対策やリスクが顕在化した場合の対応方法などの業務フローの可視化と標準化が必要。

②         先進的IT、IOT、ロボット技術の活用 

需要変動に対してサプライチェーンの多元化・分散化により複雑化する供給体制に合わせて機敏に対応するため、カメラやセンサー等、センシング技術を使い情報をデジタル化して設備稼働の稼働状況可視化や自動化、遠隔支援化、また工場操業を代替可能とするAIロボット技術の活用が必要。

③         複数工場を横断したバリューチェーンにおけるデータ基盤構築

現場のIoTデータと基幹情報システムの業務データとを組み合わせて活用できる基盤構築やデジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションにより、複数工場や海外拠点やサプライヤーまでを横断したものづくりのバリューチェーンでのトレーサビリティ、データ共有や品質管理にかかる期間や作業負荷削減、ものづくり現場の改善が必要。

2.       最も重要な課題と解決策

重要な課題は先進的IT、ロボット技術の活用

①         AI、RPAを活用した設備保全

機械設備に死活自体を知るためのセンサーと予知を行うためのセンサーの双方を取付け、死活の前兆パターンをAIに学習させ、予兆に基づく警告を行えるように

する。またデータ抽出、加工、集計にRPAを活用し、機器の状況のモニタリング、予測、分析、判断、実行の一連のプロセスを一気通貫して自動化する。これにより機械設備の稼働状況や故障検知を集中管理可能し、生産現場のリモート操作と管理により最低限の製造現場人員で安全性と生産性を確保可能し、サプライチェーン脆弱性を防止する。

②         ロボット技術の活用

AIを活用した協働ロボット技術により作業動作を自立学習させ、人手作業をロボットで代用可能とする。また工場内の自動搬送車に自動ソーティングAI技術を活用し、次の作業を先回りして予測させることで効率的な生産稼働を可能とし、需要変動に対して複雑化した多元化したサプライチェーン供給体制を可能とする。

③         遠隔支援技術による工場作業業務のリモート化

ARスマートグラスを活用し、現場の映像や音声を遠隔支援者にリアルタイムに伝送し、クラウド上にあるマニュアルや指示書をスマートグラス上に表示させることで遠隔から現場作業支援により多元化により分散化した工場において画一化された技術による生産を可能とする。

3.       解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策

先進的IT、ロボット技術の活用により膨大なデータを扱うが、データの見方や入出力方法等に専門的なスキルを要する一方、製造現場でのデータ処理にエラーや入力遅れが生じると共有するデータに狂いが生じ、サプライチェーン全体で間違った判断を行うことで生産過多や生産停止、生産不良等が発生するリスクがある。

このため人の判断を介する工程において、データに関する必要な技術やノウハウを定型化し、デジタルエビデンスを「正しさ」の根拠として基準管理し、実績情報との適合性を検証するプロセスをデジタル上で行える仕組みを作ることでリスクをを防止する。

4.       業務遂行において必要な技術者としての要件

IOT化やリモート化すべき生産設備の決定、技術確立について生産性、コスト、品質に着目したKPI設定について調達部門を中心に共同での検討を働きかける。

ARスマートグラス等、現物を使った作業従事者によるデモを推進する等、関係者との連携により業務を遂行する。

予想問題 Ⅰ-2   完成答案

(1)       製造現場のデジタル・自動・リモート化への課題

 

①         業務フロー分析による将来予測モデル構築

 デジタル化を進める上で工場毎、工場間において属人化しやすい業務について、一定の評価指標を基にサプライチェーン運用に関わる仕組みやルールを定める。また個別のリスク対策やリスクが顕在化した場合の対応方法等、業務フローの可視化を進める必要がある。さらに見える化で得られた情報を分析し、被害最小化に関係する因子の抽出、事象のモデル化を進め将来予測できるようにする必要がある。

②         AIを活用したロボット、リモート技術の活用 

 サプライチェーンの多元化・分散化に合わせて複雑化する製造現場において、接触抑制の観点からAIを活用したロボット技術により省人化を進める必要がある。また安定した生産稼働を実現するため、AIを活用した故障予知診断技術、遠隔で技術支援のリモート化を進める技術の導入が課題である。

③複数工場横断型バリューチェーンのデータ基盤構築

 現場のIOTデータと基幹情報システムの業務データとを組み合わせて活用できる基盤構築し、デジタルツイン上でのデータ見える化や分析を可能にする必要がある。また複数工場を横断したものづくりのバリューチェーンにおけるデータ共有、トレーサビリティ管理を効率化し、品質管理にかかる期間や作業負荷削減、ものづくり現場の改善を進める必要がある。

(2)       最も重要な課題と解決策

重要な課題は先進的IT、ロボット技術の活用

①         AIを活用した需要予測、設備保全

 機械設備に死活自体を知るためのセンサーと予知を行うためのセンサーの双方を取付け、死活の前兆パターンをAIに学習させ、予兆に基づく警告を行えるようにする。これにより生産ラインの突発的な停止を回避し、生産工程の想定外の事態を排除し、稼働率を最大化させ、サプライチェーンを強靭化する。

②         AIロボット技術による設備稼働、物流自動化

 工場内ピッキング処理を人に代わり、指定された範囲内で対象物をAIが最適な位置を探索し、吸着ハンドで指定場所に移動させるロボット技術を活用する。また無人搬送車の自動運転技術を駆使し、製品の搬入や搬出、梱包など一連の作業を機械化する。これにより人とロボットが協働させ省人化しつつ、製造現場での接触抑制を図りながら設備稼働や物流を自動化させることが可能とする。

③         遠隔支援技術による工場作業業務のリモート化

 拡張現実技術を活用し、高度な技術・技能を持つ技術者がARスマートグラスを活用した現場作業者にリアルタイムで遠隔支援する。さらにスマートグラス上にクラウド上にあるAI指示書やマニュアルを表示させることで分散化した工場でも画一化された技術支援を可能とする。

(3)       解決策に共通して新たに生じるリスクと対策

①リスク:機械学習の技術を活用した AI による需要予測、設備保全、自動化において、インプットとなる情報源とアウトプットとしての情報に至る論性プロセスがブラックボックス化されている。このため学習させた内容に誤りがあれば間違った判断をする可能性がある。この場合、サプライチェーンに誤った需要予測に基づく生産不足、生産過多が発生するリスク、設備停止、故障発生等、生産停止に陥るリスクが発生する。

②リスクへの対策:AIに機械学習する場合には学習データを増やすとともに学習前に統計的管理手法を導入し、データの妥当性評価、見直しを持続的に行いAIによる判断精度を高める。

(4)       業務遂行において必要な技術者としての要件

 AIによる判断は推論結果として確率を伴っている点で確実性の保証に限界がある。このためAI判断が人に害を及ぼさない、あるいは害を及ぼすような結果を生み出した場合の予防策を検討する。これは技術士倫理綱領の公衆の利益の優先に相当する。またIT技術やAIの活用により、資源利用効率の向上と安全・安心な環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じた産業改善を進め、持続可能性を向上させる。これはSDGsの17の目標の「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。

予想問題 Ⅰ-3   簡易答案1

   理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「富岳」が、世界ランキングで首位となり、マテリアルズインテグレーションシステムの研究開発等、科学的な分野だけではなく機械工学分野においてシミュレーションとAIの融合で様々な社会問題の解決に活用されることが期待されている。

 

このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)スーパーコンピュータを活用した機械機器・装置のものづくりを推進していくのにあたり、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

 

1. 多面的な観点から複数の課題

①         近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発

航空機等、部品点数規模の極めて大きい製品の実機・実スケー ル解析により燃費改善や安全性向上を図ることや自動車に代表される性能評価指標の極めて多い製品の複合領域・多目的最適化を現実的な設計期間内で実施して製品開発期間の抜本的短縮を図ることが必要。

②         エネルギーの高効率な創出、変換・貯蔵、利用の新規基盤技術の開発

分子・原子レベルの反応機構を解明するための装置や反応の全体、現実的な状況におけるシミュレーションを実現して多くの原子・分子が関係し合う複雑な現象の仕組みを解明し、低コストでつくることができる有機太陽電池や高効率太陽電池、太陽光で水から水素を取り出す人工光合成、高性能の燃料電池や蓄電池、日本近海の海底下に豊富にあるメタンハイドレートからメタンを回収する技術などの開発が必要。

③         次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成

デバイスや材料のもとになる物質について機能や性能の向上と電子状態の関係を調べることで複雑な構造や組成も考慮した現実に近いシミュレーションを行い、産業化が可能な新しいデバイスや材料の設計により新機能デバイスや高性能材料の開発を進める必要がある。

2.       最も重要な課題と解決策

重要な課題は近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発

①         自動車・重機械溶接部大規模解析による製造プロセス高信頼化

高溶接条件制御や溶融部の水素脆化の評価が可能な高精細メッシュを使用した自動車・重機械フレームの解析モデル全体と溶融部の一括高精度計算を実現するためのコア技術として大規模並列マトリックスソルバーを開発する。これにより自動車・重機械フレーム全体規模で溶接工程による永久変形が実用的な時間内に高精度に予測できる高度溶接シミュレーション技術を確立し、製造プロセスの高信頼化・時間短縮を図る。

②         成形シミュレータの開発によるCFRP最適設計

ジェットエンジンのファンブレードや自動車ボディの抜本的な軽量化を実現するために、成形性の高い熱可塑CFRPのミクロ構造にまで考慮した高度な最適設計が求められているが現状では加熱成形後の繊維配置を正確に予測する手法がないため、正確な強度評価すらできていない。このため、設計したら製造し、破壊試験を繰り返すという試行錯誤的な設計が行われている。このため、CFRTP製部品の成形プロセスを正確にシミュレーションできるソフトウェアを開発する。

③         リアルタイムリアルワールド設計プロセス革新

新素材や新たな動力を用いた次世代自動車を早急にかつ高い品質で実現するため、実験代替を目的としたより高次元でCAEを利用した設計プロセスの革新が必要である。このため統一的なデータ構造に基づく流体連成解析手法を開発し、HPC 環境を活用することで、解析ランタイムを精度を損なうことなく現状の数十倍に抜本的に加速すると共に、時々刻々と変化する運転条件変化を考慮したリアルワールドシミュレーションを実現する。

3.       解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策

シミュレーションはいずれも構造上の幾何学的の不確定要素や流体の界面での不確実性等、現実をシミュレーション上で再現しきれずに誤った予測を行い溶接部、CFRP構造の強度不足や力学的挙動予測の間違いにより破壊事故を起こすリスクがある。このため段階的にシミュレーション結果を試作等と組み合わせ現実と照らし合わせて解析結果や精度の妥当性を評価する仕組みを取り入れリスクを回避する。

4.       業務遂行において必要な技術者としての要件

解析シミュレーション業務は高い専門性に加え、結果を過信しない極めて慎重な取り組みが必要であることから、第三者の意見や現実の結果との照らし合わせを通じて公正な分析と判断を行う。これは技術士倫理綱領の公正かつ誠実な履行に該当する。

予想問題 Ⅰ-3   完成答案

(1)       多面的な観点から抽出した複数の課題

 

①         近未来型革新的設計・製造プロセスの開発

 航空機等、部品点数規模の極めて大きい製品の実機・実スケール解析により燃費改善や安全性向上を図ることや自動車に代表される性能評価指標の極めて多い製品の複合領域・多目的最適化を現実的な設計期間内で実施して製品開発期間の抜本的短縮を図ることが必要である。

②エネルギー創出・変換・貯蔵・新規基盤技術の開発

 分子・原子レベルの反応機構を解明するための装置や反応の全体、現実的な状況におけるシミュレーションを実現して多くの原子・分子が関係し合う複雑な現象の仕組みを解明し、低コストでつくることができる有機太陽電池や高効率太陽電池、太陽光で水から水素を取り出す人工光合成、高性能の燃料電池や蓄電池、日本近海の海底下に豊富にあるメタンハイドレートからメタンを回収する技術などの開発が必要。

③新機能デバイス・高性能材料の創成

 デバイスや材料のもとになる物質について機能や性能の向上と電子状態の関係を調べることで複雑な構造や組成も考慮した現実に近いシミュレーションを行い、産業化が可能な新しいデバイスや材料の設計により新機能デバイスや高性能材料の開発を進める必要がある。

(2)       最も重要な課題と解決策

 重要な課題は近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発であり、以下に解決策を示す。

①自動車等溶接部解析による製造プロセス高信頼化

 高溶接条件制御や溶融部の水素脆化の評価が可能な高精細メッシュを使用した自動車・重機械フレームの解析モデル全体と溶融部の一括高精度計算を実現するためのコア技術として大規模並列マトリックスソルバーを開発する。これにより自動車・重機械フレーム全体規模で溶接工程による永久変形が実用的な時間内に高精度に予測できる高度溶接シミュレーション技術を確立し、製造プロセスの高信頼化・時間短縮を図る。

②成形シミュレータの開発によるCFRP最適設計

 ジェットエンジンのファンブレードや自動車ボディの抜本的な軽量化を実現するために、成形性の高い熱可塑CFRPのミクロ構造にまで考慮した高度な最適設計が求められているが現状では加熱成形後の繊維配置を正確に予測する手法がないため、正確な強度評価すらできていない。このため、設計したら製造し、破壊試験を繰り返すという試行錯誤的な設計が行われている。このため、CFRTP製部品の成形プロセスを正確にシミュレーションできるソフトウェアを開発する。

②         リアルタイムリアルワールド設計プロセス革新

 新素材や新たな動力を用いた次世代自動車を早急にかつ高い品質で実現するため、実験代替を目的としたより高次元でCAEを利用した設計プロセスの革新が必要である。このため統一的なデータ構造に基づく流体連成解析手法を開発し、HPC環境を活用することで、解析ランタイムの精度を損なうことなく現状の数十倍に抜本的に加速すると共に、時々刻々と変化する運転条件変化を考慮したリアルワールドシミュレーションを実現する。

(3)       解決策に共通して新たに生じるリスクと対策

 シミュレーションはいずれも構造上の幾何学的の不確定要素や流体の界面での不確実性等、現実をシミュレーション上で再現しきれずに誤った予測を行い溶接部、CFRP構造の強度不足や力学的挙動予測の間違いにより破壊事故を起こすリスクがある。このため段階的にシミュレーション結果を試作等と組み合わせ現実と照らし合わせて解析結果や精度の妥当性を評価する仕組みを取り入れリスクを回避する。

(4)       業務遂行において必要な技術者としての要件

 解析シミュレーション業務は高い専門性に加え、結果を過信しない極めて慎重な取り組みが必要であることから、第三者の意見や現実の結果との照らし合わせを通じて公正な分析と判断を行う。これは技術士倫理綱領の公正かつ誠実な履行に該当する。

予想問題 Ⅰ-4   簡易答案1

   世界的に調達、生産、消費、廃棄といった一方向の流れではなく、リサイクル、再利用、再生産、省資源の製品開発、シェアリングなどを通じた資源循環の実現を目指す循環経済(サーキュラーエコノミー)の概念が浸透しており、ものづくりにおいても循環させやすい素材の開発・採用だけでなく、長寿命化や回収、分離のしやすさを考慮した製品設計や製造にも取り組む必要がある。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

 

 (1)「サーキュラーエコノミー」を推進していくものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件をリーダーシップと機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

1. 多面的な観点から複数の課題

①材料面からの課題

 部品を構成する材料が微生物により分解され自然に戻すことができる生分解性プラスチックを活用し、再び素材として活用できるようになることから、生分解性プラスチックの分解性能を向上させる開発が課題。また使用済み製品に含有するレアアースの回収率向上を促進する技術の確立が課題である。

②設計面からの課題

 製品設計の段階で部品を共通化し、また予め分離、分解が容易な構造を採用しておくと共に使用される材料は水平リサイクルが容易な素材を選定する必要がある。またリサイクル、リユースを想定し、耐久性を考慮した強度設計が課題である。

③製造面(分離・選別)からの課題

 様々な樹脂材料、金属材料を分離、選別する技術、また軽量化材料として使用されるアルミ合金を水平リサイクルできる材料選別技術の確立が課題である。

2.       最も重要な課題と解決策

重要な課題は設計面の課題である。

①         色彩選別法による分別処理技術の活用

鉄、銅、アルミニウム等のミックスメタルの中に含まれる、銅とアルミニウムの色が異なることに着目し、色彩により両者を分離・回収して回収素材の品位向上可能な色彩選別法による分別処理技術を活用する。

②         アルミニウム合金の水平リサイクル活用

軽量化のため輸送機器で多く活用が進むアルミニウム合金について、レーザー誘起ブレークダウン分光法によるソーター装置により細かく破砕した金属混合物をコンベヤーに載せて移動させながら連続的にレーザーを照射し、合金の種類を識別・選別することで展伸材を水平リサイクル可能とする。

③         製品分離技術の確立

磁力や電磁誘導の反力で鉄鋼や非鉄金属とプラスチックを分離し、密度の差や帯電の強さでプラスチックの種類を分離する。X線検査で使えないプラスチックを判別し、エアガンで吹き飛ばす素材分離技術を活用し、リサイクルを可能とする。

解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策

リサイクルに適した製品設計や分離技術により素材毎にリサイクル可能となるが、レーザー照射やX線等によって分離できない素材で低品質な材料が再生されることで予期せぬ破壊事故に至るリスクがある。このため対策として製造段階からリサイクルを視野に入れ、製品の構成素材情報を登録したRFIDタグを内蔵し、廃棄回収後、RFIDタグの情報を読み取り選別工程を自動化し、間違いを防止する。

3.       業務遂行において必要な技術者としての要件

業務遂行において製品を構成する部品構成や構造を明らかにし、技術を確立するためリサイクルに必要な分離技術や選別技術の知見を関係者から集約し、改良の方向性を示すようリーダーシップを発揮する。また技術者倫理も高めてするには、業務遂行においては様々な関係者の立場を尊重して協力するよう努める。これは技術士倫理綱領の相互の協力に相当する。

予想問題 Ⅰ-4   完成答案

(1)       多面的な観点から複数の課題

 

①         材料面からの課題

 部品を構成する材料が微生物により分解され自然に戻すことができる生分解性プラスチックを活用し、生分解性プラスチックの分解性能を向上させる開発が必要である。またリユースを想定し、材料の洗浄性、表面再処理による影響等、耐劣化機構を把握し、製品寿命より長い寿命を持たせることが可能な金属材料の開発や寿命予測技術の確立が課題である。

②         設計面からの課題

 リユースや解体・リサイクルを前提とし、モジュール単位の製品設計を行い欠陥部品だけを交換・修理することができるようにする必要がある。また製品設計の段階で部品を共通化し、また予め分離、分解が容易な構造を採用するリサイクル容易化設計の実現が課題である。さらに使用される材料は水平リサイクルが容易な素材を選定し、材料強度を考慮し、耐久性を考慮した強度設計が課題である。

②製造面(分離・選別)からの課題

 樹脂材料、金属材料等、様々な使用済み製品について効率よく材料毎に分離、選別する技術、またアルミ合金や樹脂等、水平リサイクルを可能とする素材選別技術が課題である。また使用済み製品に含有するレアアースの回収率向上を促進する技術、の確立が課題である。

(2)       最も重要な課題と解決策

重要な課題は製造面の課題である。

①色彩選別法による素材分別処理技術の確立

 鉄、銅、アルミニウム等のミックスメタルの中に含まれる銅とアルミニウムの色が異なることに着目し、色彩により両者を分離・回収して回収素材の品位向上が可能な色彩選別法による分別処理技術を確立する。

②水平リサイクル技術の活用

 軽量化のため輸送機器で多く活用が進むアルミニウム合金について、レーザー誘起ブレークダウン分光法によるソーター装置を活用する。これにより細かく破砕した金属混合物をコンベヤーに載せて移動させながら連続的にレーザーを照射し、合金の種類を識別・選別することで展伸材を水平リサイクル可能とする。また異種材料が固着している複合材料は物理的に分離するのが困難であるため主成分の汎用樹脂を化学リサイクル法により高付加価値材料として取り出す。これにより汎用樹脂には影響を及ぼすことなく異種材料のみを完全分離することで水平リサイクルを可能とする。

③         製品分離技術の活用

 磁力や電磁誘導の反力で鉄鋼や非鉄金属とプラスチックを分離し、密度の差や帯電の強さでプラスチックの種類を分離する技術を活用する。またX線検査で使えないプラスチックを判別し、エアガンで吹き飛ばす素材分離技術によりリサイクルを可能とする。さらにレアアース磁石を回収し、熱処理工程を経て脱磁した上で磁石製造工程の原料としてリサイクルするスキームを確立することでレアアース有効利用を可能とする。

(3)       解決策に共通して新たに生じるリスクと対策

①         リスク

 リサイクルに適した製品設計や分離技術により素材毎にリサイクル可能となるが、レーザー照射やX線等によって分離できない素材では低品質な材料が再生される。この場合、航空機や自動車等の輸送機械で使用されると強度不足により死傷事故を起こすリスクがある。

②リスクへの対策

 対策として製造段階からリサイクルを視野に入れ、製品の構成素材情報を登録したRFIDタグを内蔵させる。廃棄回収後、RFIDタグの情報を読み取り選別工程を自動化することで間違いを防止する。

(4)       業務遂行において必要な技術者としての要件

 業務遂行において製品を構成する部品構成や構造を明らかにし、技術を確立するためリサイクルに必要な分離技術や選別技術の知見を関係者から集約し、改良の方向性を示すようリーダーシップを発揮する。また技術者倫理も高めてするには、業務遂行においては様々な関係者の立場を尊重して協力するよう努める。これは技術士倫理綱領の相互の協力に相当する。

予想問題 Ⅰ-5   簡易答案1

   不確実性の高い世界では、環境変化に対応するために、組織内外の経営資源を再結合・再構成する経営者や組織の能力(ダイナミック・ケイパビリティ)が競争力の源泉となるとされている。これらの能力を発揮してプロセス改革を行い、様々な環境変化に柔軟に対応するためには製造業のデジタル化やデータ活用が有効とされている。一方、近年は製品の複雑化により、設計部門への負荷が著しく増大している一方、製品の品質とコストの8割程度は設計段階で決まると言われており、開発の初期段階に資源をできるだけ集中的に投入し、問題点の早期発見、品質向上、後工程での手戻りによるムダを少なくすることが重要となる。

 

このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

 

(1)機械製品のものづくりの手法をデジタル化やデータ活用によって変革する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての継続研鑽、マネジメントの観点から述べよ。

1. 多面的な観点から複数の課題

①         エンジニアリングチェーンにおけるバーチャル環境構築

解析、形状、制御、機能、統計データ等のデジタル情報に基づくノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できる場としてバーチャル環境構築により設計・製造リードタイムの短縮、多品種少量生産や事業環境の変化への柔軟性を高める必要がある。

②         サプライチェーンのバリューチェーンにおけるデータ基盤構築

複数工場やサプライヤーの稼働状況データやIOT機器データを連携し、デジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションを行うことでサプライチェーン寸断時の対策や生産性の改善、故障予測を行う必要がある。

③生産設備のIOTデータによる予防保全技術の確立

老朽化した設備の振動や音といった物理現象の精密な計測データをIOT機器によりデータとして取得して工場内の個々の部品や機械を対象にした予知保全を行うことで現場の生産設備の予防保全技術を確立する必要がある。

2.最も重要な課題と解決策

要な課題はバーチャルエンジニアリング環境の構築、解決策は以下のとおり

①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築

設計部門が設計を行う際使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。また設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。

②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築

各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。またI/Fプログラムを用いて加工機に直接3D図面の読み取りを可能とし、制御アルゴリズムをデータに付加する。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階で同時に検討できるようになる。

③リアルデータによるバーチャル開発

リアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や課題をバーチャルモデルで表現しながら設計仕様を決定していくで、より開発上流段階で詳細な検討を行うことができる。

2.解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策

製品の挙動や機能を示すモデルや解析データがリアル環境を再現できず、実製品で想定外の力学挙動や応力発生により事故が生じる恐れがある。このため検証はバーチャルと実物試作を併用する。また解析で扱うリアル環境を想定した多種多量のデータにシックスシグマの原則を適用することで品質上の問題となりうる潜在的なリスクを解消する。

3.業務遂行において必要な技術者としての要件

バーチャルエンジニアリング推進のため、自らCAEの新たな機能や解析法の技術情報を得るとともにバーチャル環境に多くの専門家を広範囲参加させることで集団参加の創造活動を活性化させる。

予想問題 Ⅰ-5   完成答案

(1)       多面的な観点から抽出した課題

①エンジニアリングチェーンでのバーチャル環境構築

 設計部門が設計上、使用する設計部品表と製造部門が製造上、使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表がバラバラで互いに共有できていない。このためデータの変換処理に膨大な工数や処理時間が掛かるという問題がある。また作業工程・設備・治工具等の製造現場情報が設計仕様に反映できないために製造現場に過度な負担が掛かる等、連携が不十分である。このためデジタル情報に基づきノウハウすべてを製造・開発・営業・ユーザと同時に検討できるバーチャル環境構築で設計・製造リードタイムの短縮、多品種少量生産や事業環境変化への柔軟性向上が課題である。

②サプライチェーンにおけるデータ基盤の構築

 サプライチェーンにまたがって開発・調達・製造・物流・販売等の各プロセスにおける状況を過去の実績や予測から数値化する必要がある。そしてサイバー空間で数値化された情報を管理し、無駄のない製造販売計画を立てることが必要である。また複数工場やサプライヤーの稼働状況データやIOT機器データを連携し、デジタルツイン上でデータの見える化や分析、シミュレーションを行うことが必要である。さらにはサプライチェーンの生産性の最適化や効率化、寸断時のボトルネックの把握等、サプライチェーンにまたがったデータ基盤の構築が課題である。

③生産設備のIOTデータによる予防保全技術の確立

 老朽化した設備の振動や音といった物理現象の精密な計測データをIOT機器によりデータとして取得しておく。そして過去から現在までのセンサーの時系列データやイベントデータを結び付けておき、故障を事前に予測できるようにする必要がある。さらに予測結果に基づき、工場内の個々の部品や機械を対象にした予知保全を行うことで、生産性を高めることが課題である。

(2)       最も重要な課題と解決策

 バーチャルエンジニアリング環境構築の解決策を以下に述べる。

①設計、製造部門間の円滑なデータ連携構築

 設計部門が設計を行う際使用する設計部品表と製造部門が製造を行う上で使用する製造部品表、工程設計情報をまとめた工程表を結び付け各部門で共有する。また設計変更による影響を可視化するため製造・購買実績、品質情報を共有する。

②3DCADを軸としたバーチャル環境の構築

 各部品の表面性状を表現するデータフォーマットを標準化し、3D図面付加する情報についてルールを定める。また3Dモデル形状をNC加工機の読み込みI/Fプログラムに入力させることでNC加工機のティーチングが自動的に行わせることが可能となる。これらにより3D図面を起点としたCAD・CAM・CAEの属性情報をPLMで一体連携でき設計、製造、営業等が設計段階での同時検討が可能となる。

③リアルデータによるバーチャル開発

 製品がどのようなシーンでどのような振る舞いをするのかという検討を行うための環境情報も持ったシーンモデルを活用する。これにより開発上流段階でリアルな製品の活用環境や使用条件等、製品の使われ方で必要とする機能や設計仕様をバーチャルモデルで表現しながら詳細を決定していくことができる。

(3)       解決策に共通して新たに生じるリスクと対策

 自動車の場合はシーンモデルで製品単体、製品の各部位のモデルの他、製品を使う環境、使う人の特性等をバーチャルモデル化する。このため人が想定以上に縁石を乗り上げるような運転をした場合、サスペンション部品が疲労破壊して破断し、死傷事故を起こす恐れがある。

(4)       業務遂行において必要な技術者としての要件

データを保証する約束事が実施されないと、バーチャルデータではなくフェイクデータを用いた解析結果で認定を受ける不正も発生することになる。このため契約ルールを機能させ、契約ルールに従ったバーチャルデータのみ信頼性が担保されたデータの扱いを受けられるよう仕組みを構築する。またバーチャルモデル認証制度を作り、信頼性の高いバーチャルエンジニアリング活用の環境づくりを進める。

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