衛生工学部門 選択科目 建築物環境衛生管理 予想問題Ⅱ-1 解答者12 専門:空調
衛生工学部門 選択科目 建築物環境衛生管理 予想問題Ⅱ-1 解答者12 専門:空調
予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案
建築物の空気調和設備で利用されるデシカント空調機の熱的原理について空気線図を用いて潜熱と顕熱の処理面から説明せよ。
(1)冷暖コイルでの顕熱操作
・除湿する外気を高温の冷水で予冷し、相対湿度を上昇させる。
・吸着剤にて除湿されたときの、吸着熱を17℃程度の冷水で冷却する。
・冷水を高温化できるため、熱源機の効率が向上する。
・室内からの還気を予熱して、相対湿度を低くして吸着剤の再生空気とする。
・予冷に用いた熱源機排熱を予熱に利用すれば、省エネルギーとなる。
(2)吸着剤での潜熱の変化
・吸着熱が水蒸気蒸発潜熱と等しい場合は、除湿は等エントロピー変化となる。
・再生空気により、吸着した水分を蒸発させ吸着剤を再生する。
・空気線図では除湿外気の状態点は、予冷外気の等エントロピー線と再生空気の相
対湿度との交点が除湿限界となる。
・処理空気の相対湿度が高いほど、また再生空気の相対湿度が低いほど除湿量は多
くなる。
予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案
空気調和設備に用いられる空気清浄機にオゾン、光触媒、活性炭フィルターを利用したものがある。それぞれの原理、採用上の留意点を述べよ。
(1)オゾンを利用した空気清浄機
・放電にて微量のオゾンを発生させる。
・下流側のオゾン分解酵素内でオゾンの分解により活性酸素が発生する。
・活性酸素の酸化力で有害物質を酸化し無害化する。
・部屋全体の空気を吸引できるような気流性能が必要。。
(2)光触媒を利用した空気清浄機
・酸化チタンに紫外線を照射し活性酸素を発生させる。
・紫外線照射によるウィルス無害化効果もある。
(3)活性炭フィルターを利用した空気清浄機
・活性炭の多孔質を利用して、微細孔に汚染物質を捕集する。
・物理吸着は有機ガスや複合臭の捕集に有効。
・長期間の使用は、低沸点物質の再放出に繋がる。
・無機系ガスには酸性薬剤、アルカリ性薬剤を添着させた化学吸着が有効。
・寿命判断は、入・出口ガス成分濃度測定による、性能低下分析が必要。
予想問題 Ⅱ-1-3-① 簡易答案
建築物の空気調和設備で利用されるデシカント空調機の熱的原理について空気線図を用いて潜熱と顕熱の処理面から説明せよ。
また、潜熱負荷40W、給気風量50CMH、発現率50%の場合、次の条件での、デシカントローターの①給気側出口状態点、②除湿限界点、③再生空気側入口状態点を空気線図にプロットし、状態変化の作図をせよ。
条件;外気 34.3℃相対湿度56.3%、室内 24℃相対湿度55%
予冷後除湿入口 18℃相対湿度95%、再生空気温水コイル入口30.8℃
発現率=(除湿開始点絶対湿度ー給気温度絶対湿度)
÷(除湿開始点絶対湿度ー除湿限界点絶対湿度)
(1)冷暖コイルでの顕熱操作
・除湿する外気を高温の冷水で予冷し、相対湿度を上昇させる。
・吸着剤にて除湿されたときの、吸着熱を17℃程度の冷水で冷却する。
・冷水を高温化できるため、熱源機の効率が向上する。
・室内からの還気を予熱して、相対湿度を低くして吸着剤の再生空気とする。
・予冷に用いた熱源機排熱を予熱に利用すれば、省エネルギーとなる。
(2)吸着剤での潜熱の変化
・吸着熱が水蒸気蒸発潜熱と等しい場合は、除湿は等エントロピー変化となる。
・再生空気により、吸着した水分を蒸発させ吸着剤を再生する。
・空気線図では除湿外気の状態点は、予冷外気の等エントロピー線と再生空気の相
対湿度との交点が除湿限界となる。
・処理空気の相対湿度が高いほど、また再生空気の相対湿度が低いほど除湿量は多
くなる。
潜熱負荷処理のための除湿量=除湿開始点絶対湿度―給気温度絶対湿度
40W/(833×50CMH)=0.00096Kg(0.96g)
予想問題 Ⅱ-1-3-② 簡易答案
再生可能エネルギー、未利用エネルギーの有効利用の観点から、空調設備熱源として利用可能なものを3つ挙げ、その方式と効率改善のための課題について述べよ。
(1)地中熱再生可能エネルギー利用
・掘削した地中にU字管を埋設し、水または不凍液を循環してヒートポンプの熱源とするクローズドループ方式。
・採熱効率向上が課題。
・直接井戸水を揚水し、HPの熱源として利用するオープンループ方式。
・採熱量は大きいが、採熱後の地下水処理が課題。
・ヒートパイプを融雪の熱源として利用。
(2)太陽熱を集熱し熱源として利用
・真空ガラス管集熱器により温水を発生させ、吸収式冷温水機の熱源とする。
・ソーラーチムニーにより、自然換気の動力源とする。
・太陽光集熱器により潜熱蓄熱材に蓄熱して、空調熱源として使用する。
(3)バイオマスを利用
・木質ペレットを燃焼させ、ボイラーや吸収式冷凍機の熱源とする。
・安定した供給量の確保と木質ペレットの品質均一化が課題。
予想問題 Ⅱ-1-4 簡易答案
多目的ホールなどの大空間を含む建物が増えている。この空調設備において、大空間の特性から快適性を確保するための手法を3つ述べ、説明せよ。
(1)アリーナの熱負荷特性、利用形態に配慮した空調設備
・アリーナ部の様々な利用形態での内部発熱偏在に対応可能なゾーニング。
・天井照明負荷の室内拡散を防止する。
・バトミントン等での利用を想定。(気流速度を0.3m/s以下)
・鉛直方向の非均一な温度分布の容認。
・床面から1.8mまでの居住域の快適性確保。
・PMV値を測定して、活動量、着衣量に対応した室内温度設定。
(2)アリーナの大容積の空間での、空気質の確保
・室温と給気温度の差が少ない、空気齢が若い新鮮空気の供給。
・外気冷房の実施。
・汚染物質の上昇気流による排出。
(3)快適性、感染症防止に配慮した客席部空調
・着席の離隔確保に対応するパーソナル空調
・給気口から排気口へ一方向気流確保
・床面に堆積した汚染物質の拡散防止。(気流速度を0.5m/s以下)
予想問題 Ⅱ-1-5 簡易答案
空調設備に用いられる空気ろ過装置の浮遊粒子捕集原理を4つ述べ、簡略に説明せよ。また、空気ろ過以外で病院の院内感染防止のための対策を4つ述べ説明せよ。
(1)浮遊粒子捕集原理
・慣性衝突;大きな粒径の物質が、慣性力でフィルター繊維に衝突し捕集される。
・さえぎり;フィルターの近傍を通過する粒子が、ろ材にさえぎられ捕集される。
・拡散;小さい粒子が、ブラウン運動により浮遊し、ろ材に付着し捕集される。
・静電気;浮遊粒子を帯電させ、クローン引力によって引き付け捕集する。
(2)病院院内感染防止対策
・換気による有害物質の希釈
全外気方式とし30/人・hとする。
・室圧管理と気流計画
清浄エリアを陽圧として汚染エリアを陰圧とし、汚染エリアへと向かう気流(0.5m/s程度)を確保する。
・湿度管理
室内の相対湿度を50%〜60%とし、病原体の生育を妨げる。
・活性酸素、紫外線による有害物質毒性の低減
活性酸素の酸化力、紫外線によりで病原菌、ウィルスを死滅させる。
予想問題 Ⅱ-1-6 簡易答案
都市での再生可能エネルギーを含めた建物エネルギー有効利用の観点から、あなたの専門とする領域において実施すべき項目を3つ挙げ、その効果を説明せよ。
1.熱需要パターンの違う建物間での熱融通システム
・熱回収型ヒートポンプの使用による、COPの向上。
コージェネレーション排熱の有効利用が可能。
高効率の熱源機の優先的運転により省エネルギーを図る。
・メンテナンス、機器故障時を想定した予備機が不要
・ピーク負荷抑制による電力料金低減
2.潜熱蓄熱材による廃熱利用
・室温に近い温度域において相変化する物質に、潜熱を蓄熱し少量で大容量の熱量を吸収・放出させる技術。
・エリスリトールなどの固液相変化、ハスクレイなどの水吸着熱を利用し、オフラインでの熱輸送が可能。
・工場廃熱利用。
3.地域冷暖房の利用
・個別ビルでは活用しづらい、再生可能エネルギー、都市廃熱を使用。
・冷水温度を高温化し熱源機の高効率化を図る。送水時の熱損失を低減。
予想問題 Ⅱ-1-7 簡易答案
生産性向上を目的としたIT技術導入の取り組みが各分野で進められている。あなたの専門とする分野での取り組みを3つ述べ、概略と効果を述べよ。
(1)ICT技術で現場情報展開し生産性を向上させる。
・BIM情報をMR技術により現場投影し、図面と現場の整合確認業務を省力化。
・ホロレンズによる施工位置確認により、施工速度が向上。
・現場へのCF解析投影による設備性能の事前検証。
・施工ロボット化による作業省力化。
・ウェラブルディバイスによる作業員適正配置。
(2)デジタルトランスファーによる作業場所の多様化。
・現場情報を3Dデータ化しVR技術にて、現場監理を後方支援する。
・5G通信での掘削重機、揚重クレーン遠隔操作。
・BIMのクラウド化による設計図、施工図作成業務の効率化。
(3)BEMSによるメンテナンス効率化
・センサー無線化でのデータ収集と、AI最適化制御での専門知識平準化。
・異常運転データの収集による故障予知でのメンテナンス省力化。
予想問題 Ⅱ-1-8 簡易答案
氷蓄熱は水の温度差(顕熱)を利用した蓄熱式空調システムに、氷の潜熱を付加し、高密度に蓄熱することを意図したシステムである。
(1)氷蓄熱システムのメリットとデメリットを述べよ。
(2)設計に際しての留意点を5つ述べ、それぞれ説明せよ。
(1)氷蓄熱のメリット
・水の比熱より氷の融解熱(335MJ/)が大きいため蓄熱槽容量が小さい。
・蓄熱槽の容量が小さく熱損失も少ない。
(2)氷蓄熱デメリット
・氷製造時の冷媒蒸発温度低下のため熱源機効率が低減する。
・4℃の水が蓄熱槽下部に滞留するので、冷水温度が安定化しない。
(3)設計上の留意点
・氷スラリーを送水すれば、配管口径が小さくなり搬送動力も低減できる。
・熱源機追いかけ運転時は、製氷モードで運転すると熱源機が効率低下する。
・残蓄分とは別に熱源機冷水を二次側空調機の戻り冷水の予冷として運転する。
または、熱源機冷水を二次側空調機の主熱源として循環させる。
・かくはん効果は解氷が促進されて槽内温度分布が均一化するが、温度成層を利用したシステムでは採用しない。
・解氷後は、冷水温度が急上昇する。
予想問題 Ⅱ-1-9 簡易答案
バイオハザード対策施設は、クリーンルーム内に設置した安全キャビネットでの作業で病原体の物理的封じ込めをしている。この施設の空調設備について、設計・施工上留意すべき事項を3つ述べ説明せよ。
(1)CRからの病原体拡散防止
・室内給気にVAV、排気にCAVを設置して陰圧を保つ。
・安全キャビネットの稼働時、扉開閉時に室圧バランスが乱れないよう制御する。
・隣接のシャワー室、脱衣室等はCR内よりも陰圧とする。
(2)安全キャビネットの排気拡散防止
・排気は単独とし、HEPAフィルターによりろ過してから放出する。
・ダクトの加工はハゼ部シール、溶接仕上とし距離を短くする。
・ガス燻蒸のため、気密ダンパーを要所に設置する。
・排気ファンは吸込みとし、ダクト内を負圧に保つ。
(3)全外気方式の換気システム
・吹出口にHEPAフィルターを取付て、ISOクラス7程度の清浄度を保つ。
・給気ファンは排気ファン同様24時間稼働、非常電源回路とし予備機を設置する。
・ファン台数制御、外気冷房等の省エネ対策をする。
予想問題 Ⅱ-1-10 簡易答案
変風量(VAV)単一ダクト方式の利点を2つ挙げ概要を説明せよ。また、採用にあたっての留意すべき点を3つ挙げ、それらの対応策について記せ。
(1)変風量方式の利点
・省エネルギー性
空調負荷の処理に必要な最小限の風量を供給し搬送動力を低減。
ファン動力は回転数の3乗に比例するので、省エネ効果が大きい。
・個別温度制御性
熱負荷密度の違う空間を1台の空調機にて空調できる。
(3)採用にあたっての留意事項
・BEMSによる最適化制御」
VAV−DDCと空調機−DDCの連携
VAV開度情報をBEMSに送信、演算することで、給気温度を下げて風量を低減し最適化制御をする。VAV開度は必要換気量が不足しないようする。空調機給気温度が低下しすぎないように、最低温度の設定が必要。
・VAVゾーニングの範囲
50〜100㎡に1台程度VAVを設置することで、きめ細かい制御が可能。
・空調機ファンのインバーター制御
各VAVの開度が最小で、給気温度が可能な限り低いときの最適送風量に調整。