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この答案についての講評
見識問題は正確にお答えになっています。また、対策内容など定型的文章でまとまって書き込める内容は良くできています。一方、変則的な応用力を試す問いでは解答姿勢が崩れているように見受けられますので、応用練習が必要です。
コンピテンシーを測る試験では今回のように問題を解いたうえで、採点してもらわないと正解はわからないものです。かつ、本質を見抜けていない場合は、その誤りを言葉で説明してもらわないと、理解できません。そしてたとえ解答の誤りがわかったとしても、ではどう書けば正解かは、ケースバイケースでチェックしないと正解が判断できません。これらを解決するのが添削とコーチングです。
この練習さえしていけば必然的にわかるようになり、必ず合格できます。
音声ガイドによるコーチング指導内容(19分6秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-4 マスコングリートの施工に当たって,特に留意すべき事項を述べよ。また,その留意事項について,製造・運搬,打設・養生等の各段階において講じなければならない対策について概説せよ。
解答
1.マスコンクリートの施工で特に留意すべき事項
マスコンクリートの施工に当たって特に留意すべき事項は、温度ひび割れの抑制と拘束の緩和である。製造から養生までの各段階における具体的対策について、以下に示す。
①製造
低発熱型セメントの使用や粗骨材の最大寸法の大型化等によるセメント量の低減、比熱の高い練混水や使用量の多い骨材の練混ぜ前の温度低減による効率的な練上り温度の低減により水和熱を低減し、温度ひび割れを抑制する。
②運搬
運搬車の覆いやコンクリート輸送管の保温等により運搬中のコンクリートの温度上昇を抑制し、温度ひび割れを低減する。
③打設
ブロック割・リフト高の低減による温度上昇量の抑制や夜間打設による打込温度の低減、打込時間間隔の短縮による外部拘束の緩和により温度ひび割れを抑制する。
④養生
保温養生や保温性型枠の使用による温度差・温度降下速度の調整やパイプクーリングによるコンクリートの内部温度上昇量の低減により温度ひび割れを抑制する。
Ⅱ-2-2
道路山側斜面が崩壊(幅30m,高さ20m)した災害の現場において,1車線の通行を確保しつつ,大型ブロック積擁壁及び切土・のり面保護工(植生基材吹付工)等からなる復旧工事(下図参照)を施工するに当たり,以下の問いに答えよ。
(1)本工事の施工計画を立案する上で検討すべき項目を2つ挙げ,その内容について述べよ
(2)本工事の施工中に安全管理上留意すべき項目を2つ挙げ,それが必要な理由と対応方法を述べよ。
解答
1.施工計画を立案する上で検討すべき事項
①作業足場・重機足場の検討
復旧工事に当たっては法面上部より下部に向かって順次施工していく必要がある。法面上部の残置土砂を撤去するためには重機足場が必要となるが現状の崩土高さは約10m程度であり、崩壊高さ20mを考慮すると少なくても重機足場の高さは15m程度必要となる。重機足足場としての盛土材について、一部は法面上部の残置土砂を転用し、不足分は別途搬入する検討が必要となる。
②土留材及び落石防止対策の検討
崩土上部には撤去した法面上部の残置土砂による土圧の増加や重機(0.7m3級を想定)の上載荷重により大型土嚢が崩壊することが懸念される。よって崩土の改良により地盤強度を増強し大型土嚢に作用する土圧の軽減を検討する必要がある。
また重機足場としての盛土と地山の境界部は水道となりやすく盛土内部の地下水位の上昇に伴う土圧の増加が考えられるため、盛土内部の地下水排水排水対策の検討も必要となる。
さらに車道への落石対策として、大型土嚢の嵩上とこの上部に落石防護柵の設置を検討する必要がある。
検討ばかりが多いので、もう少し具体的に提案するようにしてください。
2.安全管理上留意すべき事項
①法面上部の残置土砂の崩落対策
法面上部の残置土砂はオーバーハング状態となっており、降雨等により残置土砂に水が浸透すると崩落し二次災害の発生が懸念される。この対策として法面上部の表面排水の施工や残置土砂をシートで覆い、水の浸透を防止する。また傾斜計等の設置により残置土砂の動態観測を実施し、挙動の監視を行う。
また万が一崩落した場合の対策として、大型土嚢の嵩上とこの上部に落石防護柵を設置することで第三者災害。
②土留めに作用する土圧の低減
大型土嚢には重機足場としての盛土の土圧および使用する重機等の上載荷重が作用することから、大型土嚢の崩壊に伴う第三者災害の発生が考えられる。この対策として前述したとおり、崩土の改良による地盤強度の増進や盛土内部の地下水排水対策により大型土嚢に作用する土圧を低減し大型土嚢崩落を防止する
答えがダブリになることは好ましくありません。
Ⅲー2
社会資本整備の担い手である建設業は中長期的に厳しい人手不足に陥ることが予想されており,これを克服するためには,生産性の飛躍的な向上に積極的に取組む必要がある。 このような認識を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)生産性の向上が建設分野に及ぼす効果を3つ以上挙げ,その概要を述べよ。
(2)建設工事の各段階(①調査・測量・設計,②施工・検査,③維持管理・更新)において, 1CT等の活用により生産性が向上すると考えられる内容を,従来の方法と比較しつつ具体的に述べよ。
(3)今後,建設分野において, ICT等の活用を広く普及させ,さらに高度化させる上での課題を挙げ,その解決方策について,あなたの考えを述べよ。
解答
1.生産性向上が建設分野に及ぼす効果
①長時間労働の是正
ドローンによる三次元測量やICT建機の活用等の
ICT活用工事の推進や工事書類の削減・簡素化、プレキャスト製品等の効率的・汎用性の高い工法の導入等、建設生産システム全体の生産性向上と多能工化や建設キャリアアップシステムの活用等、工事現場における生産性向上により長時間労働の縮減につながる。
②担い手確保
申請手続きの電子化や基準類の改訂、IoT・新技術の導入による仕事の効率化や、技術者配置要件の緩和や施工時期の平準化等による限られた人材・資機材の効率的な活用により、担い手を十分に確保できない場合の補填策とする。
③作業環境の改善
ICT技術を活用することで高所作業や潜水作業の削減等、危険作業を低減し作業環境を改善するとともに若年層の入職率の増加や離職率の減少につながる。
2.建設工事の各段階における生産性向上の内容
①調査・測量・設計
従来は測量業者によりトランシットやレベルを用いて実施した測量をドローンによる三次元測量を実施することで広範囲の測量を短時間で実施することが可能になった。
また従来は二次元の設計図面にて施工管理していたのをCIMによる三次元データを活用することで鉄筋の干渉等、設計段階において事前に課題や問題点を抽出し検討することが可能となった。
②施工・検査
従来は測線毎に設置した丁張を基準とし、バックホウ法等により法面整形をしていたが、マシンガイダンス等のICT建機の活用により丁張の設置が不要になるとともに測線以外の全範囲において高精度の施工が可能となった。
また検査では以前はコア抜き等により確認していたコンクリート強度を非破壊試験の活用により構造物を損傷することなく確認できるようになった。
③維持管理・更新
従来は潜水士等によりダム等の点検を行っていたが、水中点検ロボットの活用により災害リスクを低減するとともに短時間での点検が可能になった。
対策の記述は素晴らしいです。
3.ICTの普及・高度化に向けた課題と解決策
①人を主役としたICT技術の活用(課題1)
1)ICTを全ての技術政策に活用し新たな価値を創出する。
2)新しい技術を導入する際はプロセス全体の最適化を目指した全体最適の考えを導入し、基準・制度等を見直す。
3)産学官が連携し短期間で集中し科学的に技術者を育成し、ICTの進展に対応できる技術者を育成する。
②好循環を生み出す環境の整備(課題2)
1)技術開発目標の提示や公募等、社会と現場のニーズを把握・提供やコンソーシアムの積極展開による人知財の結集によりオープンイノベーションを推進する。
2)研究開発の初期段階から社会実装までの道筋を示すプログラム評価の推進や社会貢献や基準化等、研究評価の拡大など新たな研究評価の仕組みを構築する。
残念ながら、想定外の問いに対してあまり練習されていないように感じます。建設の専門家としてのICTについての見解が求められています。しかし、答えは漠然と技術一般を開発する程度にしか述べられていません。焦点が定まらない議論では、コンピテンシーは訴えられません。例えばとして考えられる正解を音声でご説明いたしますのでお聞き願います。
この答案についての講評
合格される可能性は十分ありますが、余白が大きいように感じます。予想問題をされないと、単刀直入な答えができません。このため、前置きが冗長となり、答えの中心が薄くなっています。提案の一部の例示に集中したり全体像をつかんでいないようです。答えの内容としては、要求事項すなわち問いに対して、具体的でかつ、汎用性があり、漏れがないようにすると良いでしょう。
音声ガイドによるコーチング指導内容(22分1秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-1 軟弱地盤上において,橋台の背面に盛土を計画する場合に留意すべき点を2つ挙げ,それぞれの対策工について概説せよ。
橋台の背面の盛土ではこのような問題が指摘されています。詳しくは公益財団法人鉄道総合技術研究所のページをごらんください 。
解答
軟弱地盤とは、主として砂またはシルトのような微細な粒子に富んだ柔らかい土で、間隙の大きい有機質土または泥炭、ゆるい砂などからなる土層によって構成され地下水位が高く、盛土や構造物の沈下に影響を与える地盤である。次に橋台の背面に盛土を計画する場合の留意すべき点と対策工について述べる。
1. 沈下
留意点:盛土部分の残留沈下により、橋台部分と盛土との間に段差が生じる。このため、将来の交通に支障をきたす。
対策工:深層混合処理工により現地盤を改良して、地盤強度の改善を図る。この工法は、セメント系改良剤の粉体またはスラリーを軟弱土と攪拌翼で混合を行い地盤を固結させ地盤を改良することにより、すべり抵抗の増加、変形の抑止、沈下の低減、および液状化防止を図る。
2. 軟弱地盤の側方変形
留意点:軟弱地盤が、盛土により側方変形を起こし、橋台に過剰な圧力をかけ橋台の横方向移動を生じる。
対策工:橋台の横に鋼矢板を打設し軟弱地盤の縁を切る。これにより橋台への土圧を低減させる。
縁を切るだけでは難しいかもしれません。沈下と側方変形とは同じ現象です。別な原理での対処が要ります。
Ⅱ-1-4
マスコングリートの施工に当たって,特に留意すべき事項を述べよ。また,その留意事項について,製造・運搬,打設・養生等の各段階において講じなければならない対策について概説せよ。
解答
1. マスコンクリートの施工にあたって、特に留意すべき事項。
マスコンクリ―の施工において特に留意しなければいけないことは、セメントの水和熱に起因する温度ひび割れである。
あまりわかりやすい話はなくてもよいのでは。もっと技術的な分析を。
2. 留意事項について、製造・運搬、打設・養生等の各段階に講ずる対策。
(1) 製造・運搬段階
・低発熱型のセメントを使用する。低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、混合セメントB種等。
・製造時に、水、骨材を冷却して練り混ぜる。
・運搬時は、直射日光等により温度上昇を避けるためミキサー車に保温用カバーを施す。
(2) 打設・養生段階
・コンクリートの打ち込み区画の大きさ、リフト高さ等を温度ひび割れによる照査に基づき決定する。
・外気温度が高く、直射日光が当たる場合、日除け等を行う。
・ポンプ圧送を行う場合、配管内の温度上昇を防ぐために、湿った布等で覆う。
・養生の際は、保温性の高いマット等で覆い、散水等を行う。養生終了時期は、内部と表面の温度差が大きくならないよう温度応力解析等に基づき決定する。
Ⅱ-2-2
約10年前に大型屋外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、上がらしい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 計画策定に当たって調査・検討すべき事項
(2) 業務を進める手順
(3) 業務を進めるに当たって留意すべき事項
解答
1. 周辺の環境に影響を与えると考えられる事象
(1) 周辺の地盤沈下
着目した理由:ソイルセメント地下連続壁工法は、遮水性に富んだ工法であるため、土留め内の掘削時に壁体からの漏水は無いと思われるが、壁体先端が堅固な不透水層である支持地盤に達していないため、先端からの掘削面へ地下水の回り込みにより周辺の地下水が下がり、圧密により地盤沈下が生じる。
事前に調査すべき項目:土質柱状図、N値、地下水位
(2) 周辺の井戸枯れ
着目した理由:周辺は住宅街であり、工事により地下水位が低下した場合、井戸枯れの影響が考えられる。
事前に調査すべき項目:周辺住宅街の井戸の位置、個数
(3) 周辺の水質
着目した理由:ソイルセメントの漏出により地下水のPH、SS濃度の変化が考えられる。また、ソイルセメントから六価クロムの溶出が考えられる。
事前に調査すべき項目:周辺井戸水の水質、PH・SS濃度。セメントの化学成分。
2. 環境への影響の低減に有効と考えられる具体的対策と施工管理上の留意点
(1)水質汚染(上記1.(3))
対策:六価クロムを基準値以上溶出しないセメントを使用する。
施工上の留意点:ソイルセメント配合設計時に、試験練りを行い、これを供試体として六価クロムの溶出試験を行い、基準値以上の溶出がないことを確認する。また、火山灰性の土質はセメントの水和を阻害し、六価クロムが溶出する可能性があるので、施工中も適宜試験を行い溶出がないことを確かめる。
(2)地盤沈下(上記1.(1))
対策:重機作業時は敷鉄板を行い作業する。
述べる順番が逆の方がよかったでしょう。
Ⅲー2
社会資本整備の担い手である建設業は中長期的に厳しい人手不足に陥ることが予想されており,これを克服するためには,生産性の飛躍的な向上に積極的に取組む必要がある。 このような認識を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)生産性の向上が建設分野に及ぼす効果を3つ以上挙げ,その概要を述べよ。
(2)建設工事の各段階(①調査・測量・設計,②施工・検査,③維持管理・更新)において, 1CT等の活用により生産性が向上すると考えられる内容を,従来の方法と比較しつつ具体的に述べよ。
(3)今後,建設分野において, ICT等の活用を広く普及させ,さらに高度化させる上での課題を挙げ,その解決方策について,あなたの考えを述べよ。
解答
1. 生産性向上が建設分野に及ぼす効果
建設投資額はピークの平成4年度、84兆円から平成22年度には約41兆円まで落ち込んだ。その後、増加に転じ、平成28年度は約52兆円でピーク時の約38%減である。建設業者数は平成28年度末約47万業者で、ピーク時平成11年度末から約22%減である。就業者数は平成28年平均500万人で、ピーク時平成9年平均から約27%減である。このような厳しい現状の中、生産性を向上していかねばならない。次に、生産性向上が建設分野に及ぼす効果を3つ挙げる。
前置き文が冗長すぎました。答案ですので、前向きに書かれた方がよいでしょう。
(1) 建設業の魅力が向上し建設業からの離職者数に歯止めがかかる。
・建設労働者の資格、経験等を登録し適切に評価し、処遇の改善を図り生産性向上に繋げるキャリアアップシステムの導入。また労働賃金のアップ、休日の確保により若手労働者の入職を促す。
(2) 技術力の向上
・建設投資・建設就業者数の減少の中で、より効率的に生産性向上を目指すため、技術開発進み技術力も向上する。
(3) 財政の縮減ができる
・効率的な生産性の向上により、工期等も短縮され余分な原価・経費が削減されることにより財政の縮減を図ることができる。
2. ICT等の活用による生産向上
① 調査・測量・設計段階
・ドローン、GPSを活用した測量
以前は、多くの人数で行っていた測量が短期間でできる。また危険が伴った急傾斜の斜面の測量等も安全作業となる。
・さらに上記データを設計に反映させ易い。
② 施工・検査段階
・マシーンコントロール(MC)、マシーンガイダンス(MG)による施工。以前は、熟練技能労働者でしか実施できなかった、バックホウの法面整形等が熟練を要することなく可能となる。
・土工におけるブルドーザー等による締固め作業の自動記録システムにより施工プロセス検査が容易となる。
③ 維持管理・更新段階
・高所作業におけるコンクリートの劣化診断
以前は、人力により目視、打音等で行っていた作業を
ロボットによる作業や、レーザーによる非破壊検査でコンクリートの劣化診断を行うことにより、省人かされ安全作業となる。またデータ記録も容易に実施できる。
3. ICT等の活用を広く普及させ、さらに高度化させる上での課題。
(1) 広報、普及活動
中小の建設業者においてはICTへの認識が低いと思われる。
解決方策:
・ネット等を活用し官・民協力し広報活動に努める。
・ICTを導入・普及するにあたり、中小建設業者においては初期設備投資資金が必要になってくるが、財政面で厳しいことが考えられる中小建設業者に対しての資金援助が必要である。
(2) 技術者・技能労働者の技術継承
団塊の世代の大量退職が進む中で、若手技術者・技能労働者への技術継承は重要である。
解決方策:
・OJT、OFF-JT教育により技術の継承を図るとともに、技術研修会等も開催し、ナレッジマネジメントを活用し技術継承に努める。
これらの技術手法は、いつでも当てはまることであって、ここでのICTについて特化した提案ではありません。
(3)技術力向上・技術開発
ICTを高度化させるためには、技術者の技術力向上さらには新技術開発が必要である。
解決方策:
・異業種を含め産・学・官が連携し新技術開発に努める。
・技術者の継続的教育を図る。
残念ながら、割と思いつきやすい概念的提案です。もっと実務に即した技術士にふさわしい提案が必要かと思います。昔の答案の書き方は今は通用しません。合格の基準は、ビジネスで成立するプロエンジニアとしての能力であり、コーチングで学べます。
この答案についての講評
正しい見識をお持ちのようで、答案の内容に誤りはありません。ただ残念なことに解答趣旨を単刀直入に書くことができていないようです。このため、前置きが長く、答えの中心が薄くなっています。提案の一部の例示に集中したり全体像をつかんでいないようです。答えの内容としては、要求事項すなわち問いに対して、具体的でかつ、汎用性があり、漏れがないようにすると良いでしょう。
音声ガイドによるコーチング指導内容(17分7秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-1 LPWA(LowPowerWideArea)技術について、その主な特徴を3つ挙げ、この技術の用途について説明せよ。
解答
1. LPWA技術の特徴
①省電力
電力の消費量を抑える要素技術としてeDRXとPSMがある。eDRXは端末が基地局のページングを受信する間隔を長くすることで省電力化を行い、従来10秒程度だった受信間隔をLTE-Mで40分程度、NB-IOTで2時間程度まで長くしている。PSMは「接続」状態と「待ち受け」状態の他に「省電力」状態を具備したものである。省電力状態ではページングの受信も行わず、電力消費の低減を実現する。
②低速・低コスト
通信速度を低く抑えることでデバイスの構造が簡素になり、これによりコストの低減が図られている。
③広域通信
従来のBluetoothやZigbeeでは通信可能な距離が数十メートル程度であったが、IoTではLTE並みの通信距離が求められ、例えばSigfoxにおいては50キロメートル程度の距離まで接続可能である。
2. LPWA技術の用途
IoTの利用に最適である。通信には電力が必要であるが、IoTでは多くのモノにデバイスを取り付けるため、電池の交換作業を頻繁に行うことは困難である。また、数多くのデバイスを取り付ける必要もあるため、デバイスのコストは安価でなくてはならない。
もともと通信技術なのでIOTには役立つに決まっています。通信技術としての用途は何かが問われています。その後の文は、制約条件(〜ができない)になっていて、結局用途が何かわかりません。
Ⅱ-1-4
ネットワーク・スライシング技術について、技術の背景、機能、想定される適用例(ユースケース)の3項目を説明せよ。
解答
1. ネットワーク・スライシング技術の背景
5GではeMBB、URLLC、mMTCといった様々な要求条件を満たす必要があるが、従来のように単一のネットワークでこれを実施することは困難である。そこで考え出された手法がネットワーク・スライシイングである。
2. ネットワーク・スライシングの機能
下の図1に示したイメージ図のように、従来は一つのネットワークで複数のサービス要件を実現する必要があったが、ネットワーク・スライシングによって、要求条件の異なるサービスの提供を分けることでネットワークを効率的に使用することができる。
機能の説明としては曖昧過ぎます。下の図も読み手に推論させることを求めているみたいで好ましくありません。
3. ネットワークスライシングの想定される適用例
大容量通信はVRやAR、あるいは4Kや8Kといった高画質が要求されるサービス、高信頼低遅延は遠隔医療や自動車の自動運転、他端末接続は物流管理やヘルスケアといった分野での適用が想定される。
なぜこのような用途なのか、想定される理由、根拠がわかりません。そうした納得いく説明がコンピテンシーの1つ、「コミュニケーション能力」として求められてます。
Ⅱ-2-1
約10年前に大型屋外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、上がらしい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 計画策定に当たって調査・検討すべき事項
(2) 業務を進める手順
(3) 業務を進めるに当たって留意すべき事項
解答
1. 計画策定にあたって調査・検討すべき事項
まず、無線LANシステムの利用形態及びアプリケーションを調査する。10年前であればアミューズメント施設の情報を入手するといったWEBアクセスが主なアプリケーションであったと思われるが、今後提供する新しいサービスについて技術的な実現方法を検討する必要がある。例えば混雑状況をリアルタイムに表示するようなサービスが考えられる。
また、トラフィックも検討すべき事項である。これは一日の中での時間帯および一週間の中での曜日におけるトレンドも把握すべきである。
このような通信技術のマーケットニーズがお分かりになっていないせいか、具体的な検討内容が示されていません。ニーズを推論し、シナリを作って方針を立案してください。
2. 業務を進める手順
①現状調査
現在のシステムの状況を確認するとともに、ユーザ数や通信量の現状を把握する。
②要件定義
どのようなシステムを構築するか技術的要件を確定させる。
③スケジュール策定及び予算措置
新システム稼働開始までのスケジュールを策定し、それに伴い必要となる予算の確保を行う。
④システム設計
確定した要件に基づき、システムの設計及び開発を行う。
⑤設置工事及び試験
実施に新しいシステムを設置する工事を行い、機能試験を実施する。機能単体の試験のみならず、システム全体で問題なく稼働するかの確認や信頼性(稼働率)の試験も行う。
⑥新システムの稼働開始及び監視
新しいシステムを実際に稼働し、監視を行う。安定稼働が確認されたら、旧システムの撤去を行う。
3. 業務を進めるに当たって留意すべき事項
機能試験は通常の使用状態のみならず、トラフィックが急増することも想定して実施する必要がある。また、多くの人が集まる場所であるので安全性の確保に留意すべきである。そして、システムが故障が発生した場合に備えてバックアップ構成も検討しておく必要がある。
割とありきたりの事項であって、どこでも当てはまることです。このご提案のプロジェクトでの正解とは考えにくいです。答えは物件の特徴を外さない答えとしてください。
Ⅲー2
大規模震災は、情報通信インフラに甚大な被害を与え、避難、救助、住民の生活や復興などに大きな影響を与える。今後、情報通信インフラをどのように整えるべきか、以下の問いに答えよ。
(1) 大規模震災が情報通信インフラに与える影響を述べよ。
(2) 情報通信インフラの機能維持又は早期復旧のための技術的対策を3つ提案せよ
(3) 最も有効な対策の具体的内容、効果、留意点について述べよ。
解答
1.1.大規模震災が情報通信インフラに与える影響について
まず、通信設備が被災することによりネットワークが機能不全に陥り、通信ができなくなることが考えられる。震災時においては可搬性の良いモバイル通信が有用であるため、モバイルネットワークについて論じる。ネットワークはRANとCOREに分けることができる。RANの通信設備は基地局であり、基地局が被災するとそれがカバーしているエリア全体で携帯電話がつながらなくなる。CORE設備は複数の基地局とつながっているため、CORE設備が被災すると複数のエリアで通信がつながらなくなる恐れがある。
これらが震災による物理的で直接的な影響であるのに対して二次的な影響としてトラフィックの輻輳が考えられる。トラフィックが輻輳すると、それが更なるトラフィックの増加を招き雪だるま式に輻輳が大きくなる。
また、設備自体が被災していなくても、電源供給が絶たれたり、伝送路がつながらなくなると通信ができなくなる。
2. 情報通信インフラの機能を維持又は早急に復旧するための技術的対策
①設備の冗長化運用
主にCORE設備で用いられる対策であるが、冗長化した設備を地理的に離れた場所に設置することで、例えば東京の設備が被災しても大阪の設備が代替機として機能するということが可能である。
②可搬型基地局
これは被災地に臨時の基地局を開設するものである。可搬型基地局は自動車で運べる大きさで、被災地に設営して衛星の電波をつかみ通信を提供するものである。被災地では商用電源が使えないこともあるため、ガソリンで自家発電することも可能である。
③気球による臨時基地局
臨時の基地局という点では②と同様であるが、気球を使うことで迅速に開設することが可能となる。災害時に通信ネットワークが機能しない場合はその迅速な復旧が何よりも重要である。
可搬も気球も分かりやすいアイデアです。あまり難しくないアイデア中心の提案となっています。情報通信技術を応用した対策となるようにしてください。
3.1.最も有効と考える対策の具体的な内容
気球による臨時基地局が最も有効と考える。①の冗長化設備はどちらも同時に被災するというリスクがある。これに対して、三重化や四重化を行えばリスクを低減することができるが発生するコストとのトレードオフとなる。②の可搬型基地局は被災地に赴いて開設する必要があるため、移動に困難を伴う可能性がある。
3.2.気球による臨時基地局の効果
可搬型基地局と異なり、気球による臨時基地局は被災地に赴く必要がないため、迅速にネットワークの復旧が実現できる。可搬型基地局は災害が生じたその日に開設することは困難と考えられるが、気球による臨時基地局はそれが可能である。
3.3.実現する上での留意点
大規模震災が発生すると複数の通信事業者の設備が被災することが考えられ、各社が同様に気球を使おうとした場合、その軌道で衝突等の事故が起こる恐れがある。したがって、気球の利用にあたっては、事前に通信事業者の間で充分な整理を行っておく必要がある。また、各社がそれぞれ気球を飛ばすのではなく、共同で利用するようなスキームも検討する価値がある。
3.4.おわりに
主に設備の復旧について論じてきたが、情報通信インフラは今日の社会で欠かすことができないライフラインである。大規模震災で通信ができなくなることがないよう、官民を問わず関係者が皆協力して情報通信インフラの安定稼働に取り組むべきであると考える。
残念ながら、このような見解は求められていません。それよりも問いの趣旨に答えることに集中するようにしてください。
音声ガイドによるコーチング指導内容(23分44秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
Ⅱ-1-1 LPWA(LowPowerWideArea)技術について、その主な特徴を3つ挙げ、この技術の用途について説明せよ。
解答
1.LPWA技術の特徴:図1に各種無線通信方式のマップを示す。
横に速度、省電力の軸、縦には通信距離の軸を示す。これからもわかるようにLPWAの特徴は、
①低速無線通信であること、②低速により省電力を図っていること、③広域な遠距離通信が可能なことである。
2.LPWA技術の用途
図2にLPWAを使ったシステム構成例を示す。
このように、次の用途がある。
①センシングデバイスへの搭載:LPWA通信モジュールをセンシングデバイスに載せてこれまで人の立ち入れなかった場所のデータをセンシングする、②データの収集:読み取ったデータをGWや基地局経由でデータセンタに集める。
集められたデータは分析され、経営課題、社会課題への対応を取るように使われていく。
Ⅱ-1-4
ネットワーク・スライシング技術について、技術の背景、機能、想定される適用例(ユースケース)の3項目を説明せよ。
解答
1.ネットワークススライシング技術の背景
5Gの無線通信では、①高速・大容量化、②同時多地点接続、③低遅延・高信頼化、④省電力化、といったことが求められている。これらを従来のベストエフォート型からギャランティ型サービスで提供する。そのためには、機能単独のネットワークではなく、有線、無線、そしてコンピュータリソースを仮想化して有機的につないでいく必要がある。
2.ネットワークススライシング技術の機能
図1にネットワークスライシングを使ったシステム構成を示す。
①ネットワーク仮想化機能:SDNスイッチ、仮想化サーバを用いてネットワークを仮想化する。②スライシング制御機能:ネットワーク機能を切り出してスライシングし、有機的な接続を制御する。
3.ネットワークススライシング技術の適用例
遠隔医療では低遅延な画像の転送と遠隔操作が必要となる。自動車の遠隔制御でも低遅延が求められる。これらにはネットワークスライシング技術を使っての利用シーンが適用される。
Ⅱ-2-2
約10年前に大型野外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、新しい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたがこの無線設備更新の担当責任者として業務を進めるにあたり、下記内容について記述せよ。
(1) 計画策定にあたって調査・検討すべき事項
(2) 業務をすすめる手順
(3) 業務を進めるにあたって留意すべき事項
解答
1.無線設備更新計画策定のための調査・検討事項
図1に新しく設置する無線LANシステムの構成を示す。各フロアに無線LANのAPを置きそれをL2スッチで集約し基幹のL3スイッチとつなぐ構成である。以下を調査・検討していく。
①トラヒック量:現行無線LANのトラヒック量を測り、今後増えていく入場者数から新無線LANへのトラヒック量を検討していく。
②伝送速度:現行無線LANの速度で十分か、お客様からの不満はないかなど調査していく。不足ならば速度を上げていく必要がある。
③通信エリア:建屋の室内からだけのアクセスで良いか、外からの通信の要求はないのかなどを調査し通信エリアを検討していく。現行システムで無線がつながりにくい箇所の確認も含めて行っていく。
④通信方式:上記に加えて無線区間のセキュリティを強化していく必要はないのか、現行の無線強度を検討し無線通信方式を検討していく。
2.業務を進める手順
(1)通信要件の策定:上記の調査・検討事項を整理しエンドツーエンドの通信を確保するための要件とする。
(2)設計:通信要件を基にネットワーク設計を行なう。ここで重要なことは、信頼性設計、性能設計、移行設計、運用保守設計といった非機能要件の設計も行うことである。更には、設計仕様に合う機器の調達を行ない、構築を進めていく。
(3)評価:設計仕様通りに機器が動作するかを評価していく。初期不良を抑え込むためのエージングや十分なテスト項目消化を行う。全ての機器をつないでの評価だけでなく、相手装置をシミュレートして想定外のデータの発生を行いその対処ができているかの確認も必要となる。
3.留意事項
(1)新サービス対策:顧客向け新サービスとしてコンテンツサーバからの情報配信を想定している。このサービスのフィージビリティについてはオーナーや現行無線LANシステム担当者と事前に確認しPDCAを回していくことに留意する。
(2)冗長化対応:信頼性設計の中で信頼度の高い部品を利用することはもちろん、障害は起きるものと考えてL2,L3スイッチについては冗長化しておく。故障によりサービスが停止しないためである。可用性の高いシステムにしていくことに留意する。
Ⅲー1
IoTや5Gの進展も相まって様々なシーンで多様な事象がデータ化され、収集されたデータを利活用することで、企業活動の効率化や新たな付加価値の創造、社会課題の解決に向かおうとする潮流がある。このため、今後ますます安心、安全に、膨大な量のデータを収集し、多様なネットワークインフラにまたがって流通させる仕組みが求められている。このような状況を踏まえて、情報通信ネットワーク分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1) 安心、安全なデータ収集・流通の仕組みを実現するための課題を、多面的な観点から抽出し分析せよ。
(2) (1)で抽出した課題の中で、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。
(3) (2)で提案した解決策に関連して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
解答
1安心、安全なデータ収集・流通の仕組み実現の課題題
図1には収集するデータの特徴とそれを流通させるための課題との対応を示す。以下に説明する。
①大量のデータ:世界中で日々ペタバイト級のデータが発生している。この大量のデータを安心安全に流通させるためには高速・大容量ネットワークを構築してデータ伝送させていく必要がある。(課題(A))
②多様なデータ:収集するデータはこれまで人の立ち入らなかった所のデータや従来の構造化データではなく非構造なデータも存在している。これらを流通させるには多地点で同時に発生するデータを収集し伝送していく必要がある。(課題(A)(B))
③変化の速さ:収集するデータは従来にない速さで変化している。遠隔医療や遠隔での車の自動運転では画像を遠隔で見ながら操作をすることになるが遅延は許されない。安心、安全なこれらのデータの流通には低遅延高信頼なデータ伝送が求められる。(課題(C))④信用度の範囲の広さ:匿名化されているデータはその信用度が下がるが、逆に匿名化されていないデータは信用度が上がる。この様に信用度の範囲が広い。しかし匿名化されていないデータには個人情報を含んでおり安心、安全な流通が阻害される。匿名化技術を更に高度化してデータを流通させていく。(課題(D))
2.最も重要な課題と解決策
私の考える最も重要な課題は、(B)多地点・同時接続への対応である。2020年にはIoTデバイスが300億個も普及しそこから発生するデータは膨大なものになるからである。そのための解決策を以下3点示す。
(1) LPWA技術
図2に多地点同時接続への対応を示す構成図を示す。
LPWAモジュールをIoTデバイスへ搭載し、遠距離多地点地点から同時に収集したデータを基地局、コアネットワーク経由でデータセンタへと送る。これまで人の立ち入れなかった所のデータも安心、安全に収集できるしLPWAモジュールは省電力化も図れており数年に一度の電池交換で済む。
(2) ネットワークスライシング技術
コアネットワークは、有線、無線、仮想化サーバ等で構成されるが、多地点同時接続のための要求だけではなく、高速・大容量通信や、低遅延・高信頼といった多様な要求への対応が求められる。そのためには、ネットワークのリソースを有機的につないで対応するネットワークスライシング技術が対応する。
(3) オープンスタック技術
安心、安全なデータの流通にはデータセンタ上のIaasにも影響を与える。その対応にはオープンスタック技術にて対応する。仮想化サーバ、仮想化ストレージ、仮想化ネットワークを構成するオープンソースを使って、変化の速いデータの分析のためにも迅速にIaas基盤を立ち上げていく
3.課題解決のリスクとその対策
(1)信頼性:新しい技術を使うには経験不足からくるシステムの信頼性の低下がリスクとなる。その対策は、信頼性の高い部品の採用や、標準化された部品やインタフェースを使う。また部品の再利用を行ない、そして、障害は発生するものと考えてのシステムの冗長化構成、十分な評価を行って初期不良を防ぐことである。
(2)セキュリティ:技術的セキュリティ対策は設計に折り込んでいくとして、物理的セキュリティ、人的セキュリティ対策の不足がリスクとなる。システムの運用経験不足だからである。その対策は、運用経験者とのレビューや試行運転によるノウハウの蓄積や吸収を行い設計に反映していくことである。
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問題
Ⅱ-1-3 供用中の道路上空における橋梁新設工事において,考慮すべき公衆災害防止対策を3つ挙げ,それぞれについて概説せよ。
解答
道路上空における橋梁工事における公衆災害防止対策
①適切な架設計画とその管理
一般的に、道路上空における桁架設工事は、一時的に道路を通行止め等行って作業される。そのため、作業の遅延等があれば直ちに交通に影響を与え、公衆災害となる。これを防ぐために、綿密に協議等を行い、綿密な架設計画を立てるとともに、現場での管理を徹底しなければならない。
②適正な足場及びベント等の仮設設備の設計
橋梁工事においては、基本高所での作業となるため、左折設備として吊足場や仮受けのベントなどが設置される。これらは、通常一般車両等が通行する道路の直上あるいは近傍に設置されるため、崩壊に至った際には、即座に第三者災害となる可能性が高い。そのため、これらの仮設設備は、強風や地震等に対して安全であるように適切に設計され、現場に設置されなければならない。
③飛散養生等シート等物理的な養生の設置
上記を含めて、対策を行ったとしても、人間が行うことである限り、公衆災害の可能性をゼロにするのは不可能である。よって、現場において、養生シート等の設備など物理的に行いうる対策を、現場の状況を確認しながら随時に行う必要がある。
Ⅱ-1-4
マスコングリートの施工に当たって,特に留意すべき事項を述べよ。また,その留意事項について,製造・運搬,打設・養生等の各段階において講じなければならない対策について概説せよ。
解答
マスコンクリートの施工について
―留意事項―
①コールドジョイントの発生
②コンクリートの品質の確保
③コンクリートの材料分離
④水和熱によるコンクリート温度の上昇
―講じなければならない対策―
製造・運搬(①、②、④に対策が必要)
マスコンクリートの施工にあたっては、大量の生コンが必要となるため、プラントの選定が肝要である。安定した品質のコンクリートを供給できるように、事前の協議が必要である。また、運搬に際しては、運搬以時間を要し、生コンの品質やワーカビリティが低下することを防ぐため、交通状況の確認や、車両の確保などの準備が必要である。また、遮熱シート等による運搬中の温度管理も効果的である。
打設・養生(①、③、④に対策が必要)
打設に際しては、躯体が大型であることより、①③の対策として、打継間隔の管理を行うこと、バイブレーターを慎重にかけることなどと、打設高さを低く抑える事が必要である。また、養生に際しても、躯体が大型であることより、水和熱が大きくなるので、養生期間中に散水を随時に行い、湿潤状態を保ちながら、温度を一定以下に保つ必要がある。
Ⅱ-2-2
住宅街を通る幹線道路(幅員25m)の区域内に, 15m四方,深さ30mの立坑築造工事を,ソイルセメント地下連続壁による開削工法で計画している。当該箇所は,地下水位が高く軟弱地盤である
(1)当該工事を実施するに当たって,周辺の環境に影響を与えると考えられる事象を3つ挙げ,それぞれについて着目した理由と事前に調査すべき項目を述べよ。ただし,騒音と振動は除くものとする。
(2)前項で挙げた事象のうち2つについて,環境への影響の低減に有効と考えられる具体的な対策と施工管理上の留意点を述べよ。。
解答
(1)周辺環境に影響を与えると考えられる事象
①事象:周辺地盤の沈下
理由:立坑掘削時には、連続壁の変位や、立坑内 への出水等によって、周辺地盤の沈下が考えられるため。
調査項目:周辺の埋設管の有無(あれば標高等)
周辺に民家があれば民家の家屋調査
周辺道路の状況(標高等)
②事象:周辺の井戸かれ
理由:連続壁の施工に伴い、地下水脈等をふさい でしまった場合には、周辺で利用されている井戸が枯れる恐れがあるため。
調査項目:周辺の地下水の利用状況
現地、周辺のボーリング調査
③事象:周辺地盤の陥没
理由:当該地の地盤は、軟弱地盤で地下水位が高いとのことで、立坑内の掘削作業中において、ボイリング等の発生が懸念される。その場合には、その影響は地盤沈下にとどまらず、陥没を発生させる可能性も存在するため。
調査項目:現地でのボーリング調査
周辺道路や民家、設備の状況等
(2)具体的な対策と留意点
①事象:周辺地盤の沈下
―具体的な対策―
掘削時、周辺地盤の沈下を防ぐためには、施工計画に沿った深度の掘削と支保工設置のサイクルの順守や、薬液注入工法の実施による地盤強化が考えられる。
―留意点―
施工管理に関しては、先述のとおり、施工サイクル等の施工計画を順守して作業を行うよう管理すること。
周辺の地盤の状況の把握を随時に行うことである。周辺の道路や埋設管の直上等に観測点を設置し、標高等を管理することで現場の状況を把握する必要がある。
対策工については、薬液注入工施工時には地下水位が高位であることから、薬液の逸散が懸念されること、当該工事による地盤の隆起に注意が必要なことである。
②事象:周辺の井戸かれ
―具体的な対策―
連続壁施工に伴う、井戸かれ対策としては、リチャージウェル工法による帯水層への復水があげられる。
―留意点―
施工管理に関しては、地下水位を観測孔等を設けて随時に確認し、小さな変化にも即時に対応することが必要である。対策工については、ボーリング調査の結果等も踏まえ、実施が必要であるのかを検証する必要があることである。
Ⅲー1
建設業の労働災害による死亡者数は,安全設備や安全管理の充実により減少傾向にあるが,今なお,全産業に占める建設業の死亡者数の割合は最も高く,建設業の労働災害の防止に向けて,新技術の活用などにより,なお一層の取組が必要である。 これらを踏まえて,以下の問いに答えよ。
(1)建設業の労働災害において死傷事故の発生頻度が高い事故の型別(種類)を2つ挙げ,それぞれの事故が発生する要因となっている建設現場の作業内容や作業環境の特徴について述べよ。
(2)(1)の事故発生要因を受けて,様々な事故防止対策が行われているが,依然として,類似事故が発生している。このような状況を招いている背景と問題点について述べよ。
(3)(2)の問題点を解決するための方策を挙げ,その効果と,それを普及させるために必要な取組について,あなたの考えを述べよ。
解答
(1)死傷事故の発生頻度の高い事故の類別
①転落災害
作業内容:高層構造物の施工における足場の組立作業、足場上での躯体構築作業。橋梁工事における桁架設や吊足場での作業など
作業環境:安全衛生法の足場に係る改正や、それに伴う安全意識の向上などにより環境の改善は進んでいるが、足場組立作業や、橋梁工事における桁架設作業など、物理的に対策を行うことが難しい場面も見受けられる。
②はさまれ災害
作業内容:掘削作業などを行う際の手元作業や、重量物の楊重作業など
作業環境:バックホウなどによる掘削作業を行う際には、手元の人間がスコップ等で細かい部分を処理する相番作業が不可欠である。オペレーターと作業員に共通の合図を定めるなど対策は進んでいるが、狭い場所での作業などについては、対策が難しい現状もある。
また、建設現場の重量物は、クレーン等にて楊重されるのが日常よく行われる作業であるが、作業半径、吊上重量の管理、吊具の点検、整備、作業半径の人払い等の全てが常に管理されているとはいいがたいのが現状である。
(2)類似事故が発生する背景と問題点
―背景―
類似事故が発生する背景としては、建設現場が各現場において、条件が大きく異なり、画一的な対策を行うことが難しいことに加え、建設業界の慢性的な人手不足と作業員の高齢化がある。
―問題点―
建設現場の安全対策が、現場毎に検討が必要なことは先述のとおりである。当然、各現場での作業にあたっては、現場の特性や安全に関する事項の教育は行うが、慢性的な人手不足により、高度に技術を習得した作業員は、取り合いの様になってしまっているのが現状で、経験の浅い作業員が日替わりで現場に来るといった場面さえ散見される。こういった状況の中では、各作業員への教育、説明を行い、安全意識を高く保つのは限界があると考える。これに加えて、高齢の作業員については、自身の認知と実際の作業能力とのかい離や、純粋な身体能力の低下などの問題もある。
これらを踏まえ、作業員に対する安全教育のフォローアップや、人手不足の解消策が必要であると考える。
(3)問題解決の方策と必要な取組
作業員の安全に関する意識の向上に資するフォローアップ等は、現行で行っている取組についてその頻度を上げて、行っていくしかないと考えるので、主に人手不足の解消について述べる。人手不足の解消のための方策としては、I C T等の活用、建設業界のイメージアップ、労働環境の改善があげられる。
I C T の活用については、その導入による効率化で、必要人員の削減効果を期待する。また、そもそも危険作業の除去という効果も考えられる。
建設業界のイメージアップ、労働環境の改善については、入職者を増加させ、長く働いてもらうことでの労働者の増加を目指すものである。
前者については、すでに推進が国でも進んでおり、引き続き試行と水平展開をお願いしたい。普及を目指しては、地方自治体、民間の技術者の自己研鑽が必要である。適切に情報を収集し、導入可能な工事に積極的に利活用していくことが普及につながると考える。
後者については、まずイメージアップについては、現在各企業が行っているT V C M 等は引き続き行ってもらいながら、インフラなどの存在意義などを訴えていく必要があるかと思う。学校や市民向けの出前講座など、基礎自治体として、できることが考えていかなければならない。労働環境については、一朝一夕でできるものではないが、現在進んでいる週休二日制の推進等をさらに進めるとともに、C M 方式や設計V E 等の結果が出てきている施策などのさらなる拡充によって、業界全体の効率化が必要と考える。
この答案についての講評
「自身のこれまでの経験を生かして、他の人が経験したことなのない記述ができた。だから高得点が期待できると自負している」とメールに書かれていましたが、残念ながら試験ではそのようなことは求められていません。本当の試験の狙いをご理解された方がよいでしょう。
また、Ⅱ―1−3の1問だけ時間切れで書けず、それが時間切れとなったてくやしい思いを避けたとのことでですが、弱点はそれだけではないようです。
合否判定は難しいようです。間もなく結果が出ますので、結果に対する評価として、このコメントを参考にしてください。役所にお勤めの方の特有の弱点が現れています。正式な解答法を学ぶ練習法として、問いの文章に対してどのような回答文で答えたらよいかをきっちり練習されることをお勧めいたします。
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問題
Ⅱ-1-2 ダム貯水池の堆砂について,ダム下流河川への土砂の還元が可能な対策を計画する際の留意点を述べよ。また,ダム下流河川への土砂の還元が可能な対策の事例を2つ挙げ,それぞれについて特徴と留意点を述べよ。
解答
1ダム下流河川へ土砂還元をする対策計画の留意点
近年、異常気象による集中豪雨が増している。50mm/h以上の平均降水回数は1976から1980年と2012から2016年と比べ61回も増加している。それに伴い、土砂災害では平成19年から平成28年までの年間平均で1100件発生している。このように、上流域からダムへの土砂が大量に流入している。今後、さらに集中豪雨が発生すればダム堆砂池への土砂が増していく。
■この最初の段落はすべて留意点ではなく、前置きにすぎません。統計的な傾向は難しい話ではなく、それらをベースとして技術者としてどう判断するか、すなわち技術者としての視点が求められています。
(1) ダム堤体天端のかさ上げ
■ここは出題趣旨と反対のことでは?(2)のように土砂を流す方法を考えるべきです。
a) 特徴
ダム堤体天端にコンクリートを打設し、洪水容量を
増させる。これにより、上流からの大量の流水と土砂を補足でき、下流への影響を少なくすることができる。
b) 留意点
洪水容量を大きくするため、ダム本体に水圧がかかり、クラック等が発生し安全性が保てなくなる場合がある。
(2) サンドバイパスによるダム土砂排出
a) 特徴
堆積した土砂をバイパス化させ土砂を流下させる。
これにより、下流河川の河床低下時に土砂を供給することができる。
b) 留意点
土砂の流下が多い場合は、バイパスの管が閉塞し、
土砂が流下できなくなる可能性がある。
Ⅱ-1-3
近年の大規模地震によって発生した土砂災害の形態を2つ挙げ,周辺地域に及ぼす影響,及び被害を防止・軽減するために砂防分野において震後に行うソフト対策・ハード対策についてそれぞれ述べよ。
解答
1近年の大規模地震によって発生した土砂災害
(1) 急傾斜地崩壊
a) ソフト対策
急傾斜地は高さ5m以上、勾配30度以上となる突発的な崩壊であるため、近隣の場所へ避難行動を起こす。
b) ハード対策
?(1〜2行くらい書いたかもしれません)
c) 周辺地域に及ぼす影響
急傾斜地付近には、家屋が密集しており、人家被害が甚大となる。
■残念ながらこのようなことは求められていません。
Ⅱ-2-1
近年,想定を上回る規模の災害の発生も見られる中,ハード対策に加えて被害想定範囲等を示したハザードマップを活用したソフト対策の重要性が増していることを踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)河川,砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を選択し,被害想定区域の設定からハサードマップの作成に至る手順を概説せよ。
(2)(1)で扱ったハザードマップについて,活用上の留意点を述べよ。
解答
1被害想定区域の設定からハードマップ作成の手順
(1) 砂防分野を選択した理由
砂防分野を選択する。土砂災害は、前兆を捉え難くその発生を予測することが困難である。また、自然災害の中でも41%と最も割合が多いからである。
■このような理由は求められていません。
(2) 土砂災害危険個所の確認
最初に、地形図等から土砂災害危険区域を調査し確認する。わが国では、土砂災害危険個所は52万箇所あり、土石流は18箇所・地すべりは1万箇所・急傾斜地崩壊は33万箇所ある。
(3) 土砂災害防止法に基づく基礎調査
土砂災害危険個所を確認したら、管理者(都道府県)で現地調査等を実施する。そこで、地形・地質・被害想定範囲等を調査し、被害範囲等を明らかにする。
(4) 土砂災害警戒区域等の指定
管理者で想定した被害範囲等を地域住民に説明し、
土砂災害の形態・影響範囲等、危険があることを理解してもらう。その上で、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定を行う。指定されたら、各市町村やインターネットで閲覧でき、だれでも危険個所を確認することができる。
(5) 地域による自主防災組織体制の確立
土砂災害警戒区域をもとに自助・共助の減災を主体とした地域による自主防災組織体制を確立する。具体的には、地域住民で防災訓練や学習等を行い土砂災害に備えた活動を行う。
(6)地域住民によるハザードマップの作成
自主防災組織による地域住民主体のハザードマップを作成していく。その際、行政側の公助の一つとしてリアルタアイムハザードマップやタイムラインなどを支援し自助・共助と連携していく。これにより、地域住民主体の自助・共助に基づいた減災ハザードマップが作成される。
■マップとは関係ない話を展開されています。土砂災害とはどこで発生しているのか、もっと本質的な話として掘り下げていくべきかと思います。
2ハザードマップ活用上の留意点
(1) 土砂災害警戒区域等指定の遅延
土砂災害区域等の中のレッドゾーンでは、土地の評価額の低下や建築物の強化費用の面で反対者が多い。レッドゾーンの現在の指定率は25%である。土砂災害区域等が指定されないと、自主防災組織が確立化されなくなり、防災訓練や学習が進まなくなる。よって、今後、住民主体のハザードマップ作成が進まない場合がでてくる。
■ネガティブな話ばかりで、解決策が示されていません。
(2) 自主防災組織の継続化
現在、わが国の核家族化の割合は61%にもなる。さらに、高齢化は進み現在の約27%から平成37年には30%を超え地域のコミュニティーが失われる可能性がある。このような状況で、今後、地域による自主防災組織の活動されなくなり、ハザードマップが活用されていかない場合がある。
■問題点の指摘ばかりでハザードマップについての解決策が示されていません。
Ⅲー1
我が国では,高度経済成長期に社会的要請に基づき急速に整備した社会資本の老朽化に対して,厳しい財政制約の下,効率的に対応していく必要がある。そのような状況を踏まえ,社会資本の整備や維持管理の分野においては,既存ストックの有効活用を図ることが求められている。河川,砂防,海岸・海洋分野における既存ストックの有効活用に関して,以下の問いに答えよ。
(1)河川,砂防,海岸・海洋分野において,現在取り組まれている既存ストックの有効活用に資する具体的な取組の例を2つ挙げ,その概要を説明せよ。
(2)今後,より積極的に河川,砂防,海岸・海洋分野における既存ストックの有効活用を推進していくに当だっての課題を2つ説明せよ。
(3)(2)で記述した課題に対して,それぞれの改善方策を提案せよ。。
解答
1既存ストックの有効活用に資する具体的な取組例
(1) 河川堤防の強化
近年の異常気象により集中豪雨が多発している。1901から2015年の100mm/以上の降水回数は、0.39回増加している。また、2076から2095年の将来の降水回数では、0.51回も増加すると予想されている。このような状況では、洪水が多発し堤防決壊・氾濫を引き起す。破堤の要因で最も多いのは、越水によるものである。平成23年9月の紀伊半島豪雨では、河川が11箇所越水し、うち2箇所が破堤した。そこで、越水による破堤を防ぐため、裏法に合成繊維を張り付け、その上に植生マットで覆う。さらに堤防天端にはアスファルトを施す。これにより、越水破堤を防ぐことができ、破堤となっても時間を要せるため、周辺住民の避難に余裕ができる。
■最初の文は答えではなく、すべて前置きに相当します。
(2) 砂防堰堤の排砂
不透過砂防堰堤の堆砂域では、経年の上流からの土砂流下で満砂状態となっている。満砂となっていれば、下流の河川が天井川となり、堤防を越水し大規模な氾濫を起こす。そこで、堆砂域の土砂をロングバックホウ等で排砂しポケット量を増やす。これにより、上流からの土砂が流下してもポケット量があるため、土砂を補足できる。
2既存ストックの有効活用を推進する課題
(1) 既存ストックの不具合数
河川管理施設等では、国と都道府県をあわせて、約12千箇所あり、うち不具合が4千箇所ある。さらに、将来50年経過する国河川管理施設では、平成35年で約4割・平成45年で約6割となる。さらに近年の異常気象により益々既存ストックが老朽化していく。よって、いかに、このような不具合数の多い既存ストストックの中で有効活用を推進していくかが課題である。
(2) 有効活用を推進していく狙い手不足
建設技術者は、平成9年におけるピーク685万人から、平成27年では500万人にまでなり27%減少した。また、高齢者の技術者数は、今後10年間で1/3離職していく。よって、このような、減少していく建設技術者数で、いかに既存ストックを有効活用し推進していくかが課題である。
■いずれも問題文と同じ趣旨でダブリとなっています。躯体的な議論をしてください。
3課題に対する改善方策
■ここは内容的にはOKです。ただし、暗記していた用意した内容を書きだした感じがします。(2)の課題に対して、(3)がその解決策となっていないような、論理の矛盾を感じます。
(1) 既存ストックの不具合数
a) ドローン等を活用した既存ストックの調査
既存ストックを有効活用する前に老朽化した施設の
補修を行う。そのためには、既存ストックの調査が必要である。しかし、河川、砂防等分野では、山地など現地踏査が困難である。そのため、ドローンを活用し早期にクラック等を見つけ補修を行う。これにより、将来老朽化が進んでいく既存ストックを防げ、今後の既存ストックの有効活用を図ることができる。
b) 急傾斜地施設対策
急傾斜地危険個所は、全てで33万箇所あり、うち整備率は26%で最も多い。さらに、急傾斜地は高さ5m以上・勾配30度以上・被害影響範囲は高さの2倍である。また、斜面には表層として脆弱化した堆積岩類等が1から2m堆積しており、地震や豪雨があると突発的に崩壊する。そこに人家が密集しており、斜面崩壊があると甚大な被害を引き起す。そのような、河川、砂防等の分野で施設数が多く、突発的な被害を起こす急傾斜地では、優先的に対策を行う。具体的には、法枠やブロックが多いが、その上からロックボルトを打設する。これにより、施設数の多い急傾斜地を簡易に施工でき、かつ有効活用を図れる。
(2) 有効活用を推進していく狙い手不足
ICTを全面的に活用する。人手の測量をドローンで行い3次元設計データを得る。その設計データを無人建設機械転送しで施工する。これにより従来の人手がなくても生産性を確保でき、既存ストックの有効活用が図れる。もう一つが、若者の入職を増加させることである。高校・大学の建設現地視察は、施工中のものである。一方、阪神淡路・東日本大震災では、多くの若者がボランティアで自ら参加している。そこで、高校・大学生に被災地でボランティアとして参加させ被災地や被災者と向き合わせる。そして、建設業こそが災害を防止できると悟ってもらい建設業全体で取組む。これにより、おのずと若者は入職してくる。
この答案についての講評
見識問題のⅡ−1は比較的点が取れているように感じます。一方、応用問題となるⅡ-2では設問で要求されてることが答えられていません。問と答えが一致しない、まるで別な問いに答えているような感じがいたしますので、これでは減点されても仕方ないという気がいたします。正式な解答法を学ぶ練習法として、問いの文章に対してどのような回答文で答えたらよいかをきっちり練習されることをお勧めいたします。
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問題
Ⅱ-1-5
プレストレストコンクリート構造物特有の初期欠陥を1つ挙げ、その発生原因と構造物に与える影響及び設計・施工両面からの防止策を述べよ。
(1)初期欠陥
初期欠陥としてグラウト充填不足を挙げる。
(2)発生原因と構造物に与える影響
グラウト充填不足は、充填後に空隙ができやすいケーブルの曲げ上げ頂部に発生する。
充填不足からPC鋼より線が錆びて破断し、所定のプレストレスを確保することが難しく、構造物の性能を著しく低下させる。
■問では、発生原因が求められているのにもかかわらず、グラウト充填不足の成り行きの説明に終始して原因が書かれていません
(3)設計・施工両面からの防止策
①設計面からの防止策
ケーブルの曲げ上げを急に行うと、曲げ上げ頂部でグラウト充填後に空隙ができやすい。
ケーブルの曲げ半径をR=10m以上と緩やかにすることにより空隙を小さくすれば、グラウト充填不足は解消される。
②施工面からの防止策
グラウトの充填確認は、コンクリート内部のことなので、目で確認することは難しい。
空隙ができやすい曲げ上げ頂部にグラウト充填を確認できるセンサーを設置することにより、確実なグラウト充填を行うことが有効である。
■ここの内容はOKです。
Ⅱ-1-6
コンクリート構造物又はコンクリート部材に短繊維を使用することによって得られる効果を2つ説明せよ。また、どちらか1つの効果について、その効果を得るために使用される短繊維の種類と特徴、並びにその短繊維を用いた繊維補強コンクリートの製造上の留意点を述べよ。
(1)短繊維を使用することによって得られる効果
①はく離・はく落防止
②曲げ耐力の向上
(2)短繊維の種類と特徴
(1)①のはく離・はく落防止を目的に、短繊維の種類として、ビニロン繊維を挙げる。ビニロン繊維の特徴としては、長さは2〜3cmであり、コンクリートの外に飛び出ても錆びることはない。
(3)製造上の留意点
ビニロン繊維は、コンクリートミキサーの中に投入して練混ぜを行うが、一度に投入するとビニロン繊維がダマになって生コンクリートに均一に混ざらないことがある。
均一に生コンクリートに混ぜるためには、単位時間当たり一定の量のビニロン繊維を放出できる送風式の設備が有効である。
■ここの内容はOKです。やや文字数が少ないようです。「短繊維を使用することによって得られる効果を2つ説明せよ。」とありましたので、効果についての説明がされていればなおよかったです。
Ⅱ-2-4
今後の大地震の発生に備えて、コンクリート構造物の耐震補強が進められている。今回あなたは、1969年に竣工された設計図と設計計算が無いコンクリート構造物の耐震補強対策業務を行うことになった。基礎構造は対象外とし、下記の内容について記述せよ。
(1)想定したコンクリート構造物、注意すべき部材の破壊形態、目標とする耐震性能と照査方法
(2)構造物の復元方法、復元設計に必要な調査項目
(3)業務を進める手順、業務で提案する補強工法について設計・施工上留意すべき事項
(1)想定したコンクリート構造物
①プレストレストコンクリートT桁道路橋(橋長36.0m、幅員12.0m、主桁本数6本配置)を想定する。
②注意すべき部材の破壊形態
地震時に、支承部や変位制限装置(アンカーバー)が損傷し、縁端不足から橋桁が落橋する。
③目標とする耐震性能と照査方法
地震時には緊急輸送道路として利用することを想定し、レベル2地震動に対して落橋しないことを目標とする。
照査方法は、1.5×Rd(Rdは死荷重反力)を作用させて、橋桁部材の応力度が超過しないものとする。
(2)構造物の復元方法、復元設計に必要な調査項目
■ここでは、①構造物の復元方法、②復元設計に必要な調査項目と2つのことが求められていますので、この2つを見出しとしてそれぞれ表すように。
橋桁の部材寸法や橋面寸法(地覆、高欄、アスファルトの寸法)、落橋防止構造(桁かかり長等)の現地調査を行う。
また、建設当時の橋の標準図集から、コンクリートの内在のPCケーブル種類、本数、配筋図を想定する。
さらに、橋歴板から建設当時の活荷重の種類を確認する。同じ河川に架かっている橋の設計図書があれば、それも参考になるはずである。
そして、復元設計に必要な条件が整ってから復元設計を行い、その条件の妥当性の確認を行う。
(3)業務を進める手順と補強工法について設計・施工上留意すべき事項
■ここは2つのことが求められています。
業務を進める手順は何か。業務で提案する補強工法について留意点(設計・施工上)この順序で2つについてまとめるようにしてください。
回答の構成が異なると、この答案の答えではない、と判断されて大きく減点されます。
①手順と設計上留意すべき事項
現在の耐震設計を行った場合、縁端不足から落橋の可能性がある。縁端拡幅の設計を行う際、コンクリートで拡幅する場合や鋼製ブラケットを設置する場合がある。
どちらが施工可能であるか、橋台前面の施工スペースなどを把握して施工可能である方法で設計することが重要である。
また、現行の活荷重(T−25)では、主桁の応力度を超過する。特に、外桁の応力度を超過する場合が多く、外ケーブル工法で外桁を補強する場合が多い。
しかし、他桁に偏応力が作用し応力度を超過する場合には、外桁に小容量の外ケーブル工法を用いて他桁に影響を少なくすることが重要である。
②手順と施工上留意すべき事項
縁端拡幅工事では、橋台前面を削孔してアンカーボルトを設置する。
しかし、削孔中に橋台の鉄筋に干渉して所定の削孔長を確保できないとアンカーボルトの埋込み長不足になり品質不良となる場合がある。
これを防ぐには、設計段階から非破壊検査で橋台の鉄筋に干渉しない箇所にアンカーボルト設置位置を決定しておくことが重要である。
Ⅲー3
近年、建設業界においては、就労者の高齢化や若手入職者の減少等が課題となっている。また、社会資本の大規模更新や震災復興事業が増加しており、生産性向上が求められている。一方で、生産性向上と同時に品質確保が重要となる。このような観点から、以下の各設問に答えよ。
(1)コンクリート構造物の建設において、建設現場の生産性を向上させるための検討すべき項目を多様な観点から記述せよ。
(2)(1)の検討すべき項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示し、それぞれの具体的効果を記述せよ。
(3)(2)で提示した2つの解決策について、構造物の品質確保・向上の観点からメリットとデメリットを記述せよ。
1.はじめに
社会資本の大規模更新や震災復興事業が増加する中、就労者の高齢化や若手入職者の減少を上回る生産性の向上が求められている。
■このような前置きは不要です。
2.生産性を向上させるための検討すべき事項
(1)工事発注量の平準化
工事発注量は、下半期から年度末にかけて多く、上半期には少ない。
建設会社は、工事が少ない上半期に売上げ不足による経営難から人材を放出し、工事が多くなる下半期になると人手不足となり、生産性および品質を低下させている。生産性を高めるには、工事発注量の平準化が検討項目である。
(2)施工プロセスにおけるICT技術の導入
現場では、過密配筋による鉄筋干渉で、施工効率の低下や手戻りを生じていることがある。
これを防止し生産性を高めるためには、3次元データによる確認変更を設計段階から導入し施工に反映させる、施工プロセスにおけるICT技術の導入が検討項目である。
(3)部材規格の標準化
現場で施工するコンクリート構造物は、異なる土地、顧客の注文に基づく一品受注製品であり、設計・施工は複雑になりやすく非効率である。生産性を高めるためには、部材規格の標準化が検討項目である。
3.技術的課題と実現できる解決策と効果
(1)技術的課題
部材規格の標準化の代表でもある「部材のプレキャスト化」は、工場で施工に先立って生産され、また、現場作業や管理を省略化できるため生産性を高めることが可能である。
しかし、プレキャスト化は、プレキャスト部材の運搬費や重機損料がかかり、現場打ちコンクリートに比べ、初期建設費がアップすることから十分には普及していない。これをどのように普及・促進させるかが課題である。
■文章表現が回りくどいです。しかも問題点に触れるだけで、どう解決すべきかという課題が示されていません。
(2)実現可能な解決策と効果
①初期建設費を低減させた設計
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを利用し、部材の軽量化、長スパン化及びプレキャスト間の接合目地削減を、設計段階から取り組む。
その結果、運搬費や重機損料を低減させ、初期建設費を削減することは可能である。
②ライフサイクルコストを考慮した設計
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを用いれば部材の耐久性向上、長寿命化が可能となり、維持管理費の低減につながる。これをライフサイクルコスト算定に考慮して設計する。
その結果、現場打ちコンクリートに比べ、トータルでコストを削減でき、プレキャストの普及につながる。
4.品質確保・向上の観点からメリットとデメリット
(1)初期建設費を低減させた設計
①メリット
プレキャスト部材に高強度・高耐久なコンクリートを用いることにより、各種の劣化因子に対する抵抗性、品質向上を望める。
②デメリット
部材の軽量化により、新形式の接合方法検討など、性能指標の確率が急務である。
(2)ライフサイクルコストを考慮した設計
①メリット
ライフサイクルコストを考慮することから、どの時期に補修・補強するのか目安を付けることが可能である。さらに現場打ちコンクリートより確固たる高品質な製品を製造可能なので、品質面から劣化を予測しやすい。結果的に長期的に品質を確保することができる。
②デメリット
複合劣化に対する劣化予測については、劣化進行状況が複雑で予測しづらく、適切なライフサイクル算定を行うことが困難となり、適切な維持管理ができなくなる可能性がある。
複合劣化に対する劣化状況の継続的なデータを取得し、複合劣化予測の精度向上を進めるべきである。
私は、工場製品の生産技術者として、効率的に高品質な製品をこれからもつくっていきたい。
■このような決意は不要です。個人的な意見は求めていません。
問題
Ⅲ−2 建設産業には,安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの,今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており,建設現場の生産性向上は避けることのできない課題である。そのため,国土交通省においては,産学官が連携して,生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるよう,i-Constructionに取り組んでいるところである。
他方,政府においては,一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するため,働き方改革にチャレンジしている。建設業は他産業と比べて厳しい労働環境にあり,小規模な企業の技能労働者を始めとして,働き方の改善が喫緊の課題となっている。
これらを踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で,建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ,その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題の解決に向け,あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ取り上げ,適用できる場面と具体的な利用方法,及びそれによって得られる改善効果を,事例を挙げながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるため,雇用や契約制度等に関して改善すべき事項を取り上げ,あなたの考えを述べよ。
音声ガイドによるコーチング指導内容(14分22秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
■全体的な構成は良く書けています。
但し課題の内容がここで求められていた地盤構造物の課題かというと、必ずしもそうは見えません。もう少し掘り下げて課題の焦点を絞っていく必要があります。
■2枚目以降は、対応策、効果、留意点を書くところです。地盤構造物の特徴を考えないと
1 . 生 産 性 向 上 を 図 る た め 技 術 的 課 題
( 1 ) 維 持 管 理 ・ 更 新 の 技 術 的 課 題
技 術 管 理 者 が 、 不 足 し て い る 。 今 後 は 、 さ ら に 高 度成 長 期 に 作 ら れ た 5 0 年 以 上 と な る 老 朽 化 し た 構 造 物が 、 増 加 す る た め 、 さ ら に 不 足 し て く る 。
技 術 的 課 題 は 、 技 術 管 理 者 が 少 な く て も 、 老 朽 化 した 構 造 物 の 点 検 を 出 来 る よ う に す る こ と で あ る 。
( 2 ) 施 工 の 技 術 的 課 題
熟 練 技 能 者 が 、 少 な く な っ て き て お り 、 技 術 継 承 がさ れ て き て い な い こ と で あ る 。 O J T は 、 先 輩 社 員 に一 緒 つ い て 、 現 場 の や り 方 を 覚 え て い た 。 し か し 、 現在 は 、ト ー タ ル ス テ ー シ ョ ン の よ う な 自 動 機 器 に よ り 、現 場 の 人 数 が 少 数 化 し た 。 そ の た め 、 先 輩 社 員 と 別 々に 業 務 を 行 う た め 、 技 術 継 承 が 出 来 て い な い 。 品 質 不良 も 目 立 っ て き た 。
技 術 的 課 題 は 、 熟 練 技 能 者 の 技 術 伝 承 が 、 出 来 な くて も 、 品 質 を 確 保 す る こ と で あ る 。
( 3 ) 検 査 の 技 術 的 課 題
検 査 は 、 現 場 の 生 産 性 を 落 と す 。 段 階 検 査 は 、 検 査の 準 備 が 出 来 て か ら 、 検 査 員 を 呼 び 、 検 査 を 受 け る 。
そ の 間 は 、 施 工 を 止 め て い る 。
検 査 員 も 、 長 時 間 の 立 会 の た め 、 時 間 を 取 ら れ て しま う た め 、 発 注 業 務 等 の 別 の 仕 事 が 遅 延 す る 。 技 術 的 課 題 は 、 検 査 に 時 間 を 要 せ ず に 、 施 工 を 止 め な い こと で 、 生 産 性 を 上 げ る 事 で あ る 。
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2 . 対 応 策 と も た ら す 効 果 と 想 定 さ れ る 留 意 点
( 1 ) ( 1 ) の 維 持 管 理 ・ 更 新 の 技 術 的 課 題 を 選 定 す る 。
「 技 術 的 課 題 は 、 技 術 管 理 者 が 少 な く て も 、 老 朽 化 した 構 造 物 の 点 検 を 出 来 る よ う に す る こ と で あ る 。」 今 後 、 こ の 課 題 は 、 確 実 に 発 生 す る た め 、 選 定 し た 。
■上記の前置き文は要りません。
1 ) 対 応 策
・ 対 応 策 は 、 地 盤 構 造 物 の 情 報 を セ ン サ ー 化 し て 、 変位 変 状 等 情 報 を 集 約 化 し 、 セ ン タ ー に 異 常 を 知 ら せ るシ ス テ ム に す る 。 そ の こ と で 、 省 人 化 と 現 場 無 人 化 につ な が る こ と で あ る 。・ 対 応 策 は 、 ド ロ ー ン を 使 用 し たレ ー ザ ー 測 量 に よ る 3 D C A D 、 C I M の 活 用 に よ って 、 変 位 ・ 変 状 を 測 定 出 来 る こ と で あ る 。
2 ) も た ら す 効 果
・ も た ら す 効 果 は 、地 盤 構 造 物 の 点 検 を 人 の 点 検 か ら 、セ ン サ ー 化 に す る こ と で 、 省 人 化 で き る こ と で あ る 。
・ も た ら す 効 果 は 、 ド ロ ー ン に よ る レ ー ザ ー 測 量 に より 、 従 来 の 測 量 に 要 す る 時 間 よ り も 数 分 の 一 と な り 、時 間 短 縮 が 図 れ る 。 ま た 、 従 来 の 測 量 よ り も 、 人 数 が少 な く て 済 み 、 省 人 化 で き る こ と で あ る 。
3 ) 想 定 さ れ る 留 意 点
・ セ ン サ ー 化 を し て も 、 セ ン サ ー が 異 常 を 感 知 し た 場合 は 、 人 の 対 応 が 必 要 と な る た め 、 完 全 な 無 人 化 に なら な い こ と に 留 意 す る こ と 。 セ ン サ ー に よ り 、 地 盤 構造 物 の 全 体 の 状 況 が わ か る よ う に な る に は 、 技 術 の 進歩 が 必 要 で あ る こ と に 留 意 す る こ と 。
( 2 ) ( 2 ) 施 工 の 技 術 的 課 題 を 選 定 す る 。
「 技 術 的 課 題 は 、 熟 練 技 能 者 の 技 術 伝 承 出 来 な く ても 、 品 質 を 確 保 す る こ と で あ る 。」
今 後 の 人 口 減 少 に よ り 、 技 能 者 の 増 加 が 見 込 め な いた め 、 こ の 課 題 を 選 定 し た 。
1 ) 対 応 策
・ 対 応 策 は 、 I C T 建 機 の 活 用 を す る 。 M C ( マ シ ンコ ン ト ロ ー ル ) M G ( マ シ ン ガ イ ダ ン ス ) を 活 用 し 、省 人 化 ・ 無 人 化 す る こ と 。
・ 対 応 策 は 、 見 え る 化 の 活 用 に よ り 、 施 工 仕 様 ど お りに 施 工 し て い る か を 確 認 出 来 る よ う に す る 。 間 違 っ た施 工 方 法 に よ る 品 質 の 低 下 が な い か を 確 認 出 来 る よ うに す る こ と 。
・ 対 応 策 は 、 施 工 情 報 の 見 え る 化 に よ り リ ア ル タ イ ムで 提 供 し 、 検 査 を 簡 素 化 出 来 る よ う に す る こ と 。
2 ) も た ら す 効 果
・ も た ら す 効 果 は 、 I C T 建 機 の 無 人 化 施 工 現 場 に よる 熟 練 技 能 者 の 省 人 化 、 無 人 化 施 工 で あ る 。
・ 見 え る 化 に よ り 、 施 工 方 法 を 監 視 し 、 施 工 仕 様 に 足り な い 施 工 方 法 品 質 を 確 保 す る 施 工 が で き る 。
3 ) 想 定 さ れ る 留 意 点
・ 熟 練 技 能 者 が 、 さ ら に 少 な く な り 、 I C T 建 機 を 設定 す る 熟 練 技 能 者 が 不 足 す る こ と に 留 意 す る こ と 。
・ I C T 建 機 の 無 人 化 施 工 は 、 開 発 途 上 で あ り 、 実 用化 に は 、 期 間 が 必 要 で あ る こ と に 留 意 す る こ と 。
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問題
II−1−2現在,二次電池は産業用,民生用として広く利用されている。実用化されている二次電池の例を2つ挙げ,それぞれについて以下の項目を説明せよ。
(1)原理と特徴
(2)実用化例
解答
(1) 二次電池の原理と特徴
①NAS(ナトリウム硫黄)電池
原理:正極にナトリウムを、負極に硫黄を、電解質にβ−アルミナを用いた二次電池。
特徴:大規模の電力貯蔵(工場、病院等)に用いられる。高温条件(300℃前後)で運転しなければならない。反応:2Na+5SNa25S
②リチウムイオン電池
原理:正極にコバルト酸リチウムなどのリチウム化合物、負極に黒鉛などの炭素を、電解質に有機溶媒を用いた二次電池。
特徴:エネルギー密度が高い(ニッケル水素電池の2倍)、電圧が高い、メモリー効果がない、過熱や発火しやすいため、安全対策が必要。
■ここは、NAS電池よりも汎用的なリチウムイオン電池を先に挙げて、①と②を入れ替えてください。
そして、NAS電池などという最新技術でなくとも鉛蓄電池でも構いません。この答案で求められているのは、二次電池としての原理だからです。この答案では、
といった二次電池としての機能が説明されていません。それが出題者の要求ですので、それさえきっちり述べれば十分なのです。
(2) 二次電池の実用化例
①NAS(ナトリウム硫黄)電池
・自然エネルギー(太陽光や風力発電)の出力平準化のための蓄電池として用いられる。
・工場や病院などの停電時のバックアップ用電池として用いられる。
②リチウムイオン電池
・携帯電話やスマートフォン、ノートパソコン等のモバイルバッテリーとして用いられる。
・ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)のバッテリーとして用いられる。
問題
II−1−3 粒子(又は粉体)を取り扱う際に,液体中への粒子の分散状態が重要となる場合が多い。粒子の液体中への分散に関し,以下の問いに答えよ。
(1)分散状態の評価方法を2つ挙げて説明せよ。
(2)分散状態の制御方法(又は向上方法)を2つ挙げて説明せよ。
解答
(1)分散状態の評価方法の具体例
①ζ(ゼータ)電位の測定
ゼータ電位とは、粒子が溶液に接触したとき、粒子と対になるイオンにより、電気二重層が形成され、この時に生じる電位差をいう。この電位を測定することで、粒子の分散または凝集状態がわかる。
②粘度の測定
スラリーを流動させるためには、粒子間引力によって凝集した凝集塊を破壊する必要がある。このときの応力が大きければ粘度は高く、小さければ粘度は低い。よって、粘度を測定することで、粒子の分散状態がわかる。
(2)分散状態の制御方法の具体例
①イオン濃度やpHを変化させる
ゼータ電位を変化させるような添加物を溶液に加え、分散状態を制御できる。例えば、イオン濃度を変化させ、粒子表面のチャージ状態を変える。また、pHを変化させることで、粒子表面へのプロトンの脱着により、表面電位を変化させることができる。
②高分子等による立体障害の付与
粒子間引力によって凝集する粒子の間に、立体障害となる高分子などの添加物(例:PVA)を添加する。これにより、粒子同士の接触確率が低下し、凝集を抑制させることができる。
問題
II−2−1 あなたは,無機化学製品を製造するある工程の責任者として,製造工場に勤めている。最近提出された報告書によれば,従来通りの操業を続けているにも関わらず,抜き取り検査の成績が想定以上に向上していることが判明した。必要に応じて製品と製造工程を具体的に想定した上で,以下の問いに答えよ。
(1)あなたが,まず取るべき行動を複数の項目に分けて述べよ。
(2)(1)で最も重要と考える項目について,その手順を述べよ。
(3)今回の状況が生じた理由を究明するに当たり,留意点についてリスク管理を含めて説明せよ。
解答
(1) 製品の特定と解決のための検討事項
(1)-1 製品の特定:無機医薬品(硫酸バリウムX線造影剤)を想定する。新興国では、需要が増加しているが、医薬品の法規制は国によって異なる。このため、十分に対応できていないことが問題だ。
(1)-2 検討すべき項目:以下に検討項目を列記する。
①実現可能性の検討:輸出国の法令により、国内向けの製品を輸出することは不可能だ。輸出を可能にするため、実現性を検討する。例えば、輸出国の法令を調査し、問題の回避方法を検討する。
②スケジュールの見直し:現在の輸出計画を変更しなければならない。このため、スケジュールの見直しが必要だ。医薬品では、輸出国の監督官庁(日本の厚生労働省に相当する官庁)への承認手続きも必要であるため、余裕をもって計画すべきだ。
③経済性の評価:計画の変更により、開発費の増大、追加の設備投資や、原料費上昇の可能性がある。よって、市場規模を考慮し、経済性を再度評価すべきだ。
(2) 最も重要な検討項目と具体的な手順
(2)-1 最も重要な検討項目:①実現可能性の検討が重要だ。なぜなら、実現可能性を検討しなければ、輸出国で販売できないからだ。
(2)-2 具体的な手順:手順を以下に列記する。
①輸出国の法令調査:輸出国での販売承認を受けるため、輸出国の法令を調査する。例えば、医薬品や労働安全に関する法律(日本の薬機法、安衛法に相当)や、環境法令、化学物質の規制に関する法令などだ。
②原料の調達方法の選定:法令の調査結果を基に、使用が制限されない原料を決定する。また、原料の調達方法を選定する。
③製品品質の評価:製品の原料が変更になると、品質が変化する可能性がある。このため、製品品質を評価する。品質検査は、輸出国の法令に基づく評価・分析方法で実施する。
(3) 上記検討を進める際の留意事項
留意すべき事項を以下に列記する。
①法令以外に守るべき事項の存在:海外には、現地の文化や習慣など、法令以外にも守るべき事項が存在する。文化や風習を守らなければ、製品は受け入れられない。例えば、イスラム教の国では、豚肉やアルコールを口にしてはならないという戒律がある。このため、イスラム教の戒律を守ることが重要だ。ハラール認証を取得はその一つの手段である。
②「安全性」や「有効性」が変わらないこと:医薬品は、人体に投与されると体内に吸収され、効果を発揮する。このため、「安全性」や「有効性」が変わってはならない。医薬品原料の一部や添加物を変更すると、製品品質が変化することがある。例えば、硫酸バリウム造影剤の添加物「増粘多糖類」は、種類によってはアレルギーを起こしやすい。このため、注意が必
問題
III−1 グローバリゼーション(Globalization)の進む現代では,セラミックス及び無機化学産業においても国際的な競争力をより一層高める必要がある。このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)必要に応じて技術分野を具体的に想定し,競争力を高めるために検討すべき課題について多面的に述べよ。
(2)(1)で挙げた課題のうち,あなたが最も重要と考える技術的課題について,その課題を克服するにはどのような取組が有効か,あなたの提案を具体的に示せ。
(3)あなたの提案がもたらす効果を具体的に示すとともに,生じ得るリスクについても述べよ。
解答
(1) 想定する分野と競争力強化のための課題
(1)-1 技術分野の想定:無機化学製品やセラミックス部品を使用した製品を想定する。例えば、電気製品などだ。化学メーカーは、このような企業(電機メーカーなど)のグローバリゼーションをサポートする観点で、製品(素材)を開発することが重要だ。
(1)-2 課題:課題を以下に列記する。
①製品の付加価値向上:日本の企業は、ベンダー視点の製品開発を行うことが多い。しかし、海外企業には、日本の部品や素材を多く利用し、ユーザー視点の開発を行っている(例:アップル社のi phone)。UX(ユーザーエクスペリエンス;顧客の体験や感動)を重視した製品開発は、その代表的手法だ。
②コスト競争力の向上:新興国は、低コストでも品質の劣らない製品が製造可能になってきている。新興国は、豊富な資源や人口を生かし、安価なエネルギーや労働力を利用できる。このため、低コストな製品が生産できる。これに対抗するため、日本はIoTやIT技術を活用し、省力化や省人化を行うべきである。
③国内の諸問題への対応:国内には、様々な問題がある。例えば、少子高齢化による労働力不足、国内市場の縮小、地震や豪雨などの大規模災害への対応だ。また、企業倫理の問題(不正など)も存在する。このような国内の諸問題への対策を行いながら、グローバリゼーションに対応すべきである。
(2) 最も重要な技術的課題と解決のための提案
(2)-1 最も重要な課題:①製品の付加価値向上が重要だ。なぜなら、日本の製品(例:携帯電話のいわゆる「ガラケー」)は急速にシェアを落としている例が多いからだ。ここでは、(1)-2 ①で述べたように、UXを重視した製品開発を行う観点から述べる。
(2)-2 解決策:解決策を以下に述べる。
①IoTの利用:化学メーカーは、最終製品のユーザーとの距離が遠く、最終製品の顧客のニーズを掴みにくい。そこで、無機化学製品等を利用した部品や素材にセンサーを装着し、IoTを利用して顧客の属性や利用状況などの情報を収集する。このような情報を生かして製品開発を行い、中間製品の顧客に提供する。
②新たな開発プロセスの導入:UXを重視した開発を行う場合、顧客のニーズを常にフィードバックしながら開発を行う必要がある。このため、開発プロセスが複雑化する。製品寿命が短縮する中で、開発期間の長期化は避けるべきだ。そこで、クラウドウェブミーティングを利用し、顧客、営業担当、開発者が双方向に意見交換する。このように開発期間を短縮すべきだ。
③感性工学の導入:従来の開発手法では、具体的な性能など、開発目標が数値化されていた。しかし、UXは顧客の感動体験であるため、数値化は難しい。そこで、感性工学を導入し感動体験を数値化する。数値化の手法として、ウェアラブルセンサー(脳波計やモーションキャプチャー、アイポイントカメラなど)の利用が挙げられる。
(3) 提案がもたらす効果とリスク
(3)-1 効果:効果を以下に列記する。
①製品価値の向上:UXを重視し、顧客のニーズと企業のシーズをマッチングさせて製品開発を行う。よって、製品価値が向上する。特に、日本の高度な個別要素技術を利用した素材や部品(例:センサー)を使用することで、外国製品と差別化できる。
②経済性の向上:IoTやITの活用により、開発プロセスが短縮、効率化できる。このため、開発費を削減できる。また、IoTのネットワークを工場と接続することで、生産業務も効率化できる。
(3)-2 リスク:リスクを以下に列記する。
①サイバー攻撃を受けた時のリスク:IoTを利用することで、開発システムが全てネットワークで接続される。このため、サイバー攻撃を受けた場合、事業の停止など、大きな損害を受ける恐れがある。これを防ぐため、リスク管理を行い、発生確率と損失を低減する。全ての接続機器のリストアップと一括管理、管理者の設置、OSのアップデートなどの対策が有効だ。
②プライバシー侵害のリスク:IoTを利用した情報収集は、顧客のプライバシーを侵害する恐れがある。このため、個人を特定できないようにすべきである。例えば、暗号化技術の利用が挙げられる。
問題
Ⅲ−2 建設産業には,安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの,今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており,建設現場の生産性向上は避けることのできない課題である。そのため,国土交通省においては,産学官が連携して,生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるよう,i-Constructionに取り組んでいるところである。
他方,政府においては,一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するため,働き方改革にチャレンジしている。建設業は他産業と比べて厳しい労働環境にあり,小規模な企業の技能労働者を始めとして,働き方の改善が喫緊の課題となっている。
これらを踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で,建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ,その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題の解決に向け,あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ取り上げ,適用できる場面と具体的な利用方法,及びそれによって得られる改善効果を,事例を挙げながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるため,雇用や契約制度等に関して改善すべき事項を取り上げ,あなたの考えを述べよ。
音声ガイドによるコーチング指導内容(17分9秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
1. 働き方改革を考える上で、建設業が抱える慢性的
な課題を3つ挙げ、その背景も含めて説明する。
(1) 課題:技能労働者不足
近年の建設投資の減少により、建設企業が倒産するなど、技能労働者の離職が進んでいる社会的背景により、技能労働者の不足が慢性的な課題となっている。
(2)課題:建設産業の将来を担う若い担い手不足
技能労働者の減少が進む中、高齢化が進んでおり、今後大量の離職が見込まれる。又、建設産業の処遇が進んでいないことなどから、若者が入職を避けるようになっていること。これらの背景により、建設産業の将来を担う若い担い手の確保が喫緊の課題である。
(3)課題:急増する老朽化施設の維持管理・更新
今後、高度成長期に多く作られた施設・インフラ等が急速に老朽化する中、現在の事後保全型の維持管理方法では、対策が大掛かりで多大な費用を要するため、建設投資が縮小し、建設産業の労働人口が減少する中、限られた人材・財源で効率よく社会資本の品質確保と維持管理をしなければならない。これらの背景より、今後、我が国の経済発展に資する社会資本の効果的な整備を図るため、建設生産システムにおける生産性の向上を推進することが喫緊の課題である。
2. 問題(1)で挙げた課題解決に向け、施工計画・
施工管理を専門とする技術士として有効と考えるĪ−Constructionの方策を1つ取り上げ、適用できる場面と具体的な利用方法、及びそれによって得られる改善効果を、事例を挙げながら説明する。
(1) Ī−Construction方策:自動化施工技術
(2) 適用場面:
急傾斜地での土工事施工や橋梁の点検、維持管理等の人力では施工の難しい場所に適用する。
(3) 具体的な利用方法:
① 急傾斜地での土工事:3次元データ等によって
ICT建設機械を自動制御して無人化施工を行う。
② 橋梁の点検、維持管理:ドローンなどによる3次
元測量や写真撮影、自動制御による点検、補修を行う。
(4) 得られる改善効果:
補助的な労務量の減少や、仮設業務の減少により生産性が向上し、1日当たりの作業量が向上する。又、自動化施工により労働災害の削減にも寄与すると考える。
3. 建設部門の働き方改革を効果的に進めるため、
施工計画・施工管理を専門とする技術士として雇用や契約制度等に関して改善すべき事項を取り上げ、考えを述べる。
(1) 改善事項:技能労働者の処遇改善
① 若者にとって魅力ある建設業を目指し、処遇改
善を徹底する。そのために、現場の労働者に適切な賃金水準が確保されるよう、労務単価の上昇分が確実に技能労働者に支払われるように取り組む。又、社会保険加入促進に取り組む必要がある。
② 建設業における休日の拡大を図る。若者が働き
やすい職場づくりのため、適正工期の確保等を通じて週休2日をはじめ休日の拡大実現に取り組む必要がある。
(2) 改善事項:契約条件の改善
① 契約工期についても、労務の集中しないよう平準
化させ、週休二日を前提とした工期設定に、発注者への理解を含めて取り組む必要がある。
音声ガイドによるコーチング指導内容(17分24秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
II−1−2 鋳塊のマクロ組織を構成する組織とその形成機構を簡潔に述べよ。また,鋳塊の結品粒微細化手法を2つ挙げ,その具体的な方法と微細化のメカニズムを述べよ。
解答
鋳塊のマクロ組織について
チル晶、柱状晶、等軸晶となる。各々の働きは以下のとおりとなる。
チル晶―溶湯を鋳型に注入して鋳型に接した部分から冷却されて、微細な結晶核が形成されてチル晶と呼ばれる。
柱状晶―チル晶で液相熱流方向に成長し続けてデンドライトからなる柱状晶を形成
等軸晶―鋳物の未凝固溶湯中から温度の低下とともに等軸晶が形成される。
ダイカスト法
精密に作られた金型に溶湯を高圧で注入する方法である。溶湯圧入装置が溶湯保持炉中になるか否かでホットチャンバー方式かコールドチャンバー方式に分けることができる。スリーブに注入された溶湯は高速で射出されて金型に圧入される。金型は冷却効果が大きいのですぐに凝固して組織が微細化される。
遠心鋳造法
遠心力を利用して鋳造する方法で鋳型(横型、縦型)を回転させて金属を鋳込む方法である。通常と比較すると薄肉のものができる。
遠心力で組織(介在物など)が微細に細かくなる。
結果両方法とも微細化されることによって強度も向上する。
講評
この答案は、ほとんどご指摘することがありません。模範答案に近いです。よくがんばりました。
II−1−4 高張力鋼の溶接で生じる遅れ割れ(低温割れ)について,その原因を3つ挙げ,それぞれの原因毎に防止対策を記述せよ。
溶接低温割れについて
<状況>
溶接後、溶接部が200℃以下になったときに生じる。場合によっては数日経過してから割れるときもあり遅れ破壊とも呼ばれる。
<割れの状況>
粒内の割れによる。
■ここまでの記述は問題文の前提条件と重複した前置きとなりますので書く必要はありません。求められているのは原因ですから単刀直入に書くようにしてください。
<原因>
① 水素の影響――水素の侵入による脆化
② 硬化組織
③ 硬化部に一定の応力がかかる
<対応策>
① 水素の脆化に関して
基本的には水素源を断つ。溶接棒の管理を水分など影響がないところに管理する。
② ,③ 硬化組織及び硬化部に一定の応力がかかることに関して
基本的には予熱を必ず行う。
予熱の設定には拘束度を用いて行う。
また、多層熔接の場合パス間温度や後熱温度も管理して行う。
パス間温度 200〜400℃
後熱温度 720〜760℃
■こうやって2つをまとめてしまうと、出題者が要求している3つの原因を挙げたことになりません。要因を②③のに分離してそれぞれ説明して下さい。
問題
Ⅱ−2−1 プレス加工や鍛造において良好な品質や生産性を確保する上で,潤滑処理は極めて重要である。潤滑処理に関する以下の問いに答えよ。
(1)潤滑処理が塑性加工に果たす役割について述べよ。
(2)実際のプレス加工や鍛造では,加工毎にその加工に適した潤滑処理が施される。代表的な加工法を2つ挙げ,その加工に用いられる潤滑処理とその特徴を述べよ。
(3)それぞれの潤滑処理の問題点とその問題点を克服するための技術提案を述べよ。
解答
塑性加工のおける潤滑材の役割を 絞り加工、鍛造、圧延について記する。
■この前置き文は、問題文で求められていることそのものですので不要です。解答として書くべきことを単刀直入に表現してください。
(1) 絞り加工
基本的に絞り加工における潤滑材の役割は成形性の向上となる。潤滑油の適用以外に成形性の向上のためにランクフォード値の良好な材料を使用する。パンチラジアス部の強化やフランジ部の加熱などによる再絞り加工などの対応もある。しかし、それだけではすべて絞り加工はすべて良好にならないので潤滑材による成形性の向上に対する重要性は大きい。
■「役割」を書いているのは最初の文だけで、後の文は評価や内容に過ぎません。
(2) 鍛造加工
熱間鍛造の場合、工具を冷却して寿命向上が求められる。
温間の場合、成形性、潤滑性、離形性向上が求められる。使用される潤滑材として黒鉛系が主となる。
●冷間鍛造の場合
摩擦係数が低く耐焼き付き性向上に優れていることが求められる。また表面平滑度に優れていることがあげられる。
潤滑材として鋼ではリン酸系のボンデ処理を適用している。
(3) 圧延加工
熱間圧延と冷間圧延がある。
熱間圧延―ロールへの負荷軽減を小さくして摩擦係数を小さくすることが上げられる。あまり小さくなるとみこみスリップが発生するので注意を要する。現在の潤滑油はエステル系が用いられている。
冷間圧延の場合、熱間圧延と同様にロールへの負荷軽減を小さくして摩擦係数を小さくすることが上げられそのほかにロール傷の低減、表面の品質向上が上げられる。潤滑材としては今後エステル化が検討されている。
潤滑材の特徴と問題点(技術的提案を含む)
●鍛造について
冷間鍛造の場合リン酸系のボンデ処理は産業廃棄物になるので廃棄場所がなくなってきているので至急対応しなければならない。そのためには新規冷間鍛造の対応も必要になる。一例として板鍛造もある。
熱間では黒鉛系の潤滑油を使用するので環境の点から非黒鉛系を検討していかなければならない。
圧延の圧延潤滑油に金属石鹸のよごれは表面傷を防ぐために多量の熱間圧延油が必要なためにコストアップとなる。
対応策として長寿命圧延油の開発やろ過方法の開発が重要となってくる。
講評
試験答案ですので、問題文の要求に応じて回答を一つ一つ問題番号に対応付けながら書いていくことが必要です。問題文とは別に自由に書き進んでしまうと、答案形式としてふさわしくなくなってしまいますので、解答内容が違うという評価をされて大幅減点される危険性があります。
問題
Ⅲ−1 団塊の世代が定年を迎え熟練技術者が激減していくなか,技術・技能伝承についての対応がかねてから叫ばれている。また,近年では生産拠点のグローバル化への対応のため,海外拠点への技術・技能伝承の重要性も増している。以上の背景を踏まえ,以下の問いに答えよ。(1)技術・技能伝承を円滑に実施する上での,貴社の問題点を列挙せよ。(2)上記で挙げた課題の内,あなたが重要と考えた課題を2つ選び,その解決策を述べよ。(3)あなたの解決策を実施する上で生じるリスクや,それを回避する施策について広い視点から述べよ。
解答
1. 技術、技能を伝承する上の問題点について
現在の当社の問題点を記する
(1)まがり矯正技術の習得
普通ドリルのようにL/Dの小さい材料は焼き入れしても曲がらないので問題がないがL/Dの長い材料の場合矯正しないと製品とならない。曲がりを直すのは個人の能力に起因するところが大きく技能伝承のためにかなり苦労している状態です
(2)取りしろ削減するための溶接技術の確立
刃材料と柄材料を溶接するとき両方とも生材を使用する溶接後の曲がりや熱処理後の曲がりが含めると2㎜ほどあり研削工程において非常にコストアップとなっていた。そのために新しい溶接技術を確立してコストダウンを達成しなければならない。
(3) 刃立てや溝切りなどの金属加工の技能確立
標準的な形状の場合形状も決まっているので設備での対応によって可能であるが一品一様で異なる製品の場合過去のデーターを参考にして加工を行わないとできない。その技術はやはり人に起因するところが多いので技能確立が問題である。
(4)ソルト焼き入れより真空焼き入れへの移行
ソルト焼き入れは人が目でみて確認することが多いがまたソルトは環境に悪影響を与えることから早急に代替となる焼き入れの検討をすすめていかなければならない。そのために真空焼き入れにしていかなければならない。しかし真空焼き入れになると設備によるところが多いので両方となると技術習得がかなり難しい。
2.対応策について
(1)曲がり矯正技術の向上について
CAE解析技術を適用する。どれだけ矯正すればよいかをデーター蓄積してどのような材料がきても力のかかり方で矯正の度合いがわかる。これによって矯正にかかる時間も大幅に短縮でき、曲がり量も最小限度でおさえることができてコストダウンとなる。
■CAE解析技術は店提案として良い内容ですが、しかしこの技術がどのように問題を解決して、時間短縮や性能の向上に貢献するのか、その原理やプロセス、すなわち根拠について説明する必要があります。
(2)取りしろ削減するための溶接技術について
生材同志の溶接は取り代が多かったので、刃材を焼き入れ、柄材料を生材で溶接する技術を確立した。そのとき加圧条件、加熱条件を検討した。刃材が硬く 柄材料が軟らかいので変形抵抗が違うので条件を確立が困難であった。また刃材のほうが熱処理品であるので加圧して熱が発生したとき残存している残留オーステナイトがマルテンサイトに変態して割れが発生して問題があった。しかし刃材料の熱処理品をサブゼロ処理して完全にマルテンサイト化して割れを削減することができて技術として確立することができた。最終的には溶接後強度評価をして問題がないことを確認した。
■残念ながら上記の段落では何の課題をどのように説くのか、説明内容がよくわかりません。
(3)リスクとして設備導入などの点がコストアップとなるので対応策として海外での対応がある。
知的財産が弱い地域を中心に契約した技術以上のものが流出するおそれがある。
部品加工技術の浸透させるために教育をおこなっていくが発展途上国の場合現地従業員あまり浸透しないのを念頭においとおかなければならない。
また大きなリスクになるので先進国の特許技術を侵害していないか必ず調査しておかなければならない。問題がないときは必ず特許出願してリスクを回避してどこまでの技術を現地で行うかを考えておかなければならない。
また、海外で生産するときは下記のことに注意しなければならない。部品特性に必要な工程能力指数を算出して必ず量産試験を行って問題がないことを確認しておく。
■上記の段落では同じことが重複しています。
<技術レベルの確認>
材料を現地の素材を使用する場合、成分、組織を調査して国内との比較をして問題がないことを確認する。
<納期対応>
最終的に技術的な対応に問題なければ納期としても国内での場合と同等以上であるか確認する。
■リスクが何であるか、求められていることに対する答えがありません。チェックや対策法を書けばよいと誤解されているみたいです。
講評
的確に点を取れる解答の書き方を学ばれて、楽勝で合格されることをお勧めいたします。
(1)音声ガイドによるコーチング指導前半(12分51秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
(2)音声ガイドによるコーチング指導中盤(13分11秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
(3)音声ガイドによるコーチング指導後半(21分28秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
1.留意すべき事項とその理由
(1)打込みについて
寒中コンクリートとして取り扱うことから、コンクリートの打込み温度が5℃以上であることに留意しなければならない。その理由は、5℃を下回る場合は、コンクリートの初期硬化中、異常凝結し強度不足になるからである。
■ 書き方がくどい、前置きです。
(2)養生について
現場における寒中コンクリートとして取り扱うことから、コンクリートの初期養生対策に留意しなければならない。その理由は、適切な初期養生対策を行わなければ、表面の異常凝結や凍結から、ひび割れが発生し、耐久性が低下するからである。
■同じことがダブっています
2.取るべき対策
(1)打込みについて
打込み温度が5℃を下回る場合は、コンクリート材料である骨材や水の加温を行う。
(2)養生について
初期養生対策として、コンクリート打設後、構造物全体をシート養生する。また、養生中はシートの中で10℃以上保つために練炭を設置する。
さらに、脱枠直後に外気温とコンクリート温度との差が大きい場合、温度応力ひび割れ発生が懸念されるため、工程が許す限り脱枠時期を遅らせる。
問題 Ⅱ−1−7
コンクリート構造物の乾燥収縮ひび割れの発生メカニズムを説明せよ。また、その対策としてコンクリートの低収縮化するための材料または配(調)合上の手法を2つ挙げ、その概要と留意点を述べよ
解答
1.乾燥収縮ひび割れの発生メカニズム
乾燥収縮ひび割れは、コンクリート中の水分の長期的な減少による収縮変形を拘束したときに生じる引張応力で発生する。
2.低収縮化するための手法とその概要と留意点
(1)水セメント比の低減化(配合上)
水セメント比を低減化することにより、コンクリート中の水量を低減し、コンクリートの低収縮化を行う。
留意点としては、水セメント比を低減化すると、コンクリートのワーカビリティーを低下させる。
■同じこと、繰り返し。
ワーカビリティーを確保するため、高性能AE減水剤を添加して水セメント比を低減化し、低収縮化を行う。
(2)膨張材の使用(材料)
膨張材を使用することにより、コンクリートの低収縮化を行う。
留意点としては、収縮量と膨張量が均等になるように、膨張材の混入量を決定することが重要である。
■これは原則であってどうやったら確実に出来るが求められています
問題 Ⅱ−2−4
設計が完了しているコンクリート構造物において、施工に着手する段階で、施工工期を短縮する必要から、主要部材のプレキャスト化に取り組むことになった。しかしながら、プレキャスト化においては、在来工法時に比べて検討すべき項目が多く存在する。この業務を遂行するに当たり、コンクリート構造物を1つ想定して、下記の内容について記述せよ。
(1)工期短縮のために想定した構造物のプレキャスト化の範囲と、プレキャスト化計画時に検討すべき事項
(2)「設計者」若しくは「施工者」の立場から業務を進める手順とその内容
(3) (2)で解答した立場において、業務を進める際に 留意すべき事項
解答
1.プレキャスト化の範囲と検討すべき事項
(1)プレキャスト化の範囲
プレストレストコンクリートT桁道路橋を想定し、プレキャストの範囲として、主桁のプレキャスト化を挙げる。
(2)検討すべき事項
①現場重機・運搬車搬入スペース確保の検討
プレキャスト化した主桁を現地に搬入することから、運搬路の計画、また、プレキャストを現地にて組み立てることから、レッカーなどの重機設置スペースを検討する。
②プレキャスト重量の検討
運搬車やレッカーの能力から、プレキャストの重量を検討する。
■施工(仮設計画)ではなく鋼構造の内容がほしいです。
③接合部の検討
プレキャストの接合部は、構造上弱点になるので十分に耐力を確保できるよう検討する。
2.設計者の立場から業務を進める手順とその内容
(1)プレキャスト分割数の検討
支間中央の最大曲げモーメント位置に接合位置をさけるため、プレキャストの分割数は、奇数(N=3,5,7)とする。
(2)仮置き・運搬時におけるプレキャストの検討
プレキャスト部材は、RCであることから、仮置き・運搬時にプレキャスト下面に有害なひび割れを発生させないために、太径鉄筋を配置検討する。
(3)接合部の検討
接合位置において、主桁接合時、死荷重時、設計荷重時において応力検討を行う。さらに、接合キーの配置を検討する。
■手順というには断片的過ぎませんか。1〜3をつなげてもPC設計の全体形が見えません。
3.業務を進める際に留意すべき事項
(1)プレキャストの重量
プレキャストの運搬車やレッカーの能力、施工性を考慮して、プレキャストの重量を30t以下、長さ10m以下とする。
■施工のことです
(2)接合部における設計荷重時の検討
設計荷重を超える活荷重が載荷された場合、接合部にひび割れが集中して生じる可能性があるので、接合部における設計荷重時の検討では、活荷重を1.7倍した値で応力検討する。
(3)接合部の耐久性確保について
接合部の耐久性を確保するため、劣化因子の進入を防止するため、接合面にはエポキシ樹脂系接着剤を塗布するよう設計図面に明記する。
■部分的なことではなくPC仕様の全体に関することはありませんか。
解説
施工関係のことがたくさん書かれており、鋼コンの答案といえるか疑問です。鋼構造コンクリートの技術が中心になるように表現してください。
問題 Ⅲー4
高度成長期以降に集中的に整備された社会インフラは老朽化が進展し、維持管理橋の問題が顕在化している。一方、これに関わる予算や労働力といった資源の投入は今後も困難なことが予測されている。このような状況を考慮し、以下の問に答えよ。
(1)コンクリート構造物の維持管理の負担を軽減するため、検討すべき項目を多様な観点から記述せよ。ただし、地震などの災害による非常時の維持管理は含まないものとする。
(2)上述した検討すべき項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示せよ。
(3)あなたが提示した解決策がもたらすこうかを具体的に示すとともに、想定されるリスクやデメリットについて記述せよ。
解答
1.維持管理の負担を軽減するための検討すべき項目
わが橋梁分野でいえば、2030年には建設後50年を超える橋梁が全体の4割を超え、一斉に維持管理・更新時期を迎える。維持管理の負担は、今後増え続けるばかりである。
以下、維持管理の負担を軽減するための検討項目を挙げる。
■不要な前置きです。論文ではなく答案ですから、単刀直入に答えを書いてください。
(1)事後保全から予防保全への転換
現状は、コンクリート構造物が劣化や更新時期を迎えてからの事後保全であり、高コスト構造・長期視点無く、維持管理の負担は大きい。維持管理の負担を軽減するためにも予防保全的対応、例えばアセットマネジメントの推進を検討するべきである。
■目的と方策の関係になっていません。提案が広義すぎてここでの相応しい提案ではないでしょう。
(2)民間活力を用いた維持管理
全国の自治体のコンクリート橋梁で通行規制している数は2000橋を超える。しかし、自治体だけでこれらを維持管理するには負担が大き過ぎる。民間活力を用いた維持管理を行うべきである。例えば、PFIやNPO法人の橋守、地域住民と共同で維持管理を行うべきである。
■負担の分担を言うだけで、軽減に向かう前向きな提案になっていません。
(3)点検・調査の効率化
コンクリート構造物の維持管理負担を軽減するためには、点検・調査作業の効率化が検討項目である。
2.技術的課題と解決策
1の(3)で挙げた点検・調査の効率化を挙げ、技術的課題と解決策を述べる。
現状の点検・調査方法は、目視点検が主であり、点検者の劣化認識度に対する力量差異から、その後の診断、補修・補強選定に差異が生じる。また、点検・調査記録の様式は、全国各自治体でばらばらであり、非効率である。これにどう対応するかが課題である。
■このことが真の問題ではないでしょう
解決策として、以下を挙げる。
①ICTを用いた自走式点検調査車の開発
電磁波レーダーやデジタルカメラを装備した自走式点検調査車を開発する。点検・調査の精度向上やスピードアップにつながると考える。トンネルコンクリート等の点検・調査作業などに適用できる。
②点検・調査記録様式の統一化
点検・調査記録様式を全国の自治体間で統一化することにより、データベース化しやすくなり、維持管理の効率化につながっていくと考える。
■本質的ではない内容です。
3.解決策がもたらす効果とリスクやデメリット
(1)自走式点検調査車の開発について
①効果
自走式調査車の普及により、道路交通規制や点検・調査するための仮設足場が不要となり、維持管理コストの軽減につながっていく。
②リスクやデメリット
自分の目で確認しないため、現場特有の環境条件や隣接構造物の影響を見過ごし損傷原因を追及できず、適切な補修・補強を実施できない可能性がある。自分の目で現場を見ることは重要である。
■本質的ではない内容です。
(2)点検・調査記録様式の統一化について
①効果
各自治体間で点検・調査の記録内容を共有・蓄積できるため、その実績情報が活用されやすい。
また、記録様式に劣化状況を写真でグレード別に記載し、点検・調査結果に対してチェックするだけで、点検・調査作業の効率化につながっていくと考える。
②リスクやデメリット
点検・調査の記録をデータベース化しても、それを活用する技術者の力量向上がなさらなければ、データは埋もれるだけである。我々技術者は、コンクリート構造物の維持管理について常に勉強し続けなければならない。
■心構え?リスクでもデメリットでもありません。
解説
鋼コン技術士として述べるべき視点が定まっていない感じです。このため施工や心構え、個人的考えに発散しています。答案の主題を捉えて、技術士として言うべきことをしっかり述べてください。
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解答
1.工業化検討への4つの観点について
(1) 新素材の特性
研究部門で新素材を作る場合、少量で作られることが多い。一方、工業化する場合は、一度に大量に作られる。このとき、個体間に機能のバラツキが生じてしまうという問題点が発生する。従って、個体間の品質の安定化が課題である。
■問題文では新素材の特定を求めていますが、書かれているのは一般論に過ぎません。
(2) 新素材のコスト
前述したとおり、工業化の場合、個体間に機能のバラツキが生じてしまうという問題点がある。このとき、基準値に入らない場合は、不良品になってしまうため、製造コストが上昇してしまう。従って、工業化の場合には歩留りの向上が課題である。
(3) 安全性について
工業化に伴い、危険な装置や物質を使用する場合が多い。このような問題点に対しては、リスクアセスメントに基づいて、工業化を進めていけばよい。
■「リスクアセスメントに基づいて、工業化を進めていけばよい」その通りです。ここではこのような書き方ではなく、具体的にどうリスクアセスメントに基づいて、工業化を進めるかの提案が求められています。このような提案から逃げた書き方だと答えになりません。場合によっては、消極的(=能力不足)という評価を下されかねません。
(4) 環境対策について
前述したとおり、新素材の製造にあたり、危険な物質を使用することがある。この場合、危険物質の漏洩対策を実施すればよい。しかし、その危険物質が環境に与える影響が大きい場合には、代替物質の検討も選択肢の一つであろう。
■環境対策として当然誰もがやるべきこと。技術士の提案に値しません。
2.新素材工業化に向けたコスト低減
工業化に向けたコスト低減としては、①歩留りの向上、②適切な製品機能(品質)を挙げることができる。
■ここは問題文では1つと指定されています
(1) 歩留りの向上
前述したとおり、工業化での大量生産は、品質バラツキが発生する。これを改善するためには、各工程のCpkを向上させることが必要である。具体的には、各工程の不良項目と発生率から、Cpk向上への課題を抽出する。その後、その課題への対策に対して、PDCAサイクルを行いながら、目標を達成していけば良い。
(2) 適切な製品機能(品質)
必要な品質(新素材の機能)は、顧客によって違う場合が多い。従って、工業化を進めるに当たり、顧客に製品評価をしてもらいながら進めていけばよい。その結果、低コストで良質な製品提供が可能となる。
3. コストと安全性の問題について
品質の安定化のために、危険物質を使わなければならない場合がある。安全性の確保の観点から、暫定対策と、長期的な対策について以下に述べる。
(1)暫定対策
リスクアセスメントを実施し、作業者への負荷低減や漏洩等の対策を徹底的に行う。この場合、コスト増となるがやむを得ない。
(2)長期的な対策
危険物質に代わる代替物質の開発や、危険物質を使わない工程開発などを挙げることができる。このように、低コストと低リスクを同時に達成していく。
■この3の解答は「(2)で述べた検討①歩留りの向上、②適切な製品機能(品質)を進めるに当たり、 (2)で選んだ観点に影響を及ぼすと考えられる他の観点を挙げ,互いの関係及び検討の進め方」を述べるものですが、まったく意味が通じません。
解説
問題文の趣旨が読み取れていなくてとても残念です。問い(3)がもっとも難しくてこの難関が答案の焦点となっています。
(2)で述べた検討を進めるに当たり、 (2)で選んだ観点に影響を及ぼすと考えられる他の観点を挙げ,互いの関係及び検討の進め方について説明せよ。
とはどういうことか。
(2)で述べた検討とは、ここでは「歩留りの向上」と「 適切な製品機能」でしたから、それらを進めるに当たり、その2つに影響を及ぼすと考えられる他の観点を挙げなければなりません。 答案で書かれているのは,危険物質とその暫定対策、長期的な対策ですがこれでは意味が通じません。「歩留りの向上」と「危険物質」の関係といわれてもあまりイメージできません。答案ではただ「危険物質」とその検討の進め方が述べられているだけです。
そもそもなぜ、(2)で述べた検討を進めるに当たり、 (2)で選んだ観点に影響を及ぼすと考えられる他の観点を挙げ,互いの関係及び検討の進め方について考えなければならないのかです。これは簡単です。
自身の提案に対して、違う観点から見て、多角的に検討して整合を図って解決しなければならないということです。技術士試験ではそのような専門家としての資質、能力を測っているということなのです。
近い将来に,首都直下地震,東海・東南海・南海地震の発生が予想されているが,こうした大規模地震災害に備える上で,道路に関わる技術者の立場から,以下の問いに答えよ。
(1)大規模地震災害が発生した場合における道路の役割について,東日本大震災の経験を踏まえ,多面的に述べよ。
(2)(1)で述べた役割のうち,1つを取り上げて,それを果たすための課題及びその解決策について述べよ。
(3)(2)で述べた解決策について,実効性をより高める上での留意事項を述べよ。
音声ガイドによるコーチング指導(19分22秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
1.背景
わが国は、4つのプレートがひしめき合い、1999年から2008年までのマグニチュード6.0以上の地震のうち約20%が日本で起きたものである。
今後、首都直下地震・東海・東南海・南海地震の発生も確実視されており、国民の豊かな暮らしと安全・安心な生活を確保する必要がある。
以下に、地震災害時における道路整備のあり方について私の考えを述べる。
■この最初の段落は求められていないことなので不要です。消極的(関係ないことを書いて答案を埋めている)という印象を与え、減点されます。
2.災害時の役割
東日本大震災においては、早期に復旧された東北縦貫自動車道から、いわゆる「くしの歯作戦」にて、横断道路を使用し、緊急物資の輸送や救急救命活動を行っている。
また、仙台東部道路や三陸自動車道の一部盛土では、津波一時避難所として機能している。
■役割の記述があいまいです。
緊急物資の輸送救急救命活動津波一時避難所述べられているのこれら3つですが、役割として明記されていません。
3.ネットワークの課題
3-1脆弱な道路
地震災害時に道路が寸断された場合、緊急物資の輸送や救急救命活動ができないことから、今後の道路整備が課題である。
3-2ミッシングリンク
高規格幹線道路の整備目標は、14,000kmであるのに対し、現在は約70%にあたる約10,000kmが共用されている。
今後のミッシングリンク解消が課題である。
3-3全国一律な設計手法
現在、盛土における設計は全国一律による仕様設計によるものが多い。
したがって、地域や地形に合っていないことから、今後の設計手法が課題である。
■ここでは(1)で述べた役割のうち,1つを取り上げて,それを果たすための課題及、解決策ですが、(1)で述べた役割のどれかわかりません。また(1)役割との関連性もわかりません。ここは自身で調べて暗記していた3.ネットワークの課題を書き出したものと考えます。
4.解決策
4-1広域道路ネットワークの構築
2004年の新潟県中越地震では、広域道路ネットワークが形成されていたことにより、磐越道と上信越道が、地震により通行止めとなっていた関越道の迂回路として緊急物資の輸送や救急救命活動などの機能を発揮した事例である。
今後はこのような緊急輸送道路ネットワークが、リダンダンシーの確保の観点から全国で構築することが重要である。
4-2ミッシングリンクの解消
今後の道路整備にあたっては、PI手法(住民参画)を用い、選択と集中の観点から事業を推進する。
仙台東部道路や三陸自動車道の一部盛土では、津波一時避難所として機能を発揮している。
このように、B/Cが1.0以下であっても、代替性など防災機能も考慮して整備する必要がある。
また、地域住民や関係機関団体にアカウンタビリティを十分に果たすことが必要不可欠である。
■4-1と4-2はほぼ同じことが述べられています。
4-3性能設計の導入
「性能設計」とは、設計された構造物が要求性能を満足していれば、どのような構造形式、材料、設計手法、工法などを用いても良いとするものである。
2009年の駿河湾における地震では、東名道の盛土が崩壊し長期間の通行止めを余儀なくされている。
今後は、地形や地質及び発生土にあった土構造物を構築することが重要である。
■(1)に対する課題及びその解決策として、直接は関係性が薄いです。
5.実効性を高める留意事項
・アクセス道路の整備
高規格幹線道路の整備が進みミッシングリンクが解消されても、それに接続する道路が整備されていなければ、緊急物資の輸送や救急救命活動が十分にできない。
そのため、アクセス道路の整備をローカルルールなど使用し早期に実現する。
■ここは4-1、4-2に書かれたことの前提事項です。「実効性を高める留意事項」とはこういうことではありません。対策を行ううえで、更に性能を高めること、あるいは対策効果が得られない場合に、それを改善して確実に効果を得られるための更なる対策です。
また、高速道路には本線に直接接続し、大型車も通行可能なスマートICを設置する。
これを実行することにより、ネットワークの構築が十分に行われるとともに地域住民の安全安心な暮らしの確保が可能となる。
解説
道路の問題は難問化しています。この問題では、「近い将来に,首都直下地震,東海・東南海・南海地震の発生が予想され・・」とあり、(1)では「道路の役割について,東日本大震災の経験を踏まえ,多面的に述べよ。」とあります。
「具体的にどの地域の道路を対象としているのか」、また「東日本大震災の経験を踏まえて」どう提案すべきかが求められています。
そのほか、言うべきことが、あいまいな文体の結果、十分主張されていない感じです。
技術士試験では、出題者が求めることを単刀直入に述べていく必要があります。暗記した内容を書き出しているだけでは合格は難しいと思われます。
本研究所では、こうした出題意図に答えるような解答法を指導しています。その指導方法として、音声ガイドによる個別コーチングが役立っています。この答案でも19分をかけてコメントを述べています。ぜひお聞きください。
音声ガイドによるコーチング指導(18分36秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
解答
1.多層ろ過池について
多層ろ過は、粒径及び密度の異なる複数のろ材で構成されたろ層を有するろ過であり、二層ろ過や三層ろ過がある。二層ろ過の場合、その多くは、ケイ砂の上に粒径が大きく密度が小さいアンスラサイトの充填を行う。(三層の場合には、ガーネットを用いる)。
ろ層上部に大きな空間を有することにより、懸濁物質の抑留効果を高めているなどの特徴を有する。
2.砂単層ろ過池と比較した特徴(二層ろ過の特徴)
①高いろ過速度での処理が行える。
単層ろ過のろ過速度120m/日~150m/日に比べ、多層ろ過の場合には、240m/日と約倍近い速度での処理が行える。これにより、ろ過面積を半分程度とすることができ、ろ過施設の省スペース化が可能となる。
②ろ過継続時間の長期化が行える。
ろ過層上部のろ材の空間が大きく、濁質等の懸濁物質の抑留が単層ろ過より多くおこなえるため、ろ過抵抗の上昇が抑えられる。このため、逆洗頻度を低減することが可能で、ろ過継続時間を長くすることができる。これにより、逆洗排水の低減も行え、水の有効利用等効率的な運用が行えるようになる。
③ろ材の流出に留意が必要。
密度の小さいアンスラサイトを使用するため、逆洗による流出が発生しやすいことから逆洗流量等に注意する必要がある。
■この答案はよく書けています。言うことはありません。
問題 Ⅱ-1-4
給水区域内で確保すべき水圧とその確保のための管網設計における留意点について述べよ。
解答
1.給水区域で確保すべき水圧
給水区域内のすべての給水栓において確保すべき最低の水圧は0.15MPa以上とされている。一方、配水施設等の保護等より水圧上限として0.74MPaが定められている。このことから給水区域で確保すべき水圧は、0.15MPa以上0.74MPa以下となっている。
この必要な水圧が確保出来ているか確認する方法の一つとして管網計算があり、本計算を確実に行い、管網設計を実施することが重要であると考える。
■問題文で求められていな、不要なコメント、評価です。
2.管網設計における留意点
①現在の給水区域での計算実施
現在の給水区域において、著しく水圧が他と異なる区域がないかの確認を行い、全ての区域で安定した水圧が確保できるような設計を行う。
②今後の給水人口や区域内の開発動向の確認
将来的に給水区域内で開発が行われ給水量が増加した場合、給水末端で必要給水圧力が確保できなくなるおそれが考えられる。将来動向を踏まえ、給水主管の口径を決定するなど、全ての条件において、給水圧力を確保できるようにすることが重要である。
■当たり前に近い前置きです。「いつも給水圧力を確保する」とは最低限のことで、それをどうやって実現するかの方針が求められています。
また、人口が減少していく場合、配水拠点付近では、給水圧力が増大してくるおそれがあるため、それに対応することを想定しておくことも必要と考える。
管網設計を行う場合には、給水区域全域で常に必要な水圧が確保できるよう検討を行うことが重要である。
■このようなどこでも当てはまる一般論ではなく、「管網設計における留意点」に焦点合わせて具体的に述べるように。
問題 Ⅱ-2-1
我が国では,高度経済成長期以降に下水道整備が急速に進められ,管路施設 や処理場等の下水道ストックが増大している。今までに整備された下水道施設は,日々 劣化し,老朽化等による道路陥没の発生や処理機能の停止に陥る危険性があり,日常生 活や社会活動への重大な影響が懸念されている。
今後,さらに増加する下水道ストックや老朽化する下水道施設全体を将来にわたって 適切に維持管理・改築・修繕していくための手法として,ストックマネジメントが着目されている。あなたが施設管理の担当責任者としてストックマネジメントを導入,実践 する場合,下記の内容について記述せよ。
(1)導入により期待される効果
(2)業務を進める場合の手順
(3)業務を進める際に留意すべき事項
■問題文をお間違えになっていませんか。
解答
1.はじめに
日本の水道は、現在普及率97%を越えており、いつでも、どこでも、だれでもが水道の水を利用できる世界トップレベルの施設である。現在、水需要者のニーズは量から質へ変化しており、安全でおいしい水への要望はますます高まっている。特に臭気に対して人は敏感であり、わずかな臭いでも問題となりやすく特に留意すべき項目の一つであると言える。
オゾン処理は臭気除去に対して有効な方法であるが、導入に際しては様々な検討を行い、適切な施設を計画することが重要である。
■不要な前置きです。出題者は求めていません。
2.導入に当たり調査確認すべき事項
①臭気発生物質の調査確認
臭気発生原因の調査を行い、オゾン処理が有効であるかの調査確認を実施する。
②対象原水水質の確認調査(精査)
問題となる物質が含まれていないか調査する。特にマンガンは、過剰オゾン処理した時に、ピンク色に着色するおそれがあるため留意が必要である。
■水質環境としてなら、納得できます。しかし、維持管理の内容になっていません。
③処理効果の確認
バッチ試験や処理実験を行い、処理効果の確認及び注入率や必要接触時間等の設計諸元について整理する。
④維持管理体制等の確認
オゾン処理施設の管理には、専門的な知識が必要となるため、継続的に人材が確保可能かなどの維持管理体制について調査を行う。
3.プロセス選定の留意事項
①他方式との比較
他の臭気対策方式と比較検討を行い、当該現場にオゾン処理が適しているか確認する。建設費やランニングコストと含めた経済性の検討も重要な事項である。
②施設導入位置の検討
現在の維持管理動線や処理原理等を十分に認識した上で、最適な施設導入位置及び場内配置の検討を行う。オゾン処理は後段に活性炭設備が必須であるため、その配置には十分に留意する。
■水道のストックマネジメントのことが書かれていません。
4.導入設備に関する留意事項
①排オゾン濃度、作業環境への留意
オゾンには毒性があるため、排出する排オゾン濃度を確実に把握するとともに、オゾン使用場所のオゾン濃度測定実施を行うなど作業環境の監視が必要である。
②オゾン注入率及び接触時間の管理
流入水量の変動等により必要なオゾン注入量や接触時間が変動し、過不足するおそれが考えられる。確実な処理を行うために、処理条件の管理が大事となる。
③後段活性炭の適切な交換実施等の維持管理
後段の活性炭施設は、生物活性炭などの働きも期待できるが、オゾンによる劣化が懸念される。このため、水の安全性を確保するためには、活性炭の状況確認や適切な交換の実施が必要である。
問題 Ⅲ-2
これまでの都市への人口や産業の集中,都市域の拡大,近年の気象変化等を背景に平常時の河川流量の減少,各種排水による水質事故の問題が顕著となってきている。このような状況を踏まえ,水道における対策について以下の問いに答えよ。
(1)表流水を水源とする浄水場における課題について多面的に述べよ。
(2)(1)の課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,解決のための技術的提案を述べよ。
(3)あなたの技術的提案がもたらす効果を示すとともに,実行する場合の問題点について述べよ。
解答
1.はじめに
表流水は、多量の取水に適しているため比較的大きな規模の浄水場で水源とされていることが多い。このため、一度水源事故が発生するとその影響も大きいため、水質事故には十分に留意する必要がある。
近年、都市部への人口集中や都市域の拡大やゲリラ豪雨や少雨等の異常気象により、水源の汚染や原水水質の変動頻度が増加し、安定した浄水処理が困難となるなどの問題が生じている。
■不要な前置きです
2.表流水を水源とする浄水場における課題
①水源上流域での事故等による水質汚染
昨年発生した利根川流域のホルムアルデヒド流出事故のように、上流域での事故により薬品流出により原水が汚染される危険性がある。
②豪雨、少雨による原水水質の変化
都市部の拡大により流域全体の保水機能が低下しているとともに、ゲリラ豪雨等の急激な降雨により、河川水濁度が急激に上昇することがある。一方、小雨により河川流量が減少し、原水水質が悪化している。
③未処理下水の混入のリスク
取水口上流に下水処理場がある場合には、下水処理場における事故や停電等により、未処理の下水が河川に放流され、水質を悪化させるおそれが挙げられる。
④富栄養化による処理の不安定化
ダム等による富栄養化の進行により、原水水質が悪化し、従来の処理では臭気等の除去が行いなど、浄水処理が不安定となる危険性がある。
⑤都市域拡大による水源汚染の危険性
人口集中により水源付近まで都市部が拡大し、人の生産活動により水源が汚染される可能性がある。
3.重要課題と解決のための技術的提案
重要課題として「取水口上流域での変化をすばやく捉え対応すること」を挙げ下記に技術的提案を述べる。
①流域連絡会の設立
流域全体の工場や下水処理場その他施設関係者と流域連絡会を設立し、互いの施設情報や基本的情報の共有を行い、危険性を把握しリスク管理を実施していく。
②緊急連絡会の設置
事故等が発生した場合にすばやく対応できるよう緊急連絡体制を構築するとともに、お互いに協力し対応できるようにする。
③水源保全活動の実施
水源保全活動を行い将来にわたり継続的に良質な原水水質の確保を目指していく。また、保全活動を通じ、安全でおいしい水への取り組みを水需要者へ広報するとともに、水道への関心を高め、水の重要性を認識して頂き、水域の保全に結びつけていく。
4.技術的提案がもたらす効果と実行する場合の問題点
互いに情報を共有することにより、個別で情報収集していた労力を削減することが可能であり、協力して対策を行うことで対策費用を抑制することができる。また、上流での事故等の情報がすばやく得られるため、取水停止等により施設内への薬品混入を抑えられ、排水や洗浄作業が不要となり維持管理人員の削減が可能となると考える。
さらに、未処理の下水等の混入が防げるため、上水の安全性をより確実に得られるようになる。
一方、実現に対する問題点として、特に民間企業等にあると考えるが、協議会に対する費用や労力の供給が挙げられる。また、互いの利益に関する障害により、情報提供が困難となる場合も考えられる。
このような場合には、流域協議会や連絡会設立の重要性について十分に説明を行い、理解を得るとともに、秘密保持契約等の提案もして実現させていくことが重要である。
■組織、人、コストをどうするかではなく、水のリスクをどう回避するかを述べてください。
5.おわりに
表流水は上流域での影響を大きく受けるため、流域のみならず広い範囲での情報共有が重要と考える。地域のネットワークを構築することにより、安定した浄水の供給が行える強靭な水道を実現することが可能となる。
水道に携わる技術者として、将来的に安定して持続する水道の実現を常に念頭に置き、様々な問題に取り組んでいくことが重要であると考える。
■不要なまとめです。このようなお考えがあるなら、良い技術提案で示してください。
講評
技術士試験答案では、部門科目の技術提案を求めています。専門分野から離れて、概論的に発散してしまったら解答でなくなってしまいます。このような誤りは厳しい評価を受ける場合がありますのでご注意ください。
音声ガイドによるコーチング指導(30分6秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
1. スマートインターチェンジの特徴
スマートインターチェンジは、高速道路のS.AやP.Aに設置されるものである。高速道路へのアクセス制を向上させ、利用者の利便性を高め、既存の高速道路を有効利用する。インターチェンジを建設することなく
設置が可能であるため、予算上の制約を受けにくい。
また、アクセス性に優れるため災害時の避難路としても有効である。
2. 導入の際の留意点
1)アクセス道路の整備
スマートインターチェンジの設置に当たってはアクセス性を向上するために、S.AやP.Aへのアクセス道路の整備が必要である。一般道路を改良し拡幅や新設、交差点改良等が必要である。整備に当たっては、既存交通量、大型車の流入等を検討し、道路構造を決定する必要がある。
2)スマートインターチェンジついての案内表示
導入に当たっては、案内表示板を設置する必要があるが、各道路管理者からなる標識委員会等に図り、有効な案内表示ができるように検討することが必要となる。
■「有効な案内表示ができるように検討」とはどういうことか。具体的にどうすべきか、提案内容がわかりません。
問題 Ⅱ-1-4
植物によるのり面保護工と構造物によるのり面保護工について,各々の概要を述べよ。また,のり面保護工の選定に当たって考慮すべき事項を述べよ。
1.植物にのり面保護工の概要
切土部において安定勾配を確保したのり面において、
降雨による浸食や風化を防ぐため植生によるのり面保護をおこなう。植物の種類は、外来植物や在来植物がある。
2.構造物によるのり面保護
斜面において、表層の極浅い部分の崩壊が懸念される場合に構造物によるのり面保護を行う。のり枠工が代表的な工法であり、プレキャスト、現場打ち等がある。景観や環境等を考慮し枠内の緑化等をおこなう。
3.選定にあたり考慮すべき点
1)植生によるのり面保護
植物の選定にあたっては周囲の環境、土壌の硬度・PHや景観、植生の期間や周辺植物の侵入等を考慮する。
のり面の土壌硬度、PH等に応じて、厚層基材吹付け工法やシート張り工法等の工法選定をおこなう。
2)構造物によるのり面保護
のり枠の選定にあたっては表層の崩落を考慮し安定計算を行い、プレキャストや現場打ちといった工法を採用する。斜面の土質状況や周辺の環境を考慮し、枠内での植生を行うか否かの検討を図る。
■Ⅱ - 1 - 4は内容として問題ありません。十分、合格点を取れています。
問題 Ⅱ- 2 - 1
我が国の道路構造物は,今後,補修や更新を行う必要性が急激に高まってくることが見込まれており,維持管理の業務サイクル(メンテナンスサイクル)の構築が 極めて重要である。維持管理の担当責任者として,下記について述べよ。
(1)道路橋における代表的な損傷原因である疲労,塩害,アルカリ骨材反応のうち2つについて,各々の概要
(2)メンテナンスサイクルの構築に必要な基本的事項が法令上位置づけられたことを踏まえ,点検,診断,措置,記録のうち点検,診断の段階で,各々実施すべき対応
(3)メンテナンスサイクルを持続的に回すために,体制,技術各々の観点から見て必要と考えられる仕組み
1.道路橋の損傷要因
1)アルカリ骨材反応の概要
アルカリ骨材反応は、ひび割れ等により侵入した水が骨材に含まれるアルカリシリカと反応しアルカリシリカゲルとなり、骨材が膨らむことによりひび割れを促進させる。水の侵入が要因となっている。
昭和40年代から50年代前半に建設された構造物に多く見られる。
2)塩害の概要
ひび割れ等により侵入した塩水に含まれる塩化物イオンが鉄筋を腐食させ鉄筋コンクリートを劣化させる。
海岸部にある橋梁のみならず、山間部において降雪があるため凍結散布剤を使用する橋梁にも見受けられる。
2.メンテナンスリサイクルの各段階での対処
1)点検
点検においては、遠方目視での点検ではなく、近接目視による点検を行い、さらに必要であれば、ひび割れ幅の確認や点検ハンマー等による触診点検も行い詳細な状況を把握する。実施期間は法令に定められた期間も遵守するとともに、日常点検において異常が認められれば、緊急点検を行っていくことも必要である。
また、水の影響により構造物に多大な損傷を与えることから、漏水等の水の侵入個所についても十分に調査を行う。
2)診断
診断にあたっては、点検結果をもとに、ひび割れや疲労により損傷している構造物の部位を、構造物の特性から原因を究明するとともに、長寿命化のための措置につながるように診断をおこなう。
■「長寿命化のための措置につながるように診断」とはつまりどういうことか。具体的にどうすべきか、提案内容がわかりません。
3.メンテナンスリサイクルの仕組み
1)体制
構造物の長寿命化を図るためには、十分な予算を確保するとともに、施工歩掛りの見直し等を行い、修繕工事が円滑に進むように配慮する必要がある。
■「体制」とはこのような方針ではなく、組織をどうするかです。
また、点検にあたっては、診断のできる技術者を養成していく必要があり、研修や資格等の充実が求められる。日常に点検できる技術者、専門性を持った技術者、さらに高度な専門性をもった技術者と3段階に分け対応するシステムの構築を検討する必要がある。
■なぜ「3段階に分け対応する」のがよいのか。3段階に分ける意義は何か。その様な趣旨を説明してください。
2)技術
より正確な点検ができるように、点検困難個所にも進入できるロボットによる点検技術やより精度の高い非破壊検査ができる技術開をを推進していく必要がある。
■具体的に「非破壊検査ができる技術」とは何のことを指しているのか。物資探査等の具体的技術名を挙げる。
問題 Ⅲ−2
近い将来に,首都直下地震,東海・東南海・南海地震の発生が予想されているが,こうした大規模地震災害に備える上で,道路に関わる技術者の立場から,以下の問いに答えよ。
(1)大規模地震災害が発生した場合における道路の役割について,東日本大震災の経験を踏まえ,多面的に述べよ。
(2)(1)で述べた役割のうち,1つを取り上げて,それを果たすための課題及びその解決策について述べよ。
(3)(2)で述べた解決策について,実効性をより高める上での留意事項を述べよ。
1. 大規模震災時の道路の役割
1) ネットワークとしての道路
東日本大震災においては、東北自動車道によるネットワークとして、くしの刃作戦と呼ばれる太平洋沿岸被災地へのアクセスにより迅速な道路の啓開や、救援・救護や救援物資の迅速な対応が可能であった。あらためて、ネットワークとしての道路の重要性が明らかになり、災害時において、道路は十分な役割をはたした。
2)津波を防護する機能
高速道路の盛土部においては、陸部を遡上する津波に対して、防護する役割を担う。
又、避難する人に対して高台への移動を可能として人命を救った。
道路の盛土部は、津波の遡上を防ぎ、高台への非難を可能とする防災機能がある。
3)防災空間としての機能
道路はネットワークとして確保されることにより避難路としての役割を担う。また、市街地においては地震時に起きる、建築物の延焼を防ぎ安全な地区への非難を可能とする。
防災空間としての機能を発揮することにより救援・救護や救援物資などの人や物を迅速に確実に移動させることにより、道路の早期啓開や人名救助に向けて道路は大きな役割を果たす。
2.ネットワークとしての道路の役割における課題と解決策
①高速道路においては、ネットワークを寸断するミッシングリンクの解消を図らなければならない。
そのためには、国民に対してネットワークにつながっていないことによる損失についての説明を十分に行い予算を確保することにより、ミッシングリンク区間の早期の整備を進めることが必要である。
■「ミッシングリンクの解消」とはすなわち、新規の道路を作ることであって、それは国土交通政策によって行われます。また政策は、国民の支持によって決まります。ですから技術者が簡単に提案できる事項ではありません。たとえ官僚であったとしてもです。
また「国民に対して説明を行い予算を確保する・・」とはすなわちロビー活動みたいなことで、技術士が提案すべきことではありません。
②道路防災にあたっては、ネットワーク路線の弱部において、斜面や盛土の崩壊により寸断される危険性がある。
そのため、防災点検や調査により弱部個所を定め、斜面対策や軟弱地盤対策を進めて聞く必要がある。
③災害時ネットワークの整備にあたっては、ネットワークとしての経路を定めなければならない。
そのためには住民への説明責任をはたして行く必要がある。ネットワーク経路の決定にあたっては、道路管理者のみならず関係行政機関や沿線関係住民を含めた協議会を設けて広範な合意を図っていく必要がある。
特にネットワーク路線から外れた地区等については、災害時に孤立化を避けられよう対応策を検討しておかなければならない。
■何をどうするかが示されていません。ただ話し合いのみ・・では技術士の提案になりません。
④震災時に橋梁が落橋しないように、耐震補強を推進することが必要である。
⑤防災空間としての機能を高める必要がある。
そのため市街地においては、無電柱化や都市整備計画とも連携し道路の拡幅を図っていく必要がある。
3.実行性を高める上での留意点
道路ネットワークについては、信頼性や円滑性を高めると言った観点から、ミッシングリンクの解消、道路における弱部への対処、構造物の補強等を進めていかなければならないが、やみくもに対応していけば、効果が出にくいこととなる。対策については優先順位を決め、関係住民への説明を十分に行いながら進めていくことが重要である。
■困難で難しいことです。闇雲にやってはいけないに決まっています。結局、提案は「説明」しかないようです。
また、都市部における災害時のネットワークの確保については、防災空間としての役割も十分に果たすために、都市計画事業とも連携し対応を進めていく必要がある。
■「都市計画事業とも連携」とはつまりどうするのか。
解説
提案内容に書かれていることの中身は、当たり前にやるべき事項、制約事項が多いようです。これでは提案の意味がありません。
技術士の提案ですから、効果や性能、経済性が高まるような、かつ建設・道路の技術応用で成果が表れるように提案すべきです。自由形式の解答から、試験官はそのようなコンピテンシーの視点が受験者に備わっているかどうかを測っているのです。
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