建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-1 解答者06 専門:鋼橋

建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-1 解答者06 専門:鋼橋

予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案

橋梁に大型船が衝突し損傷する事故を踏まえ、変形損傷に対する補修方法を複数挙げ、それぞれの留意点を述べよ。その際は鋼部材を特定すること。

1.鋼道路橋の変形損傷に対する“加熱による矯正”

1)概要

 鋼材の局部変形部をバーナーなどで鋼材の機械的性質を変化させぬよう変態点(720度)以下まで加熱し、変形抵抗を小さくし、ジャッキなどでプレス矯正する手法

2)留意点

 加熱時の部材剛性低下を考慮するため、当該部材を撤去した骨組みモデルを用いて死荷重照査を実施する。残存不整は初期たわみ許容値(bw/1000)以下とすることで、耐荷力と変形性能を確保する。

 残存不整の影響を解析照査する際は、鋼材の応力―歪曲線に、加熱・プレスによる特性変化を再現するため、移動硬化則を適用し、加工硬化率を通常鋼材ヤング率の1%程度とすることで、プッシュオーバー解析にて耐荷力と変形性能を評価する。 

2.鋼道路橋の変形損傷に対する“部材交換”

1)概要

 大きく変形した部材に応力が入らぬようバイパス部材を設置し無応力とした後、損傷部材の一部撤去し、ボルトや溶接接合などで新たに製作した部材へ入れ替える方法。

2)留意点

 応急復旧時のバイパス部材は、設計応力に加え隣接類似部材の実発生応力を基に断面設計し、施工時安全性を確保する。

 バイパス部材設置までは、損傷部材を撤去した骨組みモデルで死荷重のみ、または、死活荷重にて照査を実施し、弾性内であることを照査し、応力超過する場合は、仮設ベント等で応力負担させ安全性を確保する。

予想問題 Ⅱ-1-1 完成答案

1.鋼道路橋の変形損傷に対する“加熱による矯正”

 

1)概要

 鋼材の局部変形部をバーナーなどで鋼材の機械的性質を変化させぬよう変態点(720度)以下まで加熱し、変形抵抗を小さくし、ジャッキなどでプレス矯正する。

2)留意点

 耐力照査は、鋼材の応力–歪曲線に、降伏応力低下を再現するため、移動硬化則を適用し、加工硬化率を鋼材ヤング率の1%とすることで評価精度を向上する。 

2.鋼 I桁の変形に対する“追加桁工法”による補修

1)概要

 主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。そのため、死荷重の負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。本工法では、通常のバイパス工法と比較して仮設バイパス材設置・撤去不要となるため工期短縮が可能となる。

2)留意点

 ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。

 また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。

予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案

5年に一度の定期点検が2巡目を迎え、部材接合部周辺に多くの損傷が発見されている。各種接合方法から2つを選択し、それらを概説の上、適用上の留意点を述べよ。

1.鋼I桁・横構のガセットプレートにおける溶接接合部

 

1)概要

 ガセットプレートの主桁ウェブとの溶接接合部に、交通振動による主桁作用で二次応力が発生し、溶接止端を起点にき裂が発生した後、ウェブ母材へ進展したため、き裂先端をストップホールで応力解放し進展抑止し応急対応した状況。

 恒久対策として、発生応力が溶接の疲労強度を超過しているため、L字型のアングル材でガセットプレートとウェブとを摩擦ボルト接合で補強し、応力をバイパスさせる。

2)留意点

 アングル補強部材は既存溶接ビード干渉を回避するため、フィラーを介し母材と接合する。また、ボルト穴はストップホールと兼用させ、道路橋示方書規定の150mm間隔で設置する。

2.ボルト接合部の添接板周辺が腐食減肉

1)概要

 主桁端部の支承直上のボルト接合の添設部の凹凸部に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、添接板が腐食し、減肉し上部構造の死活荷重を支承へ伝えられず落橋の恐れあり。

 腐食・減肉した添接板を撤去・交換するため、バイパス工法により下フランジの下面にバイパス部材として鋼I桁を仮止めし、添接部の応力をバイパスさせてから、撤去交換を実施する。

2)留意点

 死活荷重を腐食部材を迂回させるため、PCケーブル利用や仮設ベントによるバイパス工法もあり、死活荷重が小さい場合は、PCケーブル工法は、ケーブル伸長量が小さく収まるため、補強部材が軽量で、施工能率が高い工法となる。

予想問題 Ⅱ-1-2 完成答案

1.鋼I桁・横構ガセットプレートの溶接接合部

 

1)概要

 ガセットプレートの主桁ウェブ溶接接合部に、交通振動による主桁作用で二次応力が発生し、止端部を起点にき裂発生し、ウェブ母材へ進展した。そのため、恒久対策として、L字材でガセットプレートとウェブとを摩擦ボルト接合で接合、応力を負担させる。

2)留意点

 類似の構造条件下のガセットプレートは損傷が出ていなくても、予防保全としてL字材補強を実施し、橋梁全体の耐久性を向上させLCCを削減する。

2.鋼 I桁の腐食変形に対する“追加桁工法”補修

1)概要

 主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。その際、死荷重は負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。

2)留意点

 ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。

 また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。

予想問題 Ⅱ-1-3 簡易答案

インフラ構造物の老朽化が進み、5年に一度の定期点検では、補修が必要な多くの損傷が発見されている。腐食が発生しやすい部材を特定し、補修方法を複数挙げその留意点を説明。

1.鋼道路橋主桁下フランジ添接部の当板補修

 

1)概要

 ウェブ・フランジ交差部に融雪剤を含んだ雨水が滞水し腐食した。腐食により減肉した板厚分をL字型当て板をボルト接合することで既設同等の耐力を確保する工法。

2)留意点

 死荷重は既設部材の残存断面で負担し、活荷重などの後荷重を当板の断面で負担するものと仮定して断面計算を行う。

 一次部材の腐食減肉による現有耐力は、シェル要素で構成されたFEM解析にて評価する。減肉量は、現地で20mm100mmメッシュで計測されるが、各補剛材パネル毎の平均厚さとしても精度良く評価可能なため、モデル入力を合理化する。

2.鋼道路橋の端横構と主桁とのガセット接続部のFRP補修

1)概要

 腐食により減肉した鋼材に相当するFRPシートを接着剤で密着させることで既存構造物の耐力を回復させる工法

2)留意点

 定着長は、接着用樹脂材料がせん断応力のみを伝達すると仮定したせん断遅れ理論から導出される鋼部材の応力分布の式を用いて算出する。

 FRPシートには強度に方向性があるため、断面欠損量相当のシートを±45度方向に交互に接着させる。また、大変形(座屈)による剥がれを防止するため、1層目には低弾性シートを、二層目には高弾性シートをポリウレア樹脂パテ材で接着させる。

予想問題 Ⅱ-1-3 完成答案

1.鋼道路橋主桁添接板の当板補修

 

1)概要:

 融雪剤と雨水の滞水により腐食した添接部に、減肉した板厚に相当する剛性を有するL字型当板をボルト接合することで、既設同等の耐力を確保する工法。

2)留意点:

 補強部材は後付けのため、死荷重を負担しないため、死荷重は既設、活荷重を補強部材が負担する断面設計とすることで、実現象を解析へ反映させ精度確保する。

2.鋼 I桁の腐食変形に対する“追加桁工法”

1)概要:

 主桁下フランジの支承直上に融雪剤を含んだ雨水が滞水し、腐食減肉で、活荷重による変形進行がある。死荷重は負担可能な主桁部材は残置し、隣接部に追加桁を設置し、橋梁全体耐力を回復する。これにより、通常のバイパス工法と比較して仮設バイパス材の設置・撤去が不要となるため工期短縮が可能となる。

2)留意点

 ジャッキアップや追加桁設置時に剛性低下した損傷桁に荷重集中するリスクを回避するため、施工ステップ毎に応力モニタリングし荷重分配状態を確認する。

 また、応力モニタリングでは、事前解析で、残置桁が健全な場合と、全く荷重を負担しない2ケースで発生分布を算出し、モニタ値がその幅内であることを確認し、追加桁の効果を検証することで品質確保する。

予想問題 Ⅱ-1-5 簡易答案

南海トラフで30年以内にM89規模の地震が7080%の確率で発生する可能性が示唆されている。鋼構造物を一つ特定の上、その構造物における耐震性の照査方法及びそのためのモデルを概説し、照査及び、モデル化における留意点を説明

1 道路橋鋼製橋脚の照査方法

 

1)静的解析による照査方法

 地震動を静的荷重に置き換えて部材耐力を照査する。塑性許容する設計は、地震時保有水平耐力をエネルギ一定則より算出し照査する。動的な諸元を有するダンパー、免震橋や挙動が複雑な橋梁に対しては動的解析を実施する。 

2)動的解析による照査方法

 地震加速度の時刻歴を構造物を模した解析モデルに入力し、算出される応答加速度、速度、変位と許容値とを比較し諸元を確定する。入力する地震波は、道路橋示方書の標準波や、サイト特有の地盤性状を反映した地震波を複数選択し、安全側の応答で照査する。

2.道路橋鋼製橋脚の解析モデル

1)骨組みモデル

 橋脚を梁部材の剛性とその両端の回転バネで代表させ、地震水平力作用時の発生モーメントや変形量を算出する。非線型バネの特性は、コンクリート充填の場合はRC理論に基づくバイリニア、充填されていない場合は、塑性ヒンジ位置が不明確なため、材料の非線形製特性をM-φから算出したトリリニアモデルで再現する。

2)ファイバーモデル

 部材断面をメッシュ状に分割し、メッシュ毎に材料非線形性上を考慮する。メッシュ毎にモデル化するため、軸力変動の影響として断面のM-N相関関係や2軸曲げを表現することが可能となる。

 単調載荷では各メッシュの応力歪み特性を設定することで部材の変形性能を表現できるが、動的解析にような正負交番載荷の場合は、移動硬化則や等方硬化則を組み入れ、除荷時の勾配を設定する。

予想問題 Ⅱ-1-5 完成答案

1 道路橋鋼製橋脚の照査方法

 

1)静的解析による照査方法

 地震動を静的荷重に置き換えて部材耐力を照査する。塑性許容する設計は、地震時保有水平耐力をエネルギ一定則より算出し照査する。

2)動的解析による照査方法

 地震時刻歴を解析モデルに入力し、算出される応答値を各限界状態に応じた許容値と比較照査する。

 入力地震波は、道路橋示方書標準波や、サイト特性反映した複数地震波から、安全側の応答で照査する。

2.道路橋鋼製橋脚の解析モデル

1)骨組みモデル

 橋脚を梁部材の剛性とその両端の回転バネで代表させ、発生モーメントや変形量を算出する。

 非線型バネ特性は、コンクリート充填部はRC理論に基づくバイリニア、非充填部は、塑性ヒンジ位置が不明確なため、非線形製特性をM-φから算出したトリリニアモデルで再現する。

2)ファイバーモデル

 部材断面をメッシュ状に分割し、材料非線形性上を考慮する。軸力変動の影響や2軸曲げを表現することが可能なモデル。

 動的解析のような正負交番載荷の場合は、移動硬化則や等方硬化則を組み入れ、除荷時の勾配を設定する。

予想問題 Ⅱ-1-6 簡易答案

近年、鋼とコンクリートを合理的に組み合わせる合成構造や複合構造が活用され始めている。複合構造を2つ選択し、その特徴と設計における照査項目を挙げ、留意点を述べよ。

1.鋼製橋脚の基部にコンクリートを充填した複合構造

1)特徴

 鋼製橋脚基部にコンクリート充填し、耐震性向上及び大変形時の部材内側への座屈変形抑止する経済的な工法。耐震補強としてコンクリートを後施工する場合は、死荷重が増加するため基礎の耐震性の照査を行う必要がある。

2)照査項目

 安全性能の照査は、RC理論に基づき、コンクリートと鋼材のM-φモデルで実施する。ラーメン橋脚のような軸力変動がある構造は、ファイバー法で実施し、鋼材の発生歪みを5εy以内とする。

 修復性能の照査は、残留応答スペクトルを基に設定した補正係数を動的解析の最大応答変位に乗じて算出する残留変形量を、橋脚から上部工慣性力の作用位置までの距離の1%以内とする。

2.鋼道路橋の鋼材とコンクリートの合成床版

1)特徴

 床版下面に、コンクリート型枠兼用で一体的挙動のためのスタッド付き鋼底板とコンクリートが一体化し、死活荷重に抵抗することで、経済的で施工能率が高い構造。

2)照査項目

 スタッド材の照査は、T荷重により床版に発生するせん断力を算出し、それをズレ留めの面積で除し、せん断応力度へ変換し、ズレ止め材の許容せん断応力度で照査する。

 合成前のコンクリート打設時のたわみの照査では、底鋼板を連続梁としてモデル化し、平面骨組み解析によりたわみを算出し、L/500を許容値として照査する。

予想問題 Ⅱ-1-6 完成答案

1.鋼製橋脚基部にコンクリートを充填した複合構造

 

1)特徴

 鋼製橋脚基部にコンクリートを充填し、耐力及び変形性能の向上及び大変形時の部材内側への座屈変形抑止が可能となる。

2)照査項目

 安全性能照査は、RC理論に基づき、コンクリートと鋼材のM-φモデルで行う。軸力変動橋脚は、ファイバー法とし、道示規定より許容歪みを5εyとする。

 修復性能照査は、残留応答スペクトルを基に設定した補正係数を、動的解析の最大応答変位に乗じた残留変形量を、橋脚高さの1%以内となるよう行う。

2.鋼道路橋の鋼材とコンクリートの合成床版

1)特徴

 型枠兼用のスタッド付き鋼底板とコンクリートが一体化し、死活荷重に抵抗することで、合理的な構造であり、背高能率も高いため経済性が高い。

2)照査項目

 スタッド材の照査は、T荷重により床版に発生するせん断力を算出し、それをズレ留めの面積で除し、せん断応力度へ変換し、ズレ止めスタッドの許容せん断応力度で照査する。

 合成前のコンクリート打設時のたわみの照査では、底鋼板を連続梁としてモデル化し、平面骨組み解析によりたわみを算出し、L/500を許容値として照査する。

予想問題 Ⅱ-1-7 簡易答案

鋼構造物の設計にあたり、部分係数設計法における、照査方法を概説するとともに、許容応力度設計との違いとその利点を述べよ。その際は適用する部材を特定すること。

部分係数設計法による照査方法の利点

1)概要 

 作用力と抵抗力の両方に、各限界状態に応じて、また、各種荷重や、新材料、新工法の不確実性に応じた部分係数を適切に設定することで、多様な構造や新材料の採用によるコスト削減が可能。

 限界状態には3段階(1:荷重を支持できる能力が確保。2:荷重を支持できる能力は低下しているが想定内。3:これを超えると荷重を支持する能力が完全喪失)あり、それらの程度に応じて抵抗側の部分係数(抵抗係数)を設定する。

 作用側には、永続、変動、偶発の3種類の荷重を考慮し、各々の荷重の不確実性に応じた部分係数を荷重係数と荷重の組み合わせ係数として考慮する。

2)許容応力度設計との違いと利点

 許容応力度設計法では、一つの安全率で照査するため、どのような作用や、限界状態に対して、どの程度の安全性が確保されているのかが表現できない。

 一方で、限界状態設計法では、各限界状態に応じた部分係数を選択するため、構造物の重要度に応じて設定する限界状態に対して、安全性がどの程度確保できるのかが明確に表現可能。

 また、多様な構造、工法の不確実性に応じて適切に部分係数を設定することで、新材料・新工法の採用促進によるコスト削減が見込める。

 道路橋示方書では、10%高強度で施工性に優れるSBHS材に、標準的なSM材が1.0である構造物・部材係数を0.95と設定し、新材料の不確実性を踏まえたコスト削減設計が可能。

予想問題 Ⅱ-1-7 完成答案

1)照査方法の概要 

 

 作用力と抵抗力の両方に、各限界状態に応じて、荷重、材料、工法の不確実性に応じた部分係数を設定することで、構造物の安全性を照査する方法。

 限界状態には3段階(1:荷重を支持できる能力が確保、2:荷重を支持できる能力は低下しているが想定内、3:これを超えると荷重を支持する能力が喪失)あり、その程度に応じて抵抗側の部分係数を設定する。

 作用側には、永続、変動、偶発の3種類の荷重を考慮し、各々の荷重の不確実性を部分係数で考慮する。

2)許容応力度設計との違いと利点

 許容応力度設計法では、一つの安全率で照査するため、どの作用で、どの限界状態に対して、どの程度の安全性が確保されているのかが不明確となる。

 一方で、部分係数設計法では、限界状態に応じた部分係数を設定するため、要求性能に対して安全性がどの程度確保されているかが明確に把握できる。

 また、多様な構造や、工法の不確実性に応じた適切な部分係数を設定することで、新材料・新工法の採用促進によるコスト削減が見込める。

 道路橋示方書では、11%降伏強度が高く、施工性に優れるSBHS材に対して、標準的なSM材に対して部材・構造係数(信頼性)を5%低下させることで、不確実性を踏まえたコスト削減設計が可能となっている。

建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-2 解答者06 専門:鋼橋

建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅱ-2 解答者06 専門:鋼橋

予想問題 Ⅱ-2-1 簡易答案

インフラの老朽化が進行すると同時に技術者が減少しているため、適切な維持管理が困難になることが懸念されている。あなたが、鋼構造物のインフラメンテナンスサイクルを確立する担当技術者として業務を進めるにあたり、下記内容について記述せよ。

 

(1)維持管理が困難となる要因と事例を一つ挙げ、持続可能なメンテナンスサイクルを確立するために、調査、検討すべき事項とその内容について記述せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1)維持管理が困難となる要因と事例と調査・検討事項

 

 1)要因と事例

 予算制限及び技術者不足のため、点検できず、鋼道路橋の鋼製橋脚隅角部に内在した疲労亀裂発見できず、また、データベース未整備でサイクル不備

2)      調査・検討事項

・超音波探傷試験による非破壊検査で内在亀裂を調査し、き裂の位置と方向を特定し、亀裂除去のためのアトラーの径と方向を決め、当板補強の効率化

・隅角部の板組、使用材料、製作時期を調査し、隅角部を対象とした損傷・補修データベース構築し、レイティングの上、優先順位つけ補修計画立案

(2)業務を進める手順及び留意・工夫点 

 1)高精度カメラ搭載UAVによる点検効率化:人間が接近困難な狭隘部でもアクセス可能。熟練点検技術者の判断基準教育によるAI深層学習手法で類似損傷発見

2)フェイズドアレイ超音波探傷による調査:多方向・多重同時スキャンで調査効率化、高精度化。同時に3Dデータをデータベース登録し、補修計画効率化

 3)梁高と当板突出長の相関性着目した当板設計:当板によるバイパスで応力低減。当板の突出長は梁高との相関性から決定し、類似構造にも展開し予防保全

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

①フェイズドアレイ超音波探傷導入の際は、機器初期投資は必要となるが、業務効率化に伴うコスト削減できることを示し、検査会社を促す。

②データベース構築の際は、点検会社、補修会社へもID付与し、データ漏洩リスクがあるものの、随時更新で、業務効率化のため、システム管理者へ促す。

予想問題 Ⅱ-2-2 簡易答案

高度成長期に大量に整備されたインフラ構造物の老朽化が進行している。あなたが、老朽化した鋼構造物の補修・補強設計を実施する設計技術者として業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

 

(1)鋼構造物に係る老朽化による損傷事例を1つ挙げ、補修・補強設計に必要な調査・検討するべき事項とその内容を説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1)老朽化の要因・事例と調査・検討事項

 

1)      要因と事例

 長期間にわたる大型車通行による繰り返し応力の累積により、鋼I桁の主桁・横桁交差部に疲労き裂が発生し、ウェブ母材に進展し落橋のおそれ

2)      調査・検討事項

・MT検査、UT検査により、き裂種別(止端、ルート)を把握し、進行方向を特定し、き裂先端をストップホールにて応力開放し進展を抑止

・損傷部位は当て板補強で応力低減。類似部位は応力計測し、構造に応じた疲労強度と比較し、応力超過の場合は、損傷有無にかかわらず当板補強による予防保全

(2)業務を進める手順及び留意・工夫点 

 1)常時モニタリングによる点検の効率化:自己発電式圧電素子によるワイアレスで固有周期計測により、省電力なリモートで橋梁ヘルスモニタリング実施

 2)三次元CIMデータによる既存構造物の補修・補強設計の省力化:既設構造物を三次元点群取得し三次元CADデータ化することで、補修設計を省力化

 3)点検・補修記録のデータベース化で長期修繕計画の効率化:CIMデータに径間毎の属性に点検・補修データをデータベース化し長期修繕計画の効率化

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

 1)圧電素子ワイアレス点検システム導入の際は、機器初期投資は必要となるが、業務効率化に伴うコスト削減できることを示し、点検会社を促す。

 2)データベース構築の際は、点検会社、補修会社へもID付与し、データ漏洩リスクがあるものの、随時更新で、業務効率化のため、システム管理者へ促す。

予想問題 Ⅱ-2-3 簡易答案

建設分野の人手不足とインフラの老朽化の進行に伴い、生産性の向上のため情報技術の活用が求められている。あなたが、ICT技術での生産性向上を担当する技術者として業務を実施するにあたり以下の問いに答えよ。

 

(1)既設の鋼構造物を特定の上、ICT等の情報化施工が効果的な事例を1つ挙げ、調査・検討するべき事項とその内容を説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 (1)情報化技術活用が効果的な事例と調査・検討事項

 

1)       事例・効果

  供用後40年経過した鋼I桁端部に発生している腐食の補修設計するにあたり、しゅん功図書や点検・補修記録が存在せず、構造諸元、設計反力復元設計必要

 2)調査・検討事項

・構造諸元を測量・計測し、構造一般図を作成し、骨組みモデルで支点反力算出

・足場設置し、近接目視で、腐食やき裂発生状況をマップ化し、診断・補修計画

(2)業務を進める手順及び留意・工夫点 

 1)UAV三次元測量による図面復元の省人化:三次元データを無人UAVにて取得することで、仮設足場や機械足場による詳細測量を省力化

2)CIM設計・施工維持管理性向上:三次元CIMで、損傷部補強部材設計を省力化。その後の点検・診断結果はCIMへデータベース統合し維持管理を効率化

 3)省電力無線センサによるモニタリングによる補修計画の最適化:固有周期を常時センサー計測し、橋梁単位の損傷をタイムリーに把握でき、補修計画を迅速化

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

 1)三次元レーザースキャナ搭載UAV導入の際は、機器初期投資は必要となるが、業務効率化に伴うコスト削減できることを示し、測量会社を促す。

 2)データベース構築の際は、点検会社、補修会社へもID付与し、データ漏洩リスクがあるものの、随時更新で、業務効率化のため、システム管理者へ促す。

予想問題 Ⅱ-2-4 簡易答案

近年、気候変動による風水害が激甚化し頻発しており、大型タンカーの衝突等による鋼構造物被害が生じている。あなたが風水害で損傷した鋼構造物の補修設計の担当者として業務を進めるにあたり以下の問いに答えよ。

 

(1)風水害により損傷を生じる事例を一つ挙げ、早急な補修設計に必要な、調査、検討すべき事項とその内容について記述せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)損傷事例と調査・検討事項

 

 1)損傷事例

 大型船舶が河川を渡河する道路橋橋桁に衝突し、鋼I桁外桁の下フランジとウェブが座屈変形し、崩壊の恐れ

2)調査・検討事項

・変形した一次部材(ウェブ及びフランジ)の平面度、二次部材(横構や対傾構)の変形量を測量し、部材交換か加熱プレスで矯正するか検討

・20t荷重車による活荷重載荷で一次部材の発生応力を計測し、設計時の骨組み解析値との比較で部分供用の可否を検討

(2)業務を進める手順及び留意・工夫点 

 1)UAV活用で工程短縮:仮設足場設置による損傷部位の詳細測量の代替として、損傷部位の三次元点群データをUAVに添架レーザースキャナで取得し、工程短縮

2)点群データCIM取り込みで補修設計の早期化:三次元の計測点群データを三次元CADデータヘ変換し、既設構造物の現況寸法に応じた設計による手戻り防止

 3)常時モニタリング施工管理で補修手戻り防止:部材交換前後の隣接部材の応力変化を事前解析し、施工時に応力を常時モニタリングし解析値比較で品質確保

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

 1)レーザースキャナ搭載UAV導入の際は、機器購入初期投資は必要となるが、測量業務省人化に伴うコスト削減できることを示し、測量会社を促す。

 2)常時モニタリングの際は、センサーや無線設備で、点検支障物が増加するが、点検の省人化・効率化で維持管理コスト削減になることを示し、橋梁管理者を促す。

建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅲ 解答者06 専門:鋼橋

建設部門 選択科目 鋼構造及びコンクリート 予想問題Ⅲ 解答者06 専門:鋼橋

予想問題 Ⅲ-1 簡易答案

気候変動に伴い激甚化する自然現象によるインフラ構造物の損傷が頻発している。インフラの機能不全による社会的影響を最小限とするため、損傷した構造物は早期に補修・補強を実施し、復旧期間を短縮する必要がある。

(1)風水害や地震等による損傷に対する補修・補強の早期化(工程短縮)を図るにあたり、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(1)   損傷と課題

1)鋼道路橋の損傷

 レベル2規模の地震により、曲線鋼鈑桁橋が回転移動、支承が損傷、主桁が部分的に座屈、端部対傾構座屈し、鉛直耐力低下し、予震で崩壊の危険

2)復旧早期化の課題の抽出と分析

①損傷した主桁を交換する場合、隣接主桁へ荷重バイパスする横桁設置、主桁撤去、新主桁の製作・設置、横桁撤去等で膨大な費用と期間必要

②橋脚変形を加熱・プレス矯正工法で補修する際は、加熱温度は変態点720度以下として、残留変形はたわみ許容値(bw/1000)以内とする。

③破損したレベル1対応支承をレベル2支承へ交換する場合は、既存アンカーのせん断力及び縁端距離不足となるため、縁端拡幅しアンカー追加する。

(2)上部工復旧の課題と解決策

 1)部材損傷が限定的な主桁は残置し、損傷により低下した耐荷力を補う断面剛性を有する追加桁で補完し、部材交換による製作・架設期間を短縮

 2)追加部材により増加する死荷重による下部・基礎構造への負担増は損傷支承を免震タイプへ交換することで相殺する。

 3)座屈損傷した横構や対傾構等の二次部材は、両端を剛結、中間ピン結合を有する線材で再現し、橋梁全体の残存耐荷力を評価する。

(3)新たに生じうる共通のリスクと対策

1)リスク

 ①追加桁への荷重分配が不確実で、残置した損傷桁変形が進行

 ②損傷桁と追加桁の図面記録不統合で、将来の補修計画立案の精度低下

2)対策

 ①ジャッキダウン時の応力変化値をモニタリングし、事前解析による損傷桁が抵抗断面として機能する場合と、全く機能しない場合の応力変化の事前解析値とを比較し、モニタリング値がその中間にあることを検証する。

 ②今後の維持管理への活用を見据え、既設と追加桁の2次元図面情報をCIMで3次元化し、可視化する。一方で、ボルト接合位置や配列については可視化せずに、属性情報で記録・保存に留めデータ量の合理化に努める。


予想問題 Ⅲ-1 完成答案


1、損傷と課題

(1)鋼道路橋の損傷

 レベル2規模の地震により、曲線鋼鈑桁橋が回転移動、支承が損傷した。主桁は部分的に座屈変形し、端部対傾構座屈したため、鉛直耐力が低下し、予震で崩壊の危険がある。

(2)復旧早期化の課題の抽出と分析

1)主桁の復旧早期化

 主桁は地震により下フランジが大きく変形しているものの、通行止め後の死荷重は負担できる状況のため、残置し、不足する剛性を補完するための追加桁を隣接する主桁間に設置することで、通常のバイパス工法と比較して工程を短縮する。

2)橋脚の復旧早期化

 橋脚の残留変形は、10mm程度であり、荷重を安定的に支えることが可能で、変形性能も十分確保できていることから、加熱・プレス矯正工法で補修し、部材交換期間を省略する。

 その際の、加熱温度は鋼材の特質が変化する変態点である720度以下とする。また、矯正後の不整変形はたわみ許容値(bw/1000)以内とする。

3)免震支承への交換による基礎補強省略

 破損したレベル1対応支承は、レベル2対応の支承へ交換する。その際は、ゴム支承を採用し、長周期化により地震時応答を低減する。さらに免振ゴムを使用することでダンパーに相当するエネルギーを吸収させ、既存基礎の補強を省略し、工期短縮をする。

2、上部工復旧早期化の課題と解決策

(1)UAVによる測量の早期化

 残置する鋼I桁周辺の変形状況及び施工上の支障となる横構、対傾構の三次元点群データをUAVにレーザースキャナを搭載し取得する。これにより、仮設足場や機械足場の設置、人力による測量が短縮・省力化できる。

 また、GNSS(衛星による測位情報システム)とも連携させ、橋梁全体の座標系と紐付け、CIMの属性情報に保管する。

(2)設計の早期化

 三次元測量で取得した点群データは、CADモデルと解析モデルへコンバートし、CIMデータとして可視化し、解析と部材設計の効率化を図るとともに、関係者との合意形成の早期化をする。また、補強部材はテンプレートとして、ライブラリー化することで、パラメトリック設計の深層学習データとして保管する。

 また、モニタリング施工の際の照合データとして必要となる、施工ステップ毎の発生応力は、CIMデータから変換した骨組みモデルを利用し、モデル作成を省力化する。

(3)施工の手戻り防止

施工時には、補強部材周辺の部材の発生応力を事前解析値と照合モニタリングし、設計思想との整合を確認することで、施工の手戻りを防止し、品質を確保する。  追加桁工法では、初期値として①追加桁の設置時と、荷重負担が開始される②ジャッキダウン時の発生応力の差分を事前解析と比較検証し、追加桁に、活荷重が負担されることを確認することで、施工品質を確認する。

3、新たに生じうる共通のリスクと対策

(1)共通のリスク

1)追加桁への荷重配分が不十分で、残置桁の変形が進行し橋梁が崩壊する。

2)補修図面のデータベース登録時に、損傷桁と追加桁の記録が不統合で、将来の補修計画立案の精度が低下する。

(2)対策

1)追加桁設置時とジャッキダウン時の周辺部材の応力変化値を事前解析し、施工時に発生応力をモニタリングし各施工ステップごとの差分量を照合させながら施工することで、品質・安全性を確保する。

2)今後の維持管理への活用を見据え、既設と追加桁の2次元図面情報をCIMで3次元化し、可視化する。一方で、ボルト接合位置や配列については可視化せずに、属性情報で記録・保存に留めデータ量を合理化する。

予想問題 Ⅲ-2

インフラ構造物の長期供用に伴い、劣化や損傷が進行しており、適切な時期に補修・補強の必要性が高まっている。

(1)長期供用されたインフラ構造物の補修・補強を実施する際に、劣化、損傷現象を1つ想定し、その発生状況を概説したのち、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

簡易答案1

(1)損傷と課題

1)損傷

 供用後40年を経過した鋼道路橋の鋼I桁のボルト添接部の凹凸部に融雪剤を含む雨水が滞水し、腐食が進行し、添接板の減肉、破断により交通荷重によるモーメント力を支えられず落橋の恐れ。

2)課題と分析

 ①ドローン近接点検による点検:点検が2巡目に入り、点検員が直接目視できない箇所に対して、高詳細カメラ搭載ドローンでの点検で損傷を確実に発見

 ②腐食状況に応じた補修・補強で長寿命化:腐食による減肉量を測定し、減肉分布を解析モデルに反映し補強または部材交換し設計耐力を回復させる。

③点検・補修記録をデータベース登録し、建設時のデータと一体管理することで、損傷分布や時期から適切な修繕時期を予測し、予防保全でLCC削減

(2)腐食状況に応じた補修補強で長寿命化の課題と解決策

 1)腐食部の減肉量は三次元レーザースキャナにて点群取得し、測量による分布図作成から省力化

 2)減肉量は、計測された分布からパネル毎の平板厚へ合理化し、シェル要素へ反映。また、部材破断の場合は、モデルからシェル要素を消去し、橋梁全体モデルに活荷重作用させ一次部材が弾性挙動であることを確認

 3)腐食発生類似部位については、滞水リスクを低減するとともに、必要に応じて腐食が生じていなくても重防食塗装等の予防保全で耐久性向上。

(3)新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①:CIMデータの更新や、属性情報の付与に必要となるIT技術者が不足し、データベース更新が滞り、適切な長期修繕計画が立案できず事後保全

 対策①:CIMデータを管理するIT技術者の早期育成と同時に新規採用を推進し、データベースを常に最新に維持し、メンテナンスサイクルを確立

 リスク②:予防保全の推進により補修補強費用が前倒しとなり、必要な全数の補修補強ができず、予防保全が遅延し、損傷が悪化。

 対策②:道路ネットワークに重要度(災害時道路啓開性等)に基づくレイティングし、補修の優先順位を定め、補修対象の選択と予算の集中化を図り、災害時リスクを最小限とする。

予想問題 Ⅲ-2 完成答案

1、損傷と課題

(1)損傷

 供用40年を経過した鋼道路橋の鋼I桁中間部の下フランジのボルト添接凹凸部に、融雪剤を含む雨水が滞水し、進行した腐食を発見した。

 添接板の減肉、破断により、せん断プレートの機能が一部喪失しており、死荷重は支えているものの、交通活荷重によるせん断力により変形が進行する恐れがある。

(2)課題と分析

1)ドローン近接点検による点検

 点検が2巡目に入り、点検員が直接目視できない箇所に対して、高詳細カメラ搭載ドローンでの点検で損傷を確実に発見する。ドローンには、GNSS(衛星による測位システム)アンテナを搭載し、橋梁全体の三次元座標と紐付けすることで、橋梁単位の損傷マップ作成の効率化する。

2)腐食状況に応じた補修・補強で長寿命化

 腐食による減肉量を測定し、減肉分布を解析モデルに反映し補強または部材交換し設計耐力を回復させる。また、部材設計時は、補強部材は後付けのため、前荷重である死荷重は負担しないため、当て板補強部材は、活荷重分を負担すること、また最低板厚を満たすこととして設計を合理化する。

3)データベース構築による長期修繕計画

 点検・補修記録をデータベース登録し、建設時のデータと一体管理することで、損傷分布や時期から適切な修繕時期を予測し、予防保全でLCCを削減する。データベースは、プラットフォーム化し、APIにより外部からのアクセスを可能とし、情報を一元化することで、データの活用を効率化する。

2、腐食の補修補強で長寿命化の課題と解決策

(1)三次元レーザースキャナによる現地調査

 腐食部の減肉量は三次元レーザースキャナにて点群取得し、人力での測量・計測による減肉分布図作成から省人化する。取得した点群データは、解析モデルと三次元CADデータへ変換し、部材設計と構造解析におけるモデル化を省力化する。

(2)減肉量の解析モデル反映し設計を合理化

 減肉量は、点群計測された分布図からパネル毎の平板厚へ変換し、シェル要素モデル化を合理化する。また、二次部材が破断している場合は、水平方向の風荷重と地震荷重で一次部材を照査し弾性挙動であることを確認する。

 また、横構や対傾構のような二次部材はガセットプレートとボルト接合されており、ボルトの凹凸部での腐食、破断が多く発生するため、高耐久性で塗装不要のステンレス鋼材に置き換えることで、ライフサイクルコストを縮小する。

(3)類似部位への予防的塗装補修

 腐食が発生している部位と環境や構造が類似している部位に対しては、止水や導水により、滞水リスクを低減するとともに、予防保全として、重防食塗装で耐久性向上する。

3、新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①:CIMデータの更新や、属性情報の付与に必要となるIT技術者が不足し、データベース更新や、業務効率向上のためのシステム更新が滞ることで、円滑な業務推進ができず、また、適切な長期修繕計画が立案できず事後保全となる。

 対策①:CIMデータを管理するIT技術者の早期育成と同時に、IT技術者を中途採用を含め新規採用を推進することで、業務の効率化の推進と、データベースを常に最新に維持することで、メンテナンスサイクルを確立する。

 リスク②:予防保全の推進により補修補強費用が前倒しとなり、必要な補修補強が人手不足により実施できないため、予防保全が遅延し、損傷が悪化する。

 対策②:中途採用やベテラン技術者の採用を促進するとともに、道路ネットワークに重要度(災害時道路啓開性等)に基づくレイティングし、補修の優先順位を定め、補修対象の選択と予算の集中化を図り、災害時リスクを最小限とする。

予想問題 Ⅲ-3 

インフラの老朽化が進行すると同時に、人材不足を抱えている建設業会にも及んでいる新型コロナ影響下においてでも、事業遅延リスクを回避する必要性が高まっている。

(1)コロナの拡大や人材不足による事業及ぼす影響を1つ想定し、その状況を概説したのちに、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

簡易答案1

(1)コロナ拡大の影響と課題

1)コロナや人材不足の影響

鋼道路橋が大規模修繕や更新を迎える一方で、少子高齢化による技術者不足で損傷発見、補修が遅延。また、コロナ三密回避のため、在宅勤務シフト常態化で、意思疎通が非効率で損傷の補修・補強推進が遅延し、落橋恐れ増加。

2)課題と分析

 ①UAV測量による三密回避:MMS搭載したUAVにより、対象橋梁とともに、補修に支障となる既存附属物等の点群を取得し、測量作業の省人化で三密回避

②構造設計リモート化による感染拡大防止:各人のPCベースの構造設計をWebベースへ切り替え、自動繰り返し計算でリモートで設計省力化。

③橋梁施工の自動運転で省人化:5G通信を活用し、施工機械をリモートで操作し、無人化遠隔施工により三密回避。

(2)構造設計リモート化推進の課題と解決策

 1)CIM/BIMを全設計ステージ導入で設計効率化:橋梁予備設計、概算設計、詳細設計の設計データを同一プラットフォーム上連携で効率化

 2)RPAによる橋梁設計で省力化:収束条件と初期条件を設定し、最適解収束までの繰り返し計算を自動化しルーティン工程を自動化し省力化

 3)CAD共有・作図修正で三密回避:CADアプリをウェブ上で動作させ、クラウド上に保存・共有することで、設計・現場間のデータ共有と修正により、三密回避

(3)新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①リモートワークの推進で、若手技術者が、ベテラン技術者に同伴して技術を継承したり、対面指導型OJTができず、技術力の継承・伝承が遅延し、技術者不足が継続。

リスク②リモートワークの普及により、クラウドや外部サーバーの負荷が急激に増加し、データの転送スピードや、ファイルの操作性が低下して業務遅延

 対策①ベテラン技術者のノウハウを見える化、データベース化し、研修資料として取りまとめ、定期的な講習会の訓練教材として活用し技術力育成

 対策②リモートデスクトップ形式と VPN 形式の両立によりデータ管理の冗長性を確保するため、クラウドサーバーのダウン時にも VPN での接続可能

予想問題 Ⅲ-3 完成答案 

1、コロナ拡大の影響と課題

(1)コロナや人材不足の影響

 鋼道路橋が大規模修繕や更新を迎える一方で、少子高齢化による技術者が不足しているため、損傷の発見や補修が遅延する懸念がある。また、コロナ三密回避のため、在宅勤務シフトが常態化するため、対面式の業務スタイルができず、ウェブ経由のコミュニケーションとなることで、業務効率が低下する。

(2)課題と分析

1)UAV測量による三密回避

 MMS搭載したUAVにより、対象橋梁とともに、補修に支障となる既存附属物等の点群を取得し、測量作業の省人化で三密回避する。その際は、同時に、GNSS(衛星による測位システム)を連携し、橋梁全体を三次元座標系に紐づけることで、橋梁単位の点検・補修データベースの作成を効率化する。

2)構造設計リモート化による感染拡大防止

 各人のPCベースの構造設計をWebベースへ切り替え、自動繰り返し計算でリモートで設計省力化する。また、解析プログラムや解析モデルは共通サーバーに保管し、在宅や外出先からもアクセスできるようにすることで、客先での即時モデル修正や、同時作業が可能となり、三密を回避できる。

3)橋梁施工の自動運転で省人化

 旧式の建設機械に対しても、アドオンでGNSSアンテナ、高詳細カメラ、センサーやコントローラやタブレットを搭載することで、ICT建設機械化し、業務の効率化と現場内のコミュニケーションのリモート化を推進する。さらに、現場内に5G回線を導入し、遠隔操作システムとすることで、クレーンの取り回しを自動化し、作業の安全性を向上させ手戻りを防止する。

2、構造設計リモート化推進の課題と解決策

(1)CIM/BIMを全設計ステージ導入で設計効率化

 橋梁予備設計、概算設計、詳細設計の設計データを同一プラットフォーム上で連携させることで、これまで各ステップの作業をゼロから作成することと繰り返してきたが、基本的な解析モデルや、CADデータを共有し、作成は最小限にし、修正することで、設計の省力化が可能となる。

(2)RPAによる橋梁設計で省力化

 初期条件と収束条件を自動設定し、最適解の収束までの繰り返し計算を自動化することで、設計プロセスのルーティン工程を省力化する。初期条件は、設計者の経験や勘によるところが大きかったため、過去の設計データをAIに深層学習させることで、入力条件を自動化し、初期条件が提案できるよう自動作業化する。

 また、収束までの繰り返し計算は、コストや工期などの収束条件を設定することで、初期条件を変更しながら自動計算をRPAで収束までの計算を自動化し、省力化することで、勤務先での三密を回避する。

(3)CADクラウド共有・作図修正で三密回避

 CADアプリをウェブ上で動作させ、クラウド上に保存・共有することで、設計・現場間のデータ共有と修正により、三密回避する。ウェブのアプリ上でのCAD操作が可能となることで、執務室だけでの作業が、在宅や客先で可能となるため、業務効率化と三密の回避が可能となる。

 さらに、CADの修正や、データの取り込みに、複数機関のデータやモデルを活用するため、APIを使ってウェブ上で外部サイトからのデータ取り込みを可能とし、さらなる効率化を実現する。

3、新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①リモートワークの推進で、若手技術者が、ベテラン技術者に同伴して技術を継承したり、対面指導型OJTができず、技術力の継承・伝承が遅延し、技術者不足が継続する。

リスク②リモートワークの普及により、クラウドや外部サーバーの負荷が急激に増加し、データの転送スピードや、ファイルの操作性が低下して業務遅延する。

対策①ベテラン技術者のノウハウを見える化、データベース化し、研修資料として取りまとめ、定期的な講習会の訓練教材として活用し技術力育成する。

対策②リモートデスクトップ形式と VPN 形式の両立によりデータ管理の冗長性を確保するため、クラウドサーバーのダウン時にも VPN での接続可能とする。

予想問題 Ⅲ-4 

人口減少により税収が減少する中で、インフラ構造物の老朽化が進行しており、ライフサイクルコストの観点でメンテナンス戦略を立案する必要性が高まっている。

(1)メンテナンスサイクル(補修・補強)計画を立案するにあたって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。その際は対象鋼構造物と損傷状況を特定すること。

(2)(1)で抽出した課題のうち鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

簡易答案1

(1)損傷と課題

1)損傷

 供用から40年度経過した鋼道路橋で、交通荷重繰返しで、鋼I桁主桁―横桁交差部溶接部で疲労き裂が発生、母材進展し、類似箇所からの発生が予想。

2)課題と分析

 ①アクセス困難な部位に対する目視点検

 5年に一度の法定点検が2巡目に入り、補修必要なインフラ構造物の選択と集中が必要で、アクセス困難箇所でも目視相当の確実な点検が必要

 ②CIM活用した補修補強(予防保全)推進

 建設CIMデータに、き裂発生状況を追加し、補修設計時の三次元橋梁解析モデルにコンバートし、補修構造を決定。同時に類似部位への予防保全を推進

 ③補修結果データベース登録でメンテナンスサイクル確立

 建設CIMデータに点検、補修構造を追記し、その損傷頻度・程度に基づき、鋼道路橋毎の長期維持修繕計画立案し、計画的な補修補強でコスト削減

(2)CIM活用した予防保全推進の課題と解決策

 1)高精度カメラ搭載したドローンで人間がアクセス困難な部位の目視点検を実施し、発見損傷データは三次元でCIMデータ付与し診断精度向上

 2)損傷は、三次元解析モデルで再現し、活荷重に対して当板補強により発生応力半減となるよう板厚を決定する。

 3)常時モニタリングシステム導入により、橋梁全体の挙動をリアルタイム計測・診断し、損傷発見早期化と累積データに基づく補修時期の最適化

(3)新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①CIM導入により三次元データの取り扱いが増加し、社内サーバー容量の逼迫によりデータ操作性や転送スピード低下による業務の遅延

対策①社外の大容量クラウドにデータ保管・共有化し、データトラフィックの冗長化を図る。同時に、5G 回線を活用し低遅延、多接続性を確保する。

リスク②点検データ、補修データのCIMデータ付与に必要となるIT技術者が不足し、メンテナンスサイクルが確立できず適切な時期の補修不可

対策②システムを維持管理するためのIT技術者を早期育成かつ新規採用で確保。

予想問題 Ⅲ-4 完成答案 

1、損傷と課題

(1)損傷

 供用から40年度経過した鋼道路橋で、交通荷重繰返しにより、鋼I桁主桁―横桁交差部溶接部で疲労き裂が発生、母材進展し、類似箇所からの発生が予想される。また、点検と補修の記録がデータベースに登録されておらず、過去の損傷履歴に基づく補修計画が立案できない。

(2)課題と分析

1)アクセス困難な部位に対する目視点検

 5年に一度の法定点検が2巡目に入り、補修必要なインフラ構造物の選択と集中が必要となっており、アクセス困難な箇所の損傷を確実に発見・診断し、適切な補修計画を立案するため、目視相当の確実な点検が必要となっている。

2)CIM活用した補修補強(予防保全)推進

 建設CIMデータに、き裂発生状況を追加し、補修・補強設計時に必要となる橋梁解析モデルにコンバートし、橋梁単位の損傷マップを作成し、補修構造を決定する。また、損傷が発生している部位と同様の構造条件な箇所に対しては予防保全としての補強を推進する。

3)補修データベースによるメンテサイクル確立

 建設時に作成したCIMデータの属性データとして点検・診断データを追記し、橋梁単位での補修計画の精度を向上させる。また補修構造は、建設時の図面データを修正し、構造物の最新状況を可視化することで、2巡目、3巡目の点検計画の精度を向上する。

2、CIM活用した予防保全推進の課題と解決策

(1)点検の省力化、高度化で損傷診断の効率化

 高精度カメラ搭載したドローンで人間がアクセス困難な部位の近接目視に相当する点検を実施する。狭隘部や超高所に対する仮設足場や機会足場の設置や人がアクセスできない箇所への確実な点検を効率的に実施する。

 また、発見した損傷データは三次元CIMデータの属性情報へ付与し、マップ化することで、その発生原因の特定の効率化を図る。

(2)補修・補強設計の効率化

 三次元CIMへマッピングされた疲労き裂は、発生部位毎に溶接強度と発生応力及び支配的な変形種別(主桁作用または、床版作用)で整理・分類し、補強方法を使い分ける。また、補強は当て板補強を基本とし、後荷重である活荷重による発生応力に必要な板厚、かつ、最小板厚となるように部材設計する。接合はボルト接合とし、疲労強度を向上させ新たな疲労き裂発生を抑制する。

 なお、当て板補強の対象箇所は損傷部位に類似する構造条件箇所に水平展開し、予防保全を推進し、LCCを削減する。

(3)橋梁常時モニタリングで損傷発見・補修早期化

 モニタリングに必要な加速度計には圧電素子を適用し省電力化による長期連続計測を可能とする。また、データは3Gまたは4Gの公衆回線で無線基地局へ伝送し、インターネットを介して管理者が常時アクセス可能とすることで、損傷の把握を早期化する。

 また、通常の交通荷重振動から得られた加速度から、その橋梁の固有周波数を算出し、構造解析により、橋梁の構造部材との同定を実施する。橋梁全体の固有振動数が変化した場合は、動的解析を再度実施し、剛性が劣化した部材をベイズ推定で特定できるため、詳細点検や補修計画を早期化する。

3、新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①CIM導入により三次元データの取り扱いが増加し、社内サーバー容量の逼迫によりデータ操作性や転送スピード低下により業務が遅延する。

対策①社外の大容量クラウドにデータ保管・共有化し、データトラフィックの冗長化を図る。同時に、5G 回線を活用し低遅延、多接続性を確保する。

リスク②点検データ、補修データのCIMデータ付与に必要となるIT技術者が不足し、メンテナンスサイクルが確立できず適切な時期の補修不可となる。

対策②:ICT導入や改善に必要な知識と技術を有するIT技術者を社内のシステム部門技術者から育成するとともに、中途採用を含め新規採用を促進する。

予想問題 Ⅲ-5 

人口減による税収が減少している一方で、M89の規模の南海トラフ地震が今後30年以内に80%の確率で発生することが予測されている。そのような状況の中で、既設鋼構造の耐震性を向上させる技術開発が進められている。

(1)耐震性を向上させる新技術を開発又は適用するにあたり、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

簡易答案1

(1)耐震性向上新技術適用の課題

1)鋼道路橋の耐震性向上

 昭和46年の道路橋示方書適用した鋼道路アーチ橋に対し、最新基準に適合させ、緊急輸送道路を確保するため耐震性向上を新技術適用し実施。 

2)課題と分析

 ①上部構造への新技術適用時は、ファイバーモデルで三次元弾塑性動的解析し、許容値を一次部材は許容歪2εy、軸力部材は座屈歪に収まるよう補強

②下部構造への新技術適用時は、ファイバーモデルで終曲時は歪みの照査、修復性は残留変形量で照査し、許容値に収まるよう新技術を選定する。

③耐震性向上対策に加え、緊急輸送路として、一般車両の震災直後の通行かとするため、段差30mm以内とする新たな装置を適用する。

(2)新技術適用で下部構造の耐震性向上の課題と解決策

 1)下部構造への地震水平変位・荷重を低減するため、制震ダンパーを適用する。効果は制震ダンパーの速度依存性をモデル化し動的照査で検証。

 2)補強困難な基礎構造の補強を削減するため、免震支承の適用で橋梁全体を長周期化及びエネルギー吸収し、地震時応答を低減する。

 3)部分係数設計法における、新工法・材料の不確実性は、抵抗側の部材・構造物係数を低減する。例えば、SBHS鋼材であれば、0.95へ低減する。

(3)新たに生じうる共通のリスクと対策

 リスク①:支承交換や後付け制震装置により橋梁全体の周波数特性が変化し、長周期波が卓越した地震により新たな損傷発生

 対策①:標準波の代わりに、そのサイトの局所的な地盤条件を反映させ作成したレベル2 地震波で照査を実施する。

 リスク②:2方向地震力の同時作用を未考慮のため、エネルギー吸収能力を過大に、変形量を過小評価

対策②:2方向同時作用による塑性2次勾配に移動硬化則を適用した塑性剛性マトリックスを動的解析に適用し同時性を表現し適正評価する。

予想問題 Ⅲ-5 完成答案

1、耐震性向上新技術適用の課題

(1)鋼道路橋の耐震性向上

 昭和46年の道路橋示方書適用した鋼道路アーチ橋に対し、最新基準に適合するレベルまで耐震補強し、レベル2地震でも部分的な損傷は許容するが、緊急輸送道路としての機能を確保するため、新技術による耐震補強を実施する。

(2)課題と分析

1)上部構造への新技術適用

 部分的な塑性を許容するため、ファイバーモデルでモデル化し、三次元弾塑性動的解析で照査する。その際の部材毎の許容値は、重要度に基づき要求性能を定め設定する。また、二次部材(横構、対傾構)は、軸力が卓越し支配的なため、座屈しない程度の塑性は許容することとし、発生軸力が座屈荷重を超えないことを照査する。

 また、全体解析で塑性変形が生じる二次部材箇所には、粘性ダンパーを挿入し、部材の損傷を回避すると同時に、そのエネルギー吸収性能により、下部構造への地震時応答を低減し、補強による工期を短縮する。

2)下部構造への新技術適用

 橋脚基部とフーチングを粘性ダンパーで接続し、地震時の応答を低減する。検証解析では、軸力変動や2軸作用が大きいため、m―φモデルベースの骨組みモデルでは、評価が困難なため、ファイバーモデルの三次元立体動的解析で照査し、終曲時は歪みの照査、修復性は残留変形量で照査し、許容値に収まるよう新技術を照査する。

 ただし、残留変位の算出は、動的解析では累積損傷の評価精度が低いため、最大応答変位と降伏後の二次剛性との相関性に着目した推定式で算出する。

3)損傷した支承の免震ゴム化で基礎補強の削減

 既設の支承はレベル1対応であったため、レベル2対応の支承へ交換する。その際は、免震ゴム支承を採用し、ゴムによる橋梁全体の長期化による作用力低減と、免震による応答低減による基礎補強の削減を図る。

 さらに、既設の可動支承下の橋脚にも地震力を負担させることで、地震時水平力の分担配分を見直し、固定支承下橋脚で必要となる基礎補強量を削減する。

2、新技術適用で下部構造耐震性向上の課題と解決策

(1)制震ダンパーの採用

 制震ダンパーを適用する。ダンパーの粘性によるエネルギー吸収効果は、簡易な、荷重―変位モデルを動的解析に持ちいることが多いが、設置する構造物同士の相対速度が小さい(0.5m/s以下)の場合は、速度―変位モデルで効果を検証し精度を向上させる。

(2)免震支承の採用

 免震支承の適用で橋梁全体を長周期化及びエネルギー吸収量を増加させ、地震時応答を低減する。免震ゴム支承とすることで支承の相対変位が実挙動の三倍程度となるケースがあるため、支承のサイドブロックと支承本体との衝突の影響を摩擦バネモデルで考慮することで、解析の精度を向上させる。

(3)補強部材へのSBHS材の採用

 部分係数設計法では、新材料に対する不確実性を考慮した上で、その材料や工法の有利な点を設計に反映することが可能であり、SBHS500材は、通常鋼材のSM570材に対し、不確実性からその抵抗力が部材・構造係数により5%低減されるが、11%降伏強度が高いため、板厚や鋼重削減による製作コスト削減の促進が図れる。

3、新たに生じうる共通のリスクと対策

リスク①:

 支承交換や後付け制震装置により橋梁全体の周波数特性が変化し、長周期波が卓越した地震により新たな損傷発生してしまう。

対策①:

 標準波の代わりに、そのサイトの局所的な地盤条件を反映させ作成したレベル2 地震波で照査を実施する。

リスク②:

 2方向地震力の同時作用を未考慮のため、エネルギー吸収能力を過大に、変形量を過小評価してしまう。

対策②:

 2方向同時作用による塑性2次勾配に移動硬化則を適用し、骨組みモデルによる動的解析を実施し、同時性を表現することで解析精度を向上する。

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅱ-1 解答者09 専門:コンクリート設計

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅱ-1 解答者09 専門:コンクリート設計

予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案

寒中コンクリートとして施工する場合に、その具体的な適用条件を述べた上で、材料・配合、運搬、打込み及び養生の観点のうち2項目について、品質を確保する上での留意すべき事項、並びにその留意すべき理由と対策を述べよ。

適用条件:日平均気温が4℃以下になることが予想される場合

1.打込み

留意事項:

打込み時のコンクリート温度が4℃以下とならないよう温度低下を抑える。

理由と対策:

コンクリートの凝結の遅延、気温低下による凍結リスクを低減するため。

 ①打込み時のコンクリート温度を5~20℃の範囲とする。

 ②打込み前に鉄筋・型枠・打継面の氷雪を蒸気やヒーターで溶かす。

 ③外気の影響を受けないよう打設箇所をシートで覆い、保温する。

2.養生

留意事項:打込み後の初期に凍結しないようコンクリートを保護する。

理由と対策:

初期凍害を受けると、強度の増進が少なく耐久性・水密性に劣るため。

 ①断熱性の高いシート等で覆い保温し、適温に保つのが困難な場合は、さらにヒーター等で給熱を行う。

 ②初期強度が得られるまで、コンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に保つ。

 ③保温養生または給熱養生後は、コンクリート温度を急激に低下させない。

予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案

鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食を伴う劣化要因を2つ挙げ、それぞれの発生メカニズムを説明せよ。また、それぞれの劣化について、異なる視点での制御方法を2つずつ記述せよ。

1.塩害

 

メカニズム:海水飛沫や凍結防止剤散布による塩化物の浸透や海砂の使用など材料由来の塩化物により、塩化物イオン濃度が発錆限界を超え、鉄筋の不動態被膜が破壊されることで、酸化反応が起こり腐食が開始する。

制御方法:

①コンクリート内部への塩化物イオンの浸透抑制のため、水セメント比を小さくし、緻密性を増加させる。

②エポキシ樹脂塗装鉄筋やステンレス筋などの防食鉄筋を使用する。

2.中性化

メカニズム:pHが12~13の強アルカリ性であるコンクリートに大気中の二酸化炭素が侵入し、水酸化カルシウム等のセメント水和物と炭酸化反応を起こし細孔溶液のpHを低下させる。pHが概ね11より低くなると、鉄筋の不動態被膜が破壊され、酸化反応が起こり腐食が開始する。

制御方法:

①コンクリート内部への二酸化炭素の浸透抑制のため、水セメント比を小さくし、緻密性を増加させる。

②中性化が鉄筋位置まで進行しないように適切なかぶりを確保する。

予想問題 Ⅱ-1-3 簡易答案

高性能AE減水剤の使用により得られる効果のうち主たる目的が異なる2種類を挙げ、それぞれについて、使用の目的、作用機構、留意点について述べよ。

1.高い減水性能

 

使用の目的:高強度コンクリート

作用機構:減水剤がセメント粒子に吸着するとセメント粒子表面に帯電層が生じ、粒子が互いに反発する分散作用により、ワーカビリティが向上し、単位水量を減少させることができる。

留意点:通常のコンクリートと比較してブリーディングが少なく、硬化開始時期が早いため、均一に硬化するように、表面養生材を散布し、表面の水分蒸発を防ぎ、仕上げ作業を行う。

2.優れたスランプ保持性能

使用の目的:高流動コンクリート

作用機構:コンクリート中に多くの独立した微細な空気泡を一様に連行し、時間の経過とともに溶液中の反応性高分子がセメント表面に吸着し、長時間にわたり再凝集を防止することで、スランプを保持することができる。

留意点:スランプフローとその経時変化、凝結時間などの諸性状は使用量により大きく変わるため、試験室における試し練りのみでなく実機試し練りにより使用量を決定する。

予想問題 Ⅱ-1-4 簡易答案

中性化における4つのステージ(潜伏期、進展期、加速期、劣化期)の中で、潜伏期以外の2つを選び、その特徴を簡潔に述べよ。さらに、新規に鉄筋コンクリート構造物を設計・施工する際、鋼材を発錆させないための対策項目を3つ挙げよ。

1.中性化の進行過程

 

進展期:外観上の変状は見られないが、中性化が進行し、中性化残りが発錆限界を未満となり、鉄筋の不動態被膜が破壊され、腐食し始める段階

加速期:鉄筋の腐食が進み、腐食生成物の体積膨張によりひび割れが発生している段階。ひび割れの伸展とともにはく離・はく落が見られるが、鉄筋の断面欠損は生じていない。

2.対策項目

①コンクリート内部への二酸化炭素の浸透抑制のため、水セメント比を小さくし、緻密性を増加させる。

②中性化が鉄筋位置まで進行しないように適切なかぶり厚さを設計する。

③施工中は適切な間隔でスペーサーを用い、かぶり不足とならないようにし、適切な養生により、表層品質を確保する。

予想問題 Ⅱ-1-5 簡易答案

コンクリート工の生産性向上の向上を目的に、プレキャスト部材を使用する場合を想定し、設計・施工の観点から、それぞれの留意点について説明せよ。

1.設計上の留意点

 

 ①部材の形状・寸法:

複雑な形状ではなく、単純な形状とすることで、生産性を向上させる。また、現地の搬入条件・架設条件等を考慮した寸法とする。

 ②部材接合部:

プレキャスト部材同士の接合部が最大の弱点となるため、最適な接続方法や止水方法を検討する。また、接合箇所数を最小限とすることで長期耐久性を確保する。

2.施工上の留意点

 ①現地条件を考慮した施工計画:

現地の制約条件(架設場所、部材搬入ルート、近隣住民等)を考慮した上で、生産性が最大となる、部材搬入計画や楊重設備計画を行う。

 ②部材接合部の品質管理:

  プレキャスト部材接合部の接着剤や止水材は、施工条件(温湿度管理等)を遵守し、気象条件の影響を受けないよう、シート等で防護を行い、品質を確保する。

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅱ-2 解答者09  専門:コンクリート設計

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅱ-2 解答者09  専門:コンクリート設計

予想問題 Ⅱ-2-1 簡易答案

寒冷地域において、冬場に鉄筋コンクリート構造物を施工し、脱型後、ひび割れが多数発生していた。そこで、補修計画の立案および施工計画の見直しを行うこととなった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

 

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

 

・施工時の環境条件とひび割れの発生状況から、初期凍害によるひび割れを想定

①ひび割れ箇所は強度不足および劣化因子の侵入経路となるため、ひび割れ分布とひび割れ深さを調査し、補修方法・補修範囲を検討する。

②初期材齢で凍結融解作用を受けると、ひび割れや強度低下を起こすため、養生時の外気温と保温・保湿状況を調査し、不十分であれば、給熱養生等の追加対策を検討する。

(2)業務を進める手順と留意点、工夫点 

手順1:ひび割れ分布およびひび割れ深さの調査

・一般に南面が凍結融解回数が多くなるため、ひび割れが多く発生する。

・デジタルカメラによるひび割れ画像解析により、調査を効率化する。

手順2:補修方法の決定

・調査結果より、表層をはつりとり、セメント系補修材で断面修復を行う。打ち直しなどの必要以上の補修ではなく、耐久性を確保できる適切な工法の選定が重要。

手順3:コンクリート打設計画・養生計画の改善

・コンクリート打設時は、外気温およびコンクリート内部温度を常時計測する。

・養生時は、遠隔監視できるコンクリート養生温度管理システムを使用する。異常時は管理者に警告メールが通知されるため、即時の対応が可能となる。

(3)関係者との調整方策:発注者から、より確実な初期強度発現のため、型枠存置期間の延長の追加要求があった。その内容を施工業者に示すと、工期延長に伴う500万円の工事費アップを要求された。しかし発注者は施工費及び工期延長は拒否した。そこで私は、要求額より安価で養生効果が高く、型枠存置期間延長不要の、遮熱養生工法を採用した。これにより、両関係者を取りまとめて高性能とコスト維持の意見を擦り合わせ、この作業を効率的に取りまとめた。

予想問題 Ⅱ-2-2 簡易答案

 

コンクリート構造物の施工現場において、生産性向上・業務効率化を目的として、ICT施工を導入することとなった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1)調査、検討すべき事項とその内容

 

①当該工事のクリティカルパスや重点品質管理工種で、ICT施工が導入できる範囲を調査する。その範囲で生産性・効率性とコストのバランスを検討し、最大の効果を上げる。

②元請業者だけでなく、発注者、施工業者のICT施工の対応可能範囲を調査し、全ての関係者の効果が上がるICT施工体制の構築を検討する。

(2)業務を進める手順と留意点、工夫点 

手順1(施工範囲・内容の検討):生産性・効率性の向上効果よりも導入費用が上回らないよう、導入範囲を検討する。

・コンクリートの練り混ぜから打設までの時間管理を一元管理する。CIMデータと連携し、打設状況を「見える化」することで、品質管理をさらに効率化する。

手順2(体制の構築):発注者、施工業者と対応範囲の調整を入念に行う。

・発注者に対しては、施工管理と検査の効率化を、施工業者には、導入に伴う省人化・省力化のメリットをそれぞれ理解してもらう。これらにより、三者一体となり効果が上がるICT施工の取組体制を構築する。

手順3(効果確認とフィードバック):さらなる生産性向上・業務効率化への改善

・導入による生産性向上・効率化の度合いを定量的に評価することが重要である。

・特に最前線である施工業者の意見をフィードバックし、さらなる効率化を目指す。

(3)関係者との調整方策:生コン業者へICT管理システムの導入を申し入れたところ、導入経費200万円の工事費アップを要求された。そこで発注者に、ICT施工に伴う経費増を申し入れたが認められなかった。そこで私は、同じ生コン業者を使用する隣接工事業者数社と調整し、同システムを導入してもらい、システム導入費用を折半することで各社の負担を最小限にした。これにより、関係者を取りまとめて省人化とコスト維持の意見を擦り合わせ、この作業を効率的に取りまとめた。

予想問題 Ⅱ-2-3 簡易答案

 

高橋脚の橋梁上部工にて設計基準強度50N/mm2の高強度コンクリートの打設を行うこととなった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

 

①通常よりもスランプロスが大きいため、生コン工場から、現場までの所要時間を調査し、ワーカビリティ、ポンパビリティーが確保できる配合を検討する。

②通常よりも粘性が高く充填しにくいため、荷下し箇所から打設箇所までの距離を調査し、品質を確保できる打込み・締固め方法、仕上げ方法を検討する。

(2)業務を進める手順と留意点、工夫点 

手順1(配合計画):ワーカビリティ、ポンパビリティーを確保する。

留意点:骨材の表面水の変動による影響を受けやすく、スランプや圧縮強度のばらつきや練混ぜ効率が悪くなる場合がある。

工夫点:室内試し練りだけでなく、実機試し練りにより性状確認を行う。

手順2(打設計画):通常コンクリートよりも入念な打設計画を立案する。

留意点:ブリーディングが少なく、硬化開始時期が早いため、均一に硬化するように、表面養生材を散布し、表面の水分蒸発を防ぎ、仕上げ作業を行う。

工夫点:ポンプ閉塞リスク低減のため、橋面まではクレーンで大型バケットにより運搬し、橋面上から定置式ポンプにより圧送する。

手順3(養生計画):適切な養生方法、養生期間を決定する。

留意点:通常のコンクリートに比べ、養生開始時期をできるだけ早くする。

工夫点:コンクリート養生温度管理システムを使用し、遠隔監視する。

(3)関係者との調整方策:発注者より、床版の仕上げ品質向上のため、追加対策の要求があった。そこで施工業者へ増員を申し入れたところ、200万円の工事費アップを要求された。しかし、発注者は施工費アップは拒否した。そこで私は、予算内で省人化と品質向上が可能な機械仕上げ工法を採用した。これにより、両関係者を取りまとめて高性能とコスト維持の意見を擦り合わせ、この作業を効率的に取りまとめた。

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅲ 解答者09  専門:コンクリート設計

建設部門 選択科目 鋼コン 予想問題Ⅲ 解答者09  専門:コンクリート設計

予想問題 Ⅲ-1 簡易答案

我が国では「国土強靭化基本計画」により、重要インフラの整備や、耐震や老朽化対策の推進を行っているところであるが、2019年10月の台風第19号をはじめ、毎年のように各地で自然災害が頻発し、甚大な被害が発生しており、まだまだ道半ばである。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)コンクリート構造物の強靭化のための効率的なハード・ソフト両面からの長寿命化について、コンクリートに携わる技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(1)コンクリート構造物の強靭化のための課題

①新設コンクリート構造物の耐久性向上(ハード対策)

高強度コンクリートの使用やプレキャスト部材の使用により、長期耐久性を向上させる。

②予防保全への維持管理サイクル転換(ソフト対策)

計画段階で劣化の前兆を捉えるための点検・調査方法、評価・判定方法を検討・決定し、劣化が生じる前や劣化が軽微な段階で対策を行い、必要な耐久性を維持する。

③インフラデータプラットフォームの構築(ソフト対策)

各種データ(気象・防災データや交通・物流データ等)を位置情報で紐付け、一元的に管理し、災害発生時、迅速に災害復旧を図る

(2)最も重要と考える課題とその解決策

課題:新設コンクリート構造物の耐久性向上

解決策①:高強度コンクリートの使用

・高強度コンクリートの使用により、耐久性を向上させる。

・加えて、高強度コンクリートの使用により、構造物のスリム化が可能となり、構造断面を約3割低減することができるため、表層からの劣化因子の侵入リスクを低減することができる。

解決策②:プレキャスト部材の使用

・プレキャスト部材は、工場製作のため、天候や外気温に左右される現場打ちコンクリートに比べ安定した高品質な構造物とすることができる。

解決策③:非鉄鋼材など劣化抵抗性のある材料の使用

・鉄筋コンクリート構造物劣化の大きな要因となる鋼材腐食を防止するため、炭素繊維などの非鉄鋼材や、エポキシ樹脂塗装鉄筋やステンレス鉄筋など劣化抵抗性の高い材料を使用し、劣化因子の侵入に対しての耐久性を向上させる。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策

共通リスク:小規模構造物ではスケールメリットが少なく、高強度コンクリートやプレキャスト部材の使用による初期コストの増大分を、補修コスト減少分でキャンセルできず、約2割の高コストとなる。

対策:対象構造物の用途や計画供用期間に応じ、LCCが増加しないように高強度コンクリート、プレキャスト部材等の使用の要否を判断する。

予想問題 Ⅲ-2 簡易答案

今後、東京オリンピック・パラリンピック関係の需要も終わりを迎え、人口減少・少子高齢化が進む我が国の建設市場は冷え込み、成長著しい海外市場への積極的な進出が今後の日本企業の成長に欠かせない中心的柱として期待されている。海外進出においては、日本の鋼構造・コンクリート技術を生かして現地の産業のニーズに合わせて公益性を高められるかが重要な課題である。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)日本のインフラシステムの海外展開にあたり、持続可能性の確保の観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(1)インフラシステム海外展開のための課題

①多くの未熟な現地技術者、現地技能者をマネジメントし、要求される安全・工期を確保し、高品質のコンクリート構造物を建設・維持管理できる体制の構築。

②自然環境が厳しく、工事をするのに必要な建設資材や機材などが、なかなか手に入らない状況での、周辺地域、他国からの調達ネットワークの確保。

③性能よりも経済性が重視される傾向のある海外において、一律に日本の品質レベルをスタンダードにするのではなく、現地の実情に合わせ、品質を維持しつつコスト低減を行うことのできる品質基準の設定。

(2)最も重要と考える課題とその解決策

課題:①高品質のコンクリート構造物を建設・維持管理できる体制の構築

解決策①:プレキャスト製品の活用

・プレキャスト化により、現地一品生産ではなく、屋内工場生産により安定した供給で高品質な部材が作成可能となる。コンクリート部材の工場生産は製造業と同様に作業を単純化できるため、未熟な現地技能者でも対応できる。また、現地作業が減るため、安全性も向上する。

解決策②:CIMデータの活用による理解促進

・設計、施工、維持管理までを3次元データを用い、ビジュアル化し、完成イメージや建設手順、維持管理方法を理解しやすくすることで、効率的・効果的に現地技術者、現地技能者をマネジメントする。

解決策③:持続可能性の確保のための現地人材の育成

・国が提供するODAや各種人材育成スキーム・プログラム間の総合的連携により、質の高いインフラ整備に必要となる現地人材を戦略的に育成する。これにより、中長期的な現地インフラの高品質化、長寿命化が図られる。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策

共通リスク:カントリーリスクの顕在化

・相手国側がインフラシステム整備の優先順位の方針を変更したり、テロなどの政治的な騒乱の発生による、案件の中断又は延期を余儀なくされる場合がある。

対策:官民連携による対応

・政府内の関係省庁、関係機関、関係民間企業による連携を強化し、プロジェクトの進捗状況等を継続的に、よりきめ細かく把握する。早期に問題発生の兆候を察知するとともに、撤退か取組継続かの見極めと判断を行う。

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅱ-1 解答者16 専門:コンクリート診断

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅱ-1 解答者16 専門:コンクリート診断

予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案

コンクリート構造物の初期欠陥ひび割れのうち、2つを選びそのメカニズムを説明せよ。また、コンクリートの配合設計とあるいは製造・施工の観点から、それぞれの留意すべき事項と対策を述べよ。

1 初期欠陥ひび割れのメカニズム

(1)沈下ひび割れ

コンクリートの打込み後、ブリーディングにより内部の水がコンクリートの上面まで上昇する。上昇した分の水量だけコンクリート表面が沈下する。その際、太径の水平鉄筋などが表面に妨げられ、打ち込み面に鉄筋に沿ったひび割れが発生する。

(2)プラスティック収縮ひび割れ

コンクリートを打設し、凝結前の段階でコンクリート表面が日射により乾燥する場合に生じる。内部のコンクリートから生じるブリーディングによる水分供給量よりも乾燥による蒸発量が大きい場合にひび割れが発生。

2.留意点

(1)沈下ひび割れ

<製造・施工上>

打ち込み速度を遅くし、打ち込み高さを低くし、材料分離を抑える。連続投入を行う際には、下層部が落ち着いてから再開する。十分な締固めを行うとともに、仕上げ前に再振動をかける。それでも表面にひび割れが発生した場合には、ダンピング

<製造・施工上>

打込み後の水分の逸散を防ぐためにシート養生を行い、乾燥を防止する。

予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案

コンクリートの乾燥収縮ひび割れの発生メカニズムを説明せよ。コンクリートを低減収縮化するための対策として、配合、設計、養生上の手法からそれぞれ挙げ、その概要と留意点を述べよ。

1 乾燥収縮ひび割れのメカニズム

1)メカニズム

乾燥によって毛細管空隙(生コンクリートの練混ぜ水で占められていた空間において、セメントと水によって化学反応が起きた後も水和物で占められなかった空隙をいう)の中にある水が蒸発し、これに伴って負圧を生じ、固体部分が縮められていく。コンクリート養生期において、湿潤状態を保たないとセメントペーストの自由収縮が骨材や鉄筋、接合部材によって拘束され、引張応力が生じ、ひび割れが発生する。

2 乾燥収縮ひび割れの検討項目

(1)配合:収縮量の低減

粗骨材は細骨材と比べて単位質量当たりの表面積が小さく、粗骨材を多く用いるほど所定の流動性を得るための水量(練り水の量)が少なくなるため、生コン配合において粗骨材の使用量を増やし、練り水の量を削減する。

(2)設計:収縮応力の低減

あらかじめ定められた位置にひび割れを集中させる目的で、所定の間隔で断面欠損部を設け、コンクリート表面の収縮を緩和させる。

(3)養生:ひび割れ抵抗性の向上

コンクリート中の水を蒸発させないように、コンクリートの露出面(特に天端面)を加圧作業によって緻密にする。あるいは、硬化初期の湿潤養生をできるだけ長期間(最短でも2週間程度)行ない、セメント水和結晶の生成を促進する(ガラス質化する)。

予想問題 Ⅱ-1-3 簡易答案

寒中コンクリートとして施工する場合に、材料・配合、運搬、打ち込み及び養生の観点のうち2項目について、品質を確保する上での留意すべき事項、並びにその留意すべき理由と対策を述べよ。

 

(1)材料・配合面での留意すべき事項とその理由 

留意点:コンクリート温度が荷卸しする際に10℃以上20℃未満になるよう、材料の温度管理に留意する。

理由:約5℃以下の低温ではコンクリートの凝結は遅くなり、早期に荷重を受けるとひび割れや変形が発生しやすい。

(2)材料・配合面の対策:

水または骨材を加熱する。セメントは急結の恐れがあるので加熱不可。骨材を加熱する場合は、温度が均等で乾燥しないようにスチーム過熱を行う。加熱した材料を用いる場合は、水と骨材をミキサに導入し、混合物の温度が40℃以下になってからセメントを投入する。

(3)打込み・養生での留意すべき事項とその理由 

留意点:養生時には初期圧縮強度が5N/mm2が得られるよう5℃以上に保つ。

理由:硬化前のコンクリートが氷点下にさらされると,コンクリート中の水分の凍結,氷の膨張により,耐久性や水密性が低下する。

(4)打込み・養生時の対策:

打設は温度の低い日や時間帯を避ける。断熱養生時には、コンクリート表面に散水を行う。十分に水分を与えないと、ヒーターなどの局所的な給熱のため、乾燥してひび割れの原因となる恐れがある。全体的に温度が上がるように計画する。

 

予想問題 Ⅱ-1-4 簡易答案

設計基準強度50-100N/mm2クラスの高強度コンクリートについて、そのフレッシュ時及び硬化後の性質を説明せよ。また、その性質を踏まえて、製造および施工を行う上での留意点を述べよ。

 

1.高強度コンクリートの性質

<フレッシュ時>

粘性が大きくなるためスランプが大きい場合でも材料分離が生じない。また、粘性が大きくなるためにブリーディングが生じなくなり、仕上げが困難となる。使用材料の影響を受けやすい。凝結が遅い傾向にあるため、型枠に作用する側圧は液圧とする。

<硬化後>

組織が緻密であるため中性化や塩化物イオンの浸透に対する抵抗性に優れている。水セメント比が40%以下になると中性化速度は極めて遅くなり、30%以下ではほとんど進行しなくなる。

2.製造および施工上の留意点

<製造時>

使用材料の粗骨材の粒度管理、細骨材の表面水および微粉分量の管理が重要。1バッチの練り混ぜ量を低減し、練り混ぜ時間を短くする。ポンプ圧送時の圧力損失が普通コンクリートの2~4倍となる。また、圧送によってスランプフローが低下するなど、コンクリートの品質変動が生じるので、施工計画でこれらを考慮する。

<施工時>

仕上げ後にただちに表面に適量の水分を散布あるいは、合成樹脂エマルジョンの膜養生を散布する必要がある。事前の試験練りにより最適練混ぜ時間やミキサの製造能力の確認が必要。圧送時に閉塞する場合は、①単位粉体量を増加させる、②細骨材率を大きくするのいずれかの対処を行う。単位粉体量を増加させるとより圧送負荷が生じるため施工条件に応じて調整する。

予想問題 Ⅱ-1-5 簡易答案

ASRにおける4つのステージ(潜伏期、進展期、加速期、劣化期)の中で、潜伏期以外の2つを選び、その特徴を簡潔に述べよ。さらに、新規に鉄筋コンクリート構造物を設計・施工する際、ASRを発生させないための対策項目を3つ挙げよ。

1.ASRのステージの特徴

<進展期>

水分とアルカリの供給化において膨張が継続的に進行し、ひび割れが発生し、変色、アルカリシリカゲルの滲出が見られる。しかし、鋼材腐食による錆汁は見られない。コンクリート内部では、骨材内にASRによるひび割れが生じている。

<加速期>

 ASRによる膨張速度が最大を示す段階で、ひび割れが進展し、ひび割れ幅および密度が増大する。また、鋼材腐食による錆汁が見られる場合もある。コンクリート内部では、ASRによるひび割れが骨材からセメントペーストへ進展している。

2.ASR抑制対策

(1)混和材の使用

ASRはコンクリートに使用されるセメント量が多いと、それに伴いアルカリ量が高くなるので、高炉スラグ微粉末や、フライアッシュなどの混和材をセメントに置換して使用する。これによりコンクリート内部への水分移動も抑制されるためASRの抑制効果が高まる。

(2)水分供給の遮断

 ASRは水分の供給が多いと生じやすいので、構造物設計時には排水箇所を設け、構造物に直接水がかからないようにする。

(3)無害な骨材の使用

 ASR反応性鉱物を含まない骨材を使用する。なお、現行の化学法では急速膨張性の反応鉱物を含む場合には「無害でない」となるが、遅延膨張性の反応性鉱物を含む場合には「無害」と反応される場合が多い。したがって、骨材使用前に偏光顕微鏡観察により、反応性鉱物の有無を確認する。

予想問題 Ⅱ-1-6 簡易答案

疲労における4つのステージ(潜伏期、進展期、加速期、劣化期)の中で、潜伏期以外の2つを選び、その特徴を簡潔に述べよ。さらに、新規に鉄筋コンクリート構造物を設計・施工する際、疲労を発生させないための対策項目を3つ挙げよ

 

1.床版の疲労におけるステージ

<進展期>

 主筋に沿った曲げひび割れが進展するとともに、配力筋に沿う方向にひび割れも進展し始め、格子状のひび割れ網が形成される段階。外観上のひび割れ密度の増加は激しいが、床版の連続性は失われていない。

<加速期>

 ひび割れの申し赤が進み、ひび割れ開閉やひび割れ面のこすり合わせがはじまる段階。ひび割れスリット化や角落ちが生じるとコンクリート断面の抵抗は期待できないので、床版の押しぬき剪断力は急激に低下し始める。

2.疲労を発生させないための対策

(1)乾燥収縮ひび割れを低減

 疲労は乾燥収縮ひび割れを起点として進展していくので、打設時に乾燥収縮ひび割れを形成しないよう、配合設計を行い、水分の蒸発をさせないように養生を行う。

(2)床版上面の防水、漏水防止

床版上面に水が溜まっていると、床版上面のひび割れから水が浸入し、疲労劣化が加速するのを防ぐため、床版上面の防水あるいは伸縮継手付近からの漏水を防止する構造を設ける。

(3)鋼繊維補強コンクリートの使用

 アスファルトに代わり剛性の高い繊維補強コンクリートを使用する。繊維の架橋効果により微細なひび割れを抑制できることから、ひび割れ抵抗性が向上する。

予想問題 Ⅱ-1-7 簡易答案

既設コンクリート構造物のひび割れ補修方法で利用する工法について、次のうちから2つの方法を取り上げ、目的、工法上の留意点について、記述せよ。(a)表面被覆工法(b)断面修復工法(c)電気防食工法(d)脱塩

 

1.電気防食工法

目的:コンクリートを介してコンクリート内部の鉄筋に直流電流を供給し、通電によりコンクリート中の鋼材の腐食反応が停止することを目的とする。鉄よりもイオン化傾向の高い亜鉛などを陽極材とする犠牲陽極方式と、直流電源装置を用いる外部電源方式とがある。

留意点:塩化物イオンの除去後使用環境により再劣化する可能性があるため表面被覆などの対策工を実施する必要がある。また、鋼材付近にアルカリが移動するので、鋼材付近の骨材にASRを生じる可能性もあることに留意する。

 2.脱塩工法

目的:電解質溶液(水酸化カルシウム水溶液など)と陽極材とで構成される仮設陽極をコンクリート表面に設置する。陽極材からコンクリート中の鋼材へ1A/m2程度の電流を約8週間通電することで、塩化物イオンが電気泳動することにより、電解質溶液中に排出されることで、コンクリート中の塩化物イオンを除去する。

 

予想問題 Ⅱ-1-8 簡易答案

プレストレスコンクリートを用いた構造物を1つ挙げ、その構造物に起こりうる初期欠陥を2つ挙げ、その発生原因と構造物に与える影響及び設計・施工面からの防止策を述べよ。

 

1.グラウトの充填不良

発生原因:プレストレストコンクリート構造物におけるグラウトは、PC鋼材とシースとの空隙を埋め、PC鋼材とコンクリート部材を一体化するとともに、PC鋼材の腐食を防ぐ働きをしており、強度や耐久性の面で重要な役割を果たしている。グラウトの充填不良の原因の一例として中間支点部でグラウトが先流れを起こし、空気を巻込む充填不良がある。

設計上の対策:ノンブリージング型のグラウトの採用や、先流れ現象を防止する適度な粘性を持ったグラウトの選定が重要である。

施工面での対策:施工時の変形に強いシースの採用、現場でのグラウト作業を必要としないプレグラウト鋼材の採用などが考えられる。

2.定着具背面のコンクリート破損

発生原因:曲線及び斜角を有する場所打ち床版橋の桁端部ではPC鋼材の定着具とコンクリート端面から離れが近くなる場合がある。また、PC鋼材同士の離れも斜角の影響を考慮した配置計画がされていないと、PC鋼材の緊張作業中に局部的な圧縮力によりコンクリートが破壊される場合がある。

設計上の対策:FEM解析により補強鉄筋量を算定し、十分な補強を行う。曲線及び斜角を考慮したPC鋼材の配置間隔を確保し、局部的に圧縮力のかからない計画とする。

 

予想問題 Ⅱ-1-9 簡易答案

耐久性の向上に有利だと考えられる高性能コンクリートを2例挙げ、その理由と特徴、ならびにそれを用いたコンクリートの製造および施工上の留意点をおよびその対策を述べよ。

1.高流動コンクリート

理由:振動を加えたり締固め作業を行ったりしなくても、材料分離を起こさずに型枠などの隅々まで充填できる。

特徴:材料の品質変動に敏感で凝結効果が遅延する。粉体系、増粘剤系、併用系がある。水粉体比が小さく組織も緻密になるため、中性化進行速度は遅くなる。粉体に高炉スラグ微粉末を使用すると、塩害に対しる抵抗性が高くなる。

製造上の留意点:練混ぜからの経過時間が長すぎると、特にスランプフローの低下が大きくなり、自己充填性が失われる。

対策:高性能 AE 減水剤添加量を調整する。

施工上の留意点:材料分離を防止

対策:落下高さ( 5m程度以下),流動距離(8m以下):

2.ポリプロピレン(PP)繊維補強コンクリート

理由:繊維の架橋効果によりひび割れ抵抗性を向上できる。また、加熱時に繊維が解けることで膨張圧を緩和することで爆裂を防止できる。

特徴:少量のPP繊維をコンクリート中に均一に分散させることで爆裂の抑制効果がある。PP繊維は比較的分散性能が良く、繊維混入によるコンクリートの流動性低下の少ないという特徴がある。

製造上の留意点:ファイバーボールが発生しないことを確認する。

対策: 材料の投入順序、繊維の混入率、ミキサの種類の選定、練混ぜ時間を検討する。

施工上の留意点: 圧送時に骨材の吸水や圧送による脱水

対策:圧送速度を遅くし、配管径を125㎜以上とする

予想問題 Ⅱ-1-10 簡易答案

壁状のコンクリート構造物を構築する際に、コンクリートの充填不良が生じる原因を2つ挙げ、それぞれについて設計・施工上とるべき具体的な防止策を述べよ。

 

(1)過密配筋

 壁状のコンクリート構造物は、壁厚が薄く設計されているのにも関わらず、鉄筋が密に配置されることが多い。鉄筋が密に配置されている場合、コンクリート打設時の棒形振動機による締固め自体も困難なため、充填不良となる恐れがある。

 充填不良防止対策:壁厚の見直しと配置される鉄筋間隔を十分確保することや配筋条件を変更できない場合は高流動コンクリートの採用を検討する。ただし、高流動コンクリートは品質の変動を受けやすいため、適切な製造管理、施工管理を行う必要がある。

(2)コンクリートの打設方法

 コンクリートを打設する際、高所から自由落下させた場合や水平方向にコンクリートを流し込んだ場合、締固めが不十分であれば、モルタルと骨材の材料分離が生じ、ジャンカなど充填不良を引き起こす原因となる。

 充填不良防止対策:打込み高さを1.5m以内とし、1層の厚さを40~50cm以内とし、内部振動機で十分に締め固める。透明型枠を用いて充填状況を可視化して管理することも有効である。

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅱ-2 解答者16 専門:コンクリート診断

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅱ-2 解答者16 専門:コンクリート診断

予想問題 Ⅱ-2-1 簡易答案

経年劣化によるかぶりコンクリートの剥離・剥落で鉄筋が露出したコンクリート構造物において、補修対策を行うものとして、以下の問いに答えよ。

(1)剥離・剥落の原因として考えられるものを2つ挙げ、それぞれについて原因の特定と補修対策を行うための調査、検討すべき内容を記述せよ。

(2)調査から補修対策実施までの業務手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査、検討すべき事項と内容

塩害と中性化が考えられる。

1.1塩害

①塩化物イオン濃度調査:

・鉄筋位置での塩化物イオン濃度が腐食発生限界値を超えているか否かを調査

・塩化物イオンの拡散係数を求め、劣化進行を予測中性化深さ

1.2中性化

①中性化深さ測定:

・中性化深さから中性化速度を求め劣化予測

1.3共通

①外観変状調査:コンクリート内部の劣化状態を推定

②鉄筋腐食状況の調査:

・自然電位法により鉄筋腐食の程度を定量的に把握

・鉄筋の残存寿命、改修の要否を検討

2.業務手順(留意点・工夫点含む)

①調査計画及び調査: 調査項目、調査手法を選定し、現地調査を行う。留意点-同じ調査箇所で複数項目の調査を行うなど効率的な調査箇所を設定する。工夫点-UAVを活用し効率的に劣化状況全体を把握する。

②調査結果の評価: 調査結果から劣化要因を特定し、補修の要否を判断する。

留意点-残存供用期間を考慮して、補修の要否、補修水準の判断を行う。工夫点-複合劣化の場合は個々の劣化が単独で作用する場合よりも深刻化するため、高度の判断を要することから、必要に応じて専門家(大学教授等)と協同し、評価を行う。

③補修設計・施工計画の立案: 劣化機構・要因に適合した工法を選定し、施工計画を立案する。留意点-施工環境、時期を考慮した工法・補修材料を選定する。

工夫点-再劣化防止に表面被覆あるいは表面含浸工法を施す。

3.関係者との調整方策

発注者へ標準的補修水準を示したところ、耐久性の回復に加え、残存供用期間中の耐久性確保の追加要求があった。この内容を施工業者に示すと、表面被覆工法を行うことにより、500万円の工事費アップを要求された。しかし、発注者は施工費アップを拒否した。そこで私は、予算内で耐久性の回復に加え、残存供用期間中の耐久性を確保できる亜硝酸リチウム併用型表面含浸工法を採用した。これにより、両関係者を取りまとめて高性能とコスト維持の意見を擦り合わせ、この作業を効率的に取りまとめた。

予想問題 Ⅱ-2-2 簡易答案

続箱桁の上部工をプレキャスト化し、工期短縮を目的とする検討業務を行うことになった。あなたが責任担当者として、業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)工期短縮案で、調査、検討すべき内容について、その内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

1.調査、検討すべき事項と内容

①プレキャスト工場の選定

現場からの距離、工場の製造工程の空き具合、ストック場所などから工場を選定する。また、サイトプレキャスト化も検討する。

②下部工の縮小化

上部工の重量軽減による、下部工の反力軽減による縮小化を検討する。

③搬入:プレキャスト製品の製作完了から、運搬据え付けの過程において、プレキャスト製品を損傷させないような吊り方法と運搬方法を検討する。

④接合部の耐久性能

プレキャスト部材は,接合部から水分や塩化物イオンが浸透しやすくなるなどの特徴があるため、接合部の疲労や鋼材の腐食等に対する耐久性能を確保する方法について検討する。

2.業務手順(留意点・工夫点含む)

①設計条件再整理

運搬制約に併せプレキャスト部材を分割、軽量化し、各種外力、耐震性などの諸規定・基準書に則った設計の再確認を行う。

留意点: プレキャスト部材や接合部の強度が十分に確保できていることを確認

工夫点: BIM/CIMを用いた設計を行う。

②工場の選定と資材の発注

現場からの距離、工場の製造工程の空き具合、ストック場所などから工場を選定。

留意点: 試験練りを実施し基準を満たすか検証する。

工夫点:高強度コンクリートを使用する。

③施工計画立案:搬入計画、設置計画

留意点: 工程短縮を目的とした業務であるため、工程管理を入念に行う。

工夫点: 主変構造物の制約によりクレーンが使用できない場合は、ボールベアリングを使用する。

3.関係者との調整方策

(1)発注者を含めた公的機関:プレキャスト部材の運搬に関し、関係機関と調整して既設道路を交通規制する時間帯を決め、施工時間を定める。

(2)協力会社:生コンプラントやクレーン会社の関係者とも情報共有し、パトロールによる安全確認を実施する。

(3)周辺住民:周辺住民の協力は工事の円滑な進捗に欠かせないため、事前説明化や現場見学会といった広報活動による情報共有を図る。

予想問題 Ⅱ-2-3 簡易答案

構造物の靭性向上を目的として短繊維補強コンクリートを、コンクリートポンプにて高所に圧送して床版を施工することになった。あなたが工事の担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

1.調査、検討すべき事項と内容

①配合

短繊維の混入率および種類、ベースコンクリートのスランプの違いがコンクリートのスランプあるいはスランプフローおよび空気量に与える影響を検討する。

②練り混ぜ

プラントで短繊維を練り混ぜるか、アジテータ車で短繊維を練り混ぜるか検討する。アジテータ車に短繊維を投入して練り混ぜる際には、短繊維の分散性について検討する。短繊維の分散性には洗い試験を実施する。

③運搬

コンクリートプラントから打ち込み場所までの運搬を想定し、時間経過によるフレッシュ性状の変化を検討する。

④ポンプ圧送

配管によるポンプ圧送を想定し、管内圧力及びフレッシュ性状の変化を検討する。

2.業務手順

①対応可能な生コン工場の選定

プラントで短繊維の練り混ぜを行う場合は、対応可能な生コン工場を選定する。

②高所圧送を考慮した配合設計、性状確認

試験練りを実施し、スランプ、材料分離などの品質を確認する。

留意点:短繊維の吸水、空気量の変化によるスランプの低下

工夫点:高性能AE減水剤を使用し、単位水量を減らす。

③コンクリートポンプ車の選定

ピストン式のコンクリートポンプ車を使用する。

④運搬・打設計画

ポンプ圧送中の閉塞を考慮して配車計画を立てる。

留意点:圧送時に骨材の吸水や圧送による脱水に留意する。

工夫点:圧送速度を遅くし、配管径を125㎜以上とする。

3.関係者との調整方策

発注者はコストがかかる短繊維の使用に関し、コストに見合う効果が得られるのかを疑っていた。また、生コン会社は、コンクリート練り混ぜ終了後あるいは、荷下ろし終了後に,繊維を除去するための洗浄作業の作業負担を懸念していた。そこで、短繊維補強コンクリートの使用により剥落防止に効果があることをFEM解析を用いて両者にビジュアルで示し、理解が得られるよう対処した。

 

予想問題 Ⅱ-2-4 簡易答案

高流動コンクリートを用いてコンクリートの表層品質の確保に関する業務を進める場合、以下の問いに答えよ。

(1)設計及び施工の各段階で表層品質を確保するために検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)当初の目標に対して表層品質が不足した場合、多様な関係者との調整方策について述べよ。

1.検討すべき事項と内容

(1)設計

 高流動コンクリートとするためにはセメントなどの粉体量を増加させる必要があり、高価になることや高セメント量であるために水和熱による温度ひび割れのリスクが高まることを検討しておく。

(2)施工

高流動コンクリートは材料分離を防ぐために粘性が高いので、ポンプ圧送時の管内圧力損失を事前に検討しておく。また、流動性が高いため、型枠に作用する側圧が大きくなるので、側圧は液圧として計算し、型枠の補強なども検討する。ブリーディングがほとんど生じないため、表面の急激な乾燥に伴うプラスティック収縮ひび割れ対策について検討する。

2. 業務を進める手順

①材料・配合計画

 高流動コンクリートは使用材料やコンクリート温度の変化によってフレッシュ性状が大きく変化する。したがって、試し練りを行い、高流動コンクリートの諸性状を確認する。留意点:高流動コンクリートは特に細骨材の表面水率の変動によりフレッシュ性状が大きく変動しやすい。工夫点:細骨材表面水率の自動計測により、細骨材表面水率の変動に対して自動的に現場配合の修正を行う。

②生コン工場の選定

高流動コンクリートの対応可能な工場を選定する。

留意点:練混ぜからの経過時間が長すぎると、特にスランプフローの低下が大きくなり、自己充填性が失われる。工夫点:高性能 AE 減水剤添加量を調整する。

③施工計画

コールドジョイントを防止するために打重ね時間間隔の管理を徹底した施工計画を立案する。留意点:締固めを行わないため、表面に気泡が多くなる。

工夫点:落下高さをなるべく小さくし、型枠表面に適度な振動を加えてやること,せき板の種類および剥離剤の選定を行う。

3.関係者との調整方策

発注者は高流動コンクリートが1m3あたり、約1万円高くなるので普通コンクリートでの施工を望んだ。また、施工業者も型枠の補強に日数がかかるため、高流動コンクリートの施工に難色を示した。そこで、私は高流動コンクリートにより締固め作業が不要となるため少人化が図れ、かつ工期が短縮され作業を効率的に進められた上で表層品質が確保できることを示し、両関係者を取りまとめた。

予想問題 Ⅱ-2-5 簡易答案

社会資本であるコンクリート構造物の長寿命化を図るためには、施工時冬季は施工時の初期欠陥が起こりやすい。こうした状況において、冬季に、高密度配筋となる柱とはりの接合部の施工を行うこととなった。この業務を担当して、コンクリートの製造・運搬、打込み・締固めを行うに当たり、施工時の初期欠陥を防止することを念頭にして、下記の内容について記述せよ。

(1)計画段階で検討すべき事項

(2)自分の立場と業務を明確にし、業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務遂行にあたり,リスク対応を目的として,多様な関係者との調整方策について述べよ。

 

1.調査、検討すべき事項と内容

(1)コンクリートの配合

 スランプは、運搬、打込み、締固め等の作業に適する範囲内でできるだけスランプが小さくなるように設定する。所要の養生温度の確保が難しい時は,早強ポルトランドセメント(水和熱)の使用を検討する。

(2)養生:養生時には初期圧縮強度が5N/mm2が得られるよう5℃以上に保つため、必要な養生温度(熱量)が確保できる養生法方法を検討する。

(3)品質管理:養生の打ち切り、型枠及び支保工の取外し、使用開始時期の確認は、現場コンクリートとできるだけ同じ状態で養生した供試体の強度試験によるか、コンクリート温度の記録から推定した強度によって行うかを検討する。

2.業務を進める手順、留意点および工夫点

(1)材料・配合設計

コンクリート温度は構造物の断面寸法、気象条件などを考慮して定める。

留意点:コンクリート温度が荷卸しする際に10℃以上20℃未満になるよう、材料の温度管理に留意する。

工夫点: 温度ひび割れが問題となる場合はマスコンクリートとして対策を実施する。

(2)生コン工場の選定

現場までの運搬時間、コンクリートの製造能力、運搬車の数、工場の製造設備、品質管理状態等を考慮して、工場を選定する。留意点:搬路の交通状況や天候などによって変動する時間も考慮して、運搬時間はできるだけ短くする。

工夫点:フレッシュコンクリートの品質の変化が小さくなるように混和剤を使用

(3)施工計画

 打込み箇所、締固め作業高さや棒状バイブレータの挿入間隔、1 回当りの打込み高さや打上がり速度等の施工方法および初期凍害を受けないよう養生方法について、盛り込んだ施工計画を立案する。

留意点:所定強度が得られるまで,どの部分も凍結しないように保護する。

工夫点:保温養生あるいは給熱養生を行う。

3. 業務遂行のための関係者との調整方法

品質確保を図るため、生コンプラントと密に連絡を図り、アジテータ全車で単位水量測定、打設完了時間の管理を行った。また、施工状況を把握するためのチェックリストを用いて、現場巡視も協力会社同士で行い、次の施工段階へ移る前に各項目についてチェックを行うことで、初期欠陥等を未然に防ぐ意識を高めた。

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅲ 解答者16 専門:コンクリート診断

建設部門 選択科目 鋼構造・コン 予想問題Ⅲ 解答者16 専門:コンクリート診断

予想問題 Ⅲ-1 簡易答案

我が国建設業の海外展開は、近年、一進一退を繰り返してきたが、国内市場環境の変化、経済のグローバル化の推進、BRICsや中東市場の台頭など、取り巻く環境が大きく変化する中、今、改めて岐路に立たされている。このような状況を踏まえ、我が国の山間狭隘な国土において、地震・津波・台風など自然災害に対応しつつ、国内で豊富に投資実績がある世界に誇る技術ノウハウを海外展開していく必要がある。海外インフラ整備に従事する技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

1 課題

(1)品質の確保

 コンクリートを製造するためには、セメント、骨材、水などを現地で調達する必要がある。品質確保を図る上で、骨材の吸水率、コンクリートの塩化物量、アルカリ量など、品質を保証できる材料を調達し製造することが課題である。

(2)技術者不足

 現地の人材を用いて、コンクリートを製造する上で、日本の技術を使いこなせない恐れがある。また、教育や文化に違いがあるため、品質や安全性を確保する上で意識の相違も課題である。

(3)コーディネート役の不在

インフラ開発・整備は相手国政府の影響力が強く、民間事業者では相手国政府との連携や調整が困難。インフラ整備等に関する専門的な技術やノウハウは独立行政法人等の公的機関が保有しており、民間事業者のみの対応では限界がある。

2.重要な課題と解決策

相手国における維持管理費用の負担を軽減するうえで、品質確保を重要な課題として取り上げる。

(1)規格の標準化

コンクリートのプレキャスト化により工場で製造することにより、現場作業を低減し、品質を確保する。

(2)高流動コンクリート

現場作業を行うときに、高流動コンクリートを使用することで、現場での締固め作業が不要となり、少人数での施工が可能となる。

(3)3Dの活用

 CIM/BIMを用いて設計から施工までをビジュアル化することで、完成形をイメージしやすくし、建設作業の手順を理解しやすくする。

3.共通リスクと対策

(1)品質と価格のバランス

リスク:インフラ輸出競争が激化しているため、インフラ設備の質の高さを強調する一方で、価格面での対応も図らなければならない。品質と価格のバランスを新興国のニーズにカスタマイズしていく視点が重要である。

対策:日本の得意分野といえる防災・環境などのプロジェクトに注力していくことも必要である。長期耐久性に優れた日本の耐震化技術をアピールすることで、相手国においてインフラ設備をストック効果として長期使用が可能となる。

予想問題 Ⅲ-2 簡易答案

2015年に国際連合で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のターゲットの一つに「2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」が掲げられている。コンクリート構造物の建設から解体・更新に至る一連のプロセスにおいても、目標の達成に向けた取り組みが求められている状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)持続可能な社会を実現していくために、コンクリートに携わる技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ

1.持続可能な社会実現のための課題

1.1 CO2排出量の削減

コンクリート製造時にCO2排出量の少ない材料の使用が課題である。CO2排出の殆どはセメントクリンカを焼成する過程で石灰石を焼成するときに発生する。

1.2 資源循環

セメント産業は、多量の廃棄物・副産物を原料や熱エネルギーの代替えとして有効利用する技術を開発し受け入れ量を増やしてきた。今後、使用エネルギーとして炭素排出係数を有さないバイオマスの熱エネルギー代替え利用などが重要な課題である。

1.3予防保全による長寿命化の推進

予防保全型の維持管理を実施し、コンクリート構造物の長寿命化を推進することが課題である。多くの自治体は事後保全のため、大規模修繕に伴う大量のセメントの使用や、建設重機の使用に由来するCO2の排出が多い。

2.最も重要と考える課題とその解決策

課題 「製造時にCO2排出量の少ない原材料の使用」

2.1混和材の利用

セメントの使用量を減らすために産業廃棄物の高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末などを混和材として利用する。混和材を用いることで、セメント構成比を引き下げCO2の排出を抑制できる。

2.2再生骨材の利用

 解体コンクリートから得られる再生骨材を利用する。コンクリート用砕石は、骨材供給の7割を占める。砕石の使用量を減らすことで、天然資源の採掘を削減し、CO2を吸収する山林の天然資源の保全にも繋がる。

3.解決策に共通して生じるリスクとその対策

3.1硬化コンクリートの中性化

<リスク>普通セメント使用量を減らすと、コンクリートのアルカリ量が低くなるため、硬化コンクリートの中性化が進行しやすくなる。中性化が進行すると、鉄筋が腐食し、構造物の耐久性に問題を生じる。<対策>鉄筋の被り深さを十分に取り、コンクリート表面からのCO2の劣化因子の侵入を防ぐ。また表面被覆工法を施し、中性化防止対策を施す。

3.2品質の確保

<リスク>生コンの目標スランプが得られにくく空気量などの調整も困難となる。

予想問題 Ⅲ-3 簡易答案

天然資源が極めて少ない我が国が持続可能な発展を続けていくためには,「建設リサイクル」(建設副産物の発生抑制,再資源化,再生利用及び適正処理)の取組を充実させ,廃棄物などの循環資源が有効に利用・適正処分されることで環境への負荷が少ない「循環型社会」を構築していくことが重要である。今後,社会資本の維持管理・更新時代の本格化に伴い建設副産物の質及び量の変化が想定されることなど,更なる「建設リサイクル」の推進を図っていく必要がある。このような状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。

(1)建設廃棄物のリサイクルを推進するために、コンクリートに携わる技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

<対策>事前に試し練りを行い目標性能が得られる混和剤の添加量を把握する。

1.建設廃棄物のリサイクル推進の課題

(1)建設副産物の発生抑制

 発生抑制のためには、計画・設計段階で実施することが効果的である。また、社会資本の長寿命化が有効である。

(2)再生資材の有効利用

 再生資材については、品質に対する信頼性の確保や廃棄時における再リサイクル性などの確認も必要である。

(3)混合廃棄物の現場分別

 建設混合廃棄物として搬出されているものについて、現場分別及び個別分別品目として処理施設への搬出の徹底が重要となる。

2. 最も重要と考える課題とその解決策

再生資材の有効利用を取り上げる。

2.1グリーン調達

国が指定した環境負荷の低減に資する建設資材である高炉セメント、フライアッシュ、エコセメントなどを使用する。

2.2再生骨材の利用

 解体コンクリートから得られる再生骨材を利用する。コンクリート用砕石は、骨材供給の7割を占める。砕石の使用量を減らすことで、天然資源の採掘を削減し、CO2を吸収する山林の天然資源の保全にも繋がる。

3.解決策に共通して生じるリスクとその対策

3.1硬化コンクリートの中性化

<リスク>普通ポルトランドセメント使用量を減らすと、コンクリートのアルカリ量が低くなるため、硬化コンクリートの中性化が進行しやすくなる。中性化が進行すると、鉄筋が腐食し、構造物の耐久性に問題を生じる。<対策>鉄筋の被り深さを十分に取り、コンクリート表面からのCO2の劣化因子の侵入を防ぐ。また表面被覆工法を施し、中性化防止対策を施す。

3.2品質の確保

<リスク>生コンの目標スランプが得られにくく空気量などの調整も困難となる。<対策>事前に試し練りを行い目標性能が得られる混和剤の添加量を把握する。

予想問題 Ⅲ-4 簡易答案

近年の自然災害は気候変動などにより頻発化・激甚化の傾向にあり、国民の生活・経済に欠かせない重要なインフラがその機能を喪失し、国民の生活や経済活動に大きな影響を及ぼす事態が発生している。特に、防災のための重要インフラがその機能を維持することは、自然災害による被害を防止・軽減する観点から重要である。

(1)建設部門に携わる技術者として、多様な観点から、課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

1.課題

(1)ハード整備だけに頼らないソフト対策

近年、地球温暖化の急激な進行により、ゲリラ豪雨や都市型水害が増加している。防災機能を最大限に発揮するため、更なる社会基盤整備が必要となってきている。しかし、整備すべき社会基盤の量は多く、また財源不足もあって手が回らない状況である。

(2)内水対策

 都市部では地表面が建造物やアスファルトで被覆され、雨水が地下に浸透しにくく、集中豪雨などには雨水の排水機能が追いつかず、都市内部の浸水の原因となっており、排水機能の向上が必要である。

(3)冗長性の確保

 首都直下地震が懸念される中、東京などの政治経済中枢都市に災害が発生すると、社会経済などへの打撃が甚大であり長期化する可能性がある。しかし、現状は政治経済機能、物流機能が一極集中しているため冗長性がなく避けられない状況である。

2.最も重要と考える課題と対策

最重要課題:内水対策

(1)透水コンクリートの使用

セメントペーストに主に粗骨材を加えて作られ、 連続した空隙を多く含む特殊コンクリートを道路舗装に用いる。雨水などを舗装面から下層の土中に浸透させることで、側溝などの排水構造物の負担を軽減できる。さらに、舗装面の空隙により、太陽光などの熱が蓄積されにくいため、ヒートアイランド現象の緩和に効果がある。

(2)貯留施設の設置

 道路の下に内水を慮流する空間を設置するほか、道路沿いの公園や、学校の校庭などに、一時期的に内水を貯留するシステムを作る。

3.共通のリスク

 いずれの対策も一時的に、内水氾濫を凌げるだけであり、避難の時間を稼げる程度である。

対策:内水ハザードマップを公表して、住民が被害を受ける可能性があるのかを確認できるようにしておく。また、官民連携による防災組織の構築や災害時行動計画の策定など、災害時における情報収集や復旧資材の確保に向けた連携強化を促進する。

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