建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-1 解答者06 専門:鋼橋
建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-1 解答者06 専門:鋼橋
予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案
橋梁に大型船が衝突し損傷する事故を踏まえ、変形損傷に対する補修方法を複数挙げ、それぞれの留意点を述べよ。その際は鋼部材を特定すること。
1.鋼道路橋の変形損傷に対する“加熱による矯正”
1)概要
鋼材の局部変形部をバーナーなどで鋼材の機械的性質を変化させぬよう変態点(720度)以下まで加熱し、変形抵抗を小さくし、ジャッキなどでプレス矯正する手法
2)留意点
加熱時の部材剛性低下を考慮するため、当該部材を撤去した骨組みモデルを用いて死荷重照査を実施する。残存不整は初期たわみ許容値(bw/1000)以下とすることで、耐荷力と変形性能を確保する。
残存不整の影響を解析照査する際は、鋼材の応力―歪曲線に、加熱・プレスによる特性変化を再現するため、移動硬化則を適用し、加工硬化率を通常鋼材ヤング率の1%程度とすることで、プッシュオーバー解析にて耐荷力と変形性能を評価する。
2.鋼道路橋の変形損傷に対する“部材交換”
1)概要
大きく変形した部材に応力が入らぬようバイパス部材を設置し無応力とした後、損傷部材の一部撤去し、ボルトや溶接接合などで新たに製作した部材へ入れ替える方法。
2)留意点
応急復旧時のバイパス部材は、設計応力に加え隣接類似部材の実発生応力を基に断面設計し、施工時安全性を確保する。
バイパス部材設置までは、損傷部材を撤去した骨組みモデルで死荷重のみ、または、死活荷重にて照査を実施し、弾性内であることを照査し、応力超過する場合は、仮設ベント等で応力負担させ安全性を確保する。
予想問題 Ⅱ-1-1 完成答案
1.鋼道路橋の変形損傷に対する“加熱による矯正”
1)概要
鋼材の局部変形部をバーナーなどで鋼材の機械的性質を変化させぬよう変態点(720度)以下まで加熱し、変形抵抗を小さくし、ジャッキなどでプレス矯正する。
2)留意点
耐力照査は、鋼材の応力–歪曲線に、降伏応力低下を再現するため、移動硬化則を適用し、加工硬化率を鋼材ヤング率の1%とすることで評価精度を向上する。
2.鋼 I桁の変形に対する“追加桁工法”による補修
1)概要
主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。そのため、死荷重の負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。本工法では、通常のバイパス工法と比較して仮設バイパス材設置・撤去不要となるため工期短縮が可能となる。
2)留意点
ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。
また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。
予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案
5年に一度の定期点検が2巡目を迎え、部材接合部周辺に多くの損傷が発見されている。各種接合方法から2つを選択し、それらを概説の上、適用上の留意点を述べよ。
1.鋼I桁・横構のガセットプレートにおける溶接接合部
1)概要
ガセットプレートの主桁ウェブとの溶接接合部に、交通振動による主桁作用で二次応力が発生し、溶接止端を起点にき裂が発生した後、ウェブ母材へ進展したため、き裂先端をストップホールで応力解放し進展抑止し応急対応した状況。
恒久対策として、発生応力が溶接の疲労強度を超過しているため、L字型のアングル材でガセットプレートとウェブとを摩擦ボルト接合で補強し、応力をバイパスさせる。
2)留意点
アングル補強部材は既存溶接ビード干渉を回避するため、フィラーを介し母材と接合する。また、ボルト穴はストップホールと兼用させ、道路橋示方書規定の150mm間隔で設置する。
2.ボルト接合部の添接板周辺が腐食減肉
1)概要
主桁端部の支承直上のボルト接合の添設部の凹凸部に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、添接板が腐食し、減肉し上部構造の死活荷重を支承へ伝えられず落橋の恐れあり。
腐食・減肉した添接板を撤去・交換するため、バイパス工法により下フランジの下面にバイパス部材として鋼I桁を仮止めし、添接部の応力をバイパスさせてから、撤去交換を実施する。
2)留意点
死活荷重を腐食部材を迂回させるため、PCケーブル利用や仮設ベントによるバイパス工法もあり、死活荷重が小さい場合は、PCケーブル工法は、ケーブル伸長量が小さく収まるため、補強部材が軽量で、施工能率が高い工法となる。
予想問題 Ⅱ-1-2 完成答案
1.鋼I桁・横構ガセットプレートの溶接接合部
1)概要
ガセットプレートの主桁ウェブ溶接接合部に、交通振動による主桁作用で二次応力が発生し、止端部を起点にき裂発生し、ウェブ母材へ進展した。そのため、恒久対策として、L字材でガセットプレートとウェブとを摩擦ボルト接合で接合、応力を負担させる。
2)留意点
類似の構造条件下のガセットプレートは損傷が出ていなくても、予防保全としてL字材補強を実施し、橋梁全体の耐久性を向上させLCCを削減する。
2.鋼 I桁の腐食変形に対する“追加桁工法”補修
1)概要
主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。その際、死荷重は負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。
2)留意点
ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。
また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。
予想問題 Ⅱ-1-3 簡易答案
インフラ構造物の老朽化が進み、5年に一度の定期点検では、補修が必要な多くの損傷が発見されている。腐食が発生しやすい部材を特定し、補修方法を複数挙げその留意点を説明。
1.鋼道路橋主桁下フランジ添接部の当板補修
1)概要
ウェブ・フランジ交差部に融雪剤を含んだ雨水が滞水し腐食した。腐食により減肉した板厚分をL字型当て板をボルト接合することで既設同等の耐力を確保する工法。
2)留意点
死荷重は既設部材の残存断面で負担し、活荷重などの後荷重を当板の断面で負担するものと仮定して断面計算を行う。
一次部材の腐食減肉による現有耐力は、シェル要素で構成されたFEM解析にて評価する。減肉量は、現地で20mm100mmメッシュで計測されるが、各補剛材パネル毎の平均厚さとしても精度良く評価可能なため、モデル入力を合理化する。
2.鋼道路橋の端横構と主桁とのガセット接続部のFRP補修
1)概要
腐食により減肉した鋼材に相当するFRPシートを接着剤で密着させることで既存構造物の耐力を回復させる工法
2)留意点
定着長は、接着用樹脂材料がせん断応力のみを伝達すると仮定したせん断遅れ理論から導出される鋼部材の応力分布の式を用いて算出する。
FRPシートには強度に方向性があるため、断面欠損量相当のシートを±45度方向に交互に接着させる。また、大変形(座屈)による剥がれを防止するため、1層目には低弾性シートを、二層目には高弾性シートをポリウレア樹脂パテ材で接着させる。
予想問題 Ⅱ-1-3 完成答案
1.鋼道路橋主桁添接板の当板補修
1)概要:
融雪剤と雨水の滞水により腐食した添接部に、減肉した板厚に相当する剛性を有するL字型当板をボルト接合することで、既設同等の耐力を確保する工法。
2)留意点:
補強部材は後付けのため、死荷重を負担しないため、死荷重は既設、活荷重を補強部材が負担する断面設計とすることで、実現象を解析へ反映させ精度確保する。
2.鋼 I桁の腐食変形に対する“追加桁工法”
1)概要:
主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。死荷重は負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。これにより、通常のバイパス工法と比較して仮設バイパス材の設置・撤去が不要となるため工期短縮が可能となる。
2)留意点
ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。
また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。
予想問題 Ⅱ-1-5 簡易答案
南海トラフで30年以内にM89規模の地震が7080%の確率で発生する可能性が示唆されている。鋼構造物を一つ特定の上、その構造物における耐震性の照査方法及びそのためのモデルを概説し、照査及び、モデル化における留意点を説明
1 道路橋鋼製橋脚の照査方法
1)静的解析による照査方法
地震動を静的荷重に置き換えて部材耐力を照査する。塑性許容する設計は、地震時保有水平耐力をエネルギ一定則より算出し照査する。動的な諸元を有するダンパー、免震橋や挙動が複雑な橋梁に対しては動的解析を実施する。
2)動的解析による照査方法
地震加速度の時刻歴を構造物を模した解析モデルに入力し、算出される応答加速度、速度、変位と許容値とを比較し諸元を確定する。入力する地震波は、道路橋示方書の標準波や、サイト特有の地盤性状を反映した地震波を複数選択し、安全側の応答で照査する。
2.道路橋鋼製橋脚の解析モデル
1)骨組みモデル
橋脚を梁部材の剛性とその両端の回転バネで代表させ、地震水平力作用時の発生モーメントや変形量を算出する。非線型バネの特性は、コンクリート充填の場合はRC理論に基づくバイリニア、充填されていない場合は、塑性ヒンジ位置が不明確なため、材料の非線形製特性をM-φから算出したトリリニアモデルで再現する。
2)ファイバーモデル
部材断面をメッシュ状に分割し、メッシュ毎に材料非線形性上を考慮する。メッシュ毎にモデル化するため、軸力変動の影響として断面のM-N相関関係や2軸曲げを表現することが可能となる。
単調載荷では各メッシュの応力歪み特性を設定することで部材の変形性能を表現できるが、動的解析にような正負交番載荷の場合は、移動硬化則や等方硬化則を組み入れ、除荷時の勾配を設定する。
予想問題 Ⅱ-1-5 完成答案
1 道路橋鋼製橋脚の照査方法
1)静的解析による照査方法
地震動を静的荷重に置き換えて部材耐力を照査する。塑性許容する設計は、地震時保有水平耐力をエネルギ一定則より算出し照査する。
2)動的解析による照査方法
地震時刻歴を解析モデルに入力し、算出される応答値を各限界状態に応じた許容値と比較照査する。
入力地震波は、道路橋示方書標準波や、サイト特性反映した複数地震波から、安全側の応答で照査する。
2.道路橋鋼製橋脚の解析モデル
1)骨組みモデル
橋脚を梁部材の剛性とその両端の回転バネで代表させ、発生モーメントや変形量を算出する。
非線型バネ特性は、コンクリート充填部はRC理論に基づくバイリニア、非充填部は、塑性ヒンジ位置が不明確なため、非線形製特性をM-φから算出したトリリニアモデルで再現する。
2)ファイバーモデル
部材断面をメッシュ状に分割し、材料非線形性上を考慮する。軸力変動の影響や2軸曲げを表現することが可能なモデル。
動的解析のような正負交番載荷の場合は、移動硬化則や等方硬化則を組み入れ、除荷時の勾配を設定する。
予想問題 Ⅱ-1-6 簡易答案
近年、鋼とコンクリートを合理的に組み合わせる合成構造や複合構造が活用され始めている。複合構造を2つ選択し、その特徴と設計における照査項目を挙げ、留意点を述べよ。
1.鋼製橋脚の基部にコンクリートを充填した複合構造
1)特徴
鋼製橋脚基部にコンクリート充填し、耐震性向上及び大変形時の部材内側への座屈変形抑止する経済的な工法。耐震補強としてコンクリートを後施工する場合は、死荷重が増加するため基礎の耐震性の照査を行う必要がある。
2)照査項目
安全性能の照査は、RC理論に基づき、コンクリートと鋼材のM-φモデルで実施する。ラーメン橋脚のような軸力変動がある構造は、ファイバー法で実施し、鋼材の発生歪みを5εy以内とする。
修復性能の照査は、残留応答スペクトルを基に設定した補正係数を動的解析の最大応答変位に乗じて算出する残留変形量を、橋脚から上部工慣性力の作用位置までの距離の1%以内とする。
2.鋼道路橋の鋼材とコンクリートの合成床版
1)特徴
床版下面に、コンクリート型枠兼用で一体的挙動のためのスタッド付き鋼底板とコンクリートが一体化し、死活荷重に抵抗することで、経済的で施工能率が高い構造。
2)照査項目
スタッド材の照査は、T荷重により床版に発生するせん断力を算出し、それをズレ留めの面積で除し、せん断応力度へ変換し、ズレ止め材の許容せん断応力度で照査する。
合成前のコンクリート打設時のたわみの照査では、底鋼板を連続梁としてモデル化し、平面骨組み解析によりたわみを算出し、L/500を許容値として照査する。
予想問題 Ⅱ-1-6 完成答案
1.鋼製橋脚基部にコンクリートを充填した複合構造
1)特徴
鋼製橋脚基部にコンクリートを充填し、耐力及び変形性能の向上及び大変形時の部材内側への座屈変形抑止が可能となる。
2)照査項目
安全性能照査は、RC理論に基づき、コンクリートと鋼材のM-φモデルで行う。軸力変動橋脚は、ファイバー法とし、道示規定より許容歪みを5εyとする。
修復性能照査は、残留応答スペクトルを基に設定した補正係数を、動的解析の最大応答変位に乗じた残留変形量を、橋脚高さの1%以内となるよう行う。
2.鋼道路橋の鋼材とコンクリートの合成床版
1)特徴
型枠兼用のスタッド付き鋼底板とコンクリートが一体化し、死活荷重に抵抗することで、合理的な構造であり、背高能率も高いため経済性が高い。
2)照査項目
スタッド材の照査は、T荷重により床版に発生するせん断力を算出し、それをズレ留めの面積で除し、せん断応力度へ変換し、ズレ止めスタッドの許容せん断応力度で照査する。
合成前のコンクリート打設時のたわみの照査では、底鋼板を連続梁としてモデル化し、平面骨組み解析によりたわみを算出し、L/500を許容値として照査する。
予想問題 Ⅱ-1-7 簡易答案
鋼構造物の設計にあたり、部分係数設計法における、照査方法を概説するとともに、許容応力度設計との違いとその利点を述べよ。その際は適用する部材を特定すること。
部分係数設計法による照査方法の利点
1)概要
作用力と抵抗力の両方に、各限界状態に応じて、また、各種荷重や、新材料、新工法の不確実性に応じた部分係数を適切に設定することで、多様な構造や新材料の採用によるコスト削減が可能。
限界状態には3段階(1:荷重を支持できる能力が確保。2:荷重を支持できる能力は低下しているが想定内。3:これを超えると荷重を支持する能力が完全喪失)あり、それらの程度に応じて抵抗側の部分係数(抵抗係数)を設定する。
作用側には、永続、変動、偶発の3種類の荷重を考慮し、各々の荷重の不確実性に応じた部分係数を荷重係数と荷重の組み合わせ係数として考慮する。
2)許容応力度設計との違いと利点
許容応力度設計法では、一つの安全率で照査するため、どのような作用や、限界状態に対して、どの程度の安全性が確保されているのかが表現できない。
一方で、限界状態設計法では、各限界状態に応じた部分係数を選択するため、構造物の重要度に応じて設定する限界状態に対して、安全性がどの程度確保できるのかが明確に表現可能。
また、多様な構造、工法の不確実性に応じて適切に部分係数を設定することで、新材料・新工法の採用促進によるコスト削減が見込める。
道路橋示方書では、10%高強度で施工性に優れるSBHS材に、標準的なSM材が1.0である構造物・部材係数を0.95と設定し、新材料の不確実性を踏まえたコスト削減設計が可能。
予想問題 Ⅱ-1-7 完成答案
1)照査方法の概要
作用力と抵抗力の両方に、各限界状態に応じて、荷重、材料、工法の不確実性に応じた部分係数を設定することで、構造物の安全性を照査する方法。
限界状態には3段階(1:荷重を支持できる能力が確保、2:荷重を支持できる能力は低下しているが想定内、3:これを超えると荷重を支持する能力が喪失)あり、その程度に応じて抵抗側の部分係数を設定する。
作用側には、永続、変動、偶発の3種類の荷重を考慮し、各々の荷重の不確実性を部分係数で考慮する。
2)許容応力度設計との違いと利点
許容応力度設計法では、一つの安全率で照査するため、どの作用で、どの限界状態に対して、どの程度の安全性が確保されているのかが不明確となる。
一方で、部分係数設計法では、限界状態に応じた部分係数を設定するため、要求性能に対して安全性がどの程度確保されているかが明確に把握できる。
また、多様な構造や、工法の不確実性に応じた適切な部分係数を設定することで、新材料・新工法の採用促進によるコスト削減が見込める。
道路橋示方書では、11%降伏強度が高く、施工性に優れるSBHS材に対して、標準的なSM材に対して部材・構造係数(信頼性)を5%低下させることで、不確実性を踏まえたコスト削減設計が可能となっている。